9. |
軍縮・不拡散(科学技術・原子力分野の国際協力を含む) |
軍縮・不拡散は、良好な安全保障環境を形成し、平和な世界をつくるために、日本が国際社会の一員として取り組むべき課題である。日本は、唯一の被爆国として、核兵器や紛争のない平和な世界の実現を目指し、一貫して国際的な軍縮・不拡散体制の維持・強化を訴えている。
2008年は、引き続き、北朝鮮及びイランの核問題を始め、国際的な核軍縮・不拡散体制が直面する種々の挑戦に、国際社会が一致して取り組むことが求められた。
日本の核軍縮・不拡散体制の維持・強化に向けた取組としては、G8北海道洞爺湖サミットにおける取組、日豪共同イニシアティブとして立ち上がった「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」を含む2010年核兵器核不拡散条約(NPT)運用検討会議の成功に向けた取組及び核軍縮決議案の国連総会への提出等がある。同決議案は、過去最多の圧倒的多数を得て採択された。
また、生物兵器や化学兵器を禁止する条約の強化に取り組んだ。
さらに、通常兵器の軍縮・不拡散についても、国際的な規範の形成、その実施や制度の強化、地雷除去や小型武器回収といった被害国の現場でのプロジェクトの実施及び支援等に取り組んできた(注1)。
科学面では、科学技術全般や原子力分野での二国間協力、多数国間協力を進めたほか、「科学技術外交」、「宇宙外交」を始動した。
(1) |
G8北海道洞爺湖サミットにおける成果 |
G8北海道洞爺湖サミットでは、日本は議長国として不拡散の問題を重要なテーマとして取り上げ、北朝鮮やイランの核問題の解決に向けて首脳レベルでの結束を確認し、国際社会に力強いメッセージを発出した。また、G8として、現在進行中の核兵器削減を歓迎するとともに、すべての核兵器国に対し透明性のある形での核兵器削減を求めた。さらに、近年、国際的に関心が高まっている原子力エネルギーの利用についても議論し、日本の提案により、核不拡散/保障措置、原子力安全及び核セキュリティ(注2)の確保のために、「3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブ」(注3)を立ち上げた。
(2) |
核軍縮 |
4月から5月にかけてジュネーブにて開催された2010年NPT運用検討会議第2回準備委員会においては、核軍縮、核不拡散、原子力の平和的利用の分野について、また北朝鮮やイランの核問題等も含め、運用検討会議の成功に向けた実質的な議論が行われた。また日本は、7月の日豪首脳会談での一致に基づき、オーストラリアと共に、世界の傑出した有識者による核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(注4)を設置した。同委員会は、運用検討会議の成功に資するよう、現実的かつ実際的な行動指向型の報告書を提示することを目指し、10月にシドニーにおいて第1回会合を開催した。
日本は、2008年も国連総会に核軍縮決議案(注5)を提出し、圧倒的支持を得て採択された。G8等の主要国との軍縮・不拡散に関する二国間協議も開催した。包括的核実験禁止条約(CTBT)(注6)の発効促進について、9月にニューヨークにおいて第4回フレンズ外相会合が開催された際、川口順子政府代表(元外務大臣)が未批准国・未署名国に対し早期の批准を呼び掛けた。
ジュネーブ軍縮会議(CD)では、1996年以来、多数国間の軍縮条約に関する実質的交渉が行われていない。2008年には、議長を務める6か国大使により、カットオフ条約(注7)の交渉開始を含めたCDの作業に関する提案がなされたが、加盟国の同意を得られなかった。3月には中山外務大臣政務官がCDに出席し、停滞の打開と同条約交渉の早期開始を訴えた。
米露間では、モスクワ条約の下で、配備戦略核弾頭数が引き続き削減されるとともに、現在START-I(注8)後継条約について交渉が行われている。また、2008年には英仏両国もそれぞれ核軍縮への取組を表明した。
NPT未加入のインド、パキスタン(注9)及びイスラエルに対しては、引き続き、粘り強くその加入を働き掛けていく必要があり、10月の日印首脳会談、5月の日・パキスタン外相会談等の機会に働き掛けを行った。
インドに対する国際的な民生用原子力協力については、8月1日に開催された国際原子力機関(IAEA)特別理事会においてインド・IAEA保障措置協定案が承認され、9月4日から開催された原子力供給国グループ(NSG)臨時総会において、NSGガイドラインからのインドの例外化に関する「インドとの民生用原子力協力に関する声明」が採択された。日本は、NPTに加入していないインドへの原子力協力が国際的な核不拡散体制に与え得る影響、アジア最大の民主主義国家であり新興市場経済国でもあるインドの重要性、インドによる原子力の平和的利用が、地球温暖化対策に貢献し得る意義という観点を踏まえ、特に唯一の被爆国として、インドによる核実験モラトリアムの継続を重視しつつ議論に参加した。NSG臨時総会における厳しい議論・交渉の結果、インド例外化の決定は、インドの核実験モラトリアムの継続を始めとして民生用の原子力施設へのIAEA保障措置の適用、NSGガイドラインの遵守を含む厳格な輸出管理の実施等のインドのコミットメント及び行動に基づくものであることが明確にされ、また、これらを通じて、インドに対する不拡散措置が現在より強化され、インドの原子力活動の透明性が高まるとともに、国際的な核不拡散体制の外にいるインドによる更なる不拡散への取組を促す契機となると考えられたことなどから、大局的な観点からぎりぎりの判断として、日本は同声明に関するコンセンサスによる採択に加わった(注10)。
![]() 「第20回国連軍縮会議inさいたま」において歓迎の挨拶を行う柴山外務大臣政務官(8月27日、さいたま市) |
日本は核軍縮・不拡散と日本海周辺の環境汚染防止の観点から、日露非核化協力委員会を通じてロシア極東地域に残された退 役原子力潜水艦の解体支援(注11)を実施するなどしている。
大量破壊兵器、ミサイル及び関連物質等の軍縮・不拡散体制の概要
(3) |
不拡散 |
イ |
地域の不拡散問題 |
北朝鮮の核・ミサイル等をめぐる問題は、日本のみならず国際社会の平和と安全に対する重大な脅威であり、特に核問題は核兵器不拡散条約(NPT)に対する重大な挑戦である。2002年10月に北朝鮮がウラン濃縮計画の保有を認めたことを契機として、北朝鮮の核問題が深刻化(注12)し、北朝鮮によるテポドン2を含む7発の弾道ミサイルの発射(2006年7月)、核実験実施発表(同年10月)に至った。2008年においては、2007年10月の六者会合成果文書「共同声明の実施のための第二段階の措置」を受け、寧辺の三つの核施設(5MW(メガワット)実験炉、再処理工場及び核燃料棒製造施設)の無能力化活動が継続されたほか(注13)、6月には北朝鮮の核計画についての申告が提出された。7月の六者会合首席代表者会合では、朝鮮半島の非核化を検証するため、六者会合の枠組みの中に検証メカニズムを設置することで一致したが、12月の首席代表者会合においては北朝鮮との立場の違いが埋まらず、検証の具体的枠組みに関し合意は得られなかった。日本は、2005年9月の六者会合共同声明に明記された北朝鮮の「すべての核兵器と既存の核計画の放棄」に向けた措置が着実に実施されるよう、引き続き関係国と共に努力していく考えである(北朝鮮問題への対応の詳細については、第2章第1節1.「朝鮮半島」を参照)。
イランの核開発問題は、国際的な安全保障を揺るがしかねない問題であり、国際的な核不拡散体制への重大な挑戦となっている。イランは、過去約18年間にわたり、IAEAに申告せずに拡散上機微な核活動を行い、2003年以降、累次のIAEA理事会決議により、信頼回復のために濃縮関連・再処理活動の停止等を求められてきた。イランは一旦はこれに応じたものの、ウラン濃縮関連活動を再開したため、2008年末までに国連安保理は、これらの要求事項を国連憲章第7章下で義務付け、またその遵守を求める計5本の決議(注14)を採択した。2008年を通じてイランの核活動の軍事的側面の可能性に関する「疑わしい研究」の解明に向け、イランとIAEAとの間で協議が断続的に行われたが、イランの核活動の経緯はいまだ明らかになっていない点もある。イランは自らの核活動が平和目的であるとしているが、濃縮関連活動は、軍事転用を防ぐための措置が十分にとられない限り、核兵器開発能力の獲得につながりかねないとの疑念を伴うものであり、イランは、2008年を通じて、国連安保理決議に反し、濃縮関連活動を継続・拡大するなど、依然として国際社会の信頼は得られていない。日本は、イランの核開発問題を深刻に懸念しており、関係各国と緊密に協力しつつ、安保理決議の要求事項に応じ、問題の平和的・外交的解決を実現するよう、イランに対し粘り強く働き掛けている(第2章第6節「中東と北アフリカ」を参照」)。
ロ |
大量破壊兵器等の拡散防止の取組 |
日本は、不拡散体制の強化のための外交努力を行っている。
国際原子力機関(IAEA)(注15)は、原子力の平和的利用の促進と原子力の軍事的利用への転用防止を目的とする国際機関であり、日本はIAEA指定理事国(注16)としてその活動に人的・財政的貢献を行っている。IAEAの保障措置(注17)は、核物質等が兵器目的に資するような方法で利用されないよう確保するための検認制度であり、国際的核不拡散体制の中核的な措置である。日本は、より多くの国が追加議定書(注18)を締結するよう、様々な協議の場で各国に締結を求めるほか、IAEAと協力し、追加議定書締結に向けた地域セミナーへの人的・財政的支援を実施してきている。また、日本は、保障措置の効率化の観点から、「統合保障措置」(注19)がより多くの国に適用されることが重要と考えている。
輸出管理レジームとは、兵器やその関連汎用品の供給能力を持ち、かつ不拡散に同意する国々による輸出管理の協調のための枠組みであり、核兵器、生物・化学兵器、ミサイル、通常兵器のそれぞれに関する輸出管理レジームが存在する。また弾道ミサイルに関して、その開発・配備の自制などを原則とする弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのヘーグ行動規範(HCOC)(注20)がある。日本はこれらすべてに参加・貢献している(注21)。
日本はまた、「拡散に対する安全保障構想(PSI)」(注22)に積極的に参加している(注23)。日本は、PSIの発展の方向性について議論するため、5月にPSI5周年記念会合(於:ワシントン)に参加するとともに、9月には、ニュージーランドで初めて開催されたPSI海上阻止訓練に参加し、訓練の成功に貢献した(注24)。
核燃料供給保証とは、非商業的理由による核燃料の供給途絶が起こらない仕組みを構築して供給不安を解消し、もってウラン濃縮等の機微技術獲得の動機を低下させ核不拡散を促進しようとする考えであり、各国から様々な提案がなされている(注25)。
このほか、日本は、不拡散体制への理解促進と取組の強化を目指し、他国への働き掛けを行っており、2003年度からアジア不拡散協議(ASTOP)(注26)を、また、1993年度から、アジア輸出管理セミナー(注27)をそれぞれ開催するなど、拡散問題に対する地域的取組の強化を率先して進めている。
(4) |
原子力の平和的利用のための国際的な枠組み |
近年のエネルギー需要の拡大や地球温暖化問題を背景に、発電過程で温室効果ガスを排出せず、比較的安定して電力を供給できる原子力発電が再評価されており、その拡充及び新規導入を検討する国が増加している(「原子力ルネサンス」)。一方で、原子力発電に利用される技術や機材、核物質は軍事転用が可能であり、核拡散、核テロリズム及び原子力事故といった危険への対応が国際社会の大きな課題となっている。よって、原子力発電の利用には、透明性と信用の確保が不可欠である。日本は、「3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブ」の下、適切な原子力の平和的利用の支援に積極的に取り組んでおり、8月には、東南アジア諸国を対象に、「原子力発電導入に関する3Sアジア地域セミナー」をベトナムで開催した。また、多数国間の協力の枠組みを通じ3S確保の重要性を国際社会の共通認識とするための外交を展開している。
ロシア及びカザフスタンとの間で2007年からは、原子力協定締結交渉を継続して実施している。
(5) |
生物兵器、化学兵器 |
イ |
生物兵器 |
生物兵器禁止条約(BWC)(注28)は、生物兵器の開発・生産・保有等を包括的に禁止する唯一の多数国間の法的枠組みであるが、条約の実施を確保する手段に関する規定が十分でないため、条約をいかに強化するかが課題となっている。
2006年の第6回運用検討会議において、条約の強化のために、次回運用検討会議(2011年)までの年次会合プロセスが決定された。2008年は、8月の専門家会合及び12月の締約国会合で「バイオセーフティ・バイオセキュリティの向上」と「バイオ科学技術の悪用予防」について議論された。日本は、専門家会合において作業文書の提出やプレゼンテーションを行い、議論の活性化に貢献した。
ロ |
化学兵器 |
化学兵器禁止条約(CWC)(注29)は、化学兵器の生産・保有・使用等を包括的に禁止し、既存の化学兵器の全廃を定めるとともに、条約の遵守を検証制度(申告と査察)により確保するものであり、大量破壊兵器の軍縮に関する条約としては画期的な条約である。
4月には、第2回運用検討会議が開催され、今後5年にわたる活動の方向性が定められ、また、12月には、第13回締約国会議が開催され、渋谷實駐オランダ大使が議長を務めた。
日本は、締約国の国内実施措置強化及び普遍化促進(締約国数の増加)の課題に対し、主としてアジア地域諸国を対象として取り組んでおり、2008年は、カンボジア及びラオスでセミナーを開催した。また日本は、CWCに基づき、中国に遺棄された旧日本軍の化学兵器について、国内の老朽化化学兵器と同様に、廃棄義務を負っており、中国と協力しつつ、一日も早い廃棄の完了を目指して最大限の努力を行っている。
(6) |
通常兵器 |
イ |
クラスター弾(注30) |
クラスター弾の不発弾等による人道上の懸念については、特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW)の枠組みで議論されてきたが、2007年2月、ノルウェーがその枠外で国際会議を開催し、クラスター弾を禁止する国際約束を2008年中に策定する旨のオスロ宣言を発出した。その後一連の国際会議での交渉を経て、2008年5月にダブリンで開催された会議でクラスター弾に関する条約が採択され、12月にオスロで署名式が行われ、日本も条約に署名した。一方、CCWの枠組みにおけるクラスター弾に関する交渉は継続されている。
日本は、クラスター弾の人道上の問題を深刻に受け止め、これまで被害国において被害者支援を含む不発弾対策支援を実施してきた。今後はこうした支援に加え、クラスター弾の主要な生産国及び保有国がクラスター弾に関する実効的な国際約束に参加するよう、積極的な貢献を行っていく。
ロ |
小型武器 |
近年、国際社会には過剰な小型武器が存在し、大きな問題となっている。日本は、7月の国連小型武器行動計画隔年会合や、12月に国連総会で採択された決議で、議論の進展に貢献した。
また、日本は「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)諸国の小型武器管理計画」など、被害国での小型武器対策プロジェクトを支援している。
ハ |
対人地雷問題 |
日本は、国際社会全体での実効的な対人地雷の禁止と、被害国への地雷対策支援の強化を「車の両輪」として包括的な取組を推進している。前者については、より多くの国が対人地雷禁止条約(オタワ条約)(注31)を締結するように、アジア太平洋地域の未締結国を中心に働き掛けを行っている。後者については、1998年以降、地雷対策のため、30か国以上に350億円を超える支援を実施している。例えば、2008年、コンゴ民主共和国、スーダン及びチャドに対し、地雷除去及び地雷回避教育活動等のため約10億円の支援を実施した。
ニ |
武器貿易条約(ATT)構想(注32) |
2008年、日本を含む28か国の政府専門家会合で本件構想が議論された。その結果を踏まえた決議が国連総会で採択され、2009年から本格的な議論が行われる。厳格な武器移譲管理を行ってきている日本は、この構想に積極的に参加している。
(7) |
科学技術分野の国際協力 |
2008年は、科学技術と外交を連携し相互に発展させる必要性を指摘した5月の総合科学技術会議の提言も踏まえ、6月に初のG8科学技術大臣会合を開催し、また、日本と開発途上国が地球規模課題に対する共同研究を進める際のODA支援の枠組みを設けるなど、日本は「科学技術外交」の取組を始動した。
二国間では、日本は、科学技術協力協定に基づく政府間会合等を通じ、意見・情報交換や、共同研究案件を協議している(注33)。
多数国間の国際協力として、エネルギー分野では、将来のエネルギー源として期待される核融合に関し、日本は国際共同プロジェクトであるイーター(ITER、国際熱核融合実験炉)計画を各国と推進し、第2回理事会を6月に青森で主催した。
宇宙分野では、8月に宇宙基本法が施行され、新設の宇宙開発戦略本部の下で、宇宙開発利用を総合的に推進するとともに、「宇宙外交」を推進することとなった。日本は、国連宇宙空間平和利用委員会に参加し、国際的な法的枠組みづくりを進めるとともに、国際宇宙基地協力計画(ISS計画)に参加し、2008年には日本初の有人実験棟「きぼう」の中核部分を2回打ち上げた。
地球科学分野では、日本は各国と協力し、アルゴ計画(高度海洋監視システム)(注34)、統合国際深海掘削計画(IODP)、地球観測に関する政府間会合(GEO)での全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画などに取り組んでいる。
不拡散分野では、ソ連崩壊に伴う大量破壊兵器関連技術の拡散防止のための国際科学技術センター(ISTC)に参加し、旧ソ連諸国で大量破壊兵器の研究開発に従事していた研究者等の民生転換を支援している。
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(注1) | 軍縮・不拡散分野については、外務省が別途発刊する「日本の軍縮・不拡散外交」(外務省ホームページhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/gun_hakusho/index.html)を参照。 |
(注2) | 核セキュリティ:テロリスト等による核兵器の盗取や盗取された核物質を用いた核爆発装置の製造、汚い爆弾(放射性物質の発散装置)の製造等が現実とならないように講じられる措置のこと。なお、核セキュリティ確保については、本節3 .「テロの防止、根絶のための取組」を参照。 |
(注3) | 「3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブ」:3Sとは核不拡散/保障措置(Non-proliferation/Safeguards)、原子力安全(Safety)及び核セキュリティ(Security)の3要素の頭文字をとって3Sと称し、この3Sの重要性に関する意識を国際的に高め、原子力エネルギーの導入に必要な3S及び関連する基盤整備を国際協力によって支援することを目的としたイニシアティブ。 |
(注4) | 川口元外務大臣及びエバンス元オーストラリア外相が共同議長。 |
(注5) | 日本は、1994年以降毎年、核廃絶に向けた漸進的・現実的アプローチにのっとり、「全面的核廃絶」に向けた核軍縮決議案を国連総会に提出し、国際社会の圧倒的支持を得ている。2008年は、核軍縮決議案「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」を提出し、国連総会で賛成173、反対4( 米国、インド、北朝鮮、イスラエル)、棄権6の圧倒的多数(1994年以降、過去最多の賛成)の支持を得て採択された。 |
(注6) | 地下核実験を含むあらゆる「核兵器の実験的爆発又は他の核爆発」を禁止する条約。1996年国連総会にて採択。現時点では未発効。2008年末現在、批准国数148か国(署名国数180か国)。 |
(注7) | 兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT:Fissile Material Cut-off Treaty)。核兵器及びその他の核爆発装置用の核分裂性物質(プルトニウム及び高濃縮ウラン等)の生産を禁止する条約。1993年9月にクリントン米国大統領によって提案された。 |
(注8) | 「第1次戦略兵器削減条約(Strategic Arms Reduction Treaty I)」。大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)及び重爆撃機の運搬手段の総数、配備される戦略核爆弾頭数の総数等を制限する米ソ(露)間の条約。1994年12月に発効し、2001年12月に米露両国は義務の履行を完了した。条約の有効期限は発効から15年後の2009年。 |
(注9) | パキスタンでは2004年2月に「核開発の父」と呼ばれるカーン博士を含む科学者が、核関連技術の国外流出にかかわっていたことが明らかになった。これは国際社会の平和と安定、核不拡散体制を損なうものであるとともに、流出先の一つと見られている北朝鮮への流出は、日本の安全保障上の重大な懸念である。日本はパキスタンに対し、累次の機会に遺憾の意を伝えるとともに、本件に関して日本に情報を提供し、再発防止策を講ずるよう強く求めている。 |
(注10) | なお、2008年末現在、フランス、米国、ロシアの3 か国がインドとの間の民生用の原子力協力協定に署名している。 |
(注11) | 本事業は2002年6月のG8カナナスキス・サミットにおいて、大量破壊兵器及びその関連物質の拡散防止を主な目的として、首脳レベルで一致を見た「G8グローバル・パートナーシップ」の一環として実施されているもの。「希望の星」と命名されている。 |
(注12) | 2003年1月には、北朝鮮はNPTから脱退することを通告し、その後、北朝鮮は、「合意された枠組み」の下で凍結していた5MWの実験炉を再稼働させ、使用済燃料の再処理を再開した。 |
(注13) | 8月から9月にかけて、北朝鮮は、寧辺の核施設の無能力化作業を中断し、これに逆行する対応をとり始めたが、米国によるテロ支援国家指定の解除を受けて三つの核施設( 5MW実験炉、再処理工場及び核燃料棒製造施設)の無能力化作業を再開。 |
(注14) | 国連安保理決議第1696号(2006年7月31日採択)、決議第1737号(2006年12月23日採択)、決議第1747号(2007年3月24日採択)、決議第1803号(2008年3月3日採択)及び決議第1835号(2008年9月27日採択)を指す。決議第1696、1737、1747、1803号は、国連憲章第7 章下で、イランに対し、すべての濃縮関連・再処理活動及び重水関連計画の停止、未解決の問題の解決等のため、IAEAに対するアクセス及び協力を提供することを義務付け、また、追加議定書の迅速な締結を要請している。さらに決議第1835号において、イランに対しこれら4 本の決議の義務を遅滞なく遵守するよう求めている。5本の決議のうち、決議第1737、1747、1803号は、核関連物資の対イラン禁輸やイランの核・ミサイル関連個人・団体の資産凍結等の憲章第7 章41条下のイランに対する制裁措置を含んでいる。 |
(注15) | 1957年に設立、事務局はウィーンに所在。最高意思決定機関は全加盟国で構成される総会。また総会に対して責任を負うことを条件に、35か国で構成される理事会が、IAEAの任務を遂行する権限を有する実質的な意思決定機関として機能している。2008年12月現在145か国が加盟。 |
(注16) | IAEA理事会で指定される13か国で、日本を始めG8等の原子力先進国のこと。 |
(注17) | IAEAが各国と個別に締結した保障措置協定に基づき、「査察」等の手段により検認活動を行うもの。NPT締約国たる非核兵器国は、NPT第3条に基づき、IAEAとの間で保障措置協定を締結し、国内のすべての核物質について保障措置を受け入れること(包括的保障措置)が求められている。 |
(注18) | 包括的保障措置協定に追加してIAEAとの間で各国が締結する議定書。この締結により、IAEAに申告すべき原子力活動情報の範囲が拡大されるなど、検認活動が強化される。2008年12月現在、88か国が締結。 |
(注19) | 包括的保障措置協定及び追加議定書双方の下で利用可能な保障措置手段を最適に組み合わせ、査察回数制限などにより保障措置の効率性を図るもの。追加議定書の実施を通じ、「未申告の原子力活動及び核物質の不存在」の結論がIAEAから得られた国を対象とする。これまでこの「結論」が出された国は、2008年のIAEA保障措置報告書によれば、日本を含め47か国。日本については2004年以降同「結論」が維持されている。 |
(注20) | HCOC(Hague Code of Conduct against Ballistic Missile Proliferation):HCOCは、2002年に採択された弾道ミサイル不拡散についての初めての国際的政治合意(法的拘束力は持たない)。2008年末現在130か国が参加。 |
(注21) | 例えば、日本は在ウィーン国際機関代表部が原子力供給国グループ(NSG)の事務局機能を引き受けている。 |
(注22) | PSI (Proliferation Security Initiative):PSIは、大量破壊兵器等の拡散阻止のため各国が国際法・各国国内法の範囲内で共同してとり得る措置を検討・実施するための取組で、2003年5月に発足。各国は、活動の基本原則を定めた「阻止原則宣言」を支持するなどの方法で参加表明を行う。活動に際しては、特定の事態や対象国を想定はしない。2008年12月現在90か国以上が、同宣言を支持し、PSIの活動に参加・協力している。 |
(注23) | 日本主催のPSI 海上阻止訓練としては、これまで2004年10月に相模湾沖及び横須賀港内において「Team Samurai 04」を、2007年10月に伊豆大島沖及び横浜港、横須賀港にて「Pacific Shield 07」を主催。このほか、関連会合及び他国主催訓練にも積極的に参加している。 |
(注24) | 2008年9月12日から19日にかけ、ニュージーランドのオークランドにてPSI海上阻止訓練「MARU」が開催された(「MARU」はマオリ語で「防ぐ」の意味)。日本からは、外務省のほか、海上自衛隊の航空機や警察・税関の検査チーム等が参加。 |
(注25) | 日本も2006年9月のIAEA総会において、「IAEA核燃料供給登録システム」に関する提案を行った。 |
(注26) | ASTOP(Asian Senior-level Talks on Non-Proliferation):ASEAN10か国、日、中、韓、米、豪、加、NZが参加し、アジアにおける不拡散体制の強化に関する諸問題について議論を行うもの。最近では第5 回会合を2008年4月に開催。 |
(注27) | アジア諸国政府の輸出管理担当者、民間企業、研究者等を日本に招待して、日本を始めとする輸出管理先進国の取組を紹介するとともに、アジア地域における輸出管理強化の意義を共有するもの。最近では2009年2月に第16回セミナーを開催。 |
(注28) | 1975年3月発効。生物兵器の開発、生産、貯蔵、取得及び保有を包括的に禁止するとともに、保有する生物兵器の廃棄義務を規定する。締約国数は162か国(2008年12月現在)。 |
(注29) | 1997年4月発効。締約国数は185か国(2008年12月現在)。 |
(注30) | 一般的に、航空機等から投下、発射される容器の中に複数の子弾を内蔵した弾薬のこと。不発弾による民間人の被害が問題となっている。 |
(注31) | 対人地雷の使用、生産等を禁止し貯蔵地雷の廃棄、埋設地雷の除去等を義務付ける条約で、1999年3月に発効した。2008年12月現在の締約国数は、日本を含め156か国。 |
(注32) | ATT:Arms Trade Treaty。武器の輸出、輸入及び移譲を管理し、「責任ある」貿易を確保する法的拘束力のある国際共通基準を作成しようとする構想。 |
(注33) | 2008年には、中国、フィンランド、オーストラリア、イスラエルとの間で会合を開催した。 |
(注34) | 海面から水深2,000mまでの水温・塩分データを観測・通報するフロートを全世界で3,000個以上展開する海洋監視システムの構築計画。 |