第3章 分野別に見た外交 |
【国際社会における不拡散への取組】
(1)輸出管理レジームをはじめとする不拡散への取組
大量破壊兵器やその運搬手段であるミサイルが多くの国家主体やテロリスト等の手に渡ったり、大量破壊兵器等の開発にも転用可能な資機材・技術がそれらを軍事利用しようとする主体の手に渡ることは、国際社会の平和と安全に対する脅威であり、このような拡散を阻止し、規制する必要がある。このために国際社会は、NPT、CWC、BWCといった国際条約に基づく不拡散体制を構築してきた。
同時に、大量破壊兵器等に転用される恐れのある資機材・技術を主として供給している国々による国際的な輸出管理協力の枠組み(原子力供給国グループ(NSG:原子力関係)(注47)、オーストラリア・グループ(AG:生物・化学兵器関係)(注48)
、ミサイル技術管理レジーム(MTCR:ミサイル関係)(注49)、ワッセナー・アレンジメント(WA:通常兵器関係)(注50)も、不拡散体制の維持・強化という点で重要な役割を演じている。ミサイルに関して、日本は、2002年11月に採択された「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)」(注51)を遵守するとともに、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国等に参加を働きかけるなど、その実効性の確立と普遍化に積極的に貢献している。また、国連においては、2004年4月、ブッシュ米大統領が採択を呼びかけた不拡散に関する安保理決議1540(注52)が全会一致で採択された。安保理決議1540は、非国家主体が大量破壊兵器等を取得、開発、輸送または使用することを防ぐために国連加盟国が必要な国内法の整備を行うことなどを求めるものである。日本は、同決議は、大量破壊兵器がテロリスト等の手中に落ちることを防ぐ上で重要な意味であると認識しており、その効果的な実施を確保するために、同決議に基づき設置された1540委員会(注53)の作業に積極的に貢献していく考えである。また、2004年10月、日本自身の同決議の履行状況を安保理に報告している。ミサイルに関しては、ミサイル問題を多角的に検討するための国連ミサイル専門家パネルが2004年に再設置されたことを受け、日本も政府専門家を参加させ、ミサイル問題への取組の重要性につき積極的に発言するなどの積極的な貢献を行った。
(2)拡散に対する安全保障構想(PSI)
こうした国際的取組の存在は極めて重要であるが、関連条約を遵守しない国が一部あるなど、大量破壊兵器等の拡散を完全には防止できていないのが現状である。このような従来の不拡散体制の抜け穴を埋めるべく、2003年に「拡散に対する安全保障構想(PSI)」(注54)が日本を含む11か国によって立ち上げられた。2004年には、6月の発足一周年記念総会において、ロシアが新たに参加するなど、着実に参加国・協力国の範囲が拡大したほか、各種訓練や合同訓練が精力的に行われた。日本は、従来行ってきた大量破壊兵器等の不拡散に関する取組に沿ったものとしてPSIに積極的に参加してきており、10月には、相模湾沖合及び横須賀港内にて海上阻止訓練(名称:「チーム・サムライ04」)を主催した。この訓練にはアジア大洋州地域からは初参加となるカンボジア、フィリピン、ニュージーランド、タイを含めた22か国が参加し、これを通じて各国による連携の強化及びPSIに対する理解の促進が得られた。
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(3)アジア地域における不拡散体制の強化
大量破壊兵器等の不拡散を実効的に確保するためには、各国が輸送段階、輸出入管理、国内管理等のすべての過程において不拡散のための取組を強化する必要がある。特にアジア諸国がこのように包括的なアプローチで不拡散体制の強化を図ることは、日本ひいてはアジア地域全体の安全保障のために重要であるとの認識から、日本は、様々な機会を捉え、アジア諸国の理解促進のための努力を行うとともに、国際的な不拡散の枠組みへの参加を促してきている。2003年11月には、アジアにおける不拡散問題を包括的に話し合う初の局長級の協議である「アジア不拡散協議(ASTOP)」を東京にて開催した。これにより、参加国の間で、大量破壊兵器等の拡散防止が国際社会の平和と安全にとって極めて重要であるとの認識を共有するとともに、PSIの重要性についても、アジア諸国より一定の理解を得た。これを受け、日本はアジアにおける不拡散体制をさらに強化するための取組を行った。具体的には、2004年2月に日・ASEAN不拡散協力ミッションをASEAN10か国に派遣し、同年5月には東南アジア5か国より海上法執行者を招きアジア輸出管理セミナーを東京において開催した。また、2005年2月には、第2回ASTOPを東京で開催するなど、引き続きアジアにおける不拡散の取組の強化に向けた努力を行ってきている。
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