第4章 | 国際社会で活躍する日本人と外交の役割 |
第1節国際社会で活躍する日本人 |
1. |
国際機関で働く日本人 |
国際社会では、政治・安全保障体制を脅かすテロや紛争に加え、急速なグローバル化の進展に伴って深刻化する環境破壊、人権侵害、貧困、感染症等、地球規模の諸問題への対応がますます重要になっている。
こうした中で、国際機関の果たす役割は増大しており、国際機関で働く国際公務員の任務と責任も一層重要なものとなっている。
日本は、国際社会の責任ある一員として、国際連合等の国際機関においてもその地位にふさわしい役割を果たしていきたいと考えており、その一つの方法として、国際機関における日本人職員を増強すべく、優秀な人材の発掘や日本人職員の採用・昇進に向けての国際機関に対する働き掛けを行っている。
日本人職員の増強のための具体的な取組としては、外務省の国際機関人事センター(注1)を通じてAE(Associate Expert)/JPO(Junior Professional Officer)等派遣制度(注2)の実施、国際機関による採用ミッションの受入れ、日本国内における広報活動等を行っている。こうした取組の結果、国連関係国際機関の日本人職員は698人(2008年)となり、2001年の481名から約4割以上増加している(図表「国連関係機関に勤務する日本人職員数の推移(専門職以上)」を参照)。
その中には、選挙で選出された国際機関の長(注3)を始めとした幹部職員や若いころから国際機関に就職し生え抜きで活躍している職員等がおり、イラク周辺やアフガニスタン等の紛争地域のほか、日本を含むアジアやアフリカなどの国々で、様々な分野において活躍している(注4)。
外務省は、2001年以降横ばい傾向にある幹部職員を含め、国際機関で活躍する日本人を一人でも増やすために、引き続き、更なる人材発掘と国際機関への働き掛けを行っていく方針である。
2001年の米軍の攻撃によるタリバーン政権の崩壊以来、同国には日本を含む国際社会から巨額の復興援助資金がつぎ込まれてきました。それでもなお、アフガニスタンでは人口の40%もの人々が貧困層にあり、苦しい生活を強いられています。
私は2007年2月から国際移住機関(IOM)のカブール事務所で、難民や国内避難民の帰還、社会復帰を助ける仕事にかかわっています。最貧国アフガニスタンでの生活はあらゆる意味で大きな挑戦です。家族同伴は禁止され、同僚など援助関係者との共同生活となりますが、文化的背景や生活様式が違う人々と同じ屋根の下で暮らすことは楽しい反面、ストレスにもなります。カブールで電気が供給されるのは多くて1日数時間ですので、発電機に頼った生活となります。騒音や維持経費が大きいことに加え、容量が小さく頻繁に壊れるため、暗やみの中を懐中電灯で過ごしたり、氷のように冷たいシャワーを浴びたりせざるを得ないことが何度あったでしょうか。
また近年の治安の悪化によって、行動規制は厳しくなる一方です。防弾車による移動しか許されておらず、警備員なしでは野菜すら買いに行けません。爆発音を間近で聞くことは日常茶飯事ですし、友人がタリバーンによる銃撃に遭ったり誘拐されたこともありました。
このような困難が存在する一方、助けを必要とする人々に少しでも貢献できることをうれしく思っています。オバマ政権の誕生により、アフガニ スタンの今後の行方にますます注目が集まっています。テロだけではなく、貧困との戦いの最前線でもあるアフガニスタンで働くことにやりがいを感じ、アフガニスタン人のたくましさに勇気付けられる毎日です。
IOMカブール事務所 プロジェクト案件形成・広報担当官 茅 和伊(かや かつい)
![]() IOMの生計支援を受けて仕立て屋となった女性(写真左側)と筆者(2007年、カブールにて) |
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(注1) | 外務省国際機関人事センターホームページ(http://www.mofa-irc.go.jp)を参照。 |
(注2) | 国際機関で働くことを志望する者を日本政府の経費負担で原則2 年間、国際機関に派遣し、職務経験を積むことにより正規職員への道を開くことを目的とした制度。2008年1月現在で88名が派遣されている。 |
(注3) | 国際機関加盟国による選挙で選出された国際機関の長では、松浦ユネスコ事務局長及び田中国際エネルギー機関(IEA)事務局長がいる。 |
(注4) | 日本国内にも多くの国際機関が駐日事務所を有している。詳細は外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/link/kokusai/index.html)を参照。 |