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トップページ > 各国・地域情勢 > アジア |
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第二部 「アジア経済再生ミッション」の訪問を通じて1997年 7月のタイバーツ下落に端を発したアジア通貨危機は東アジアの多くの諸国に未曾有の経済困難をもたらしたが、多くの国においては単なる経済改革のみならず、政治・社会改革が進められようとしており、これに応じた国際社会の支援によって東アジア各国の経済は総じて最悪期を脱したものと見られる。
(1)1998年のアジア経済は、通貨・金融危機の長期化・深刻化により、アジア全体の成長率を大きく下げたが、1999年に入り、国によってその程度は異なるものの、通貨安定に伴う金利の低下や工業生産など回復の兆しが見られるようになった。
(2)更に、株価等の上昇による個人消費の活性化、世界の半導体・コンピューター関連製品の需要回復による輸出増、好天による農業生産の増加、景気浮揚策による内需拡大等により、アジア経済には一段と明るい材料が見られるようになり、1999年9月には、国際通貨基金(IMF)及びアジア開発銀行(ADB)が同年4月に発表したアジア各国の経済成長見通しを大幅に上方修正するなど、アジア経済は回復基調に入ったとの見方が広がっている。
(3)しかしながら、アジア経済の回復は、政府支出の下支えによる面が大きく、また、世界貿易の拡大や米国経済の好調維持などが前提となっており、アジア各国は引き続き、実体経済の回復、金融システム改革、企業の過剰債務解消や中小企業を主とする企業改革といった経済構造改革、人材育成等の課題に取り組んでいく必要がある。
(4)また、アジアのGDP全体の約2/3を生産する日本経済がアジアの経済回復に大きな役割を果たすことを踏まえ、我が国に対するアジア各国の期待に応えるためにも引き続き我が国が自らの経済回復に全力を挙げて取り組んでいくことが重要である。
アジア経済は総じて回復基調にあると言えるが、各国経済の回復を一時的なものではなく本格的なものとするためには、各国が抱えている構造的な問題を解決する必要がある。
(1)アジア各国は、経済危機によって、経済成長の減退を見たが、成長のための潜在力を失った訳ではない。その潜在力を発揮し、再び力強い発展を実現するには、国内経済基盤の強化が必要不可欠である。勿論、国際金融システムの改革・強化など国際社会が取り組むべき課題もあるが、我が国を含めたアジア各国がそれぞれの国での改革努力を疎かにしてよい訳ではない。
(2)訪問国では、経済構造改革の必要性を認識する発言があったが、その中でも、特に目立ったのが、不良債権処理、銀行改革等を含む金融構造改革と、部品産業、裾野産業や競争力のある輸出産業の育成に向けた中小企業育成である。
(3)総じて、訪問したアジア各国では、経済構造改革に努力している姿勢が伺われ、改革の重要性とその継続への強い意思が存在していた。改革の継続のためには政治的な指導力が必要であり、今後各国の指導者のリーダーシップが期待される。
(1)現在の、グローバルな国際金融システムにおいては、市場の信認が突然揺らぐと、巨大な民間資金の流れが大きく変化し、様々な規模、期間のパニックが起こり得る。アジア通貨危機の原因の一つは、域内諸国の短期でかつドルに偏り過ぎた資金調達の脆弱性であったが、その後のロシア、ブラジルの危機を見るまでもなく、グローバルな金融システムそのものに内在する危険性に着目しなければならない。
(2)まず、先進国による大規模な資本移動に関しては、ヘッジファンドを含む金融仲介機関をモニターし、健全性の観点から必要な対応を行い、過剰な投機を食い止めながら、必要な国際的資本取引の流れを高める必要がある。他方、最終的な資金の受け手である新興市場国は、取引の透明性やディスクロージャーの促進、金融機関に対する健全性の観点からの規制、銀行や企業のリストラのための法的インフラの整備などに努めることが重要である。
(3)アジア域内の地域協力のメカニズムとしては、1997年の通貨危機発生後に作られたマニラ・フレームワークが存在する。これは、域内の経済サーベイランスや金融セクターや市場監督の強化のための技術協力などを柱とする地域協力の枠組みである。危機対応の仕事としては、IMFに対して、新たに短期的な融資を行う仕組みを創設するよう要請された。これが補完的準備融資制度(SRF)として実現し、1997年12月の韓国危機の際に発動された。既に、域内の経済サーベイランスは過去5回実施されており、アジア各国の経済構造改革の達成に向けたピア・プレッシャー(事前相互警告)をかける役割を果たしている。今後は、このような地域協力の枠組みを足掛かりとしながら、アジア域内において、グローバルな金融システムと整合性のとれた効率性の高い市場と効果的な金融仲介機能を創設、育成していく必要がある。
(1)21世紀の繁栄するアジアの実現に向けて、ヒト、モノ、カネ、情報、技術開発の活性化が不可欠であるが、特に、全てに関係する要素であるヒトの資源の活性化が重要である。通貨危機の教訓という意味において、「モノ作り」を重視し、そのための努力を強化していく必要があるが、「モノ作り」を支えるための「ヒト作り」を重視していくことがこれからのアジアの中心的課題である。特に、日本の優れた「モノ作り」の技術・ノウハウの移転は設計図やマニュアルだけで行われるものではなく、中長期的に「ヒト作り」を通じて、じっくりと実現させていく必要がある。我が国は「モノ作り」の分野で世界をリードしており、工業化の流れの中で我が国が「ヒト作り」の分野で協力して行くことは自然なことである。日本がASEANと協力して、ラオス、カンボディア、ミャンマー等のインドシナ諸国の経済危機からの回復及びASEANへの統合を円滑に進めるための支援を人材養成分野を中心に進めて行くことも重要である。
(2)また、ヒトの活性化を進めていくためには、日本とアジアの人的交流を深めていく必要がある。特に、学生レベルでの交流を図ることは将来におけるアジア諸国間のより良い関係を築く上で重要である。現在、アジア諸国においては、日本より欧米諸国へ留学する学生が圧倒的に多く、これは、アジアにおいて日本語の普及が進んでいない、日本の大学等の国際化が進んでいない、日本への留学によるメリットが少ない等の問題が考えられる。今後、日本への留学にインセンティブを与えるためには、日本自身が各種の改善を行うことが必要である。また、アジア各国に対する我が国の若者などの留学を拡充するための環境を積極的に整備して行くべきである。
(3)資源のない日本が持つ大きな財産である優秀な人材を高齢化社会到来の中でアジアの繁栄のために使うことや、留学生を含む人的交流を一層強化することは極めて重要であり、日本はヒトの分野での協力や交流を今後の対アジア政策の大きな柱として位置付けていく必要がある。
日本が自らの経済的困難にも拘わらず、経済危機に見舞われたアジア諸国に対し、従来からの円借款に加え、新宮澤構想、特別円借款に至る一連のアジア支援策を積極的に表明・実施してきたことはアジア経済の回復に大きな助けとなるとともに、アジア各国に真の友人としての日本を強く印象付けた。今後、日本がアジアの「盟友」となるためには、ヒト、モノ、カネ、情報の各分野においてアジア各国により積極的に提供するとともに、知恵を出し、我が国に期待されるイニシアティブに基づいてアジアの共通の利益を引き出していくことが求められる。日本がこのようなアジアの期待に応えていくためには、日本自身がアジア、そして世界に開かれた社会となることが不可欠であり、今こそ日本を開き「第三の開国」を推進する必要がある。
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