(1)総論(グローバリゼーションの進展と課題)
80年代後半以降に特に顕著に見られるようになったヒト、モノ、カネ、情報などの国境を越えた自由な移動を通じて、世界的規模で経済の効率化が進むというグローバリゼーションの進展は、既に日本の社会にも大きな影響を及ぼしている。6月に行われたケルン・サミットにおいてもグローバリゼーションが取り上げられ、経済の一層の開放とダイナミズムが、生活水準の広範な改善及び貧困の大幅な減少に貢献してきたことが確認されている。
一方で、グローバリゼーションについては、アジア通貨・金融危機とその世界的な波及などのように、その「影」の部分も顕在化しつつある。世界経済は、97年のアジア通貨・金融危機の影響を脱しつつあるアジア諸国や引き続き好調な米国経済等の要因により、緩やかながら回復の動きが見られているものの、グローバリゼーションのリスクに完全には対応できるものとなっていない。グローバリゼーションの進展は、日本経済のみならず世界経済全体にとっても大きな利益をもたらすものであるとの認識は広く共有されているが、グローバリゼーションの十分な潜在能力を実現するための対応が求められている。
97年から98年にかけての経済危機は、現在の国際金融システムが、グローバリゼーションを軸とする新しい国際経済の現実に十分対応できていないことを示した。危機の予防及び危機への対処のためには、各国が適切な国内制度の整備を行うことがまずもって必要であるが、国際通貨基金(IMF)を中心とする国際金融システムの強化も必要であり、様々な場で議論が行われている。例えば、短期資本の移動の規模とスピードは、各国の実体経済に場合によっては壊滅的な影響を与え得るほどになっており、国際的な監視機能の強化や透明性の向上が不可欠である。
6月のケルン・サミットにおいては、国際金融システム強化に関する主要な課題が特定されるとともに、作業の枠組みが設定された。しかし依然として、ケルン・サミットでの合意の肉付けとグローバルな実施の確保が必要となっている。日本としては、ヘッジファンド等短期資本移動への対応、民間セクターの関与、IMF改革等が重要と考えており、国際的な議論に引き続き積極的に貢献していく。
また、グローバリゼーションの進展の中で、世界経済が持続的に発展するには、世界規模での貿易自由化の更なる進展と、公平な競争を確保するためのルール作りがますます必要となっており、世界貿易機関(WTO)の下での多角的貿易体制の維持・強化が重要な課題である。しかし、11月末にシアトルで開催された第3回閣僚会議においては、各国間の立場の相違により新ラウンドを立ち上げるには至らず、それまでの作業を凍結する結果となった(本項(2)参照)。
さらに、近年は、地域統合や地域協力を強化する動きに加え、地域貿易取極を推進する動きも見られる。日本としては、地域貿易取極の進展はWTOを中心とする多角的自由貿易体制を補完し、域内経済の活性化を通じて世界経済の発展に寄与し得るべきものであると考えている(本項(3)参照)。
翻って日本に関しては、99年は、引き続き各国から日本経済の回復と構造改革が強く求められた。日本が景気回復の努力を続け、並行して経済の構造改革を進めていくことは、グローバリゼーションの進展への対応として日本自身にとって必要であるだけではなく、世界最大の債権国であり、経済大国である日本の責務とも言える。これまで日本は、金融システムの改革や累次にわたる経済対策等を行ってきた。これらの取組の効果もあって、日本経済の状況は、民間需要の回復力が弱く厳しい状況をなお脱していないものの、緩やかな改善が続いている。これらの取組は、諸外国からも高い評価を得ているが、今後とも引き続き様々な機会を活用して日本の取組を十分に説明していく必要がある。
グローバリゼーションの進展により、電子商取引のルール化や国際組織犯罪への対応などの国境を越えた新たな対応が必要な課題が生じている。遺伝子組換え食品を含む食品の安全性についての国際的な取組も行われている。特に、ケルン・サミットでは、経済協力開発機構(OECD)に対し、その安全性についての研究・報告を行うように要請が行われ、OECDでは、関連専門家会合において科学的側面から遺伝子組換え食品の安全性についての研究・報告をG8個人代表に行う準備を進めた。また、これに併せ、「市民社会(シビル・ソサイエティー)」との対話の場を設け、関係者の意見を反映した報告もG8個人代表に行うこととした。同時に、従来は国内問題と考えられてきた雇用や社会的セーフガードなどについても、世界経済における課題としてますます取り上げられるようになっている。さらに、ケルン・サミットにおいては各国が共通して直面する重要課題として、従来は各国の国内問題と捉えられてきた教育を取り上げ、ケルン憲章を採択するなど、新たな取組も始まっている。
なお、そのほかの99年の出来事として、WTO農業協定の下でのコメについての関税化の特例措置について、日本が4月より関税措置への切替えを行ったことが挙げられる。
(2)多角的貿易体制(WTOシアトル閣僚会議の結果を踏まえて)
[世界貿易機関(WTO)]
WTOにおいては、98年5月の第2回閣僚会議以降、新しいラウンド交渉の立ち上げに向け準備が進められ、日本も積極的にこれに貢献した。農業とサービス貿易に関しては、WTO協定上、2000年から交渉を始めることが定められているが(合意済み課題)、日本は、各国の多様な関心に応えるためには、これらに加え、鉱工業品関税や投資・ダンピング防止措置等におけるルールの強化も交渉対象として含む、包括的なラウンド交渉を立ち上げるべきと主張した。そのような立場から、日本は、農業、鉱工業品関税、投資、ダンピング防止措置等、13の提案を行い、ジュネーブでのWTO一般理事会等における議論をリードした。
また、10月にムーア事務局長が日本を訪問した際には、小渕総理大臣より、多角的貿易体制の維持・強化のためにWTOが応えるべき課題として、(1)ルールの強化や自由化の推進、(2)途上国のより積極的な参画、(3)技術の進歩とグローバリゼーションへの対応、(4)環境問題等「市民社会(シビル・ソサイエティー)」の関心への適切な配慮などを指摘し、次期ラウンド交渉立ち上げに向け、日本が積極的に取り組む旨表明した。
一方、新ラウンド交渉を立ち上げることとされていた米国シアトル市における第3回閣僚会議に向け、9月以降は閣僚宣言の起草作業が行われ、各国間の意見の相違を調整すべく協議が重ねられた。日本や欧州共同体(EC:欧州連合(EU)におけるWTO協定の締結主体)等が、市場アクセスのみならず、WTOルールの強化を含む包括交渉を主張したのに対し、米国などは包括交渉に慎重な姿勢を示した。さらに、途上国の中には、更なる自由化交渉よりもWTO協定の実施の問題が重要であると主張し、合意済み課題以上に交渉範囲を広げることに消極的な国もあった。このように、交渉の内容や交渉の方式に関する各加盟国の立場の違いは大きく、意見調整は難航した。その結果、事前のジュネーブでの事務レベルの調整においては、閣僚会議の議論に供し得る閣僚宣言の案文が調整できないまま、第3回閣僚会議が11月30日から12月3日まで開催された。
同閣僚会議には、日本より、河野外務大臣、玉沢農林水産大臣、深谷通商産業大臣が出席した。河野外務大臣は、同会議において日本を代表して演説を行い、多角的貿易体制の強化のために新ラウンドを開始することの重要性を強調するとともに、WTOが早急に取り組むべき課題として、(1)途上国がWTOから十分な利益を受けるための方策と、(2)貿易の更なる自由化に伴って人々が抱く、環境や食品の安全等についての懸念に適切に応えることを挙げた。しかし、上述のとおり、各国の立場の相違は大きく、また、一部団体による抗議活動のため会議日程の調整を余儀なくされるなど、調整のための時間が十分でなかったといった事情もあった。そのため、閣僚会議においては、新しいラウンド交渉を立ち上げるには至らず、それまでの作業が凍結されることとなった。
今回の閣僚会議は、農業、ダンピング防止措置、貿易と労働の問題といった各国の国内事情とも関連した問題の困難さが改めて浮き彫りにされた一方で、途上国の関心や、環境等についての一般の人々の懸念にどのように適切に応えるかという課題の重要性を改めて明確にしたと言える。
WTOの下での多角的自由貿易体制の維持・強化は、日本のみならず、各国の経済的繁栄にとって極めて重要であり、日本としては、WTO協定上2000年から開始されることとなっている農業及びサービス貿易の交渉と並行して、新しいラウンド交渉の早期立ち上げに向けた作業を、米・EC等各国と共に引き続き積極的にリードしていく。
[WTO加盟国の拡大:多角的貿易体制の普遍化]
WTOの下での多角的貿易体制を強化していくためには、より多くの国・地域がWTOに参加することが重要である。加盟作業については、2月にラトヴィア、11月にエストニアが新しく加盟国となり、年末時点でのWTO加盟国数は135になった。また、10月にはグルジアの加盟が一般理事会により承認されており、グルジアは国内承認手続を経た後に正式な加盟国となる。
一方、中国、台湾、ロシア、ヴィエトナムを含む30の国・地域が引き続きWTOへの加盟を申請中である。中国加盟については、日本は、小渕総理大臣が7月に中国を訪問した際、中国との間でWTO加盟に関する二国間交渉を実質妥結した。11月には米中による二国間交渉も妥結し、中国加盟交渉は大きな前進を遂げた。日本は、世界貿易において大きな割合を占める中国がWTOに加盟することは、多角的貿易体制をより普遍化し強化する上で、また中国を国際社会におけるより一層建設的なパートナーとしていくとの観点からも重要と考えており、今後とも中国のWTOへの早期加盟を支持していく考えである。
[WTOの下での紛争解決制度]
WTOの紛争解決制度は、ガット時代と比べて手続の自動性と迅速性が強化され、実効性が著しく改善された。パネルに付託される事案も、ガット時代から飛躍的に増加し、95年1月のWTOの設立以来、99年末までの約5年間に90件のパネル設置要請が行われた。これらパネルの結論に対し、33件につき上級委員会に申立てが行われた。
12月には日本がパネルへの付託を行ったカナダの完成車輸入制度に関する案件で日本の主張を認めるパネルの判断が示された。また、日本がWTO紛争処理手続の下協議を行った米国の1916年反ダンピング法に関しては7月にパネルが設置された。米国の熱延鋼板の反ダンピング措置に関しては11月に協議要請を行った。日本の植物検疫制度に関して米国がパネル及び上級委員会への付託を行った案件では、日本の措置がWTO協定に整合的ではないと判断されたことを受けて日本は必要な措置を12月に実施した。
このように、WTO紛争解決制度は中立・公平な紛争解決を通じ、WTO協定の実施及び適用を担保することにより、普遍的な多角的貿易体制の安定性と予見可能性の確保に役立っている。
(3)地域経済協力
99年においても地域的経済協力の動きは活発であり、地域内協力が深化する一方で、地域的経済協力間の連携や、域外国との協力が進むなど、多様化、重層化を見せている。
北米地域においては、米国、カナダ、メキシコから成る地域内の貿易・投資の障壁削減を目指す北米自由貿易協定(NAFTA)が、市場経済の成熟度の異なる国家間の自由貿易協定との意義を有し、締約国間の貿易・投資量は着実な伸びを見せている。4月の閣僚会議(於:オタワ)においても、設立5周年の共同声明においてその成果が確認された(94年の協定発効以来、3か国間の貿易総額は75%増加)。一方、米国内にはNAFTAが米国の貿易赤字を拡大し、雇用に悪影響を与えているという見方もあり、ファースト・トラック法案(通商合意の交渉権限委任等を規定)が下院本会議で否決された。98年9月以降、同法案成立に向けた具体的な動きはなく、このためチリのNAFTA加盟交渉が進められない状況にある。
中南米地域においては、アルゼンティン、ブラジル、パラグァイ、ウルグァイの4か国による南米南部共同市場(メルコスール)が95年1月に発足し、以来域内貿易が飛躍的に拡大してきた。しかし99年、メルコスールにとっての課題が浮き彫りになった。1月、世界的な金融危機の影響を受けたブラジルは、為替切下げに追い込まれた。このため加盟国産品間の価格競争力が変化し、メルコスールの二大経済大国であるブラジルとアルゼンティンとの間を中心に貿易摩擦が起こり、域内貿易が大幅に減少した。メルコスールの安定的発展のためにはマクロ経済政策の協調が重要であることは以前から指摘されてきたところであるが、ブラジルの為替切下げによってこの問題が改めて浮き彫りとなった。このためメルコスールは12月に開催された首脳会議で域内マクロ経済政策調整を継続することで合意したが、経済規模や発展段階が異なるメルコスール各国がマクロ経済政策について協調するには時間を要するものと考えられる。一方、域外との関係については、6月に開催されたメルコスール・チリ-欧州連合(EU)首脳会議においてEUとの実質的な自由貿易交渉の開始を宣言した。メルコスールとしては、98年4月の第2回米州サミットで具体的な交渉開始につき合意した米州自由貿易地域(FTAA)創設交渉と併せ自由貿易地域創設交渉によって、欧米諸国との関係強化を模索している。日本としては、このように力をつけていくメルコスールとの関係強化を重視しており、各種の政府間協議を行っている。なお、EU-メキシコ間においては自由貿易協定に関する交渉が11月に実質妥結している。
また73年4月に発足したカリブ共同体(カリコム)においては、2000年末までに単一市場・経済を形成することを目指して、九つの議定書の締結作業が進められている。99年までにサービス・資本の自由化、産業・貿易政策等七つの議定書が署名されており、今後、紛争解決、競争政策に関する議定書のための討議が行われる(東南アジア諸国連合(ASEAN)については第3章1.EUについては第3章4.をそれぞれ参照)。
このように、近年、世界においては自由貿易協定などの地域経済協力が拡大・発展してきている。地域貿易協定は、WTO協定に整合的であれば、域外国に対する障壁ではなく開放的な貿易の推進力となり、また、世界貿易の拡大に貢献するものであり、多角的貿易体制を補完するものとなると考えられる。このような考えに基づき、日本としても12月、シンガポールとの間で、あり得べき日・シンガポール自由貿易協定に関する諸方策について両国の官・産・学の専門家で検討することに合意した。また、メキシコ及びチリからも日本と自由貿易協定を締結することに関心が示されている。さらに、韓国との間については、98年11月、韓国側からの提案を受け、日本側は日本貿易振興会(JETRO)のアジア経済研究所が、韓国側では対外経済政策研究所(KIEP)が中心となって、自由貿易協定を含めた日本と韓国の間の経済関係強化に関する研究を行っている。両研究所は2000年上半期をめどに研究成果を公表する予定であり、日韓双方においてセミナーの開催も予定されている。
他方、アジア、米州の地域を越えた経済協力としては、アジア太平洋経済協力(APEC)が、日本を含めたアジア、大洋州、北米、中南米、ロシアといった広範な地域を包含しており、その独自の経済協力の在り方が注目される。89年に設立されて以来、APECはアジア太平洋地域の持続的発展に向け、貿易・投資の自由化、貿易・投資の円滑化そして経済・技術協力という3本柱を通じた様々な活動を積極的に行ってきた。99年、ニュー・ジーランドのオークランドで開かれたAPEC首脳・閣僚会議において、まず、アジアの各メンバーが通貨・金融危機からの回復を一層確実なものとするために、規制改革や競争促進、あるいは産業構造高度化を含む構造改革や人材養成を通じて市場機能を強化し、繁栄に向かって前進しようという決意が示された。これについて小渕総理大臣は、総額約800億ドルに及ぶ日本によるアジア支援策を説明するとともに、アジア経済の再生、ひいては世界経済の成長にとって特に日本の経済の再生は極めて重要であり、そのために不退転の決意で臨むとの考えを示した。市場機能の強化に関しては、日本は「構造改革のための人材養成を強化するためのイニシアティブ」や「市場の強化のための包括パッケージ」といったイニシアチブを、通貨・金融危機を克服するための有効な処方箋であるとの認識のもとに提案するとともに、7月にタイと共催した「アジア経済をめぐるシンポジウム」の報告を提出した。また、シアトルにおける第3回世界貿易機関(WTO)閣僚会議を控え、APECとしてWTO次期交渉の成功裡の立ち上げに向けた力強いメッセージを発出した。さらに、コンピューター2000年(Y2K)問題への対応や電子商取引のグローバルな発展のための取組について、アジア太平洋地域の首脳が強い関心を持って協力していくとの決意も確認した。21世紀に向けて希望に満ちたアジア太平洋地域を創造するためには、今後ともAPECを通じて数多くの課題や挑戦に立ち向かっていく必要がある。
アジアと欧州の間では、両地域の対話と協力関係強化のため、96年にアジア欧州会合(ASEM)が発足した。99年には外相会合、蔵相会合、経済閣僚会合が相次いで開催され、各々の分野でASEMの活動を更に進展させるための努力が行われている。特に経済面では、98年の第2回首脳会合で大きなテーマとなったアジア経済情勢のフォローアップ、99年より導入された単一通貨ユーロの両地域への影響、WTO、ビジネスとの交流などについて活発な意見交換が行われたほか、両地域間の貿易、投資を更に推進するための活動が行われている(ASEMの詳細については、第3章1.参照)。
(4)エネルギー・食糧問題
[エネルギー問題]
日本は、国民生活と経済活動の基盤たるエネルギーの約80%を海外に依存しており、エネルギーの安定供給確保は日本の外交政策の重要な課題である。このため政府は、石油価格等エネルギー情勢の分析や先進国との協調的な供給途絶への備えをし、また、主要な生産国や消費国との協議協力を推進している。
また、99年には、2000年2月に期限を迎えるアラビア石油の採掘権を更新するための交渉が行われた(交渉は不成立に終わり、アラビア石油の権益はサウディ・アラビア政府に接収された。しかし、サウディ・アラビア政府は、今後も日本への供給を続けたいとの意向を示しており、サウディ・アラビアから日本への石油供給には、変化がないものと思われる)。
99年のエネルギー情勢については、年初10ドル/バレル以下であった原油価格は、石油輸出国機構(OPEC)が3月の総会において生産量削減を合意した後、年末には22ドル/バレル程度に高騰し、OPECの原油価格への影響力がある程度示されたと言える。このような中で99年に25周年を迎えた国際エネルギー機関(IEA)は、5月の閣僚理事会で、エネルギー安定供給の確保がIEAの中心的役割であることを再確認した。
また、エネルギー分野の規制緩和が国際的課題となる中、前年に引き続き11月に日米両国政府は規制緩和協議エネルギー専門家会合を開催し、規制緩和の進展状況について詳細な意見交換を行った。7月にはモスクワで日露政府間の第2回エネルギー協議を開催し、両国のエネルギー情勢やエネルギー協力について議論した。なお、コンピューター2000年(Y2K)問題に対しては、IEAやアジア太平洋経済協力(APEC)と連携しつつエネルギーの安定供給に万全の措置を採った。
今後ともこのような各種の努力とともに、アジアにおけるエネルギー安全保障の向上に取り組むことが重要な課題である。
[食糧問題]
人口の急増、開発途上国の経済成長に伴う食糧消費の増大、地球上の資源・環境問題への配慮などから、食糧安全保障への世界的な関心は依然として高い。また、99年は干ばつなどの自然災害の発生による食糧不足が生じたことに加え、内戦等国内の混乱が起きている地域での食糧不足も多く、国連食糧農業機関(FAO)によれば緊急の食糧援助が必要な国は11月現在、34か国に上っている。こうした中で、「世界食糧サミット」(96年11月開催)にて採択された2015年までに世界の栄養不足人口を半減することなどの目標のフォローアップが重要な課題となっている。日本としては、こうした問題に対処するため、これまで二国間であるいは国際機関を通じて、食糧援助、食糧増産援助を始め様々な形態の協力を行ってきている。
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