中東地域の平和と安定は、大量破壊兵器の拡散防止やテロ対策という地球規模課題において極めて重要であり、国際社会全体の平和と繁栄に直結する。加えて、中東地域は大量の石油及び天然ガスを供給しており、日本は原油の約9割を同地域から輸入している。
2009年には、イスラエル軍のガザ進攻、アフガニスタンでのテロの継続、イランの核問題の深刻化、イエメン情勢の不安定化が見られた。同時に、中東は豊富なエネルギー資源と資金を背景に経済的発展を志向しており、世界経済・金融危機の影響はあるものの、日本にとって更なる協力推進とビジネス関係構築の機会が生まれている。
このような状況において、日本は中東地域の平和と安定の確保と、中東との重層的協力関係構築を目標として、国際社会と連携しつつ、中東外交に積極的に取り組んでいる。
中東地域の平和と安定の確保を目指し、日本は中東和平やイランの核問題等について、主要関係国と緊密に連携し、独自の関係に基づく働きかけを通じて、問題の平和的解決に努力している。特に、これらの問題に関する閣僚級や高官級の政治対話のほか、パレスチナ国家建設に資する支援や、イラク復興支援等を行っている。また、2009年11月には、テロの脅威に対処するための新戦略として、アフガニスタン・パキスタンに対する日本の新たな支援パッケージを発表した。さらに、G8、国連安保理など、多国間の協力の場において中東外交を展開している。
同時に、日本は近年中東諸国との間で、エネルギーを中心とする経済分野を軸とした関係を更に発展させ、政治、科学技術、教育、文化等幅広い分野における重層的関係構築のための取組を進展させている。12月にはムーサ・アラブ連盟事務総長を始め、各国の閣僚や経済界など、日本側・アラブ側双方からあわせて約1,200人の参加を得て、「第1回 日本・アラブ経済フォーラム」が東京で開催された。同月、バグダッドでは「第2回 日イラク経済フォーラム」が開催された。