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第1節 政治・安全保障分野 |
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(1)総論
日本が位置するアジア太平洋地域においては、朝鮮半島で緊張緩和に向けた動きがあるなど、積極的な側面も見られる一方で、民族や宗教等、複雑で多様な要因を背景とした地域紛争の発生、大量破壊兵器やミサイルの拡散の進行等、依然として不透明、不確実な要素が多く残されている。 このような安全保障環境の下、日本は引き続き三つの柱からなる安全保障政策-日米安全保障体制の堅持、適切な防衛力の整備、日本を取り巻く国際環境の安定を確保するための外交努力-を推進している。 日米安全保障体制については、次項で詳述する。 防衛力整備については、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという基本理念に従い、節度ある防衛力整備に努めている。この基本方針にのっとり、99年11月に決定された防衛大綱の下、2000年12月には、新しい中期防衛力整備計画(2001年から2005年度)が、前中期防衛力整備計画(96年から2000年度)に引き続き、継続的かつ計画的に防衛力を整備するため、安全保障会議及び閣議で決定された。 日本の平和と繁栄は、アジア太平洋地域、ひいては世界全体の平和と繁栄と密接不可分の関係にあり、様々なレベルでの外交努力を積み重ねることが重要である。このような考えの下、日本は、地域の安定を図っていくための二国間ないし多国間の協力、各国との信頼醸成に向けた政治・安全保障対話及び協力、軍備管理・軍縮及び不拡散体制の強化、紛争予防への取組や国連平和維持活動(PKO)への参画等を通じた地域紛争への取組、域内各国の経済発展への支援・協力を通じた地域の安定性の増大等の面で、引き続き積極的な役割を果たしていく必要がある。 (2)日米安全保障体制 【日米安全保障体制の意義】 日米安保条約に基づく日米安保体制は、日本及び極東に平和と繁栄をもたらしただけでなく、アジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みとして有効に機能してきている。このような日米安保条約の役割は国民の大多数により支持されている。 アジア太平洋地域の情勢は肯定的な側面も見られる一方で、この地域に依然として不安定性、不確実性が存在していると言わざるを得ない。このような状況の下、日本が自らの自衛力のみでは日本の安全が脅かされるようなあらゆる事態に対処できない以上、自由と民主主義という基本的価値を共有し最も信頼できるパートナーである米国との安保条約を維持し、その抑止力の下で日本の安全を確保することが必要である。 日米同盟が、この地域の平和と安定を維持する上で極めて重要な役割を果たしていることは9月にニュー・ヨークで開催された日米安保協議委員会(「2+2」会合)における共同発表においても再確認された。 政府としては、以上の認識に立ち、今後とも日米安保体制の堅持を安全保障政策の重要な柱の一つとしていく考えである。 【新たな「日米防衛協力のための指針」の実効性の確保】 「日米防衛協力のための指針」は、平素及び緊急事態に際して、より効果的かつ信頼性のある日米協力を行うための堅固な基礎を構築することを目的とするものである。このような「指針」及びその下での取組により、日米防衛協力を一層充実させることが可能となることから、「指針」の実効性の確保は日米安保体制の信頼性を向上させていく上で重要である。 「指針」の実効性確保に関しては、99年に「周辺事態に際して日本の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」(周辺事態安全確保法)等が成立・承認を見て、その際に別途立法措置をとることとされた船舶検査活動についても、11月、「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律」が成立した。これにより、「指針」の実効性を確保するために国会で審議されていた周辺事態対応のための法整備が完了した。また、米国との間で協議を進めた結果、9月の「2+2」会合(日米安保協議委員会)において、調整メカニズム(注)が構築され、緊急事態における日米間の活動の調整の場が設置された。
従来より実施してきている平素における計画についての検討作業については、日本に対する武力攻撃に際しての共同作戦計画及び周辺事態に際しての相互協力計画についての検討作業につき、関係省庁及び米国とも調整しながら、引き続き取り組んでいく等、「指針」の実効性確保に努めていく。 【在日米軍駐留関連経費】 政府は、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保していくことが極めて重要であるとの観点から、地位協定の範囲内で、土地の借料、提供施設整備費(FIP)等を負担しているほか、87年度以降、特別協定を締結して、労務費、光熱水料及び訓練移転費を負担してきた。 7月22日の日米首脳会談で、2001年4月以降につき、基本的にそれまでの枠組みを維持しつつ、一定の節約・合理化を行うことが確認された。具体的には、新たな特別協定の下でもそれまでの旧協定と同様の項目(労務費、光熱水料等及び訓練移転費)を負担することとする一方で、労務費については上限の労働者数の据え置き、光熱水料等については、施設・区域外の米軍住宅分の光熱水料等を負担しないこととするとともに、現行の上限調達量を引き下げること等で日米間で基本的に意見の一致をみた(2000年度予算ベースで約33億円の負担減)。その後、更に詳細を詰めた上で、9月11日の日米安保協議委員会(「2+2」会合)の際に河野外務大臣とオルブライト国務長官の間で新たな特別協定の署名が行われ、同協定は11月17日に国会で承認された。 【技術・装備面での日米の防衛協力】 日米の防衛技術交流を更に進めることは、日米安保体制の効果的な運用を確保する上で重要な課題である。現在、先進鋼技術、戦闘車両用セラミック・エンジン、アイセーフ・レーザー・レーダー、ACESⅡ射出座席、先進ハイブリッド推進技術、浅海域音響技術、野戦砲用高安全性発射薬の7件につき共同研究・改修が進められている。 冷戦終結後、核を始めとする大量破壊兵器や弾道ミサイルは拡散しており、弾道ミサイル防衛(BMD)は、専守防衛を旨とする日本の防衛政策上、重要な課題である。政府は99年度から海上配備型上層システム(NTWD)を対象として米国との間でBMDに関する共同技術研究を実施している。 【在日米軍に関する諸問題】 在日米軍の活動が施設・区域の周辺住民に与える影響をいかに小さくするかという問題は、日米安保体制を円滑に運用していく上で大きな課題である。米国側も、在日米軍の駐留にとって施設・区域周辺の住民の理解と支持が不可欠であることを十分認識しており、9月の日米安保協議委員会(「2+2」会合)の際の共同発表等様々な機会において、駐留米軍が地元住民と「良き隣人」関係を築くことの重要性を明らかにしている。このような認識に基づき、日米両国は、緊密に協力し、在日米軍の円滑な活動を確保するとともに、地元社会に対する種々の影響を軽減するために様々な措置に取り組んでいる。 特に、日米両国政府は、在日米軍の施設・区域が集中している沖縄県民の負担を軽減することが極めて重要であるとの認識に立ち、96年12月に取りまとめた「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」最終報告の着実な実施に向け取り組んでいる。同報告に盛り込まれた事項については、訓練及び運用方法の調整や地位協定の運用の改善に関する措置のほとんどが既に実施に移されているほか、土地の返還についても、楚辺通信所や読谷補助飛行場につき返還の見通し(2005年)がついており、最終的には、沖縄における米軍専用施設・区域の約21%に当たる約5000ヘクタールが返還される予定である。日米両国政府は、7月22日の日米首脳会談でも一致した通り、引き続き協力しSACO最終報告の着実な実施を図っていく。 普天間飛行場の返還については、99年12月の閣議決定「普天間飛行場の移設に係る政府方針」を踏まえ、基本計画の策定に向け、代替施設協議会において地元自治体との間で協議するとともに、先般の「2+2」会合で再開が合意された普天間実施委員会(FIG)等において日米間でも緊密な協議を進めており、移設の早期実現に政府として全力で取り組んでいる。 また、政府は、沖縄における米軍の施設・区域に係る問題等や米軍施設・区域のもたらす経済社会上の負担の解消、長年の歴史的経緯やその結果としての地域格差を念頭に置いて、沖縄の経済社会の振興に取り組んでいる。上記の閣議決定においては、(A)普天間飛行場の移設先及び周辺地域の振興、(B)沖縄県北部地域の振興、(C)駐留軍用地跡地利用の促進及び円滑化等についても盛り込まれており、政府を挙げて、確実な実施を図ることとしている。 在日米軍施設・区域に係る環境問題については、9月の「2+2」会合において「環境原則に関する共同発表」を発出し、日米間の協力と協議を強化していくことへのコミットメントを閣僚レベルの政治的意思として表明した。今後、この共同発表を踏まえ、日米協議を強化し、在日米軍の環境管理基準の定期的見直し、情報交換の強化等を通じ環境問題に関する日米間の協議・協力の強化に取り組むこととなる。 (3)地域の安全保障環境を向上させるための取組 日本が位置するアジア太平洋地域では、政治・経済体制、経済発展段階、さらには文化的、民族的な多様性、明確で一元化された脅威対象の不在等を背景に、欧州における北大西洋条約機構(NATO)のような多国間による集団防衛的な安全保障機構が発達せず、米国を中核とした二国間の安全保障取決めの積み重ねを基軸として地域の安定が維持されてきた。現在もこのような安全保障構造に基本的な変化はないが、ASEAN地域フォーラム(ARF)等の地域協力の枠組みの整備及び強化といった動きが着実に進められている。日本は、地域における米国の存在と関与を前提とした上で、二国間及びARF等の多国間の対話の枠組みを重層的に整備し、域内の相互信頼関係を高めるための安全保障対話や防衛交流を進展させること等により、日本を取り巻く安定した安全保障環境の整備に取り組んでいる。 2000年、日本は、小渕総理大臣の東南アジア訪問、森総理大臣の米国、韓国、南アジア4か国訪問、ASEAN+3(日中韓)首脳会議、日・ASEAN首脳会議、アジア欧州会合(ASEM)への参加、米国、中国、韓国、ロシア首脳の日本訪問など、地域の国々との間で域内対話を緊密に行った。また、アジア太平洋地域における全域的な政治・安全保障に関する対話及び協力の場であるARF等を通じて各国間の信頼醸成に努めてきた。さらに、地域諸国との間で二国間の安全保障対話・防衛交流を推進している。これらに加え、今後とも中長期的な観点から北東アジア地域の平和と安定について議論するための適切な枠組みを模索していくことが重要である。 ARFにおいては、(A)信頼醸成の促進、(B)予防外交の進展、(C)紛争へのアプローチの充実という3段階のプロセスに沿って漸進的に対話と協力を進めていくことになっており、これまでも国防白書の発行、国防政策ペーパーの提出、国連平和維持活動(PKO)や災害救助等に関する会合の開催等各種信頼醸成措置が実施されている。また、信頼醸成と予防外交の重複部分として、例えば、ARFの議長の役割の強化について議論が行われているほか、本年初めて、参加各国が自国の地域の安全保障情勢認識に関して作成し、ARF議長国が取りまとめた「安全保障に関するARF年次概観」が刊行された。さらにARFの第2段階と位置付けられている予防外交に関し、その概念と原則について議論も行われている。 2000年7月にバンコクで開催された第7回閣僚会合においては、北朝鮮が初めてARFに参加した。北朝鮮がARFへの参加を通じ、域内諸国との対話の機会を増大させ、責任ある一員として国際社会に参加していくことは、ARFの目的に資するものであり、アジア太平洋地域の平和と安定の観点からも望ましいものといえる。同閣僚会合においては、多くの参加国より北朝鮮のARF参加を歓迎する旨の発言がなされた。また、北朝鮮を交えた形で朝鮮半島情勢を始めとするアジア太平洋地域の政治・安全保障問題について意見交換が行われ、南北首脳会談及び北朝鮮の国際社会との関係改善を評価するとともに、北朝鮮の更に前向きな動きへの期待が表明されたほか、地域の安全保障にとって重大な課題となっている大量破壊兵器とその運搬手段等の拡散への対処についても率直な意見交換が行われた。また、ARFの将来の方向性については、ARFの議長の役割の強化や予防外交の概念と原則につき、今後更に議論を行っていくことで一致した。このほか、小型武器の不法取引等の「国境を越える犯罪」についてのARFとしての取組についても議論が行われた。 日本は、99年7月から2000年7月までの間、ISG(Inter-sessional Support Group)会合(閣僚会合と閣僚会合との間の1年間に開催される実務レベル会合)において、シンガポールと共に共同議長を務め、ARFにおける議論を進める上で積極的な役割を果たした。このISG会合においては、ARFにおける予防外交の在り方につき議論が行われたほか、朝鮮半島情勢や南シナ海における領有権問題、小型武器の不法取引等の国境を越える犯罪について意見の交換が行われた。 先に述べたような特性を有するアジア太平洋地域において、域内の安全保障環境を向上させるためには、二国間・多国間の対話や協力の枠組みを重層的に整備かつ強化していくことが現実的で適切な方策である。このような取組を通じて、この地域における安全保障分野における協力関係は漸進的に進展していくものと考えられ、各国が長期的に安定したアジア太平洋地域を実現していくために具体的な努力を継続していくことが期待される。 |
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(1)総論
世紀の転換点においても、国際社会には種々の不安定要因が存在している。特に、20世紀最後の10年間は、国家間の紛争のみならず、一国内の紛争が国際的な注目を集めた。また、紛争に用いられる手段も、核兵器等の大量破壊兵器や、その運搬手段であるミサイルの拡散が進み、さらには紛争の主要な手段である小型武器への取組の重要性が指摘されている(第2章第1節2.(3)参照)。 このような中、紛争予防(第2章第1節2.(2)参照)や国際平和協力(第2章第1節2.(4)参照)の重要性が改めて認識されている。また、テロの問題(第2章第1節2.(5)参照)や紛争等の結果生じる難民問題(第2章第1節2.(6)参照)が世界の平和と安定に影響を与え、また、個人の生命、安全、尊厳を脅かすものとして注目されている。 2000年においては、米国を中心とした中東和平プロセスへの取組、コソヴォ問題への取組、東チモールの国造りと復興、さらにはアフリカにおける紛争への取組等が行われた。世界全体の安定と繁栄を得る上で、このような地域紛争・問題に対する国際社会の継続した取組が必要不可欠である。そして、国際社会の平和と安定に依存している日本は、このような国際社会の取組に積極的に参画していく必要がある。 (2)紛争予防 近年、国際社会においては、世界の紛争を終結させる「紛争解決」だけでなく、紛争の原因を事前に摘み取り、紛争が起きた場合にも、これが拡大することを防ぎつつ、早期に終結に導き、停戦合意が成立した場合には、社会の安定を図るなどして紛争の再発を防止するという包括的な「紛争予防」の重要性が広く認識されるようになってきている。 2000年は、国際社会の様々な場で「紛争予防」についての議論が深められた1年であり、日本はG8議長国としてこうした議論をリードする役割を果たした。 99年12月にベルリンで開催された紛争予防G8外相特別会合において、G8として紛争予防への具体的な取組を検討することを決定したことを踏まえて、2000年7月の九州・沖縄サミット及びG8宮崎外相会合において、日本は、議長国として「紛争予防のためのG8宮崎イニシアチブ」を取りまとめた。この「宮崎イニシアチブ」では、小型武器、紛争と開発、ダイヤモンドの不正取引、紛争下の児童、国際文民警察の五つの具体的分野を取り上げ、国際機関、地域機関、国家、非政府組織(NGO)といった主体がいかに協調して紛争予防に取り組むべきかを検討した上で、G8としての具体的取組の第一歩を記した。 特に「小型武器」及び「紛争と開発」の二つの分野では日本の取組は顕著である。「小型武器」の分野では、「宮崎イニシアチブ」の中で、G8として初めて、他国に対する侵略や抑圧に使用される明白なおそれのある場合には小型武器の輸出を許可しないことを宣言したが、さらに日本は、独自の貢献として、国連小型武器基金に200万ドルをめどとした拠出を行うことを表明した。また、日本は、2001年7月に開催される小型武器国連会議の成功に向けて、その準備に積極的にイニシアチブを発揮している。 「紛争と開発」の分野では、「アクション・フロム・ジャパン:紛争と開発に関する日本からの行動」と題する政策を発表した。この政策は、紛争予防の各段階における援助を強化するとともに、紛争予防の重要な主体の一つであるNGOとの連携を深め、支援を強化する上での行動指針を打ち出したものである。 武装勢力等の資金調達の手段として、高価値の天然資源の不正取引があることに着目し、G8はダイヤモンドの不正取引の防止に着手した。また、その他の国際社会の取組でも、2000年には紛争地産ダイヤモンドに関し、大きな前進がみられた。5月には、南アフリカのダイヤモンド産地キンバリーに世界の主要なダイヤモンド生産国、加工国及び業界の代表が集まり、ダイヤモンドの不正取引防止に一丸となって取り組むことが合意された。この取組は、会合開催地の名前にちなんで「キンバリー・プロセス」と呼ばれるようになった。10月には、英国政府の呼びかけで、キンバリー・プロセス参加国に加えて、日本などダイヤモンドの主要な輸入国も交えた紛争地産ダイヤモンドに関する政府間会合がロンドンで開催され、ダイヤモンド原石取引を対象とする国際的認証スキームを創設しようとの気運が高まった。さらに、12月に国連総会において「紛争助長におけるダイヤモンドの役割」に関する決議が採択されるなど、国際場裡においてダイヤモンドの不正取引を防止しようという動きが加速されている。 「紛争下の児童」の分野は、多くの地域で児童が武力紛争に巻き込まれ、多大な被害を受けていることに着目し、児童兵の不使用を国際社会に求めるとともに、紛争時に児童を含む文民への被害を抑制し、紛争後の児童の社会復帰を支援することを打ち出したものである。このような武力紛争下の児童の問題に対する包括的な取組の必要性はG8以外の国際社会においても強く認識されるようになっており、11月には東京で外務省などの主催による「児童兵の社会復帰に関する国際ワークショップ/シンポジウム」が開かれ、紛争下の児童の問題への対処に関する提言がまとめられた。 「国際文民警察」では、国連平和維持活動(PKO)においてその重要性への認識が最近ますます高まっており、文民警察について、その要員の確保や訓練等に関する方策がまとめられている(注)。
このほかにも、東京では、3月に「アフリカの紛争の予防と和平イニシアチブにおける準地域機関とNGOの役割」に関する国際シンポジウム、6月に国際シンポジウム「紛争予防におけるNGOの役割」、同じく6月に国際シンポジウム「21世紀の展望:包括的紛争予防を目指して」の各シンポジウムが開催され、紛争予防の重要性への認識が深まるとともに、具体的な取組、特にNGOを中心とする市民社会の視点が大きく取り上げられるようになってきている。このように、紛争予防は、日本として今後一層具体的な取組を進めていくべき分野の一つとなっている。 (3)軍備管理・軍縮・不拡散 【総論-軍縮と不拡散をめぐる現状と今後の展望】 90年代前半に高まりを見せた核軍縮・不拡散推進の動きは、95年の核兵器不拡散条約(NPT)の無期限延長決定と96年の包括的核実験禁止条約(CTBT)の国連総会での採択を境にして下降線をたどっている。CTBTは採択後4年を経過しているにもかかわらずいまだに発効しておらず、ジュネーブ軍縮会議(CD)での実質的な審議も停滞したままである。一方、このような状況の中、4月から5月に核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催され、核軍縮・不拡散のための「現実的な措置」を含む最終文書の採択に成功したことは、今後国際社会が核軍縮・不拡散に取り組む上での方向性を示すことができたという点で、極めて大きな成果であった。また、生物・化学兵器や、冷戦終結後に増加した局地的な紛争において主要武器として使用される小型武器、対人地雷等の通常兵器に関しても、90年代を通じて、国際的な取組が徐々に強化されつつある。 なお、北朝鮮やイラン、インド、パキスタンのミサイル活動に見られる、大量破壊兵器の運搬手段であるミサイルの拡散はこの数年大きな問題となっており、ミサイル不拡散のための国際的な取組の重要性がますます高まってきている。 【核兵器】 <2000年NPT運用検討会議> 4月から5月、核兵器不拡散条約(NPT)の無期限延長決定後初めてとなるNPT運用検討会議が、ニュー・ヨークで開催された。この会議は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効、カットオフ条約交渉の即時開始とその5年以内の終了等を始めとする、今後国際社会が取り組むべき核軍縮・不拡散のための「現実的措置」を含む最終文書を全会一致で採択することに成功した。最終文書では、全面的核廃絶に対する核兵器国の「明確な約束」が明記されるなど、目標としての核廃絶はより現実的なものとなっており、今後、国際社会は、これらの「現実的措置」の実施のため、真摯に議論し実行することが要請される。 なお、この会議に際して、日本は、核軍縮・不拡散のための将来に向けた現実的措置に関する8項目提案を行って各国の合意形成のための基盤を提供する等、会議成功のために積極的な貢献を行った。 <日本が提出した新しい国連総会核廃絶決議-「核兵器の全面的廃絶への道程」> 日本は、94年から99年まで、国連総会に「核兵器の究極的廃絶に向けた核軍縮に関する決議」を毎年提出し、国際社会の圧倒的多数の支持を得てきた。「究極的核廃絶」の概念は、核兵器国に「核廃絶」を認めさせた点で極めて意義のあるものであったが、2000年の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議で全面的核廃絶に対する核兵器国の「明確な約束」が合意された結果、この概念はその役割を果たし終えたと言うことができる。 このような基本的認識に立ち、日本は、国連ミレニアム総会に、核のない世界を実現するための具体的な道筋を示す新たな核廃絶決議案「核兵器の全面的廃絶への道程」を提出し、11月、圧倒的多数をもって採択された。この決議は核軍縮と核不拡散のバランスを取りつつ、包括的核実験禁止条約(CTBT)の2003年以前の発効、カットオフ条約交渉の即時開始と2005年以前の終結、第3次戦略兵器削減条約(START II)以降の米露核軍縮交渉の継続や全面核廃絶に向けた大幅な核兵器の削減など、NPT運用検討会議の最終文書より更に意欲的な内容を含んでいる。今後とも日本はこの決議に基づき、核兵器のない世界を1日も早く実現すべく、CTBTの早期発効、カットオフ条約交渉の即時開始・早期終了等の外交努力を一層強化していく。 <CTBTの早期発効を目指して> 日本は、99年10月にウィーンで開催された包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議の議長を務め、その後も、その批准がCTBT発効の要件となっている44か国の中の未批准国に対し順次ハイレベルのミッションを派遣してCTBT早期批准を働きかけるなど、条約の早期発効に向けてイニシアチブを発揮している。 2000年には、2月にエジプト、アルジェリアを高村前外務大臣が、同月に中国を山本外務政務次官が訪問して早期批准を促したほか、ロシア、バングラデシュ、コロンビア、コンゴー民主共和国にミッションを派遣し、また、インド、パキスタン、イラン等にもハイレベルの働きかけを行った。 2000年には、核兵器国のロシアをはじめ、18か国(うち発効要件国4か国)が新たにCTBTを批准した。また、発効要件国であるウクライナでも、最高会議(国会)においてCTBT批准法案が可決された(正式な批准手続きは2000年末時点で未完了)。 <カットオフ条約交渉> 包括的核実験禁止条約(CTBT)に続く多数国間の核軍縮・不拡散に向けた措置であるカットオフ条約については、2000年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議で条約交渉の即時開始・早期妥結が奨励されたにもかかわらず、ジュネーヴ軍縮会議(CD)の2000年会期においても、「核軍縮」や「宇宙空間の軍備競争防止」をめぐるメンバー国の対立の影響のため、交渉開始には至らなかった。 【米露核軍縮交渉、米国の国家ミサイル防衛(NMD)構想】 2000年4月、ロシアは第2次戦略兵器削減条約(START II)を批准したが、これは米国が対弾道ミサイル・システム制限(ABM)条約違反等を行った場合は、START IIから脱退する権利を留保する旨の条件が付されている。米国は96年1月にSTART II条約を批准したものの議定書について批准していないため、いまだ同条約は発効していない。また、両国はSTART II批准後直ちに第3次戦略兵器削減条約(START I)交渉を開始する旨合意している。 米国が、拡散国家による限定的な戦略弾道ミサイル攻撃に対する防衛面での対応として検討してきた国家ミサイル防衛(NMD)構想(注)に関しては、2000年も米露間でABM条約の修正をめぐる協議が行われた。このような中、7月に第3回目の迎撃実験が失敗したこと等を勘案し、9月、クリントン大統領は、NMDの配備に進むために必要なシステム全体の技術上等の有効性について、現在有している情報では十分な確信を持っているとは結論づけることはできないとして、その配備の決定を現時点では行わないこと並びに開発及び試験を継続するよう国防長官に対し指示したことを発表した。
<ロシアの余剰兵器プルトニウム管理・処分> 第1次戦略兵器削減条約(START I)の実施等、米露間の核軍縮の進展に伴い、解体された核兵器から大量の余剰プルトニウムが生じている。特に、経済的困難等の国内問題に直面するロシアにおいて、これら核物質の軍事転用や拡散を防止し、またその処分を行うことは、核軍縮・不拡散上の重要な課題となっている。日本はG8不拡散専門家会合(NPEG)等の場において、この問題に対する具体的な協力について調整を行っている。7月の九州・沖縄サミットでは、この計画を遂行する上で必要となる費用に関し、公的資金のみならず、民間資金の活用も念頭に置いた国際的な資金調達計画と、G8以外の潜在的協力国をも含めた各国の協力関係を調整するための多数国間の枠組みを構築することが合意された。 【生物兵器】 生物兵器禁止条約は、生物兵器の開発、生産、貯蔵、保有につき包括的に禁止してはいるが、それを検証する手段については全く規定がない。生物兵器の世界的な拡散の動きに的確に対処する目的で、検証制度が盛り込まれた議定書の作成交渉が、2001年までの交渉妥結に向けて2000年も続けられた。 【化学兵器】 化学兵器禁止条約(注)を、日本は95年9月に批准し、条約上課された義務を誠実に履行してきている。特に、北海道及び広島県で発見された旧日本軍の化学兵器については、年内に各々廃棄を完了した。また中国の遺棄化学兵器についても、その廃棄の過程における初の本格的な事業として、9月、黒龍江省において遺棄化学兵器の発掘が行われ、総数897発の遺棄化学兵器が回収された。
【大量破壊兵器の運搬手段としてのミサイル】 核兵器、生物・化学兵器などの大量破壊兵器の運搬手段であるミサイルの拡散問題は、地域の安定のみならず国際社会全体の平和に対して深刻な脅威をもたらすものである。近年、日本の安全保障に直接的な脅威を与える北朝鮮によるミサイル発射以外にも、インド、パキスタン、イラン等によりミサイル発射実験が行われるなど、世界的なミサイル拡散の傾向が見られる。 日本は、適宜関係国とも協力しながら、懸念すべきミサイル活動を行っている国に対して日本の懸念を伝達し、様々な機会を通じてミサイル関連活動の自制を働きかけている。 こうした中で、ミサイル不拡散を目的とする唯一の多数国間の枠組みとして、日本を始め32か国が参加するミサイル輸出管理レジーム(MTCR)が重要な役割を果たしてきている。2000年には、MTCRにおいて、ミサイル拡散問題に対処するための新たな措置として、「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうための国際行動規範」草案について合意が得られた。日本は、多国間の取組としては、MTCRでの取組を中心にして、ミサイルの脅威が削減されるよう積極的な役割を果たしていく考えである。 【通常兵器】 <小型武器> 自動小銃、拳銃、機関銃、携帯用対戦車ミサイルなど比較的小型の兵器が近年の紛争における主要な武器となっており、一般市民を含む多くの死傷者を生み出している。また紛争終了後も、過剰に蓄積された小型武器のために治安が安定せず復興開発の妨げになるとの問題がある。国連ミレニアム総会では、国連加盟国が「小型武器不正取引のあらゆる側面に関する国連会議」を2001年7月にニュー・ヨークで開催することが決定された。この分野において、日本はこれまで指導力を発揮してきているが、引き続きこの国連会議の成功に向けて準備プロセスに貢献していく。また、途上国における小型武器問題の解決のための支援を行っていく考えである。特にカンボディアにおいては、日本のイニシアチブの下、欧州連合(EU)、国際連合等と協力して、小型武器回収と開発を組み合わせた総合的アプローチによる小型武器回収プロジェクトの実施に向けた準備が進行中である(注)。
<対人地雷> 対人地雷問題について、日本は、普遍的かつ実効的な対人地雷の禁止の実現と地雷除去活動及び犠牲者支援の強化とを車の両輪とする包括的アプローチを取ることが不可欠と考え、「犠牲者ゼロ・プログラム」を提唱し、対人地雷の「犠牲者ゼロ」の目標の実現に向けて積極的に取り組んでいる。 日本は条約の普遍化に向け、関係国への働きかけを続ける考えであり、また、対人地雷禁止条約(オタワ条約)を当面締結する見込みのない国々も参加し得るような対人地雷の移譲禁止に関する国際的規制の早期の枠組み作りに向け、関係国と共に取り組んでいく考えである。地雷除去及び犠牲者支援については、日本は、2000年8月までに5600万ドルを超える対人地雷関連の支援を行っている(注)。また、犠牲者支援については、主として国際機関及び非政府組織(NGO)を通じた支援により、義肢製作や犠牲者のリハビリ等に係る施設や機材の整備を支援している。
<ワッセナー・アレンジメント> 96年7月、地域の不安定化をもたらす通常兵器の過度の蓄積を防止するため、通常兵器及び関連汎用品・技術の国際的輸出管理レジームであるワッセナー・アレンジメントが発足した。99年には機能の全面的見直しが行われ、設立以来の懸案事項であった武器移転の透明性拡大について一定の成果が得られた。現在も更なる機能強化に向けた努力が続けられており、日本はこの努力に積極的に参画している。 <国連軍備登録制度> 日本などのイニシアチブにより92年に発足した国連軍備登録制度下で、毎年日本を含む90か国以上が、戦車、戦闘用航空機などの7種類の主要な兵器の輸出入数量等を国連に報告している。日本はこの制度にいまだ参加していない諸国への参加の働きかけなどを通じ、その運営に大きな役割を果たしている。 (4)国際平和協力(国連平和維持活動等) 【国連平和維持活動(PKO)の現状と強化に向けた改革】 冷戦終結後、紛争解決における国連の役割が見直されるとともに、国際社会が対応を迫られる紛争の多くが国家間の紛争から一国内における紛争へと変わった結果、PKOの任務も多様化してきている。これらの変化に応じ、過去の教訓を生かしつつ、よりPKOを効果的に行っていくため国連の内外でPKOの強化のための試みが行われている。 実際、全世界に派遣されているPKO総要員数は、既存のPKOが増員・強化されたり、新たなPKOが設立されたため、2000年の1年間で前年の約2倍になった。12月末現在、15のPKOが活動中であり、約90か国からおよそ3万8000人の要員が派遣されている。 また、国連PKOは、その多様な任務を遂行するために、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの人道支援機関や、世界銀行、国際通貨基金(IMF)などの国際金融機関、欧州安全保障・協力機構(OSCE)などの地域的機関、世界各地の非政府組織(NGO)などと密接に協力を行っている。 これら強化のための試みに加え、アナン国連事務総長は、2000年3月、PKOのみならず紛争予防や平和構築を含む「国連の平和活動」の包括的な検討を行い、改善・強化のための提言を得ることを目的として、有識者のパネル(国連平和活動検討パネル。ブラヒミ元アルジェリア外相が議長であり、以下「ブラヒミ」パネルと称す)を設置した。「ブラヒミ」パネルは、8月に改革のための包括的な提言を含む報告書を提出した。 報告書は、最近のPKOの任務が多様化し、特に、武装勢力の社会復帰や民主的制度の確立、インフラの整備など平和構築的な活動とPKOの活動が不可分になっていることを指摘し、そのためには、国連事務局内外の機関横断的な活動が効率的に行われることが必要であると述べている。また、報告書は、国連の事務局機能の強化や後方支援の拡充、支出運営の改革等を勧告し、さらに、平和活動の任務が明確かつ達成可能でなければならないこと、その任務遂行のために十分な資源が供与される必要があることを強調している。 またPKOの緊急展開能力については、これまでも改善の必要性が指摘されており、「ブラヒミ」報告もこの問題を取り上げている。同報告は、既存の国連待機制度が必ずしも実際の要員等の迅速な派遣に結びついていなく、同制度の強化が必要であることを指摘し、軍事要員・文民専門家・幹部職員等の待機リストの作成などを勧告している。 これを受け、国連事務総長は、9月には、「ブラヒミ」報告を実施するための第1次計画を、また、10月には、同報告の実施に必要な人員及び予算を緊急に要求する事務総長報告を総会に提出した。同計画及び事務総長報告は、10月以降、総会において議論され、合意のあった一部については実施に移されつつある。 以上のPKOの強化に加え、PKO要員の安全確保も重要な課題である。2000年にも、PKO要員の犠牲は、シエラ・レオーネや東チモールなどで発生した。日本は、要員の安全確保の問題に以前から積極的に取り組んでおり、「国際連合要員及び関連要員の安全に関する条約」(「国連要員等安全条約」99年発効。日本は2番目に締結。)の締約国が依然として少ないことから(2000年12月現在、47か国)、特にPKO受入国に対して、同条約を締結するよう訴え続けている。 さらに、2000年には、西チモールやギニア共和国でUNHCRの職員が殺害される事件も発生した。「国連要員等安全条約」は、現在原則として「国際の平和及び安全の維持又は回復を目的」とする活動をその適用対象としているが、人道活動などを行っている要員も十分に保護できるようにすべきとの意識の高まりもあって、11月には、同条約の適用範囲を拡大するための議定書作成を勧告する国連事務総長報告が発出された。 【日本の協力】 日本は、国際社会の主要な一員として、国連平和維持活動(PKO)などの国連を中心とする平和のための活動に対して幅広い協力を行ってきている。 92年の「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(国際平和協力法)」施行以来、日本は、アンゴラ、カンボディア、モザンビーク、エル・サルヴァドル等のPKOに参加してきた。2000年12月現在では、中東地域の平和と安定に向けた日本の包括的取組の一環として、ゴラン高原における国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)に後方支援部隊と司令部要員を96年より派遣中である。 これに加え、99年11月から2000年2月まで、西チモールの東チモール避難民に対する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の援助物資を自衛隊機により空輸(インドネシア共和国のスラバヤからクパン(西チモール)まで)した。また、2000年3月から4月には、欧州安全保障・協力機構(OSCE)が実施したボスニア・ヘルツェゴヴィナの市町村議会選挙に11人を投票管理要員として派遣した。このような国際平和協力法に基づく人的協力のほか2000年12月末現在、国連東チモール暫定行政機構(UNTAET)においては、11人の日本人が、国連コソヴォ暫定行政ミッション(UNMIK)では、11人の日本人が民政官等として活躍している。 (5)テロ 【深刻なテロ情勢】 世界のテロの重心は、近年、中東からアフガニスタン等の南西アジアに移ったものと見られていた。しかし、2000年には、9月末からの中東和平プロセスの変化により、パレスチナ過激派によるテロが急増し、10月にはイエメンで米艦船爆破事件が発生するなど、中東でも再びテロが深刻化している。それ以外にも、4月にフィリピンの武装組織が起こした外国人ダイバー誘拐事件が国際的な注目を集めたほか、スリランカ、コロンビア、インド、アルジェリア等世界各地でテロが多発した。また、7月のソロモン諸島での漁船乗っ取り事件、9月のカタル機ハイジャック事件、中国国内線ハイジャック事件には、日本人が巻き込まれた。 【国際社会の取組】 このように深刻化するテロ情勢に対し、国際社会は協力して取り組んでいる。7月の九州・沖縄サミットでは、G8首脳があらゆる形態のテロへの非難を新たにするとともに、各国に対し、タリバーンに対してオサマ・ビン・ラーデンの引き渡しを求める国連安保理決議1267の完全実施や、12本のテロ防止関連条約の締結等を呼びかけた。 国連においては、12月、タリバーンに対し、オサマ・ビン・ラーデンの引き渡しに加えて、テロリスト訓練施設の閉鎖を要求すること、タリバーンに対する制裁措置を強化すること等を内容とする安保理決議1333が採択された。また、総会では、9月に包括テロ防止条約作成のための審議が開始され、12月には国際テロ廃絶のための決議が採択された。 【日本のテロ対策強化】 日本政府は、あらゆる形態のテロを非難し、テロリストに譲歩せず断固闘うという方針の下に、積極的に国際協力を進めている。7月の九州・沖縄サミットでは、日本は、議長国としてテロ問題へのG8としての対応を取りまとめた。 また、日本人を巻き込むテロ事件の発生を防止するため、在ペルー日本大使公邸占拠事件やキルギスにおける日本人誘拐事件等の教訓を踏まえながら、危機管理体制の整備に努めるとともに、テロ関連情報の収集・分析の強化、「海外危険情報」の発出等を通じた国民に対するきめ細かい情報提供等に努めている(第4章2.(1)参照)。 【日本赤軍等】 日本赤軍については、レバノン政府に身柄引渡しを要請してきたメンバー5人のうち、政治亡命が認められた岡本公三を除く4人が、3月、レバノンから国外退去処分となり、その後、日本で逮捕・収監された。11月には国際手配中のリーダー重信房子が国内で逮捕され、現在も逃亡中の国際手配日本赤軍メンバーは岡本公三のほか6人となった。 また、「よど号」ハイジャック犯については、6月、タイで拘束されていた田中義三の身柄引渡しを同国より受けたが、依然として5人が国際手配中である。 (6)難民問題 【難民問題】 世界各地で民族や宗教等に起因する紛争や対立がなお頻発する今日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)及び国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の保護や支援の対象となっている難民、国内避難民等の数は、約2600万人に達している。このような世界各地における難民、国内避難民等の存在は、人道上の問題であると同時に、関係地域ひいては世界全体の平和と安定に影響を及ぼしかねない問題となっている。 日本は、人間の安全保障の観点から、難民、国内避難民等に対する人道支援を国際貢献の重要な柱の一つと位置づけ、積極的に取り組んでおり、UNHCR等の国際機関の活動についても積極的な支援を行っている。99年11月から2000年2月にはUNHCRからの要請にこたえ、西チモールに所在する東チモール避難民に供与する援助物資を自衛隊機で輸送した。 また、政府としては、人道支援を行う日本の非政府組織(NGO)を支援しており、従来の支援スキームを拡充したほか、NGO、経済界と共に2000年8月に「ジャパン・プラットフォーム」を設立するなど、NGOが現地でより機動的に活動できるようにするための諸措置を講じた(注)。さらに、アジア・大洋州のNGO等に対し、緊急人道支援のトレーニングを実施するUNHCRの「アジア・大洋州地域国際人道支援センター」事業が、日本のイニシアチブにより国連に設置された人間の安全保障基金からの支援により実施されている。今後とも国際機関、NGOと連携しつつ、難民問題の解決に向け、積極的に取り組んでいく考えである。 また、近年、難民支援活動にとって困難な状況がしばしば発生しており2000年には西チモールとギニアでUNHCR職員殺害事件が発生した。人道支援要員の安全確保も極めて重要な課題となっている。
難民問題の解決には、人道援助に留まらず、難民発生の主な原因である紛争の未然防止や再発防止に向けた取組が重要である。そのためには、紛争発生後の緊急人道支援から、復興・復旧支援、更に長期的な視野に立つ開発への取組への移行が円滑に行われ、その間に支援の「ギャップ」が生じることを避けることが重要となっている。日本は、G8宮崎外相会合の際に発表した「紛争予防のためのG8宮崎イニシアチブ」において、他のG8諸国と共に、「ギャップ」問題への取組の重要性を訴えた。また、本件に関する国際的な取組である「ブルッキングス・プロセス」(注)にも積極的に参加している。
難民問題への日本人の貢献を語る上で、91年に国連難民高等弁務官に就任し2000年末で退任した緒方貞子氏について特記しなければならない。緒方前高等弁務官の任期中の10年は、イラク、ルワンダ、旧ユーゴ、東チモール等世界各地で大規模な難民問題が続出した大変困難な10年であったが、同氏は約5000人の職員を率い、指導力を発揮するとともに精力的に活動を続け、卓越した功績を残した。同氏の活動は、国際社会から極めて高い評価を得ている。 |
第2章 第2節 / 目次 |
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