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可能か!?温室効果ガス削減
気候変動枠組条約室 岡庭健室長に聞く

収録:平成14年9月11日

慶應義塾大学経済学部3年 福山豊和さん
慶應義塾大学経済学部3年
福山豊和さん

 地球温暖化による気候変動の問題が大きくとりあげられた92年の地球サミットから10年、温室効果ガスの排出量は逆に伸びているという現実があります。そこで今日は温室効果ガスの実質的な削減の枠組みともいえる京都議定書の発効にむけてのわが国の取組みについて、気候変動枠組条約室の岡庭室長にお聞きしました。(福山)


福山:まず、気候変動に対する基本的な認識を教えて下さい。

岡庭:この50~100年間で気温は上昇しています。そして今後温室効果ガスの排出量がますます増加していくにつれて洪水や台風、旱魃など気候変動の影響がひどくなったり、生態系にも悪影響を与える懸念があります。したがって、温室効果ガスを減らす努力を強化しなければならないと認識しています。

福山:我が国が京都議定書を締結する意義を教えて下さい。条約達成目標にむけて温暖化ガス排出量を削減するにはどのような努力が必要でしょうか。

岡庭:地球温暖化は加速度的に進み、また対策の効果が現れるのは先のことですから、早く取り組みを開始しなければなりません。まずは先進国が率先して温暖化ガスの排出を削減しなければならないと考え、日本は今年6月4日に京都議定書を締結しました。
 我が国の達成目標は90年の比率マイナス6%の排出削減を2008-2012年の間に達成するということですが、すでに2000年時点で8%増加しており、またこの期間は経済が停滞している中での増加でしたので、このままだと2012年には約20%もの増加も見込まれ、日本は6+20=26%の排出量削減をしなくてはならないともいわれています。今後、この目標達成に向けて全力を尽くす考えです。

岡庭 健 気候変動枠組条約室長
岡庭 健 気候変動枠組条約室長
福山:具体的にはどのような政策がありますか。

岡庭:グリーン税制などにより企業の削減インセンティブを高めたり、省エネ法改正、教育や啓蒙活動により個人の自由を尊重しながら温暖化ガス削減を奨励することが考えられます。また、外務省は政府開発援助を使って途上国で温室効果ガスを削減するプロジェクトに関わっています。プロジェクトにより削減された排出量は日本の目標達成のために使うことが京都議定書で認められていますので、これを活用する考えです。

福山:米国は京都議定書の批准を拒否しましたが、日本政府としては米国政府に対して申し入れを行なっていくべきではないでしょうか。

岡庭:アメリカが果たすべき役割はとても大きいため、あらゆる機会を使って働きかけを行っています。小泉首相とブッシュ大統領の首脳会談や川口大臣とパウエル国務長官の対話をはじめ、高官同士のハイレベルな協議を進めてきました。両国で国内や途上国における対策協議や、気候変動科学プロジェクトを共同で行なうなど緊密な対話を続けることによりアメリカを気候変動問題へ関わらせていくことで、将来一つのルールに入れることを期待しています。

インタビュー
福山:ヨハネスブルグサミットではロシアの批准の意図表明により京都議定書の発効にむけて大きな前進がありましたが、日本は議定書発効にむけてどのような働きかけをしていますか。

岡庭:日本政府はこれまで一貫して京都議定書のすみやかな発効を目指してきました。もし排出量の一番大きな米国が批准しない場合には、ロシアの批准が議定書発効の必要条件となるため、ロシアに対しては川口大臣がロシア外務大臣や副首相との話し合いをもちました。またカナダや豪州に対しても議定書締結をするよう働きかけを行っています。

福山:環境NGOの報告では、地球温暖化により標高の低い小島嶼国に被害がでると指摘されていますが、日本はそれらの国々に対して特別な援助を行うのでしょうか。

岡庭:日本は平成9年に京都イニシアチブという温暖化関連の支援策を発表しており、それには途上国の能力向上といったソフトな支援や気候変動により被害を受けるであろう島嶼国や川の水位上昇が懸念されている国に対する護岸工事などの援助が含まれます。
 中国やインドをはじめとする途上国の温室ガス排出量は2015年には先進国の排出量を上回るといわれおり、それを削減しないと根本的な解決にはなりませんので各国の省エネ対策や代替エネルギー導入、植林等にも協力しています。

岡庭 健 気候変動枠組条約室長
福山:国際会議などにおいて影響力の弱い途上国が発言力を高められるような方法はありますか。

岡庭:途上国は気候変動により影響を受けているから各国に助けてほしい、もっと温室効果ガスを削減してほしいと訴えるわけですが、その訴えは科学的根拠に基づいて行なわれているわけではありません。まさにその科学的根拠をめぐって異議を唱える国も一部にはあるわけですし、あるいは何をすればいいかという点でもいろいろな意見があるわけです。日本は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)における検討を通じて、どういう気候変動が起きているのか、どうすれば気候変動を緩和できるのか、そして将来の予測などを整理し、国際的に一つにまとまった報告をつくることに人材派遣、資金協力両面から貢献をしています。

福山: NGOとは良好な関係を築いていますか。

岡庭:ヨハネスブルグではNGOとの意見交換がなされました。また政府の代表団にもNGOから9名が参加しています。意見交換はNGOに限らず、引き続き幅広く行っていきたいと思います。

福山:どうもありがとうございました。

【インタビューを終えて】
 外務省の環境政策は国民に見えにくいのではないかとお聞きしたところ、外務省は経産省や環境省をはじめとする官庁、産業界、NGOなどの意見を調整して外国との交渉にあたるため国内政策的には偏った立場をとりにくいとのことでした。
 外務省職員の方々は、一歩外にでれば多国間交渉の席では各国それぞれの事情を理解しつつ日本の国益を守るためのかけひきに奮闘し、また同時に日本の立場を理解してもらうために常日頃から二国間での交渉も行なっています。我々はメディアではなかなか報道されることのないこれらの外務省本来の仕事の重要性を再認識する必要があると感じました。(福山)


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