「拡散に対する安全保障構想」(PSI)とは? 「拡散に対する安全保障構想」は英語ではPSI(Proliferation Security Initiative)と言い、2003年5月に日本を含む11か国※1 により立ち上げられた不拡散体制を強化するための新しい取組です。これは従来の不拡散体制を補って大量破壊兵器やミサイル、及びその開発にも用いられる物質の拡散をより一層効果的に阻止することにつながるものとして期待されています。  従来の不拡散体制の下では、各国は自国の領域内で自らの国内法に基づいて国内管理、輸出管理などの措置を講じ、大量破壊兵器やミサイルなどの拡散を防止してきました。これらの措置は、水際で拡散を食い止めるための取組であり、今後もその重要性は変わりません。それに対し、PSIは、特に輸送段階での拡散阻止を重視し、自国の領域を越える範囲においても、各国が共同して行動することによって、既存の国際法や各国の国内法の範囲内で可能となる措置があることに焦点を当てている点が新しいと言えます。具体的には、各種の会合や合同訓練を通じて、PSI参加国の関係当局間の連携の強化を図ったり、PSIの下で行われる拡散阻止活動の法的な側面などを検討しています。  2004年10月には、日本が海上阻止訓練「チーム・サムライ04」を主催し、米国、オーストラリア、フランス、日本の艦船などが、大量破壊兵器関連物資の拡散を輸送段階で阻止するための訓練を行いました。この訓練で想定した状況は次のとおりです。 「公海上で米国籍の船舶から日本国籍の船舶へ、サリン関連物資と疑われる貨物の積み替えが始められていた。この積み替えを阻止するため、あらかじめ日本国籍の容疑船舶の捜索差押許可状の発布を受けた海上保安庁の巡視船が接近したところ、両容疑船舶は逃走した。日本国籍の容疑船舶は、公海上で海上保安庁巡視船が停船させ、同庁の部隊が容疑物資を捜索・差押えした後、最寄りの港において容疑者を身柄付きで送致した。一方、米国籍の容疑船舶は、日本からの情報に基づき、米国および米国の要請を受けたオーストラリアとフランスの船舶が追跡した。米国が容疑船舶を公海上で停船させた後、米国の要請に基いてオーストラリアとフランスとともに共同捜索を行い、目的の容疑物資を押収した。」  このように、PSIの下では、関係国が共同して行動することによって、国際法および各国の国内法の範囲内で大量破壊兵器などの拡散をより機能的かつ実効的に防ぐことが可能になるとの考えの下、日本はその発展に積極的に協力しています。 ※1 日本、米国、英国、イタリア、オランダ、オーストラリア、フランス、ドイツ、スペイン、ポーランド、ポルトガル。