エジプトの「シャルキーヤ県北西部上水道整備計画」ほか1件に対する無償資金協力について
平成16年6月10日
- わが国政府は、エジプトにおける、「シャルキーヤ県北西部上水道整備計画」および「バハルヨセフ灌漑用水路サコーラ堰改修計画」に資することを目的として、総額48億4,400万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、6月10日(木)、カイロにおいて、わが方浦部和好駐エジプト国大使と先方ファイザ・アブルナガ外務担当国務大臣(H. E. Mrs. Fayza ABOULNAGA, Minister of State for
Foreign Affairs)との間で行われた。
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シャルキーヤ県北西部上水道整備計画
(the Project for Water Supply Development in Northwestern Part of Sharqiya Governorate)
28億4,300万円(平成16年度 2億400万円、平成17年度16億5,600万円、平成18年度9億8,300万円)
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バハルヨセフ灌漑用水路サコーラ堰改修計画
(the Project for Rehabilitation and Improvement of Sakoula Regulator on Bahr Yusef Canal)
20億100万円(平成16年度4億6,700万円、平成17年度12億9,700万円、平成18年度2億3,700万円)
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- (1)シャルキーヤ県北西部上水道整備計画
エジプトでは現在、都市人口急増のため、上下水道をはじめとする都市住環境の保全・改善に関する事業の展開が急務とされており、現在実施中の第5次国家経済社会開発5カ年計画(2002年から2006年)においても、その重点目標として社会サービスへの政府予算増加による生活水準の向上を掲げ、上下水道の整備を進めている。
特に、ナイル川デルタ地帯に位置するシャルキーヤ県北西部は、現在本格的な浄水場がなく、コンパクト・ユニットと称する小規模簡易浄水施設と井戸からの給水が行われているが、コンパクト・ユニットは耐用年数が短く、また、井戸は地下水の塩水化が進行しているため、住民は、人口が急増する中、量的に不十分でしかも飲用に適さない水の使用を強いられており、現在、同地域における早期の上水道整備をめざしているが、厳しい財政事情の下で実施の目途がたっていない。
このような状況の下、エジプト政府は、シャルキーヤ県北西部に新しい浄水場を建設するため「シャルキーヤ県北西部上水道整備計画」を策定し、この計画の実施に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものであり、これは、エジプトに対するわが国の援助重点分野、生活環境の向上に合致するため実施するものである。
この計画の実施により、エジプトのシャルキーヤ県北西部の住民約22万人 が、安全かつ安定した量の給水を受けることが可能となり、住民一人当たりの給 水量が、現在の1日101リットルから157リットルに増加することが見込まれることから、エジプトの経済社会開発にも貢献することが期待される。
(2)バハルヨセフ灌漑用水路サコーラ堰改修計画
エジプトは、主食である小麦の自給率が約50%にとどまっており、その多くを輸入に依存している状況にあるが、人口の急増に伴い、人口増加に見合う食糧自給率の向上が急務となっている。しかしながら、年間降雨量が約5mm程度の小雨であること、ナイル協定によりナイル川の年間利用可能水量が555億立方メートルに限定されていること、国土の大部分が砂漠地帯であることから耕作可能面積が全土の約4%に過ぎないこと等が大きな制約となっている。
このような中、エジプト政府は、食糧自給率の改善のため、エジプト農業全体の約13%の灌漑に使用されているバハルヨセフ灌漑用水路の中流に位置するサコーラ堰の改修計画を進めるため「バハルヨセフ灌漑用水路サコーラ堰改修計画」を策定したが、同国の厳しい財政事情のため実施の見通しは立っていない。しかし、サコーラ堰は、建設後約100年を経て老朽化が著しいため堰の開閉が十分に行うことができず、本来の灌漑のための役目を十分に果たしていない。また、老朽化の進行による自然崩壊の恐れもあり、周辺農民・農地に多大な被害が及ぶことが予想されているため、同計画の実施は急務となっている。
このような状況の下、エジプト政府は、「バハルヨセフ灌漑用水路サコーラ堰改修計画」の詳細設計の実施のために必要な資金につきわが国に対し高い優先度を付し無償資金協力を要請してきたものであり、これはわが国のエジプトに対する援助重点分野、農業生産の拡大にも合致するため実施するものである。
この計画の実施により、既存の堰が崩壊した際に想定される住民および農地への被害が未然に防止することが可能となるとともに、約3万4,700ヘクタールの農地に安定して水を供給することが可能となることから、約53万人の農民の所得が向上することが見込まれ、これを通じて、エジプトの経済社会開発に貢献することが期待される。
(参考)
ピラミッドに象徴される古代文明の発祥の地であるエジプトは、地中海東岸の北アフリカと中東にまたがって位置する人口約6,900万人の国である。国土の大半が砂漠であるが、ナイル川沿いおよびナイル川デルタ地帯においては工業、農業が行われている。中東和平の推進やアフリカ開発問題等において積極的な役割を果たし、中東・アフリカを中心とした国際政治における重要な地位を占めている。
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