第3章 分野別に見た外交 |
(1)日本のODA実績と地域別取組状況 (イ)日本のODA実績 2004年の日本のODA実績は、対前年比0.3%増の約89億555万ドルとなり、前年に引き続きOECDの開発援助委員会(DAC)諸国中、米国に次いで第2位の援助国となった。そのうち、二国間ODAは対前年比6.6%減の約59億1,719万ドル、国際機関を通じたODAは同17.4%増の約29億8,836万ドルとなり、二国間ODAが全体の約66.4%を占めている。 地域別実績としては、円借款が着実に返済されていることもありアジアへの援助が対前年比21.1%減の約25億4,456万ドル(二国間ODAの約42.3%)となった一方、アフリカは同22.1%増の約6億4,697万ドル(同10.9%)、イラクへの復興支援が増加したこともあり中東は同147.5%増の約10億3,087万ドル(同17.3%)となっている。
▼国連ミレニアム開発目標:2004年の状況
(ロ)アジア地域への支援 ODA大綱が明記しているように、日本と密接な関係を有し、日本の安全と繁栄に大きな影響を及ぼし得るアジアは、ODAの重点地域として主要な地位を占めてきた。日本は、東アジア地域を中心に、ODAによる経済インフラ、政策・制度整備、人材育成等の分野の支援を進めるとともに、民間投資や貿易の活性化を図り、ODAと投資・貿易を有機的に連携させることにより同地域のめざましい発展に貢献してきた。 ASEANとの関係では、メコン地域等の後発地域の開発、テロ・海賊・災害等の国境を越える問題、また最近の経済連携強化を踏まえ、経済構造改革、投資環境整備についてもODAを活用して協力してきている。2004年12月に発生したスマトラ沖大地震及びインド洋津波災害に際し、ASEAN主催の緊急首脳会議で日本が表明した5億ドルの無償支援は、被災国及び国際社会から高い評価を受けた。さらに、4月のアジア・アフリカ首脳会議では、防災・災害復興分野において、アジア・アフリカ地域を中心として今後5年間で25億ドル以上を支援することを表明した。また、鳥及び新型インフルエンザ対策として、12月のASEAN+3首脳会議で、アジア諸国に対する総額1.35億ドルの支援策を表明したのに加え、2006年1月17日から18日の北京における「鳥及び新型インフルエンザに関する国際プレッジング会合」では、世界銀行及びアジア開発銀行に設けた信託基金を通じて2,000万ドルをめどとして協力することを表明した。また、同月12日から13日には、アジア諸国、ドナー諸国、国際機関等を招待して、東京で新型インフルエンザの早期対応に関する国際会議を世界保健機関(WHO)と共催した。日本は、今後も地域の問題を解決し、域内の開発格差是正やASEAN統合に向けた支援を継続していく考えである。 南アジアとの関係では、インドに対しては、円借款を中心に支援を行ってきた(2004年度は1,345億円)。パキスタンに対しては、同国の地政学的重要性、テロとの闘い、日本との二国間関係などを総合的に考慮して1998年の核実験以来停止していた同国への新規円借款の供与を再開した。また、10月の同国での地震に際しては、国際緊急援助隊を派遣するとともに、総額約2億ドルの支援を表明した。4か国のLDC (注3) が位置し、5億人以上の貧困層を抱える南アジア地域は、MDGs達成の上でもアフリカと並び最大の課題を抱える地域であり、日本は貧困問題を重視し域内の安定と発展に向けた動きを支援していく。 (ハ)アフリカ地域への支援 アフリカは、深刻な貧困、紛争、飢餓、HIV/エイズ等の感染症、累積債務等の多くの課題を抱え、2000年の国連ミレニアム・サミット以降、国際社会の高い関心を集めている。日本は、このような潮流に先駆け、1990年代初頭から、アフリカ開発会議(TICAD) (参照)プロセスを通じて、アフリカ諸国のオーナーシップとそれを支援する国際社会のパートナーシップの重要性を提唱してきた。 4月のアジア・アフリカ首脳会議では、2008年のTICADⅣ開催、今後3年間でアフリカ向けODAを倍増し引き続きその中心を贈与とすること、さらに、アジア・アフリカ間の協力強化のため、アジアの生産性運動 (注5) の知見をアフリカに伝播するための支援を行うとともに、今後4年間で1万人の人材育成支援を行うこと等を表明した。 また、7月のG8グレンイーグルズ・サミットでは、アフリカで経済成長を通じた貧困削減を達成するために、農業生産性を高める「緑の革命」の実現に向けた支援や、農村の生計向上と自立を包括的に支援する「アフリカン・ビレッジ・イニシアティブ」、貿易・投資を促進させるため5年間で最大12億ドルに及ぶ、民間セクター開発のためのアフリカ開発銀行との共同イニシアティブ(EPSA for Africa)の実施等を発表した。 今後も、日本の経済協力によって成長を遂げたアジア諸国の経験をアフリカに伝播するアジア・アフリカ協力を重視し、経済成長に不可欠な農業開発、社会・経済インフラ整備、貿易・投資の促進、紛争地域における人道・復興支援等アフリカ諸国への支援を推進していく考えである。
▼DAC主要国のODA実績の推移 |
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