日本政府による規制改革及びその他の措置
II.情報技術(IT)
A.法的枠組み
- 規制の改正
日本政府は電子商取引の妨げとなる種々の規制を改正した。日本政府は、「e-Japan重点計画」(平成13年3月29日)を改定した「e-Japan重点計画-2002」(平成14年6月18日)に記載されている高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)の政策に基づき、更なる電子商取引の成長、発展を促進すべく、必要に応じ規制の改正を継続する。
- 2002年3月、日本政府は、インターネット・オークション・ウェブサイトの規制等を定める法律案を国会に提出した。警察庁は、規則制定手続の透明性が確保されるよう、閣議決定されている一般的なルールに従ってパブリック・コメントを実施する。
- 民間部門の参加
日本政府は、IT戦略本部への民間部門の参加並びにe-Japan重点計画及びe-Japan重点計画-2002に対するパブリック・コメントを通じ、政策の立案及び実施において民間部門からの意見を招請した。
- 日本政府及び米国政府は、日本及び米国の企業代表者がIT関連事業モデルの構築を成功させようとする場合に直面する法規制の問題について両国政府の関係する省庁に対して意見を述べることが適当である場合には、次回の一連の情報技術作業部会において、民間部門の参加も視野に入れ作業する。
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公正取引委員会は、3月20日、ソフトウェアと独占禁止法に関する研究会中間報告書を公表した。同報告書では、インターフェイスに係る技術情報の提供やソフトウェアライセンス契約に係る制限において独占禁止法上問題となり得る行為の具体例が挙げられている。公正取引委員会は、同報告書において検討されている事項に対する関係各方面からの意見を募集した。公正取引委員会は、当該分野における競争を促進する上での考え方をより明確化し、更なる取組を行っていくためにこれらの意見を活用する。
B.インターネット・サービス・プロバイダーの責任ルール
- 日本政府は、2001年10月、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律案」を国会に提出した。同法律案は、ウェブページ等による情報の流通によって権利の侵害があった場合につき、プロバイダー等の特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利を定めるもので、2001年11月22日に成立、同月30日公布され、2002年5月27日施行された。
- 総務省は省令案を公表しパブリック・コメントを招請した。これに対し、米国政府はコメントを寄せた。
- また、民間代表者から構成される検討作業部会(内外のISP及び権利保有者の代表者が参加)が、法律の下で権利侵害に対処するための施行ガイドラインを起草するために設立された。検討作業部会はこれらのガイドラインについてパブリック・コメントを招請し、米国政府からもコメントが寄せられた。
- 日本政府は、本法律の運用状況を引き続き見守り、本件について米国政府と対話を行う。
C.知的所有権
- 一時的複製
2001年12月の文化審議会著作権分科会の報告を受けて、日本政府は、いわゆる「一時的蓄積」は、経済的意義を持たない音楽CDプレーヤー内部で自動的に生じる機械的蓄積など、裁判所によって除外され得る場合を除き、「複製」となり得ると理解する。
- WIPO実演・レコード条約
日本政府はWIPO実演・レコード条約(WPPT)への加入に向け関連する法律を改正した。国会は6月11日の関連法の成立後、6月12日にWPPTの締結を承認した。日本は可能な限り早くWPPTに加入する。
D.プライバシー
日本政府は、2001年3月、民間部門における情報の保護の基本的かつ一般的な仕組みを構築するため、国会に「個人情報の保護に関する法律案」を提出した。本枠組みでは、個人情報の「保護」と「利用」との間の適切なバランスが図られるべきであることが明確にされており、また自主的なメカニズムを通じて苦情を解決する方途も開かれている。日本政府と米国政府は、プライバシーに関する問題について対話を続け共に作業する。
E.消費者保護
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日米両国政府は、電子商取引における消費者保護の促進を図ることの重要性を認識している。日本政府は、e-Japan重点計画-2002の施策のひとつである民間部門の自主的規制による消費者保護と裁判外の紛争解決手段(ADR)を含む消費者の紛争を解決するための制度の整備を促進する手段をとる。
- 2002年3月のIT作業部会において、米国政府は、産業界のリーダー、ADRプロバイダー、政府の担当者を出席させ、米国の消費者保護法制と苦情処理機関についての情報を提供させた。この対話に基づいて、日米両国政府は、消費者保護についての意見交換と民間からのインプットに対する支援を継続する。
F.電子署名
- 2001年4月1日から施行されている「電子署名及び認証業務に関する法律」においては、同法第2条及び第3条の要件を満たす電子署名が付された電磁的記録は真正に成立したものと推定される。電子署名が付された電磁的記録は証拠として法廷に提出が可能であり、それらの記録は単に電子的形態であるからというだけで法的効力を否定されることはない。
- 日本政府は、同法が技術的に中立であり、認定手続きは任意のものであることを確認する。また、同法は認定を受けていない認証事業者に適用されないようないかなる法的便益をも、認定を受けた認証事業者に与えるものではない。2002年5月時点で、6件の認定申請が認められている。
G.インターネット経由決済システム
日本政府は、電子決済システムのための競争的市場及び利用者の信頼を促進すべきであること、また、1998年の電子商取引に係る日米共同宣言に記載されているとおり、民間部門が電子決済システムにおいて主導的役割を果たすことの重要性を認識する。日本政府は電子決済システムにおいては迅速に送金できること、信頼できる証明及び認証技術を組み合わせること、高度なセキュリティを維持することが重要であると考えている。そのため日本政府は、消費者が安全に電子商取引を利用でき、民間事業者が自由に様々な経済活動に従事できる環境を支持すべくインターネット上の取引や事業の妨げとなる規制を改定している。
H.政府調達の電子化
- 開かれた透明性のあるIT調達
日本政府は、公共部門のコンピュータ製品及びサービスの調達に関して、内外無差別性、透明性、公平性を確保する立場から、各種措置を講じている。例えば、情報システムに係る政府調達について各省庁が横断的に取り組むべき課題について検討するため、全府省を構成員とする「情報システムに係る政府調達府省連絡会議」を2001年12月に設置した。本連絡会議は2002年3月29日に「情報システムに係る政府調達制度の見直しについて」を了承した。同了承に基づき、日本政府は2002年度から、極端な安値落札を防止するとともに、質の高い低廉な情報システムの調達に努めてきている。日米両国政府は、政府調達の透明性の確保のため、引き続き適宜情報の交換を行う。日本政府は連絡会議における検討成果に関する情報を公表していくことが重要と認識する。
- 入札者と調達機関のオンライン上の相互性
- 2001年10月、国土交通省はCALS/ECシステムの一環として電子入札を開始した。また国土交通省は、当初の計画を一年前倒しし、2003年度当初から全ての直轄事業において電子入札システムの導入を予定している。日本政府は、非公共事業の電子入札システムを2003年度末までに導入する予定である。
- 2001年度から、国土交通省は直轄事業の公告に関する総合データベースを運営している。
- 2001年11月より、国土交通省の電子入札システムに関するソフトウェアや技術情報を地方発注機関へ無償提供することにより、国土交通省は、地方自治体における公共事業の電子入札を促進している。
- 2002年6月に決定されたe-Japan重点計画-2002に基づき、日本政府は、地方公共団体の調達を含む行政及び申請手続きの電子化を引き続き支援していく。
- ソフトウェア資産管理
APEC参加国政府がソフトウェア及び他の知的財産に関する強力な管理体制を推進するための合意を実施するというAPECブルネイサミットの首脳宣言(2000年11月)の呼びかけに従って、日本政府は政府省庁が正当なソフトウェアのみを利用することを定める指針を策定していることを確認する。また、同システムは、政府が調達もしくは利用するソフトウェアが適正に利用許諾され正当に利用されることを確保するために有効で透明性のある手続きであることを日本政府は確認する。日本政府及び米国政府は本システムに関する情報交換を継続する。
協調的努力
I.電子教育
- 日米両国政府は、学校教育の情報化の重要性を認識し、教育制度における電子学習の利点について引き続き議論を行う。両国政府は、例えば「グローバル・コミュニケーション2002」と同様のイベントに参加する等、民間部門における電子教育のための技術的な解決策の活用を促進する協力のための方策についても引き続き議論を行う。
- 日本政府は、ハードウェア及びソフトウェアの双方に焦点をあて、2005年度までに公立学校のあらゆる授業においてコンピュータによるインターネットの活用を図ることや、教員のIT指導力の向上などを目指したe-Japan重点計画-2002を2002年6月に決定した。
J.IT技術の促進
日米両国政府は、新事業者及び中小企業が世界市場において効率性や利益を高めるためのITや電子商取引技術の活用を支援する。日本政府は、それら企業のIT化を促進するため、国内においてセミナーや研修など様々な措置を講じている。さらにこの目的のため、米国政府は、新事業者及び中小企業のIT資源の開発及び利用を支援する「ITマネジメント・ツール」のデモンストレーションを行う。デモンストレーションは、2002年9月の日本でのITトレード・ミッション時に、経済産業省の協力の下で開催される。
K.セキュリティ
日米両国政府は、経済協力開発機構(OECD)の情報システム及びネットワークに係るセキュリティ・ガイドラインが情報セキュリティに係る国内政策の重要な基盤であるとの見解を共有する。日本政府は、当該ガイドラインを支持し、2001年9月に東京にてOECDが計画したワークショップを開催した。当該ワークショップは、ネットワーク化された世界における情報セキュリティに焦点をあてた。日米両国政府は2002年9月11日までにOECDガイドラインの見直しの早期完了に向け、他のOECD加盟国とともに協力していく。
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