第3章 分野別に見た外交 

第5節 海外広報と文化交流

【諸外国の国民の理解と日本のイメージの向上】
 海外広報と文化交流は、国際社会に対して日本の外交政策や諸事情、文化の魅力を広く発信することにより、諸外国国民の日本に対する理解と信頼を高め、外交政策を推進する上での環境を整備することを目的としている。特に、近年、グローバル化の進展により、政府以外の多くの組織や個人が様々な形で外交に関与するようになり、政府として日本の外交努力やその背景にある考え方を自国民のみならず各国の国民に説明し、理解を得る必要性が増している。例えば、政府は、米国同時多発テロや最近のイラク情勢を踏まえ、アフガニスタンやイラクをめぐる日本の外交努力の対外説明に力を入れているほか、文化の分野での協力、アラブとの対話など幅広い活動を通じて日本と中東地域との相互理解に努めている。欧米諸国でも、マスメディアを含む通信手段の発達により、諸外国の国民世論に自国の魅力を用いて直接働きかけるパブリック・ディプロマシー(対世論外交、あるいは対市民外交)が注目され、実践されている。
 外交においては、伝統的に軍事力や経済力といった相手の政策変更を促すことができる力(ハード・パワー)が重視されてきたが、近年になって、その国がもつ伝統的価値観や文化の魅力で相手を惹きつける力、いわゆるソフト・パワーが、国のイメージを高め、外交力の向上と広義の安全保障につながるとの認識が広がっている。また、国際文化交流には、海外の頭脳や才能を日本に招き入れることを通じて日本社会を活性化させたり、対日イメージの向上が日本製品の販売促進につながるといった経済的な効果も期待できる。このような意義に鑑み、日本は、様々な人物交流、文化・芸術交流、文明間対話を含む知的交流、さらには開発途上国に対する文化協力を通じ、中長期的観点から諸外国における日本のイメージ、親日感の向上に努めている。


 

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