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第4章 国際交流と広報活動


1 国際文化交流の推進



【総論】
 今日の国際社会においては、情報通信技術(IT)の発展等に伴い、国際世論がごく短期間のうちに形成されることがあるなど、情報が以前にも増して各国の政策決定に大きな影響を持ち始めている。日本が効果的な外交を展開していくためには、諸外国の日本に対する正しい理解を増進していくことは極めて重要であり、文化交流はこのための重要な手段である。日本は、一方的に日本文化を海外に紹介するだけではなく、日本における外国文化の紹介を支援することにより、日本国民の対外理解の増進についても積極的に取り組んでいる。さらには、開発途上国が自国の有形あるいは無形の文化遺産を保存することを援助することにより、文化的多様性の維持、発展に貢献している。2001年には、文明間の対話国連年に積極的に貢献するとともに、英国等における大型事業の実施、韓国や中国との大型事業実施のための準備、青少年交流、開発途上国への文化面での協力などを行ってきた。

【文明間の対話国連年への取組】
 民族や文化の違いによる紛争を防止するためには、異なる文化・文明や価値観を寛容の精神をもって尊重し、相互に理解し合うことが不可欠である。日本は、従来から文明間の対話を真の相互理解に貢献するものであると認識し、イスラムとの文明対話を柱とする河野イニシアチブを始めとして、文明間の対話を促進するための努力を実施してきている。特に、2001年は、国連によって文明間の対話国連年に指定された年であり、文明間の対話に関する国際会議への政府代表や専門家の派遣、国連大学主催による文明間の対話国際会議への協力等積極的な貢献を行った。また、日本は、2001年の国連総会特別会合において、21世紀における文明間の対話を促進するための目標及び行動計画を定めた「文明間の対話のためのグローバル・アジェンダ」を共同提案し、同特別会合において採択された。

【大型文化事業、ワールドカップ・サッカー大会に向けての取組】
 日本は、民間団体と協力しつつ、在外公館及び国際交流基金を通じて、各国との文化交流事業を行っている。2001年に実施された特に大規模なものとしては、英国全土において約1年にわたって開催されたJapan 2001があり、様々な草の根交流事業を始め、松竹大歌舞伎近松座公演など、多岐にわたる日本文化紹介事業を実施した。
 2002年は、日韓国民交流年であり、また、韓国との間で、ワールドカップ・サッカー大会を共催する年でもある。これらの行事を契機として友好関係を一層増進させるため、草の根レベルを含めた幅広い分野での交流事業を計画している。また、ワールドカップ・サッカー大会の機会を捉え、諸外国において日本を紹介するための積極的な広報活動にも努めている。これに加え、2002年には、国交正常化30周年を迎える中国との間で、中国において「日本年」、日本において「中国年」の諸活動が行われる予定であり、さらには、国交樹立50周年等を迎えるインドを始めとする南アジア諸国との間で大型文化事業を行うことになっており、その準備を着実に進めてきている。

【青少年交流・教育】
 国際社会の明日を担う若い世代の交流は、将来の日本と各国との相互理解を強固なものとする上で非常に重要であり、日本は青少年交流や教育の分野における取組を強化している。設立15周年を迎えたJETプログラム(注)は、2000年に民間有識者による基本問題検討会が設置され、2001年11月に報告書がまとめられた。今後は、この報告書の提言も踏まえ、より充実した交流を推進していく考えである。また、日本は、世界中で150を超える元日本留学生会に対する支援や、ホームページの日本留学総合ガイド等を通じた外国での日本留学に関する情報提供などの留学生交流の支援を強化し、日本で学ぶ経験を通して将来の日本の理解者を育成するための交流を促進している。
 日本の文化や社会に対する幅広い理解を育てるためには、海外での日本語学習や日本研究の促進も重要であり、日本は、日本研究機関の助成、日本語教育専門家の派遣・海外日本語教師の研修、教材寄贈・日本語能力試験の実施などを通じ、海外での日本語教育の振興に努めてきている。


 海外の日本語教育の推移

海外の日本語教育の推移



【文化協力】
 開発途上国においても、文化活動の振興に対する関心が高まっており、日本は、文化の面からの国造りの努力に対し積極的に支援を実施している。文化無償協力はこうした支援の大きな柱であり、開発途上国に対し、文化・教育活動のための機材を提供している。2000年度からは、非政府組織(NGO)支援等、小規模できめ細やかな協力を行う草の根文化無償及び文化遺産の周辺環境整備といった大型案件にも対応可能な文化遺産無償を導入し、一層きめ細やかな開発途上国への文化協力を行っている。
 日本は、従来から、国連教育科学文化機関(UNESCO)に設置した信託基金を通じ、世界の有形、無形の文化遺産の保存に積極的に協力してきている。有形文化遺産に対する日本の協力としては、アンコール遺跡の保存・修復が代表的な例である。また、無形文化遺産の保存に関しては、2001年5月に、UNESCOが類のない価値を有すると認めた無形遺産を世界無形遺産傑作宣言として発表した。このようなUNESCOの活動を踏まえ、日本は、無形遺産の保存に今度とも一層協力していく予定である。なお、2001年、UNESCO加盟50周年を迎え、7月に皇太子及び同妃殿下の御臨席を得て記念式典が行われた。


 皇太子同妃両殿下の御臨席を得て行われたユネスコ加盟50周年記念式典において挨拶する松浦ユネスコ事務局長(7月)

皇太子同妃両殿下の御臨席を得て行われたユネスコ加盟50周年記念式典において挨拶する松浦ユネスコ事務局長(7月)



 JET参加者招致人数の推移と参加者の累計

JET参加者招致人数の推移と参加者の累計


(column8参照)


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