2. |
NGOの活躍 |
国際協力に対する市民の関心の高まりを背景に、国際協力の担い手としての非政府組織(NGO(注1))の重要性が高まっている。NGOと一言で言っても団体の規模は様々であり、日本国内にも少数の専従職員とボランティア・スタッフで運営される小規模な団体が数多くある一方、各国の提携団体による国際的なネットワークの一端を担い、大規模な事業を展開する団体もある。また、NGOの活動範囲は、開発途上国に対する開発援助、緊急人道支援の実施に加え、高い専門性を背景に人権、教育、環境、軍縮、国際組織犯罪等、専門分野ごとにネットワークを形成し、政策提言活動を行うなど幅広い。
外務省は、こうしたNGOの役割を重視し、オールジャパンによる外交を推進する上で、NGOを重要なパートナーと位置付け、開発協力事業への資金提供、活動環境整備の支援、主要外交分野における対話の促進等を通じた連携強化を図ってきている。
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開発援助分野 |
国際協力活動に携わる日本のNGOは400以上あると言われる。国際社会が貧困や自然災害、地域紛争など様々な課題に直面する中、地域社会や住民に密着したきめの細かい、迅速で柔軟な対応ができるNGOの重要性はますます高まっている。外務省は、ODAの政策立案や事業実施にNGOの人材やノウハウをいかすとともに、NGOが専門性や運営能力の強化を通じて、活動の質・幅を向上・拡大することができるよう協力してきている。
また、日本のNGOが開発途上国で実施する開発援助事業に対して「日本NGO連携無償資金協力」及び「草の根技術協力」等によりODA資金を提供している。
2008年(12月末現在)には、39の日本のNGOが、アジア、アフリカ、中東、中南米等の30か国において日本NGO連携無償資金を利用して69件の事業を実施しており、学校建設、水供給、医療、被災者支援、農村開発、地雷・不発弾除去等の幅広い分野における質の高い援助活動は高い評価を受けている。
また、2000年8月、サイクロンや地震のような大規模自然災害や地域紛争の際にNGOが迅速に緊急人道支援活動等を行うことを目的にNGO、政府、経済界等が協力して設立したジャパン・プラットフォーム(JPF)には、現在30のNGOが参加している。2008年にはミャンマーでのサイクロン、中国四川省における大地震、パキスタン南西部での地震被災者支援のほか、2007年から引き続きイラク難民・避難民支援等を行っている。
日本のNGOは、このような政府資金を利用した開発援助事業に加え、寄附金、会費収入等による民間資金を利用した援助活動も数多く実施している。さらに企業が社会的責任(CSR) 活動の一つとして、NGOをパートナーとして開発途上国で社会貢献事業を実施する新たな形の連携も見られるようになっている。
外務省や国際協力機構(JICA)、国際開発高等教育機構(FASID)等は、NGOの国際協力の担い手、政府のパートナーとしての重要性を重視し、NGOが更に活動基盤を強化して活躍していけるように様々な施策を通じてその活動を支援している。外務省は、2008年にNGOの事業実施能力と専門性の向上を目的に教育、衛生等といったテーマを扱うNGO研究会等のセミナー、シンポジウムを実施した。また、NGO職員の人材育成事業として、海外NGOや国際機関で実務研修を行うNGO長期スタディ・プログラム等、様々な施策を実施した。さらに、NGOの国際協力活動全般や組織づくりなどについて一般からの質問・照会にこたえるNGO相談員を全国に17名配置している。さらに、NGOの専門性を高めるため、NGO専門調査員10名を10団体に対し派遣した。
また、外務省は、NGOとの対話・連携を促進するべく、NGO・外務省定期協議会を実施している。
![]() モーリタニア・アドラール地方僻村地への医療支援(外務省日本NGO連携無償資金協力)(写真提供:(特活)SAVE AFRICA) |
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TICAD/G8サミット・プロセスを通じた連携 |
2008年5月の第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)(於:横浜)は、定期協議会、準備会合等、準備段階から日本及びアフリカ等のNGOが参加する形で開催された。会議期間中に開催された市民社会セッションでは、NGO主導により活発な議論が行われ、その結果が全体会合の場で発表された。
7月に開催されたG8北海道洞爺湖サミットでは、市民に開かれたサミットの実現を目指して、141の団体による「G8サミットNGOフォーラム」が結成され、各国のNGOと連携しつつ、「貧困・開発」、「環境」、「人権・平和」の分野において活発な政策提言活動を行ったほか、G8北海道洞爺湖サミット開催に合わせて、札幌市においては「市民サミット2008」が開催された。また、準備段階においては、国内外のNGOと福田総理大臣を始めとするG8各国政府高官等との政策対話が実現したほか、G8サミット開催期間中にも国際メディアセンター(IMC)内に設置されたNGO用の作業スペースと記者会見場にてNGOが活発な活動を展開するなど、市民及びNGOのサミット・プロセスへの参加が実現した。
![]() G8北海道洞爺湖サミットに向けて、20か国余りからNGO関係者が集まって開催されたシビルG8対話(4月23日~24日、京都 写真提供:(特活)国際協力NGOセンター 撮影:Yuko Yanase) |
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その他主要外交分野における連携 |
人権分野では、国連における「人権の主流化」や「国連民主主義基金」(UNDEF)の創設など、国際社会における人権・民主主義の重要性の一層の高まりを踏まえ、政府と市民社会を含めた、今後の日本の人権・民主主義分野での取組や在り方を探る機会として、2月に「NGOによる民主化支援セミナー」を開催した。また、2月末から3月初めに開催された第52回国連婦人の地位委員会(CSW)への政府代表団には、NGO関係者が顧問として参加し、政府とNGOの橋渡し役として活動した。
「障害者権利条約(仮称)」(注2)に関しては、障害者NGOとの間で意見交換を実施し、その締結に向けた検討を進めている。第63回国連総会では女性NGOの代表が政府代表団に加わり、人権・社会分野を扱う国連総会第3委員会において議論に積極的に参加した。
11月、リオデジャネイロ(ブラジル)にて開催された「第3回児童の性的搾取に反対する世界会議」(注3)では、国際社会全体が一致団結して問題に取り組む決意を示した。日本は国内外のNGOと協力しつつ積極的に議論に参加した。
軍縮分野では、対人地雷及びクラスター弾等の不発弾対策等において、外務省は政府の取組等に関してNGOとの意見交換会を開催している。また、外務省は、アフガニスタンやカンボジア等、地雷及びクラスター弾等の不発弾の被害国で活動する日本のNGOに対し、日本NGO連携無償資金協力を通じて、地雷及び不発弾処理、犠牲者支援事業等の実施を資金面で支援している。
国際組織犯罪分野では、人身取引対策の重要性の高まりを受け、政府は2004年に、内閣官房に関係省庁連絡会議を設置し(4月)、「包括的な人身取引対策行動計画」を策定(12月)し、防止・撲滅・保護の観点から諸施策を推進している。関係省庁連絡会議の下では、定期的にNGOと協議の場を設けており、2008年は6月と11月に人身取引被害者のケア等に取り組む国内のNGOから現場の声を聴取するとともに、官民が連携した被害防止策及び被害者支援の在り方等について率直な意見交換を行った。
また、国連改革の分野では、外務省は国連改革を考えるNGO連絡会と「国連改革に関するパブリックフォーラム」を共催し、TICAD IVやG8北海道洞爺湖サミットに向けて、アフリカに関連した課題について建設的な意見交換を行った。
![]() ![]() NGOによる民主化セミナー(2月、東京 写真提供:(社)シャンティ国際ボランティア会) |
(「ODA広報TV番組『地球サポーター』」、「グローバルフェスタJAPAN」)
~知花くららさんからのメッセージ~
私は、2008年度ODA広報番組「地球サポーター」のイメージキャラクターとして、開発途上国で行われている様々な日本の政府開発援助をレポートさせていただきました。私自身、ウガンダ、ベトナム、カンボジアの3か国を訪問し、日本の援助の現場を肌で感じることができ、2008年10月に行われた国際協力イベント「グローバルフェスタJAPAN2008」では、トークショーにも参加させていただきました。
「地球サポーター」のイメージキャラクターを務める以前から、私はチャリティー活動や国際協力に強い関心を持っていたこともあり、貴重な体験が出来た1年となりました。
「地球サポーター」の取材では、毎回「がつーん」と頭を打たれたような衝撃が走りました。取材に行くたびに、自分の無知、未熟さを思い知らされたのです。濁って虫が浮いていた池を飲料水として利用せざるを得なかったウガンダのある村の現実、ベトナムの目の不自由な女の子や、脳性麻痺の子供たちとの出会いなどを通じ、「私にも何かできることをしたい」と直感的に感じたのです。でも「何ができるのか」という問いに答えるのは決して簡単ではなく、世界の人々は何を必要としているのだろうか、地球は何処に向かおうとしているのだろうか、もっともっと勉強しながら考えていきたいと思いました。
そして、私がいつも勇気づけられたのが、日本から遠く離れた地で日本人が活躍する姿、そして現地の人々の素敵な笑顔でした。
日本の援助の現場で、私自身が見たこと、感じたことをみなさんに少しでもお伝えできたならば、本当にうれしく思います。
地球サポーター・イメージキャラクター 知花くらら
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(注1) | 国際協力を主活動とする非政府・非営利の市民団体。 |
(注2) | 日本政府は2007年9月に署名を行った。 |
(注3) | 過去3回の会議は、主催国政府、UNICEF、国際ECPAT(NGO)、児童の権利条約NGOグループが共催。日本は2001年に第2回会議を主催した。 |