中国の「人材育成奨学計画」ほか3件に対する無償資金協力について
平成14年9月6日
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わが国政府は、中華人民共和国政府に対し、「人材育成奨学計画」、「黄河中流域保全林造成計画」、「第二次貧困地域結核抑制計画」および「長春中日友好浄水場制御設備改善計画」のため、総額22億5,300万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、9月6日(金)、北京において、わが方阿南惟茂在中国大使と先方龍永図対外貿易経済合作部副部長(Long Yongtu, Vice Minister, Ministry of Foreign Trade and Economic Cooperation)との間で行われた。
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「人材育成奨学計画」(The project for human resource development
scholarship)
供与限度額 3億6,300万円
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「黄河中流域保全林造成計画(2/3期)」(The project for Afforestation for Conservation of Middle Stream of Huang He)
供与限度額 4億8,900万円
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「第二次貧困地域結核抑制計画」(The project for Tuberculosis Control in
Poor Areas)
供与限度額 4億 200万円
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「長春中日友好浄水場制御設備改善計画」(The project for improvement of
control equipment in Chungchun Sino-Japanese People's Friendly
waterworks)
供与限度額 9億9,900万円
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2. |
(1) |
「人材育成奨学計画」
中国経済は、改革・開放政策の進展に伴い、沿海部を中心にめざましい発展を遂げている。また、昨年11月にWTO(世界貿易機関)に加盟しており、公平・公正な国際ルールのもと、対外経済関係の構築が今後の課題となっている。
また、改革・開放政策の進展は、「沿海地域と内陸部の著しい経済格差(一人当りGDP(国内総生産)は上海3,300ドルに対し貴州省では300ドル)」、「失業者の増加と社会保障体制の未整備(7%強の国有企業のレイオフ(一時解雇)に加え多くの潜在的失業者の存在)」、「大気汚染や生態環境悪化等の環境問題の顕在化(二酸化硫黄による大気汚染、砂漠化(毎年ほぼ神奈川県の面積が砂漠化))」等の様々な政策課題を投げかけており、沿海部の発展に伴い、年々その課題克服の重要性を増している。
このような状況の下、中国政府は、中国の持続可能な発展、日中両国政府間の相互理解を増進する観点から、中央政府若手行政官を主たる対象にわが国の大学院に留学する「人材育成奨学計画」を策定し、わが国政府に無償資金協力を要請してきたものである。
なお、この計画では、わが国と関わりの深い中央政府機関の若手行政官40名を対象に、日本の大学院において法律、経済、経営、公共政策の4分野について学位取得を前提とした留学に対して経費を支援するものである。本協力により、中国政府のキャパシティビルディング、政府レベルの相互理解の増進が期待される。
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(2) |
「黄河中流域保全林造成計画(2/3期)」
中国には1億6,000万ヘクタールの砂漠を含む2億6,000万ヘクタールの荒廃地が存在する。特に黄土高原を中心とした黄河中流域では4,300万ヘクタールにも及ぶ荒廃地が広がっており、土砂流出、飛砂、風蝕等による農業生産の低下、農地の縮小などの被害が広がっている。さらに、中流域の荒廃は下流域にも影響を及ぼしており、夏季の集中豪雨による洪水、冬季の少雨による流下水の消滅等の現象を発生させている。
中国政府は1978年から中国内陸中西部および北部の植林を行う三北防護林造成計画を実施し、国土の緑化を行い、地域の生活環境の改善に努力しているが、特に広大な荒廃地が広がる貧困地域においては、植林活動が進んでいないのが実態であり、黄土高原と砂漠に囲まれた貧困地域である寧夏回族自治区に関しても、砂漠化が進行し、風食、風砂による農牧業および住民生活への被害が深刻となっている。
このような状況の下、中国政府は寧夏回族自治区における砂漠緑化を図る「黄河中流域保全林造成計画」を策定し、この計画の保全林の造成等のための資金につきわが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。なお、この計画は「黄河中流域保全林造成計画」の2期目にあたり、1期目に引き続き、植林、現地農牧民への技術普及等を実施する。
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(3) |
「第二次貧困地域結核抑制計画」
WHO(世界保健機関)の2001年報告によると、中国はインドについて世界第2位の結核患者保有国である。肺結核による死亡率は7.39人/10万人であり、結核は中国における単一疾病の死亡原因の第一位である。また、結核患者の3/4は青年・壮年層であるため、結核に感染・死亡した場合には患者本人のみならず家族への経済的負担が大きくなり、効果的な治療が受けられない貧困地域の社会発展を阻害する重大な要因となっている。 さらに、中国における感染症は、結核のほかに伝染性下痢症、肝炎、性病が主なものであったが、近年HIV/AIDSが流行し始め、エイズ結核も次第に顕在化することが予想される。こうした背景の下、中国衛生部は2005年までにDOTS(医師の対面指導により毎回の服薬を確認しながら数カ月に渡り薬剤投与を施すことにより完治を目指す治療法)の対象エリアを人口の90%までに拡大することにより、2010年までに結核患者を2000年の水準から半減させることを目標に結核対策に取り組んでおり、中国衛生部によるこうした取組に対し、WHO、世銀、ダミアン財団、わが国等がそれぞれ連携、協調して支援を行っている。このような状況の下、中国政府は、中国貧困地域(9省、3自治区)における結核患者の抑制を目的とする「貧困地域結核抑制計画」を策定し、対象地域における結核患者の治療に必要な抗結核薬および検査機材の購入に必要な資金につきわが国政府に無償資金協力を要請してきたものである。
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(4) |
「長春中日友好浄水場制御設備改善計画」
1986年に無償資金協力によって建設された「長春中日友好浄水場(万里副総理(当時)が命名)」は建設当時、中国における初めての先進浄水場として国内で注目され、中国内の他都市からの研修生を受け入れるなど、長春市民への安定的な水供給のみならず「中国におけるモデル浄水場」「浄水における日中交流のシンボル」としての役割を果たしてきた。
しかしながら供用開始以来15年が経過した現在、浄水場全体をコントロールするシステムが機能しなくなり、故障の頻発、浄水場内における漏水、給水能力の低下を引き起こしている現状にあり、長春市における産業および生活用水の安定的な供給に支障を来している現状にある。 このような状況の下、中国政府は、老朽化した浄水場の設備を更新するため、「長春中日友好浄水場制御設備改善計画」を策定し、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。なお、この協力においては、浄水場の頭脳に当たる制御システム整備を日本側で協力を行い、沈殿池等の土木施設の改修等を中国側の負担で行う。
この計画の実施により、安定的な給水、水質の確保、浄水場経営の効率化が図られることが期待される。
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