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「JETプログラム」―日本の国際化へ向けた縁の下の力持ち―

文化交流部 人物交流課 新井辰夫課長に聞く

収録:平成14年11月20日

早稲田大学政治経済学部政治学科 倉持有紀さん
早稲田大学政治経済学部政治学科
倉持有紀さん

 「日本で行われている国際交流にはどのようなものがあるか。」
 普段の日常生活で私たちが外国人と出会う機会はとても限られています。私が中学生の頃、ALT(Assistant Language Teacher)として英語を教えてくれた外国人の先生のおかげで英語に興味を持つきっかけをもらったことを今でも鮮明に覚えています。しかしこのプログラムがどのように運営・管理されているか、その実態はあまり知られていません。縁の下の力持ちとして私たちの国際交流を支えて下さっている外務省人物交流課の新井課長にお話を伺いました。(倉持)


倉持:外務省では、海外との人物交流のために、どのような事業を行っているのでしょうか。概要とともに教えて下さい。

新井課長:外務省では大きく分けて3つの人物交流事業を行っています。まず第一には、内閣府とも共同で行っている「青年交流」が挙げられます。これは文化人的交流の目的で、2週間の短期プログラム等、若者の招聘事業を行っており、NGOとの共同プログラムでもあります。第二に、芸術家・文化人・研究者などを招き、文化的・知的な国際交流を国際交流基金の活動を支援する形で行っています。最後に、留学生の支援というものが挙げられます。これは海外からの留学生に奨学金等の支援をしたり、帰国後の留学生同士の同窓会創立の支援をしたりするもので、国内においては文部科学省と協力して事業を行っています。

倉持:現在観光やビジネスで多数の人が日本に来たり、日本からも多くの人が海外に出掛けています。そのような中で政府が税金を使って人物交流を促進する理由・目的は何でしょうか?

新井課長:観光やビジネスによる人の往来によって海外の国・地域の人々と接する場合、時間的に限られていたり、ビジネスという狭い視野からお互いの利害を意識してしまい、本来のその国の文化、社会など幅広い姿に触れ交流関係を育むことは困難かと思います。そのような意味から、当課としては青年交流、芸術・文化交流、留学生交流を通じて日本と外国の人々がそれぞれお互いの国をよく理解し、将来にわたり友好関係が保たれることを望み努力しております。昨今の日本における財政事情は非常に厳しくなっておりますが、このような親日・知日家の核を世界中に育てる事業に国民の税金を投資することは、将来の日本にとって大きな実となって還元されることと確信し、推進しています。

インタビュー"
倉持:今日は、特にJETプログラムについて伺いたいと思いますが、JETプログラムとはどのようなものでしょうか。またどのような経緯で昭和62年に発足したのでしょうか。その目的は、16年間の年月を経てどのような変化を遂げ、現在は何を主要な目的としているのでしょうか。

新井課長:JETプログラムとは、The Japan Exchange and Teaching Program(語学指導等を行う外国青年招致事業)の略称で、我が国に招致された青年が、各自治体において国際交流活動に従事したり、学校等で外国語指導助手をする青年交流事業です。JETプログラムは昭和62年にそれ以前の事業を引き継いだ形で発足しました。以前は外国語の教育指導プログラムという側面が強かったのですが、せっかく優秀な外国の青年が日本に滞在するのですから、ただ英語を教えるのみではなく、同時に国際交流を深めようという目的で、JETプログラムは創設されたのです。現在、参加者の職種には、地方公共団体で交流活動に従事する国際交流員及びスポーツ国際交流員、並びに、教育委員会や学校で外国語指導に従事し、全招致者数の約9割を占める外国語指導助手があります。
 JETプログラムは、その発足後、現在まで大きく二つの変化を遂げてきました。一つ目は、参加者数及び対象国数における「規模」の拡大です。当初の招致目標は3000名程度、対象国は実情に応じ順次拡大しようというものでした。それが本年度には38カ国、6273名に到達するまでになりました。この背景には想像を上回るほどの地方自治体からの要請と需要があり、JETプログラムは確実に評判を上げ、成功を収めてきたことがあります。第二の変化としてあげられるのは、「質的な広がり」です。平成6年度に、スポーツ指導を通じた国際交流業務に従事する「スポーツ国際交流員(SEA)」の招致が新たに開始されました。また、対象国や対象言語の広がりも見られ、当初対象言語は英語のみであったのが、平成元年度にはドイツ語、フランス語、平成10年度には中国語、韓国語が追加されました。英語圏からの招致については、当初は、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アイルランドでしたが、それに加えて、南アフリカや、シンガポール、ジャマイカ等の国々からも招致を開始しました。現在の目的としては、大きく分けて3つあり、わが国における外国語教育の充実や向上、そして地域の国際化といった従来からの目的に加え、来日者が述べ3万人を超えた今、JETプログラムの参加者が創設した同窓会(JETAA:JET Alumni Association)を支援することで、彼らがそれぞれの母国で行う草の根レベルでの日本文化の紹介等の文化活動を支援し、海外における対日理解を促進させることも現在の主要な目的の一つに掲げられています。

倉持:総務省、文部科学省、外務省、自治体国際化協会(CLAIR)の共同事業であるJETプログラムにおける外務省の役割は何でしょうか。

新井課長:外務省は「来る」部分と、「送り出す」部分の役割を担っています。約100もある関係在外公館を通じて参加者の募集・選考を実施し、参加希望者がスムーズに日本に来られるよう「来日」の際のお手伝いをします。そしてJET参加者が任期終了後、それぞれの国に帰国をした後のJET参加者の同窓会である「JETAA」の活動を支援するとともに、元JET参加者の日本語教育の研修事業を実施しています。

新井 辰夫 文化交流部 人物交流課長
新井 辰夫 文化交流部 人物交流課長
倉持:JETプログラムの上げた成果は何でしょうか。JETプログラムに参加した人々は、帰国後も日本との交流に活躍してくれていますか。例えばどのような人を輩出しているのでしょうか。

新井課長:昨年はJETプログラム発足15周年を迎え、これを機に行われた「基本問題検討会」の報告書において、教育現場や、地域社会での成果が大変な評価を上げたことが発表されました。教育現場においては、JETプログラムの外国語指導助手のおかげで、生徒の外国語に対する関心、外国語授業に対する積極性、生徒の外国語運用能力などが向上しており、また地域社会においては、CIR(国際交流員)による活動の結果、国際イベントの実施・参加の促進など地域における国際交流活動が活発になりました。JETプログラムの多大な成果の一つとして、3万人以上に及ぶ日本の理解者を輩出したことが上げられます。彼らの中には帰国後日本の大使館に勤務したり、日本関連企業に就職するなど、各界で活躍している方も多いです。

倉持:JET参加者に必要な条件は何ですか。応募者はどのくらいいるのでしょうか。

新井課長:JETに参加するための要件は色々ありますが、何よりも大切な条件は、参加者が日本に関心を持ち、教育や、地域での国際交流に参加する意欲があることです。応募者数については年度や英語圏か非英語圏かで異なってきますが、最も応募者数の多いアメリカでは約3000人程度、次いでイギリスの約1500人程度です。

倉持:JET参加者は、日本についてどのようなことを感じることが多いのでしょうか。エピソードなどがあれば教えてください。

新井課長:JET参加者は皆、JETプログラムをとても楽しんでいる印象を受けます。日本を知っていた参加者も、それまで日本を全く知らなかった参加者も同様に、今まで知らなかった日本との遭遇、言い換えれば、今まで知らなかった日本文化との出会いをとても楽しんでいます。以前、岐阜県の国際交流センターでこのような出来事がありました。日本の小学校を出たドイツ出身の国際交流員と、イスラエル出身の国際交流員が共同でお互いの国の歴史の紹介を、高校のプレゼンテーションの時間に行いました。これはまさに、平和のメッセージそのものであり、繰り返してはいけない歴史を紹介するものでした。これは、日本に来た外国人が、日本に自分の国のことを伝え、相互理解を深めるとともに、また新しい形での国際交流、国際理解をも生むことが出来る、そのような可能性を秘めた出来事でした。


JETパンフレット
倉持:JETプログラムの今後の課題は何でしょうか。

新井課長:「JETプログラム基本問題検討会」で話し合われた今後の課題として、これまで高い評価を受けてきたJETプログラムの「いかに良い部分を維持していくか」が主要な論点となり、より良い人材に日本に来てもらうために、JET宣伝の活性化や参加者の選定過程を充実させる必要があるという意見が出ました。また、JETプログラム参加者が帰国後に彼らの国々へ日本文化を紹介し、日本に興味を持つ若者が増えるよう、JETAAとの連携を促進する必要性が話し合われました。JETプログラムには国の大切な税金が使われており、その金額に見合った貢献をしてもらうためにも、真のフィードバックが効果的に行われるべきです。現在JETAAは会員同士で連絡をとりあい、組織としての結束を強化し、日本に関する活動を行っています。文化事業のみならず、在外公館でJET参加者の募集・選考時に、説明会に参加したり、面接官を行うなど協力しており、こうした連携はプログラム全体の充実化に資するものです。また、JETプログラムは参加者自身のキャリアアップにもつながりますし、日本側としても帰国後の支援プログラムをより一層充実させる必要があるのです。

倉持:ありがとうございました。今後もより一層の日本の国際化に向けた更なるご活躍を期待しております。

【インタビューを終えて】
 国際化が必要とされている今日ですが、実際に私たちはどのように国際交流をすることが出来るのでしょうか。国際交流の機会に恵まれない地域社会の人々にとって「JETプログラム」は唯一の異文化との交流です。草の根レベルの交流も勿論大切ですが、それだけでなく外務省がこのような形で私たちの国際交流の基礎を築き、それを支援する「縁の下の力持ち」的役割を果たしていることに、このインタビューを通して、気がつくことが出来ました。私が海外へ興味を持つきっかけを作ってくれたALTのディビッド先生との出会いが、このJETプログラムのお蔭であったことに対して、感謝の念を抱くとともに、私のような学生が、今後益々増えてくれることを期待しています。日本の心なる国際化に向けたJETプログラムの益々の充実と発展を祈らずにはいられません。



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