2008年8月にグルジアで発生した南オセチアをめぐる紛争は、その後もコーカサス地域に様々な影響を及ぼした。2009年4月、南オセチア・アブハジア両地域は、ロシアと「国境警備に関する協定」を署名、ロシア国境警備隊が両地域の「国境」沿いに配置され、また、5月に南オセチアで「議会」選挙が、12月にアブハジアで「大統領」選挙が実施されるなど、「独立」の既成事実化を進めている。グルジア国内では、4月から5月にかけて、野党による反政府デモ等、内政の不安定化が進んだが、その後事態は沈静化している。これまでロシアとの間で目立った関係改善の動きは見られない。
また、グルジア紛争の際に物流が一時遮断され、経済的損失を被ったアルメニアは、10月に、歴史問題などをめぐり外交関係が断絶していたトルコとの関係改善に関する議定書への署名を行った。これは、コーカサス地域の平和と安定に資するとして、日本を含む国際社会から歓迎された。
一方、アゼルバイジャンにおいては、アルメニアとの間で抱えるナゴルノ・カラバフ問題の解決に見通しがつかない中、トルコとアルメニアの関係改善の動きへの反発の感情があるため、資源保有国でもある同国の動向が地政学上与える影響は大きく、今後注目される。
日本との関係では、1月の在グルジア日本大使館開設を皮切りに、コーカサス3か国すべての外相訪日が実現するなど、関係発展に飛躍を遂げた年となった。