3.世界経済・金融危機下における政策協調

世界経済・金融危機の克服が、2009年の経済外交の最大の課題であった。G20ロンドン・サミット、G8ラクイラ・サミット、G20ピッツバーグ・サミット、OECD等を通じ、日本は積極的に各国との経済政策協調を実施し、危機克服に尽力した。危機克服に当たっては、特に以下の点に取り組んだ。

[1]金融・財政措置:各国は連携しつつ、例外的な金融政策や前例のない規模の財政措置等を実施した。G20ロンドン・サミットでは、2010年末までに5兆米ドルと試算される財政措置の継続及び、あらゆる金融政策の手法を活用した緩和政策の維持を確認した。G20ピッツバーグ・サミットでもこれを再確認し、鳩山総理大臣からも、危機は終わっておらず「出口戦略」を作成する時期ではないとして、景気刺激策と国際的な政策協調の重要性を主張した。
[2]金融市場における流動性の確保:G20ロンドン・サミットでは、IMFを始めとする国際金融機関の資金基盤強化のために総額8,500億米ドルの追加的資金を利用可能とすることに合意した。
[3]金融監督及び規制の強化:危機の再発防止に向け、G20ロンドン・サミットでは、ヘッジファンドなどを含むシステム上重要なすべての金融機関・商品・市場への規制監督の拡大、格付会社への規制監督及び登録の拡大等に合意し、G20ピッツバーグ・サミットでは、銀行資本の質と量の改善、金融機関の報酬体系・慣行の改革等に合意した。
[4]保護主義への対抗:G20ロンドン・サミットでは、「新たな保護主義的な措置をとらない」との誓約を2010年末まで延長することに合意し、G8ラクイラ・サミット、G20ピッツバーグ・サミットでもこれを再確認した。

また、危機の克服にとどまらず、G20ピッツバーグ・サミットでは、世界経済のより均衡ある成長パターンへの移行に向けて、各国の経済政策の相互評価を含む「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み」が採択された。また、6月のOECD閣僚理事会では、環境・社会的に持続可能な経済成長の達成に向けて「グリーン成長に関する宣言」を採択し、グリーン成長戦略の策定に合意した。

これらの取組の効果もあり、危機の一層の悪化は食い止められ、IMFやOECDによると、2010年の世界経済はプラス成長に転じる見通しとなっている。しかし、世界経済は依然として下ぶれのリスクを抱えた予断を許さない状況であり、引き続き経済回復のための取組が必要である。

日本としても、G20ピッツバーグ・サミットにおいて、国際経済協力の「第一のフォーラム」として定例化されたG20を通じ、中国を含む新興経済国との経済政策協調を推進するとともに、地球規模の課題について問題意識を共有する先進首脳国の集まりであるG8を通じ、引き続き国際社会の喫緊の問題に対応しつつ、中長期的な視野に立った議題設定をするために取り組んでいく。

2009年のG8・G20サミット
2009年のG8・G20サミット
世界経済の現状と今後の見通し(GDP成長率)
世界経済の現状と今後の見通し(GDP成長率)