日本政府による規制改革及びその他の措置
IX.商事法制
A.資本構成の柔軟性
会社の資本構成の柔軟性を高め、会社が資金やサービスを調達し経営者や被雇用者にインセンティブを与える手段を改善するため、商法は以下のとおり改正された。
- 5万円の最低発行価額や株式分割の際における一株当たり純資産額の制限を含む株式単位に課せられていた制限を緩和した。
- トラッキング・ストックの発行を認めた。
- 議決権制限付株式の発行を認めた。ただし、当該株式の発行数は発行済株式総数の二分の一を超えてはならないこととされた(改正前は、会社は無議決権株式を除きそのような種類の株式を発行することはできず、発行することができる数は発行済株式総数の3分の1までに限定されていた)。
- 以下のとおり、ストック・オプションの発行に課せられていた制限を実質的に緩和した。
- ストック・オプションを付与することができる者の範囲について、発行会社の取締役及び使用人に限定していた制限を廃止した。
- 会社が発行するストック・オプションの量についての制限を廃止した。
- ストック・オプションの譲渡を認めた。
- 一定の数の取締役又は監査役についての選解任権を付与された新しい種類の株式を譲渡制限会社が発行することを認めた。
- 現物出資の際の資産の評価について、裁判所が選任する検査役の調査に代えて、弁護士、公認会計士又は税理士等の専門家による証明書を使用することを認めた。当該専門家には厳格責任は課せられていない。
B.企業統治の改善
- 会社経営及び統治を実効的なものとする会社の能力を改善するため、商法は以下のとおり改正された。
- 大会社について、取締役会、執行役及び過半数の社外取締役により構成される三委員会(監査委員会、指名委員会及び報酬委員会)から成る企業統治の新制度を導入した。会社は、この新制度を選択する場合、監査役を置くという要件はかからない。この新制度は、取締役会が執行役に対して経営についての権限委譲を適切に行うことを可能とするものである。
- 株主総会の招集通知その他の株主に対する同様の通知について、個々の株主の同意の下に、会社がインターネットその他の電磁的方法を使用することを認めるとともに、株主に対して電磁的方法による議決権の行使を認めた。さらに、会社は貸借対照表(及び損益計算書)を5年間、電磁的方法により閲覧可能にしておけば開示要件を満たすこととされた。
- 日本政府は国際的に受入れられた高品質の会計基準を引き続き導入していく。これに関連し、企業会計審議会は、固定資産の減損に係る会計基準に関して、2005年度からの導入及び2003年度決算からの早期適用を認める内容の公開草案を2002年4月19日に公表し、パブリックコメントを求めたところである。日本政府は、財務諸表が企業の財務状況を正しく表示することを確保するため、(外部監査等を通じて)国際的に受入れられた会計基準を厳格に適用することにより、国際的に受入れられた会計基準の採用に関する最近の進展に寄与する。
C.外国会社の営業所及び代表者
日本において継続して営業を行う外国会社は営業所を設置しなければならないという要件を廃止する商法改正が行われた。この改正においては、外国会社の代表者に厳格責任は課せられていない。
D.合併手段の柔軟性
- 企業結合を促進するため、日本政府は、2002年度中に、商法において三角合併や現金合併等(ショート・フォーム合併を含む。)の合併手法の導入に関する研究を開始する。
- 法務省は、この研究の過程において、外国の経済界や法曹界に対して研究への意見表明の機会を与えるとともに、結論を得るに際し、その意見を考慮するようできる限りの努力を払う。
E.商法改正プロセスにおける一般からの意見の導入
- 2001年4月18日、法制審議会は一般から広く意見を募集するため、商法の大幅な改正を提案する中間試案を公表した。法制審議会は、寄せられた意見をできる限り考慮し、2002年2月13日に最終の要綱案を答申した。
- 法制審議会は、最終の要綱案を作成する過程において、これまでと同様、外国の経済界や法曹界を含む各界各層からの意見を出来る限り考慮するようできる限りの努力を払う。
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