第3章 分野別に見た外交 

【日本理解促進のための具体的プログラム】

  <海外広報>
 海外に対する広報活動を展開するにあたっては、各地域の対日関心の程度、関心の対象等を把握し、広報する内容や効果的な媒体を検討し、きめ細かい広報活動を展開している。また、対日認識をより正確に把握するために、対日世論・報道の調査・分析も実施している。
 在外公館では、講演会、シンポジウム等の広報事業を実施している。特に、知的交流が重要との観点から、日本の有識者等を海外に派遣し、講演を行う講師派遣事業を重視している。また、青少年層に対する広報も重点分野としている。さらに、諸外国のテレビ局関係者を日本に招待し、日本に関連する番組の取材や放映を支援しているほか、世論の形成に大きな影響力を有する有識者(オピニオン・リーダー)や報道関係者を招待し、日本の実情を紹介している。
 外国の報道関係者への情報提供や働きかけについては、日本駐在の特派員に対して随時行っているほか、政府要人の外国訪問や外国要人の日本訪問等の機会にも幅広く行っている。また、日本に関する誤解や偏見に基づく海外の報道に対する反論も行っている。
 外務省は、効果的な広報を実施するために、日本海呼称問題、イラク復興支援に関するパンフレット等の印刷物資料や、日本を多様な切り口で紹介する「ジャパン・ビデオ・トピックス」といった映像資料等、様々な広報媒体を活用してきている。インターネットも海外広報の主要な媒体となってきており、「外務省ホームページ(英語版)」は、日本の外交政策に関する情報を、また、「Web Japan」(http://web-japan.org)は、2004年4月1日より、日本の一般事情を、それぞれ英語(一部韓国語、中国語、多言語)で日々発信することとなっている。また、多くの在外公館でも独自のホームページを開設して、現地に密接した情報を現地の言語や英語で発信している。

  <諸外国における日本についての論調>
 イラク情勢の推移が世界のメディアの関心を集める中、日本の対応についても、イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の派遣を含め、日本の対イラク支援に関し世界各地で高い関心を集めた。「ニューヨーク・タイムズ」等の米国主要紙は、賛否両論の世論の中で政府が敢えて自衛隊派遣を決断したことや、「小切手外交」以上のことを望む声が日本国内にあることを紹介した。また、中東地域諸国では、自衛隊派遣が人道復興支援目的であることを含め事実関係を中心に広く報道された。アル・ジャジーラ衛星TV局やアル・アラビーヤ衛星TV局が小泉総理大臣、川口外務大臣及び石破防衛庁長官のインタビューを放映し、この中で、総理及び両大臣は、中東地域全体に向けて自衛隊派遣が人道復興支援であることを説明した。
 北朝鮮の核開発疑惑についても高い関心が払われ、日本に関しては、拉致・ミサイル問題を含めた包括的な問題解決が必要であるとの日本政府の立場について広く報道された。拉致問題については、小泉総理大臣の訪米に際して、ブッシュ大統領が拉致問題を非難した発言を「ワシントン・ポスト」が報じた。また、北東アジア情勢の緊張の高まりが日本の安全保障政策に与える影響についても、各国のメディアが注目し、「人民日報」は、有事法制の成立の背景には北朝鮮の核問題があり、日本社会が保守化し、軍事力を強化し「普通の国」となる風潮が広がった、と報じた。また、「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、北朝鮮の核計画が阻止されなければ、世界は日本のより大きな軍事的役割を受け入れざるを得ないかも知れない、と社説で論じた。
 第3回アフリカ開発会議(TICADIII)や日・ASEAN特別首脳会議等、日本で開催された主要な国際会議については、それぞれ特にアフリカ諸国、東南アジア諸国で強い関心を呼んだ。この他にも、政府の構造改革政策と景気の動向、衆議院総選挙に見られた日本の政治の新たな展開、若い世代を中心に日本のポップカルチャーに対する人気が世界各地で高まっていること等が取り上げられ、日本の姿が多面的に報道された。

  <日本プロモーション>
 日本の魅力をブランドとして海外に積極的に発信し、日本のイメージ向上を図るための施策は、海外のより多くの人々を日本に惹きつけるだけでなく、日本の経済、社会、文化の活性化にもつながることが期待されている。特に、近年、日本のアニメ、映画、漫画、日本食といったいわゆるサブ・カルチャーも、欧米やアジアにおいて好まれるようになってきている。

  (1)主要国における大型文化キャンペーン
 日本の対外イメージを重点的に向上させる企画として、外交関係樹立50周年といった外交関係上の節目等の特別な機会を迎える国や地域との間で、文化交流事業を集中的に行う「周年事業」を行っている。官民一体で相手国国民に日本の魅力を印象づけ、親日感を飛躍的に向上させる機会となっているほか、現地の日本企業と連携することで進出企業のイメージ向上にも繋がり得る。また、首脳を含め要人の参加を得る機会が多く、日本への関心を高め、観光を促す効果も極めて高いといえる。
 2003年は、特にASEAN(東南アジア諸国連合)及びロシアとの間で大型の周年事業を行った。「日本ASEAN交流年2003」では、21世紀の日本とASEAN諸国が「共に歩み、共に進む」率直なパートナーシップを築いていくとの考えの下、一年間で700件以上の記念事業を様々な分野で行った。文化の分野では、ポップミュージック、伝統舞踊、オーケストラ等の分野で11か国すべての一流アーティストが参加した共同公演が日本やASEANの諸国で実施され、アジアの多様性と共通性を演出した。また、「ロシアにおける日本文化フェスティバル2003」は、首都モスクワ、建都300周年を迎えた古都サンクトペテルブルクのみならず、極東地域を含むロシア全土で、4月の和太鼓の公演を皮切りに、歌舞伎、現代演劇、武道等120件以上の多彩な日本文化紹介、文化交流事業が、官民の協力の下、2004年3月まで繰り広げられた。
 今後の主な周年事業の対象地域は、米国、欧州、韓国及び中東地域である。2004年に「日米交流150周年」及びレバノン・ヨルダンとの国交樹立50周年を核とした「中東交流事業」が、2005年にEU25か国を対象にした「日・EU市民交流年」や日韓基本条約締結40周年を記念した「日韓友情年2005」が主要な周年事業として予定されている。

 
 日・ASEAN交流はこれから始まる
Column

 日本ASEAN交流年文化事業の一環として、タイ、ミャンマー、ベトナム(ホーチミン、ハノイ)の3か国4都市で「六華仙コンサート(*)」を開催した。目的が交流であるから、音楽家と舞台で交流をしたいと思い、事前にそれら4か所に民族楽器の名手を推薦して欲しいと申し入れてもらった。
 どの国も協力的で、実力ある若手の素晴らしい音楽家を紹介するというので、訪問2か月前に打合せに出向いた。共演曲目を選んで編曲の打合せをしたのだが、楽譜がある曲も無い曲もあり、そのうえ民謡は国別に音律が異なるので、両者共に不安を残した打合せとなった。
 ここからは専門的な話なので省略するが、編曲は特種な記譜法で楽譜を作り、六華仙メンバーも念入りに練習を重ねた上で出発した。
 最初の訪問国ミャンマーでは、音楽の教授で国を代表する竪琴奏者であったが、音合わせの時は苦虫を噛みしめたような顔を崩さず、心配そうに調弦を始めた。ところが音が出た瞬間に両者の心は合体したのか、何のよどみもなく演奏は進行し美しい響きの中で終曲した。
 演奏が終わり暫しの静寂の後、誰からともなく拍手が起こり、しばらくは教授との笑顔の交歓が続いた。六華仙のメンバーは、誰もが初めて受けた感動であったと、後に私に感想を伝えてきた。教授は通訳を介して、「こんなに美しい伴奏で演奏したのは、私の音楽人生で初めてです。」と私の手を握りしめてくれた。
 その後のタイ、ハノイ、ホーチミンにおいても同じような劇的な音合わせが続いたが、何よりも嬉しかったのは、どの演奏家とも仲良くなれたことであった。
 11月にはこれらの演奏家を日本に招き、東京、筑波、府中、佐久の4か所で演奏会を開き、約10日間行動を共にした。それにより全員が真の友人となれたが、おかげでお別れ会は涙・涙・涙の会となった。
 六華仙メンバーと各国演奏家は今でも頻繁にメール交換をしている。私にも来るが、メールの最後には必ず「日本のお父さんへ」と書かれている。
執筆:神津 善行(作曲家)


  (2)観光振興(「魅力的な日本」の発信)
 現在年間約500万人の訪日外国人旅行者数を、2010年には1,000万人とすべく、政府を挙げて観光振興に取り組んでいる。外務省としても、外国人旅行者数の増加が諸外国民の対日理解を増進するとの意義を踏まえ、「魅力的な日本」を発信することを通じて積極的に観光振興に協力している。
 外務省が全世界の在外公館等を通じて実施している一般広報事業、文化交流事業は、日本の伝統文化、現代文化、先進技術、美しい自然など、様々な日本の魅力を諸外国民に発信することにより、諸外国民の親日感を醸成し訪日意欲を増進させることにも繋がる。
 さらに、外務省は、米国、韓国、中国等の重点市場において現地推進会を立ち上げる等、官民挙げての訪日促進キャンペーンであるビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)に積極的に参画している。具体的には、在外公館等が、通常の広報文化事業と連携して観光関連資料を配布したり、ホームページにおける観光関連情報の発出を強化する等観光誘致のための様々な広報事業を実施している。映像関係では、各国のテレビ局関係者を招聘し、観光番組の作成及び放映を支援する事業、全国の観光地を紹介する映像資料を作成し、各国テレビ局に提供するとともに、衛星を通じてアジア太平洋地域に向けて放映する事業を行っている。

  (3)愛・地球博の推進
 2005年3月から愛知県で開催される「愛・地球博」(正式名称:2005年日本国際博覧会)は、21世紀最初に開催される国際博覧会であり、「自然の叡智」をテーマに人類が直面する諸問題に対して地球規模で知恵を出し合うことにより、自然と共生する新たな社会のあり方を提示する試みである。同博覧会では、日本と世界各国とが「地球大交流」を通じて相互理解を図ることを目指しており、国際交流の上で非常に重要な国際イベントと位置付けられる。
 2003年には、多くの国々の参加を得るため、日本の在外公館をはじめとして、日本全体として積極的な参加招請活動を行った結果、日本で開催される国際博覧会としては最多の130を超える国・国際機関から参加の意向が表明されている。

 

 愛・地球博とは?


 皆さんは2005年3月25日から9月25日まで愛知県名古屋東部丘陵(長久手町・豊田市・瀬戸市)において「2005年日本国際博覧会(愛・地球博)」が開催されることをご存知でしょうか?
 日本では1970年の大阪万博以来4回の国際博覧会が開催されていますが、愛・地球博は、大阪万博と同様の大規模な万博で、既に130を超える国・国際機関が参加を表明しています。
 愛・地球博は、現在国際社会の大きな課題となっている、環境と開発の両立や、異なる文明間の相互理解の促進に取り組むため、統一テーマである「自然の叡智」を縦糸に、文化交流を横糸に構成されることになっています。日本では古来より、自然と対立するのではなく、自然を上手く生活の中に取り入れる伝統がありますが、この博覧会では、各国の有する豊かな自然や、自然と共存する様々な知恵が示されることでしょう。このようなメッセージを、来場の皆さんに楽しんでもらえるよう、各国とも展示内容に大変工夫をこらしています。
 また、愛・地球博では、多くの文化的なイベントも企画されています。このような機会に、日本人が様々な文化と触れ合えるだけでなく、日本が世界的な文化交流の大きな舞台になります。
 会場となる愛知県はもともとからくり人形にみられる様に「ものづくり」に定評がありますが、名古屋市内から博覧会会場までを、日本初の実用リニアモーターカーで結ぶ計画を立てており、博覧会開催前には中部国際空港も完成する予定です。また、県内各市町村と参加各国とを組み合わせて、地域の独創性を生かした草の根交流を行おうという「一市町村一国フレンドシップ事業」を発表するなど、地元から博覧会を盛り上げる動きも始まっています。
 2004年は博覧会開催に向けて沢山の事前イベントが予定されていますので、もしお近くで愛・地球博のマスコットを見かけたら、「ちょこっと寄ったってちょ!」

 
「ちょこっと寄ったってちょ!」イメージキャラクターのモリゾーとキッコロ

▼「ちょこっと寄ったってちょ!」イメージキャラクターのモリゾーとキッコロ

 

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