前頁  次頁


第5章 > 2 外交実施体制の整備

2 外交実施体制の整備



【総論】
 現在の国際社会では、グローバル化が一層進展し、国際社会における相互依存関係が深化してきており、それに伴って、外務省が取り扱う業務量も増大の一途をたどっている。このように質、量の両面で増大、複雑化を続けている外交課題に、外務省がこれまで以上に能動的かつ迅速に対応していくためには、外交実施体制の整備を図ることが急務である。2001年、外務省はこうした課題にも取り組んできた。
 

【情報の収集・分析体制の強化】
 現在の流動的な国際情勢の中で、日本が国益を守り強靱な外交を行っていくためには、的確な情報収集と情勢分析を行うことが不可欠である。特に、9月に発生した米国同時多発テロにより、情報収集・分析体制を強化する必要性はますます高まっている。外務省は、従来から、在外公館を中心とする緊密なネットワークを構築し、このネットワークを活用した幅広い分野での情報収集及び国際情勢の総合的分析に取り組んでいるが、今日の複雑かつ流動的な国際情勢を踏まえ、情報収集・分析機能の一層の強化に努めることにしている。また、情報収集の手段を多角化する一環として、日本政府が2002年度を目途に導入する予定の情報収集衛星を有効に活用するため、現在、衛星画像を活用するための研究を進めているほか、同衛星の運用にあたる内閣衛星情報センターに人材を派遣するなど、政府としての取組に協力している。

【予算、機構・定員面での努力】
 予算面においては、2000年度予算の九州・沖縄サミットの開催に関連する経費が減額となったこともあり、当初予算額においては前年度比1.4%減(108億円減)の7634億円を計上した。その中で以下の二つの柱を掲げ、現下の国際情勢や外務省としての優先課題に対応できるような予算配分に努めた。
 外交施策の充実強化(国際社会全体の21世紀の課題、アジア太平洋外交の更 なる推進、ODAにおける一層の改革推進、国際文化交流の推進)
 外交実施体制の強化(定員等の増強、機構の拡充、在外公館の機能強化、情報・通信及び連絡網の整備)
 次に、機構面では、きめ細かな地域外交を推進することが必要であるとの視点から、特に、日本としてその取組を充実し、強化していくことが必要である対アフリカ外交を推進するため、4月、アフリカ審議官を新設した。また、欧州における情報収集の拠点としての重要性に鑑み、これまで在チェコ大使館が兼轄していたスロバキアに大使館(実館)を開設した。これにより2001年度末における日本政府の在外公館(実館)の数は大使館116、総領事館66及び政府代表部6の合計188となった。
 定員の増加については、政府の早急な対応が求められている危機管理・安全体制の強化の面に重点を置いて取り組んできている。この結果、厳しい予算・定員事情の中で、2001年度には外務本省19人、在外公館21人の合計40人の増員を行い、定員数は合計5329人(外務本省2084人、在外公館3245人)となった。外務省としては定員の増加を図る一方、定員の有効活用及び事務合理化の努力を行ってきている。


 国民人口1万人当たりに占める外務省職員数

国民人口1万人当たりに占める外務省職員数



【情報化の推進】
 情報化の推進については、外務本省内と一部在外公館内にローカル・エリア・ネットワーク(LAN)(注)を構築し、相互に専用のネットワークを介して接続している。今後はセキュリティを確保しつつすべての在外公館でLANが使用できるよう整備を進める。また、インターネット上では、外務省ホームページを更に拡充する。これらを含め外務行政の総合的かつ計画的な情報化を推進し、国民等への行政サービスの向上、情報処理機能の強化を図るための努力を行っている。

【緊急事態への対応体制】
 海外における天災や大事故、ハイジャックやテロ、誘拐事件、さらには暴動、クーデター、争乱等は、多数の日本人の生命にかかわる事態であり、このような緊急事態に備え外務省及び在外公館は一体となって適切な対応をとるよう全力で取り組んでいる。
 9月11日に発生した米国同時多発テロに際しては、本省及び関係在外公館においてテロ発生後速やかに対策本部を立ち上げ、邦人の安否確認、情報収集・分析等の初動措置をとるとともに、総理官邸対策本部と緊密な連絡を取りつつ、24時間体制での危機管理、情報把握、邦人への情報提供、関係国への協力要請等対応に万全を期すべく努力した(第1章2(1)及び(3)を参照)。
 

【情報公開の推進】
 4月には「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)」が施行され、外務省に対し2001年末までに約2000件の開示請求が寄せられた。外務省としては、その活動を国民に説明する責務を全うするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に役立てるとの同法の目的を踏まえ、保護すべき日本の安全、他国等との信頼関係、対外交渉上の利益等に配慮しつつ、開示請求に適切に対応することにしている。
 また、1976年以来、戦後の外交記録のうち、原則として作成後30年を経たものを自主的に公開し、外交史料館において閲覧に供してきている。事項ごとに一括して自主的に公開していくこの制度については、情報公開法に基づく情報公開との連携を図るなど、今後も更に充実させていく考えである。

【日本企業の海外における活動支援の強化】
  外務省は、日本企業が海外でビジネスを行うにあたってより良好な環境を整備するために、大使館や総領事館に「企業支援窓口」を設け、駐在国における公正な待遇の確保のための働きかけ、また、任国要人と日系企業関係者との出会いの場や関連情報の提供といった活動を行っている。また、外国に進出する日本企業が少しでも円滑に経済活動を遂行できるようにするために、社会保障協定の締結など法的・制度的基盤整備のための活動も行っている。
 例えば、2月、在デュッセルドルフ総領事館では、デュッセルドルフ及び近郊の日系企業約450社(在留邦人数は約7000人)を対象に、生活環境や行政当局等に対する要望事項についてアンケート調査を実施した。その際要望があった各事項の実現のため、総領事館がとりまとめをしてドイツの州・市当局と日本人社会共同の八つの作業部会を設置し協議を重ねた結果、滞在許可・労働許可申請手続の簡素化など制度面での改善や、苦情・反響はがきの活用によるタクシー利用環境の改善など、多くの成果を上げることができた。

前頁  次頁