2.地域安全保障

(1)二国間の枠組み

アジア太平洋地域における二国間の枠組みとしては、日本は、オーストラリア、カナダ、中国、インド、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、韓国、パキスタン、フィリピン、ロシア、シンガポール、タイ、ベトナムなどとの間で、安全保障に関する対話や防衛協力を行い、相互の信頼関係を深め、安全保障分野における協力関係を進展させるように努めている。特に、オーストラリア及びインドとは「安全保障協力に関する共同宣言」やその実施のための「行動計画」を作成し、積極的な協力を進めている。

(2)多国間の枠組み

多国間の取組については、この地域の安全保障に関する唯一の政府間の枠組みであるARFを始め、ASEAN+3、EAS、ASEAN拡大外相会議(ASEAN・PMC)、ASEM等、多様な枠組みに参加し、多国間での対話・協力にも精力的に取り組んでいる。

これまでARFは、単なる意見交換の場としての域を出ず、実際的な協力はできないと言われてきたが、最近、具体的な協力を行う枠組みとしての整備が進みつつある。5月には、ARFとして初めてとなる災害救援をテーマとした実動演習がフィリピンで行われた(日本からは、外務省、防衛省・自衛隊、国際協力機構(JICA)から総勢100名を超える人員が参加)。日本は、ARFが着実に進展し、アジア太平洋地域の平和と安定に重要な役割を果たすことを期待し、積極的に貢献していく方針である。3月にはインドネシア及びニュージーランドと海上安全保障会期間会合を共催、6月にはカンボジアとPKO専門家会合を共催した。

また、2011年3月にはインドネシアと第2回ARF災害救援実動演習を共催する予定であり、その意向を7月の第16回ARF閣僚会合で表明した。

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日本の救援隊が参加したアセアン地域フォーラム(ARF)の災害救援合同演習
(5月4日、フィリピン・マニラ 写真提供:AFP=時事)

(3)民間レベル(トラック2)の枠組みへの参加

日本は、政府間対話のみならず、安全保障に関する率直な意見交換の場としてトラック2の枠組みも積極的に活用している。

中でも、アジア安全保障会議(通称:「シャングリラ・ダイアローグ」)は、アジア太平洋地域の国防大臣及び防衛・安全保障分野の政府関係者や有識者が一堂に会し、防衛問題や防衛・安全保障協力に関して議論する会合であり、また、アジア太平洋安全保障協力会議(CSCAP)は、アジア太平洋地域の域内諸国の信頼醸成及び安全保障協力の枠組みを提供することを目的としている会合である。

日本は、こうした民間主催の会合を始めとする、各国の安全保障や防衛分野の会議に積極的に参加することにより、アジア太平洋地域の平和と安定のための基盤となる信頼醸成の促進に努めている。