第2章 地域別に見た外交


【日本の取組】
<TICADプロセス>
 冷戦終結後、先進諸国が「援助疲れ」(注5)に直面し、国際社会のアフリカに対する関心が低下する中、アフリカは急速に進展するグローバル化の潮流から取り残されようとしていた。こうした状況の重大さをいち早く認識した日本は、国際社会のアフリカ問題への関心を再喚起するために、国連、アフリカのためのグローバル連合(GCA)(注6)とともに1993年にTICADを開催した。その後、国連開発計画(UNDP)を共催者に迎え、1998年にTICADIIを、さらには世界銀行を共催者に加えて、TICADプロセスの10周年となる2003年にTICADIIIを開催した。TICADプロセスは、アフリカ自身の自助努力(オーナーシップ)と国際社会のパートナーシップ(連携)を基本哲学とし、アジアの開発経験に基づく南南協力(アジア・アフリカ協力)の推進などをその特徴として、国際社会におけるアフリカ問題への取組をリードし、NEPADの成立などアフリカ自身の新しい動きの推進に大きく貢献した。

<TICADIIIフォローアップ>
 TICADは5年に1度開催される会議にとどまらず、継続するプロセスとして様々な活動を実施している。TICADIIIのフォローアップの観点からは、「平和の定着」、「貿易・投資の促進」、「南南協力(アジア・アフリカ協力)」に焦点を当てつつ、積極的にフォローアップを進めている。また、「人間中心の開発」に焦点を当て、小泉純一郎総理大臣がTICADIIIで実施を表明した、保健医療、水、教育、食糧等の分野で今後5年間に10億ドルを目標とする無償資金協力については、TICADIII後の1年間で約4億ドルの支援を決定するなど、着実に実施している。

<アジア・アフリカ間の貿易・投資促進>
 2004年、日本は特にアジア・アフリカ間の貿易・投資促進をTICADプロセスにおける重点目標の一つとして取り組んだ。アジア・アフリカ間の貿易・投資は、世界経済全体に占める割合は少ないものの、例えばアフリカからアジアへの輸出額は10年間で2倍以上に拡大しているなど、将来の成長分野として注目を集めている。このような流れを更に促進すべく、日本はTICADプロセスにおいて様々な取組を実施してきた。4月には、アジア・アフリカ両地域の民間企業同士の商談の場を提供する「第3回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム」をセネガルのダカールで開催した。同フォーラムには、アフリカ15か国から120社、アジア6か国から37社が参加し、活発な商談が行われ、総額約3,600万ドル相当の59件の取引が合意された。5月には、マレーシアのクアラルンプールにおいて、「アジア・アフリカ官民合同フォーラム」を開催し、両地域の政府関係者及びビジネス関係者の参加を得て、アフリカ開発のための民間セクター開発の重要性及びその推進における政府の役割について幅広い議論を行った。



▲TICADアジア・アフリカ貿易投資会議開会式で挨拶する小泉総理大臣(11月 提供:内閣広報室)


 このような取組を踏まえ、2004年11月には、東京で「TICADアジア・アフリカ貿易投資会議(AATIC)」を開催した。同会議には78か国及び24の国際・地域機関の貿易・投資担当者、民間セクターの代表等700名以上が参加したことに加え、アフリカからは、オバサンジョ・ナイジェリア大統領、キバキ・ケニア大統領、さらには10名を超える閣僚級の要人も参加するなど、同会議に対する国際社会の期待の大きさが示された。これに対して、日本も小泉総理大臣が開会式で基調演説を行ない、町村孝外務大臣、中川昭一経済産業大臣、川口順子総理大臣補佐官、緒方貞子国際協力機構(JICA)理事長が参加するなど、日本が積極的にアジア・アフリカの貿易・投資の促進に取り組む姿勢を示した。日本は、同会議において適切な政策、商品開発、中小企業育成、民間企業の社会貢献という4つのコンセプトに基づいた「アジア・アフリカ間の貿易・投資促進のための日本の提案」を表明し、会議をリードした。また、アフリカ自身の開発プログラムである「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」との間で、「アジア・アフリカ貿易投資促進のための政策に関するTICAD・NEPAD共同枠組」(注7)に署名し、今後の更なる協力を確認した。

<平和の定着の促進>
 日本は、開発の基盤としての「平和の定着」を重視し、紛争地域の和平推進、切れ目のない復興支援のための包括的な取組を行っている。
 具体的にはアンゴラ、シエラレオネ、コンゴ民主共和国、リベリア等における平和の定着や、人間の安全保障の確保に向けてDDR(元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰)、難民支援等を二国間または国際機関を通じて実施してきている。アフリカ各地で展開する国連PKOミッションに対しても、その費用の約20%を負担する等大きな支援を実施し、またアフリカ連合(AU)、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)(注8)南部アフリカ開発共同体(SADC)(注9)等とも協力し紛争解決をはじめ地域の平和と安定のために積極的に取り組んでいる。

<日・アフリカ間の対話交流の促進>
 2004年には、2003年に引き続き、政府・民間レベルを含む活発な日・アフリカ間の対話・交流が行われた。8月にはンシバンビ・ウガンダ首相が鈴木善幸元総理大臣の葬儀参列のため訪日した。10月にはコナレAU委員長が来日し、日本とAUの関係強化策につき幅広い意見交換を行い、2005年よりハイレベルで政策対話を実施することに合意した。11月に開催された「TICADアジア・アフリカ貿易投資会議」の際には、AU議長国であり、アフリカのリーダー国であるナイジェリアのオバサンジョ大統領及び、国内改革を推進し、積極的に近隣諸国の和平仲介に取組むケニアのキバキ大統領が訪日した。12月にはムカパ・タンザニア大統領も訪日した。また、外相レベルでも、3月にムショカ・ケニア外相(当時)、3月にキクウェテ・タンザニア外相、11月にムワクウェレ・ケニア外相、12月にラマザニ・コンゴ民主共和国外相が来日した。
 日本からも活発なアフリカ訪問が行われた。4月に森喜朗特派大使(前総理大臣)、杉浦正健特派大使顧問が南アフリカ共和国新大統領就任式典及び民主化10周年式典に出席し、また、9月には扇千景参議院議長一行が同国を公式訪問し、併せて全アフリカ議会設立記念式典にも出席した。田中和外務大臣政務官(当時;1月、9月)、及び河井克行大臣政務官(12月)も積極的にアフリカ諸国訪問を行い、日本の対アフリカ外交政策の浸透を図るとともに、二国間関係の更なる強化を図った。議員レベルでも、2003年に発足した日本・AU友好議員連盟所属議員によるアフリカ訪問が活発に行われ、2004年の1年間で16名の議員が5グループに分かれて17か国を訪問した。
 また、9月には日・ナイジェリア間、10月には日・南アフリカ間の二国間ハイレベル政策協議が行われ、幅広い分野での協力関係が推進された。そのほか、5月のアフリカン・フェスタ2004、11月の「TICADアジア・アフリカ貿易投資会議」のサイド・イベントなどを通じ、日・アフリカ間の市民レベルでも活発な交流が行われた。



▲コナレ・アフリカ連合(AU)委員長と会談する町村外務大臣(10月)



▲オバサンジョ・ナイジェリア大統領との会談に臨む小泉総理大臣(11月 提供:内閣広報室)

 



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