目次 > 外交青書2010(HTML)目次 > 第2章 地域別に見た外交 第3節 中南米【総論】

第3節 中南米

【総論】

中南米地域は、5.6億人の人口と4.2兆米ドルの域内総生産(ASEANの3倍)を有し、ここ5年間は5%前後の経済成長率を維持するなど、経済面での存在感を一層高めている。さらに、希少金属を含めた鉱物・エネルギーや食料の供給源として注目されている。

日本は中南米との間で、日系人の存在を始めとする人的な絆(きずな)もあり、伝統的に友好関係を有している。また、中南米諸国における民主主義の定着と経済発展を支援し、関係の緊密化を進めてきた。近年では、中南米は概(おおむ)ね民主主義と市場経済に基づく着実な経済成長を享受し、国際社会での発言力も増大している。今日、基本的価値を共有する中南米諸国は、日本にとって国際社会における重要なパートナーとなるに至っている。このような状況の下、日本は中南米諸国との関係を更に進展させるために、[1]経済関係の強化、[2]地域の安定的発展の支援、[3]国際場裏(じょうり)における協力推進を三つの柱として同地域に対する外交を展開している。

経済関係の強化については、日本政府は日系企業や現地の事情を的確にとらえながら、EPAや投資協定などの法的枠組みの整備や相手国政府との協議などを通じ、日系企業の活動を支援し、日本と中南米における経済関係の一層の活発化を図っている。

中南米の安定的発展に向け、日本は、各国に根強く残る貧困や社会格差問題の解決のため、資金・技術協力を通じて、各国政府による取組を積極的に支援し、持続的な経済発展の実現に向けて協力している。

33か国を擁する中南米は、国際連合等での意思決定に大きな影響力を有し、とりわけブラジルやメキシコなどの新興国は、国際政治経済における存在感を飛躍的に増大させている。これを踏まえ、日本政府は中南米諸国との間で、日本が重視する環境・気候変動問題、核軍縮・不拡散、人間の安全保障、国連安保理改革等の国際社会が直面する課題に取り組むに当たって、連携・協調を図っている。