第二部 「アジア経済再生ミッション」の訪問を通じて
III.我が国支援策の検証
1.支援実施先国の評価
これまでの日本の各種の支援策については、訪問国すべてにおいて政府・民間双方より高い評価と期待が表明された。例えば、最初に訪問した韓国では通貨危機に際しての日本の対応に対する謝意の表明があり、タイでは、「困難にあるときの友人は真の友人」、あるいは、「日本の支援は地方の雇用創出や民間消費を促している」といった発言があった。また、ヴィエトナムでは石川プロジェクトに対して、「経済政策における各国・国際機関の専門家の提言の中で最も越の現状に合ったものである」との高い評価があり、タイでも水谷プロジェクトなどの経済政策面での支援に対して高い評価が聞かれた。
2.今後の課題
(1)必要な支援の継続
各国経済は明るさを取り戻しつつあるが、従来からの国際協力銀行による円借款に加え、新宮澤構想、特別円借款等の我が国の資金協力は引き続き各国経済の回復にとり不可欠なものであり、着実に実行して行く必要がある。
また、人材育成は、中長期的にこの地域の経済再生を確実なものとする上で、最も重視するべき分野である。各国のニーズは高く、我が国の貢献できる余地も大きい。留学生借款の活用や政府の政策支援、民間企業における中間管理職の育成などが考えられるが、今後、各国政府などとも調整の上、さらに具体的な分野の特定、それら専門家のリクルート、派遣形態(官民の分担を含め)等を詰めて行くことが求められる。いわゆるシルバー人材についても、その活用を積極的に検討すべきである。また、近年の情報通信技術の高度化に伴い、人材育成への遠隔教育の手法の導入も検討されるべきである。
(2)透明性の向上-資金の使途のモニタリング
我が国の政府ベースの資金協力については、その使途の透明性を確保することが極めて重要である。被援助国及び我が国双方の国民の目から見て、資金協力が本当に感謝され、理解を得ていくためには、資金が適切に使われることが必要である。
新宮澤構想の下での国際協力銀行による資金援助において発生する見返り資金については、国際機関を含めたドナーと協調しつつ、必要に応じて踏み込んだモニタリングを行う体制を整備している。また、インドネシア向け円借款においてはNGO等の参加も求め、モニタリングを行っている。今後、政府はこのようなモニタリングを含めたフォローアップに一層の努力を行うべきである。
(3)適時適切な援助の実施とその展望
今般のアジア経済危機の影響を受けた国々を早急に救済するため、新宮澤構想を始めとした緊急対応型援助はいわゆる「足の速い」プログラム型が中心であった。今般の経済危機においてはこのプログラム型援助が非常に有効であったのは前述の通りである。その一方で、プロジェクト型援助はもちろんのこと、今後の回復局面では先方政府・国民の経済復興・発展へのグランドデザインが今まで以上に重視されるのは論を待たないところである。今後、日本政府・援助実施機関は今まで以上に相手国のニーズ把握に努め、積極的な政策対話を推進することにより、一層効率的で効果的な援助の実施が求められる。アジア経済の安定的な成長・発展に貢献する日本の姿勢は今後一層期待される。
(4)広報の強化
我が国の支援について、その目的や内容を被援助国の国民に正確に広報することを怠れば、我が国がどのような支援を行っているか理解も感謝もされず、ひいては我が国国内においても対アジア支援の正当性に対する疑念を呼び起こしかねない。特に多くのアジア諸国において指導者の世代交代あるいは政権交代があったことを踏まえ、日本が行っている支援策、更には、基本姿勢について一層の広報努力が強く望まれる。
使途の透明性の確保における努力などを含め、現地マスメディア、有識者、企業関係者などに対し、現地大使館、進出企業などによる働きかけが一層必要である。英語・現地語での情報発信など、受動的な対応だけではない積極的な対応がなされるべきである。