第3章 分野別に見た外交


(2)分野別取組状況

(イ)分野別イニシアティブの策定

 2005年、日本はMDGs達成に向けた分野別の取組を推進するため、新たに下記の3つのイニシアティブを打ち出した (注6)

(i)防災協力イニシアティブ(1月)

 スマトラ沖大地震及びインド洋津波災害は、自然災害の脅威と防災対策の重要性に対する国際的な認識を新たにした。日本には、地震、洪水・土砂災害、火山噴火、干ばつ等に関する知見・技術が蓄積されていることから、防災分野でのODAを活用した国際的な支援を一層強化すべく、その基本方針や具体的取組に関する「防災協力イニシアティブ」を1月に神戸で開催された国連世界防災会議で発表した。

(ii)ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ(3月)

 MDGs達成のためには、すべての目標においてジェンダーの視点に考慮して活動することが重要であると認識されている。日本としても、被援助国におけるジェンダー平等と女性のエンパワメントに向けた取組に対して、ODAを通じた支援を強化すべく、3月の第49回国連婦人の地位委員会で、「ジェンダーと開発イニシアティブ」を発表した。同イニシアティブでは、ODAのあらゆる段階においてジェンダーの視点を盛り込むための基本的アプローチを述べ、ODA大綱の重点課題である4分野 (注7) におけるジェンダーの扱いにつき、日本の具体的取組が示されている。

(iii)「保健と開発」に関するイニシアティブ(HDI)(6月)

 貧困削減には、MDGsに掲げられた8つの目標のうち、3つを占める保健分野の取組が特に重要である。日本はこれら3つの目標達成に向けた取組を「『保健と開発』に関するイニシアティブ」にまとめ、6月に東京で開催された「保健関連MDGsに関するアジア太平洋ハイレベル・フォーラム」で発表した。同イニシアティブは保健指標の改善に直接貢献する取組のみならず、日本の経験をいかした分野横断的な取組と保健医療制度の強化によって保健分野全体を改善することを目指している。小泉総理大臣は、G8グレンイーグルズ・サミットに向けて、同イニシアティブに基づき今後5年間で総額50億ドルをめどとした協力 (注8) を行うと表明した。

(ロ)テロ対策への取組

 日本は、国際的なテロを防止するためには幅広い分野において国際社会が一致団結し、息の長い取組を継続することが重要と考え、国際社会によるテロとの闘いに積極的に参加してきている。特に、日本の権益が集中し、政治、経済、社会全般にわたり関係の深い東南アジア地域については、この地域におけるテロや海賊などの国境を越える犯罪を防止し、安全及び安定を確保することは日本自身の安定と繁栄にとっても重要であり、ODAを活用しつつ重点的に支援を実施している。

 例えば、2004年5月のバリ島におけるテロ事件を受け、テロ対策強化の一環としてインドネシアの主要空港や港湾の保安強化のため、X線機材、金属探知機、港湾における監視カメラの供与などを内容とする7.47億円の無償資金協力の実施を決定した。さらに、2005年5月には、インドネシア国家警察の能力強化のための捜査・鑑識など関連機材の整備に対して、総額4.49億円の無償資金協力の供与を決定した。

 なお、2006年度からは無償資金協力に新たな枠組みを設計し、テロ対策支援の取組を強化していく。




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