第1章 > 6 > (4) 地球温暖化問題への取組
【総論】
化石燃料の燃焼等により発生する二酸化炭素等の温室効果ガスは、地球の温暖化をもたらし、洪水や干ばつの頻度の増大や海面上昇による土地の消失など、地球の気候や生態系に様々な影響を及ぼすと予測されている。このような気候変動に関する問題は、人類の生存に対する脅威になりうる重要な問題であり、国際社会は、気候変動問題に関する多数国間条約を策定し、その実施のための取組を行ってきている。日本は、国際社会が今後とも安定を維持し、一層の繁栄を享受していくためには、地球規模での実効的な温暖化対策が不可欠であると認識しており、京都議定書の2002年発効に向け、国際社会と協調しつつ、積極的に取り組んできている。
気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP 6)再開会合でカラフ・インドネシア環境大臣と言葉を交わす川口環境大臣及び植竹外務副大臣(7月)

【具体的な取組】
1992年、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的とした気候変動枠組条約が作成され、1994年に発効した。1997年、京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)においては、先進国及び市場経済移行国に対し、温室効果ガスの排出を抑制し、削減すること(注1)を義務づけた京都議定書が採択された。その後、京都議定書の実施に向けた交渉が続けられ、2000年11月にハーグで開催された第6回締約国会議(COP6)では、京都議定書の2002年発効を目指し、開発途上国に対する支援の問題(途上国支援問題)や、排出量取引などの京都メカニズム(注2)、締約国が約束を履行しなかった場合の取扱い(遵守制度)、森林等による温室効果ガスの吸収等の取扱い(吸収源)などの京都議定書を実施するために必要な具体的ルール等について議論が行われたが、合意には至らなかった。このため、COP6はいったん中断され、2001年7月にCOP6再開会合がボンで開催されることになった。
COP6再開会合の開催に先立つ2001年3月、米国は、開発途上国が温室効果ガスの排出量を一定数値に抑制し、削減する義務を負っていないこと、米国経済に対する悪影響があること等を理由に京都議定書への不支持を表明した。これに対し日本は、こうした米国の動きが今後の交渉に与える影響を懸念しており、2002年までの京都議定書の発効を目指し、京都議定書を関係国が締結することが可能となるよう交渉に全力を尽くすことを表明するとともに、その際には、世界の二酸化炭素排出量の約4分の1を占める米国が京都議定書を締結することが極めて重要であり、京都議定書の発効に向けた交渉に米国が建設的に参加するよう、あらゆる機会を活用して働きかけを行うことを表明した。このような考えに基づき、3月30日に森総理大臣からブッシュ大統領宛に書簡を発出し、その後、河野外務大臣や川口環境大臣等の関係閣僚が米国に対して積極的な働きかけを行った。4月には、荒木外務副大臣を団長とする政府代表団を与党代表団と共に米国に派遣して日本の懸念を伝え、米国が交渉に参加し、日本と共に積極的に合意を模索するよう働きかけを行った。その後、6月の日米外相会談や日米首脳会談でも京都議定書の問題を取り上げ、日米首脳会談では、日米双方の共通の基盤及び気候変動に対する共通の行動を取るための分野を探求するため、日米政府間ハイレベル協議の開催を決定した。これを受け、7月に、第1回の日米ハイレベル協議が行われ、9月には、ハイレベル協議にて合意された市場メカニズム、科学技術、途上国問題につき協議を行うため日米事務レベル協議が開催された。また、7月のジェノバ・サミットでは、京都議定書及びその締結について、G8内での意見の不一致があるものの、共通の目標を達成するため、集中的に協力していくことになった。
米国では、閣僚級による気候変動に関する政策の見直しが行われていたが、この作業が終了しないまま、7月にCOP6再開会合が開催されることになった。COP6再開会合では、京都メカニズム、遵守制度、吸収源及び途上国支援問題という京都議定書の主要点について、閣僚レベルで議論が行われ、いわゆる中核的要素に関する基本的合意(ボン合意)が得られた。さらに、10月から11月にかけて、マラケシュにおいて開催された第7回締約国会議(COP7)では、ボン合意に基づき、京都議定書の実施にかかわるルールが決定された。この結果、京都メカニズムについては、一定の制約はあるものの、柔軟かつ幅広い利用ができ、実際に機能しうるルールが形成され、吸収源に関しては、日本にとって必要な吸収量を可能とする上限値が正式に確保された。また、途上国支援問題では、開発途上国への協力を強化するため、特別気候変動基金、最貧国基金及び京都議定書適応基金の設立が正式に合意された。
日本は、COP7での合意を受け、地球温暖化対策推進本部を設置し、京都議定書の2002年締結に向けた準備を本格的に開始することを決定した。同時に、地球温暖化対策の実効性を確保するためには、すべての国が温室効果ガスの削減に努めることが必須であり、すべての国が一つのルールの下で行動することを目標に、米国の建設的な対応を引き続き求めるとともに、開発途上国を含めた国際的ルールが構築されるよう、最大限の努力を傾けていくこともあわせて決定した。
気候変動に関する国際的枠組み

日本の主な温暖化対策措置(2001年12月現在)

気候変動枠組条約/京都議定書をめぐる国際交渉の主な動き
