アジア太平洋地域のパートナー及びG8のメンバーとして日本と基本的価値を共有するカナダとは、2008年に迎えた日加修好80周年を経て、ますます良好な関係が構築されている。特に7月には、長きにわたりカナダから招待が寄せられてきた天皇皇后両陛下のカナダ御訪問が初めて実現し、カナダ国内において日本に対する関心が大いに高まるとともに、日加修好80年のハイライトとして温かく受け入れられた。政治レベルでは、4月にデイ国際貿易大臣が訪日し、日加間の経済分野での協力を深化させることについて意見交換が行われた。また、5月にはキャノン外相が訪日し、中曽根外務大臣との間で、人道支援及び災害救援活動を行うカナダ軍用機による日本の空港及び施設の使用手続を迅速化するための手続を定めた「人道支援及び災害救援活動の支援ための標準運用手続に関する日本国政府とカナダ政府との間の協力覚書」の署名が行われたほか、アジア地域情勢、気候変動問題、国連安保理改革等、地球規模の課題についても緊密な意見交換が行われた。
経済面では、2008年に引き続き、10月には貿易投資対話が開催される等、「日加経済枠組み」の下で、様々な投資、貿易促進のための取組が積極的に進められている。
2008年10月の第40回連邦下院総選挙後、野党が一致団結して政府不信任案の提出・可決に向けた動きを見せたため、ハーパー首相は、議会を停会する措置を講じたまま2009年の年明けを迎えることとなった。しかし、その後1月の議会再開後も野党が政府不信任案を提出することはなく、また、過去3年間に2回の総選挙を経験したカナダ国内では、更なる総選挙を望む声も大きくなかったことから、発足後4年目となったハーパー政権は、少数政権ながら安定した政権運営を持続している。
2009年後半、ハーパー首相は、こうした当面の政局回避により可能となった外遊を積極的に行い、APEC(於:シンガポール)、コモンウェルス首脳会議(於:トリニダード・トバゴ)、及びCOP15(於:デンマーク)に相次いで出席したほか、インド、中国、韓国をめぐるアジア歴訪を行うなど、2008年の訪日に引き続き、ハーパー首相がアジア諸国に関心を有していることを裏付けた。また、外交政策としては、引き続きアフガニスタン支援を重視し、アフガニスタン南部地域のカンダハールを中心に約2,800名の兵を派遣している。
カナダ経済は、世界経済・金融危機の影響を受け、個人消費の鈍化、住宅を始めとする民間投資の低迷により、実質GDP(前期比、年率換算)はマイナス成長となっている。カナダ銀行は4月に政策金利である翌日物金利の誘導目標を過去最低水準の0.25%に引き下げ、ほぼゼロ金利となり、また、失業率も11月時点で8.5%と、依然として高い水準となっている。
しかし、2009年後半は、主要都市で中古住宅市場を始めとして、住宅販売件数や価格が増加し、第3四半期単体の実質GDP成長率はプラスに転じるなど、景気回復の兆しも見られる。
7月3日、天皇皇后両陛下は、カナダ、米国(ハワイ州)への14日間にわたる御訪問に出発なさいました。天皇陛下にとっては、皇太子時代の1953年に一度カナダを御訪問されて以来、56年ぶり二度目の御訪問となりましたが、天皇皇后両陛下による御訪問は、80年を越える日加関係の歴史上初めてのことであり、長きにわたり両陛下の御訪問を熱望してきたカナダからは、国をあげて歓迎の意が表明されました。また、ハワイへの両陛下の御訪問は、1994年以来15年ぶりのことでした。
太平洋を挟んだ隣国である日本とカナダの間の人的交流は、外交関係開設前の1877年にさかのぼると言われており、今では約10万人の日系カナダ人及び在留邦人がカナダに居住しています。両陛下は、国賓として、首都オタワ及びケベック州ガティノーに続き、日本の約27倍という広大なカナダを横断なさる形でトロント、ビクトリア、バンクーバーを御訪問になり、各地で多くのカナダ国民や在留邦人の熱烈な歓迎におこたえになりました。カナダ国民からは、両陛下の温かいお人柄に触れ、良好な日加関係を改めて実感したとの声が寄せられ、特に、ガティノーにおいては、先住民出身の若者が、自身の行う市内の緑化運動について皇后陛下に御説明する機会を得、皇后陛下からかけられたねぎらいのお言葉に感極まって涙を流す場面もありました。両陛下のオタワ御到着の模様は、カナダへの国賓としては異例の生中継でカナダ全土に放映され、また、カナダ国内紙も両陛下の御動静を連日大きく報じたことから、両陛下がお立ち寄りになった国会議事堂、大学、小児病院、日系文化関連施設、州議会議事堂等は、日を増すごとに両陛下を歓迎する多くの人々であふれました。
また、今回のカナダ御訪問は、56年前に皇太子殿下をお迎えした二世を中心とする日系人やカナダ人にとっては天皇陛下との再会の機会であり、また、三世、四世といった若い日系人世代にとっては、祖父母・両親の祖国を感じる機会となるなど、日本とカナダをつなぐ貴重な機会でもありました。56年前に皇太子殿下をお迎えした日系人の老人が、天皇陛下に「お帰りなさい。」と声をかける姿は、日本とカナダの間の確固たる友好関係を象徴しているかのようでした。
両陛下は、米国政府の歓迎を受けて、ハワイ州も御訪問されました。両陛下は、ハワイ州オアフ島にて、「皇太子明仁親王奨学金財団50周年記念行事」に御臨席になりました。同奨学金財団は、両陛下の御成婚を記念して50年前に創設され、これまで日本とハワイ州との間の留学生交流に大きく貢献してきています。また、両陛下は、日系人部隊兵士も含め約5万の英霊が眠る国立太平洋記念墓地にて御供花なさいました。その後、両陛下は、ハワイ島を御訪問になり、米国有数の規模を誇るパーカー牧場にて日系人の代表やハワイ系住民代表の方々ほかと親しくお話をされました。
両陛下は、カナダ、ハワイ州御訪問を通じて、お会いになった方々一人一人に心を込めて丁寧に接せられ、両国国民に深い印象を残されました。このたびの御訪問を通じて、日本とカナダ、ハワイ州との親善関係がこれまで以上に深まりました。