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第二部 「アジア経済再生ミッション」の訪問を通じて(1)現状及び課題
韓国は着実に経済構造改革を進め、経済危機からの脱却を確かなものとしようとしている。しかし、改革はまだ道半ばであり、経済の上向き基調によって改革をスローダウンさせたり、収束させたりすることなく今後も継続的な改革努力が望まれる。改革の課題は次の通りである。
- さらなる金融システム改革を
韓国では不良債権処理を進めるとともに、競争力強化を狙って、金融機関の統廃合を積極的に推進している。日米欧の金融システムを参考としつつも、今後は韓国経済構造の変化とマッチした機能度の高いシステムをいかにして確立していくかが課題と目される。
- 国際競争力培養と市場原理活用の観点からの財閥改革を
金大中大統領の指導の下、財閥改革は強力に進められつつある。韓国は今後一層市場開放を進めて行く必要があり、経営の効率化、国際競争力強化をいかに結びつけていくかという視点に立ちつつ、市場原理がより有効に機能するように財閥の再編が推進されていくことが必要と考えられる。またこの過程で債務処理などを巡り国際的な信認や韓国経済のイメージを損なうことのないよう慎重な配慮が求められる。
- 外資導入の過程で専門家養成・スキルの向上を
韓国は積極的に外国からの投資の自由化(外国人投資法の改正)を行っている。これは経済のグローバル化の方向に沿って韓国企業に新しい展開の道を拓こうとするものであるが、今後海外から受け入れた資本や技術を活用していく過程においては、これを触媒として国内においてもこれまで以上にイノベーションの動きが誘発されるよう、専門家の養成やスキルの向上に努めていくことが望まれる。(2) 日本の役割
今後、日本は韓国との間では先進国同士のパートナーシップを構築していくという精神で協力していく必要がある。例えば、日韓が協力して第三国に対する支援を行ったり、また、危機再発防止のため、経済の動向や資本移動の状況について、日韓両国間においては、特に、相互モニタリングを行っていくことが考えられる。また、ブリッジファシリティーなど危機対応のためのバックアップシステムのあり方について検討を進めておくことも重要である。更に、不良債権処理については、人材、ノウハウなどの面で協力を進めることが考えられる。
日本企業にとって、韓国の投資環境及び市場アクセスは、経済危機前と比べてかなり改善されつつあり、また文化開放も一層進展している。しかしながら、このことに対する日本側の認識は十分でなく、過去の評価にとらわれず、大きく変わった韓国の現状を再評価すべきである。一方、日韓間になお残る投資及び市場アクセスの阻害要因については、これを解消すべく「日韓経済アジェンダ21」(99年3月日韓首脳合意)に基づき、今後更に協力していく必要がある。具体的には、当面は、投資協定、相互認証などの実現に努力することにより、両国企業の戦略的提携等経済関係の緊密化を積極的に推進すべきである。そうした努力の延長線上において、長期的には自由貿易協定(FTA)構想の実現を目指すべきであろう。(1) 現状及び課題
1980年代後半に始まったヴィエトナムの市場経済化・対外開放に向けた改革は、1990年代に入り諸外国からの直接投資・援助の流入を促進し、年平均8%台の高い経済成長を可能とした。しかしながら、アジア通貨危機による域内の貿易・投資活動の減退、近隣諸国に対する輸出競争力の低下等から、1998年以降成長率の鈍化を余儀なくされている。
- 経済構造改革の推進
市場経済体制への移行および海外との急速な経済交流は、多大な経済的・社会的便益をヴィエトナムにもたらしたが、同時に国内経済構造の様々な問題点を顕在化させてもいる。具体的には、国営企業改革、民間セクター育成、金融セクター強化、投資環境改善等が挙げられる。こうした経済構造改革の一層の推進のため、行政府のリーダーシップが発揮されることが期待される。特に、今後も同国の持続的発展にとり重要な役割を果たすであろう海外からの援助・投資の円滑な実施のためには、インフラ整備の他、ルールの透明性、行政手続の簡素化、国際会計基準の導入等を含めた民間企業・外国企業のビジネス環境の改善が喫緊の課題となっている。そして、これら課題への対応において、政府はまず早急に、個別の政策プログラムにより構成される体系的な構造改革のシナリオとその具体的な実施スケジュールを策定・公表し、改革の理念を内外に明らかにすることが必要である。
- 地域的協力体制への積極的参加と産業政策の整備
近年、ヴィエトナムは、1995年のASEAN加盟、1998年のアジア太平洋経済協力(APEC)加盟等、地域的な協力体制との関係を急速に深めてきている。今後はこうした地域協力の枠組みの中で積極的な役割を果たすことにより、グローバル経済への一層の統合が図られよう。具体的にはASEAN自由貿易地域(AFTA)及びASEAN産業協力スキーム(AICO)の実現に向けて積極的に参画していくことにより、外資利用による外向的発展、域内のプラス・サム的産業配置の環境整備が期待される。他方、未成熟ながら将来性のある産業の育成も急務であり、AFTAの貿易自由化の枠組みの中で、効果的かつ実現可能性を見据えた段階的な産業政策を実施することが望ましい。
- 人材育成
ヴィエトナムの労働力については、生産ラインでの勤勉さ・仕事の正確さについての評価が高い一方で、戦争や計画経済の影響により中間管理職の層が不足していることが指摘されている。こうした企業の中間管理職の育成は急務であり、教育・訓練システムの拡充とともに、既述のような民間部門のビジネス環境整備等により、海外で活躍する多くの優秀なヴィエトナム人の国内への回帰を促進していくことが重要である。
- 農業振興・地方開発
今般の経済危機の影響を緩和する上で就労人口の7割を占める農村部の果たした役割は小さくなく、国内の社会的安定・有効需要の創出においても農村振興を含む地方開発は重要である。今後は農水産物の加工工業の振興、マーケティング・物流インフラの整備等による農産物輸出の増加等により、農業部門がヴィエトナムの経済構造においてより積極的な位置を占めるような改革を進めることが重要である。(2) 日本の役割
ヴィエトナムの構造改革推進のため、我が国からは既に市場経済化総合政策支援調査(石川プロジェクト)や新宮澤構想の延長による経済改革支援借款の前提条件となった民間セクター育成プログラム策定支援等を行ってきている。今後はこうした政策対話を継続・発展させていくとともに、改革プランを実際の政策に適切に反映させるべく、我が国から法律・税制・財政・貿易・工業等の専門家、及び各政策を調整するハイ・レベルなアドバイザーをヴィエトナム政府や国営企業に派遣するなどの人的協力を行うことが期待される。
また、ASEANの構成員となったヴィエトナムが周辺諸国と比肩する経済発展を遂げるためにも、遅れが著しい経済・社会基盤の整備が必要であり、通常の円借款に加え、特別円借款の活用により、ヴィエトナムのインフラ整備を引き続き支援していく必要がある。(1)現状及び課題
1997年7月のバーツ暴落に始まる一連のアジア通貨危機の発端となったタイ経済は、1998年に史上最悪のマイナス成長を記録した。しかしながら、1999年に入り、タイ経済は落ち着きを取り戻し、経済は回復基調にある。
通貨危機を克服し、安定かつ持続的な成長を確固たるものとするためには、タイが取り組むべき喫緊の課題が存在する。それらは以下の3点に集約される。
- 人材育成
タイは現下の教育改革を推進し、初等・中等教育の更なる普及に努力するとともに、特に理工系人材及び産業の担い手となる熟練労働者の育成にも重点を置く必要がある。
- 21世紀に向けた産業育成
強固な産業体系を形造るために裾野産業の中核となる地場の中小企業育成が必要である。この一環として現在準備されているタイの「中小企業振興法」の成立が期待される。これまでタイの産業が強みを持っていた分野のみならず、情報通信等の新産業分野においても、日・タイ両国の企業協力が推進されることが期待される。このためにもタイ政府のインフラ整備を含めた投資環境、関連産業の政策を整備されることが期待される。
- 力強い金融システムの再生
タイ政府は銀行・民間企業の不良債権問題の早期解決に向け、引き続き努力することが重要であり、民間企業が抱える不良債権処理も含め、タイ政府の迅速かつ責任のある強力なイニシアティブを発揮することが期待される。(2)日本の役割
- 人材育成支援
大学・大学院を中心とした学術交流、学生・教員の相互交流を推し進め、理工系人材育成のために円借款の活用や退職技術者の派遣等をも通じて積極的に支援を行う。また、熟練労働者の育成のため、タイ国内の官民の取り組みを支援する。さらに、日本における現下の教育改革において、タイからの留学生が心地よく日本で学ぶことができるような環境作りを推進することが必要である。
- 中小企業支援
日本はこの分野に総合的な支援を行ってきており、中小企業金融の強化、人材育成、技術経営能力の強化等の分野において円借款の活用や専門家の派遣等を通じ積極的な支援を継続する必要がある。一方、日本企業としても、技術移転・技術者交流を更に積極化し、タイ企業との密接な協力関係増進に努力することが求められる。更には、日本企業とタイ企業はお互いの文化を尊重し合い、効率的なマネジメント・システム造りのために手を携えてともに努力することが求められる。また、ADB等が設立する「中小企業再建・育成ファンド」を通じて、中小企業への資本注入を円滑化し、ファンドのアドバイザリー・サービスと合わせて足腰の強い産業構造の形成を図るべく努力する必要がある。
- 金融システム改革支援
タイ政府の債券市場の育成、金融システム改革努力を側面支援するため、金融専門家の派遣等を行う。具体的には小規模企業金融公社(SIFC)強化に対する専門家派遣を通じての支援を本格検討する。
- 新パートナーシップに向けて
タイ政府は経済危機に際しての日本の官民を挙げた支援を高く評価しており、経済危機を経て日タイ関係は更に強固なものとなったと言える。日タイ両国が新たなパートナーシップの下で、アジアの平和と繁栄に向けてともに行動するためにも、両国政府間の政策対話を増進させ、新たな協力関係構築を目指すことが期待される。(1) 現状及び課題
通貨危機に見舞われた国の中でもマレイシアの対応は、IMFの支援を受けない独自のものであった。資本取引規制の導入と為替レートの固定により海外の投機筋の動きから自国経済を遮断しつつ、金融緩和と財政出動による景気刺激策を機動的に実施し、銀行への資本注入や不良債権の買い取りにより、金融機関の再編など金融システムの健全化にも積極的に取り組んでおり、マレイシア経済は回復基調にある。マハティール首相のリーダーシップの下で自ら問題を解決すべく努力したことが評価される。
- 今後の課題
1)引き続き適切な経済運営を行うことにより、ようやく緒についた経済回復をより確かなものとすることができるかどうか、2)MSC(マルチメディア・スーパー・コリドー)などの積極的な産業政策等を通じ産業の高度化が達成できるかどうか、3)既に進出している外資系製造業と有機的に結びついた地場の裾野産業が育成できるかどうか、4)不良債権処理や金融機関の再編などの金融セクター改革が成功するかどうか、5)教育や人材育成によって技術者や中間管理職などの人材不足を解消できるかどうか、が課題である。
- 資本取引規制の見直し
資本取引規制は99年2月と9月に改正が行われ、大幅に緩和されたが、固定レート制度は当面は維持される見込みであるが、将来見直しが行われるかは今後の重要な政策課題となるだろう。(2) 日本の役割
マレイシア経済の回復はようやく緒についたばかりであり、これを確かなものとするためには、日本からの資金協力が引き続き極めて重要である。また、人材育成と技術やノウハウの移転における協力は、特に、日本に対して期待が大きい分野である。我が国としても、円借款等を活用し、積極的に支援すべきであろう。マレイシアが産業の高度化や裾野産業の育成、金融セクター改革の推進に必要な人材を育成するために協力すべく、日本の経験を伝え、良き助言者として行動することが望まれる。外資、特に、日系企業からの苦情などには十分耳を傾ける国であり、問題点があれば率直に指摘し、議論して行くことが望まれる。
(1) 現状及び課題
インドネシアは総選挙を円滑に実施し、99年10月末には民主的手続きを経てワヒド大統領が選出されるなど政治の安定化に向けてのプロセスが順調に進んできたが、安定した政治環境と公正で透明性ある政治システムの確立に努めることが経済活動の活性化にとり不可欠であり、引き続き政治面、経済面での改革に取り組むことが期待される。特に、透明性やアカウンタビリティの向上に努めることが重要である。
マクロ経済状況は、このような政治的プロセスの進展はあるものの、不安定な状況が続いており、社会的弱者対策、経済関係の法規範の整備、銀行セクターの再建、民間企業債務問題解決など、ワヒド新政権にとっての課題は少なくない。(2)日本の役割
- インドネシアの安定への協力
国内の政治経済の安定化が喫緊の課題となっているが、インドネシアにとって政治的な安定の実現が経済面での信頼性の回復にとって特に重要である。インドネシアの安定はアジアの安定にとって重要であり、インドネシアの安定に関わる問題については、我が国が迅速かつ目に見える形で支援に乗り出す等の積極的な姿勢を示す必要がある。
- 人材育成支援
政治的安定が達成された後、中長期的には、主として、民間企業債務問題解決の促進、投資促進政策の実行、国内経済法規範の整備の三点について対応して行く必要がある。これらの課題の解決のためには、長期的視点に立った人材育成策が必要とされる。例えば、法制度面では会社法、破産法に代表される国内経済関連法規を整備するのみならず、迅速な手続き、法曹界の人材育成が課題となる。
- 債務処理への協力
銀行セクターが運転資金の供与を再開し始めたとは言え、産業部門への資金供給は依然として滞っており、民間企業債務問題解決に向けて、更に真剣な取り組みが求められている。今後は、政府、民間を含めた対外債務の処理が大きな問題となるであろう。日本としても、この問題への対応を検討するに当たっては、政府、民間債務者、民間債権者等と緊密な連携を持ち、国際的にもイニシアティブを発揮して行くことが求められている。
- 投資の促進
こうした状況もあり、海外からの民間部門への投資、とりわけ自国資本の還流(華人等)が停滞しており、投資促進の為の施策が求められている。円借款等を活用したインフラ整備もさることながら、まず現在問題となっている投資案件、例えば、電力セクターの再建のために実務家レベルの話し合いを直ちに開始し、日本側の意向を明確に相手に伝え、今後の投資増大のための環境の改善を行う必要がある。また、より長期的には、投資家の信頼感を得るに足るシステム、即ち、透明性が高く、アカウンタビリティーのある政治、経済の新しいシステムを構築する必要がある。(1) 現状及び課題
アジア経済危機は、フィリピンにおいては近隣諸国と比較してそれほど深刻ではなかったものの、経済成長率の悪化(実質GDP成長率97年5.2%、98年▲0.5%)、インフレ率の上昇(97年5.0%、98年9.6%)、財政収支の悪化(GDP比 97年0.1%、98年▲1.9%)といった指標からも明らかのように、経済成長と、貧困状況(貧困率97年32.1%)に対して大きな負の影響をもたらした。経済危機を契機として発生した経済面での諸問題を速やかに克服するとともに、持続的な経済成長を可能とし、貧困状況の緩和を促進するために国家経済の効率的運営及び重要政策の迅速な実行の確保並びに国民の社会福祉の向上が緊急の課題である。
(2) 日本の役割
フィリピンの国家経済の成長と国民の福祉を確保するために、日本が期待され、貢献できることは大きい。
- 産業構造転換への協力
フィリピンは地理的優位性(東アジア域内の中心に位置し、域内のハブ的役割を担える)と言語的特質(英語も公用語。外資系企業の進出容易。積極的労働力送出。)を有している。今後は、このような域内での比較優位性を生かした産業構造への転換を(運輸、サービス、金融等)図り、その育成に努めることが重要であり、我が国の協力が必要である。また、欧米や日本の金融機関の事務処理センターの誘致も努力に値する分野と思われ、我が国としてもこれに応えて行くことが望まれる。
- インフラの整備
全国的に未だ道路、交通、通信等のインフラの整備が遅れており、これが全ての産業の発展の足枷せとなっている。特に、将来的に発展の可能性の高い観光業の育成には交通網の整備が不可欠であり、また情報産業の発展のためには通信網の整備が重要である。その意味でも、我が国としては、引き続きインフラ整備に対する支援を行うことが重要であろう。政府が外国人の土地保有を認めようという動きもあるようだが、これは工業の誘致及び観光業等の育成に寄与するであろう。
- 中小企業育成への支援
対外輸出の大半を占める電気・電子産業をはじめとする第二次産業を下支えする裾野産業の核となる中小企業の育成が重要である。具体的には、生産品の品質向上や中小企業向け融資制度の整備等を図るために、ツー・ステップ・ローンを活用する他、それらに係る人材の育成が必要である。
- 労働者の受け入れ
現在、海外に約400万人の労働者を派遣し(看護婦、船員等主にサービス産業に従事)、海外労働者からの送金は国家経済に大きく貢献しており、更なる労働市場の開放を求めている。我が国としても比国の優秀な人材を介護等の分野で柔軟に受け入れて行くことについて前向きに検討する必要がある。
- 貧困緩和への協力
フィリピンの国家的課題である貧困緩和問題については、農村の生活向上が根本的解決に不可欠であり、農村開発のためのプロジェクトに我が国が協力を強化する必要がある。また、都市部の不法居住者やストリートチルドレンの生活向上、国家社会保障制度の拡充、感染症対策などの国民の健康状態の改善等の対策を積極的に支援することが必要である。本ミッションは上記6ヶ国を訪問する途次シンガポールに立ち寄り意見交換を行った。シンガポールは通貨危機の直接の影響は受けなかったものの、域内経済の低迷による影響を受け、98年には経済成長率が鈍化したが、再び高い成長を遂げつつあり、我が国としては地域協力の推進に向けて金融・情報センターとして発展するシンガポールと緊密に協力して行くことが重要である。
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