事務次官会見記録 (平成17年3月28日(月) 17:02~ 於:本省会見室)
日露関係(プーチン大統領の訪日)
(問)昨日、町村外務大臣がプーチン大統領の今年前半の訪日は難しいのではないかと述べましたが、現状はいかがでしょうか。
(事務次官)元々、今年の始めと思い、前半と思い、その前段としてフリステンコ産業エネルギー大臣、あるいはラヴロフ外務大臣という段取りを考えていたわけですが、その二つのミッションがそもそもずれ込んでいますので、それを踏まえて大統領の訪日ということを考えると、なかなか去年想定していたとおりにはいかないということが出てきています。大臣も述べているように、客観的に見れば、今年前半にというのはなかなか難しい状況になりつつあるように見受けられます。ただ私共としては、元々少なくとも今年前半と思っていたので、希望としてはまだ持ち続けているところであり、そのラインで調整中であるということです。
(問)ロシア側が前半は難しいという認識を伝えてきているということですか。
(事務次官)認識を伝えてきているというか、客観的に、やり取りをしていると難しいのかなという感じになってきていると思います。
目次へ戻る
日中関係(東シナ海ガス田開発)
(問)東シナ海の中国側の天然ガスの開発問題ですが、2年前に発覚してから、一貫してデータ提供を日本政府として求めてきていますが、昨日までの段階では、中国政府はデータ提供を拒んでいるということですが、日本政府として改めてこの問題についてはどのように対応していくことになるのでしょうか。
(事務次官)御指摘のように、情報提供するようにということは強く要請し、且つまた日本側が主張する中間線の西側ではありますが、彼らが開発事業を続けていることを中止するようにと申し入れているわけです。それと同時に東側において、日本は探査活動を行っており、これは台風の影響もあって予定通りには行かず、まだ探査を続けているという現状があるわけです。我々としては、この3つのことをこれからも継続していくつもりですが、いずれにしても、特に情報提供については、いつまでも提供されないということになると、我々としてもそれをいつまでも待ち続けるというわけには行かない状況になりつつあるという観測は伝えようと思っているところです。今日、私のところにも崔天凱・中国外交部アジア司長が来訪されるので、その辺りのところがもし話題になれば話したいと思っています。
(問)この問題では以前から日本の民間企業が鉱業権の付与を申請しているのですが、今次官が述べた「いつまでも待てない」という状況であれば、政府としての次の対応というのは鉱業権に絡む問題を提供していくという段取りになるのでしょうか。
(事務次官)今はまだそういう段階にまできているという感じは持っていません。ではいつかと言われると、まだその点も含めて検討中であるということです。
(問)いつまでも待てないという時に、次にどのような手をお考えですか。
(事務次官)今まで、高いレベルでも、事務的にも伝えてきていますが、今回局長が来られ、次に私のレベルでの対話もあり、大臣の会談も考えられるので、そういうところでもう一度それぞれのレベルで申し入れるというプロセスがあるのだろうと思います。その時に、どこかで期限を切るとかそういうことを、今この時点で考えているわけではありません。
目次へ戻る
事務次官会見記録 (平成17年3月14日(月)17:35~ 於:本省会見室)
日ASEAN包括的経済連携協定構想
スーダン復興支援合同訪問団の訪日
(事務次官)冒頭、私の方から2点申し上げます。まず、日ASEAN包括的連携協定交渉の開始についてです。ASEAN全体との包括的経済連携協定については、昨年11月の日ASEAN首脳会議において、本年4月の交渉開始について合意したところです。この合意を受けて、このほど3月11日、12日に行われた日ASEAN包括的経済連携委員会の会合において、第1回本交渉を4月13日から15日に東京で行うことが合意されました。
次に、スーダン復興支援合同訪問団の訪日についてです。スーダン政府の担当大臣などの閣僚、南部反政府勢力、これはスーダン人民解放運動・軍ですが、ノルウェー政府および世銀関係者からなるスーダン復興支援合同訪問団が、明15日から18日まで訪日されます。今年1月に成立した南北包括和平合意の当事者であるスーダン政府および反政府勢力双方が併せて来日するのは初めてであり、合同訪問団は今回締結した包括和平合意と今後の政治プロセスの進展、和平合意後の復興支援策について、外務省、財務省、経済産業省などの政府関係者と意見交換を行う予定です。
目次へ戻る
日中関係
(問)日中関係ですが、中国の温家宝首相が記者会見で、日中関係の改善に向けて首脳の相互訪問の環境作りを始めとする三つの提案をしたと報道されています。それについて日本側としてはどのように受けとめているのですか。
(事務次官)正確な表現が手元にありませんが、日中関係が最も重要な二国間関係であるという認識も示され、今後日中関係を大いに発展させなくてはいけないという基本的な姿勢を明らかにされたと承知しております。我々としても今後未来志向で日中関係をよくしていきたいと思っていますので、そのような点は評価できると思っています。
(問)その一方で、全人代(全国人民代表大会)で反国家分裂法というのが採択されましたが、この点についてどうお考えですか。
(事務次官)私共は、両岸関係が対話を通じた形で平和的に問題の解決を図るということを従来から主張してきたわけです。この両岸関係において、最近は旧正月、春節のタイミングでチャーター便が初めて運航されるということもあり、温かい空気が流れているように見ていましたので、そういった流れから言うと、若干、今回の反国家分裂法というのは、それと逆行する内容を含んでいるのではないか、即ち台湾が独立という方向に行くのであれば、非平和的手段を取ることも辞さないという部分があると思いますが、それは私共としては賛成できない考えであり、今でも対話を通じた平和的解決ということで努力していただきたいと思っています。この平和的解決あるいは平和的統一というところは、この法にも入っているようですので、そういった点は両岸関係において最大限尊重され、またそのように対応していただければと願っているところです。
目次へ戻る
「愛・地球博」
(問)十日後に愛知万博が開催されますが、これから半年間、数多くの各国首脳や訪日団が来られますが、外交としてどのようにこの万博の場を活用していくのか御意見をお伺いしたいのですが。
(事務次官)「愛・地球博」のそもそもの目的という観点から、当然のことながら「愛・地球博」が成功していただきたいと思っているわけです。また成功させる上でも、各国からトップクラスの方々が数多く来訪され、それぞれのパビリオンあるいはテーマについて大いに日本国内でもPRしていただいて、そういったことについて多くの日本国民が理解を深めるということは、それぞれの国あるいは国際機関との関係でも非常に好ましい雰囲気を作ることになるのではないかと思っています。従って外務省の立場からしますと、外交面においても、「愛・地球博」はそういった理解を深める上で大きな役割を果たすということを、大いに期待しているところです。
目次へ戻る
日韓関係
(問)駐韓大使の高野大使が一時帰国されています。次官もお会いになられたかと思いますが、どのようなお話をされたのですか。
(事務次官)島根県議会の「竹島の日」について条例案の審議が行われていると承知していますが、そのことが明らかになって以来の日韓関係、特に韓国内における非常に厳しい状況について詳しく説明を聞きしました。今後そういった状況を踏まえながら、どのように対応していくか。一言で述べれば、お互いに感情的な対応をしないで、中・長期的な日韓関係の発展、向上ということをどのようにしていくかということについて、まずとりあえずの打ち合わせを行ったところです。
(問)高野大使の帰任の目処については。
(事務次官)いつ帰任するかはまだ決めていません。
(問)今後の方向についてお話されたということですが、全てお話できることではないと思いますが、どういうことを考えていらっしゃるのか、少しお話いただければと思います。
(事務次官)いろいろなことを考えているのですが、韓国内では非常に厳しい感情と言いますか、テンションが高まっている状況なので、今アイディアを述べても、それに対して反発が出てくるという段階ではないかと厳しく認識しています。従って、控えさせていただきたいと思います。
(問)韓国の一部報道で、韓国側が羅鍾一駐日大使を召還させることを検討しているとあるのですが、日本政府としてそのような話を聞いていますか。
(事務次官)そのようには聞いていません。そのような動きがあるというか、そのようにしようと思っているとは聞いていません。
目次へ戻る
事務次官会見記録 (平成17年3月7日(月)17:05~ 於:本省会見室)
日韓関係(潘基文外交通商部長官の来日延期・竹島問題)
(問)調整中だったかもしれませんが、かなりの確度で今週予定されていた潘基文外交通商部長官の来日が延期になりました。原因は竹島問題等と見られていますが、その事実関係を教えてください。
(事務次官)日程的には調整中であり、私共としては来訪されるものと思っていましたが、先方もいろいろと都合があったのだと思います。とりあえず延期ということにになったのだと思います。理由として何があったかを述べることは、あまり生産的ではないと思います。いずれにしても今年は「日韓友情年」でもあり、将来の日韓関係を考えると非常に大事な年なので、是非おいでいただきたいと思うと共に、外務大臣に行って頂くということも我々として考えていきたいと思っています。
(問)今の問題とは別にして、韓国側では島根県議会の「竹島の日」制定条例案に対する反発がかなり強いようですが、この問題に関しては日本政府の主張からすれば、本来日本固有の領土であるという立場ですから、特に県議会に対して何らかのことを言うということもないでしょうし、本来の政府の主張に沿った動きとも言えると思います。一方、日韓関係を考えると、あまりこの問題が争点の種になることは好ましくないという判断もあると思いますが、この条例制定案の動きの問題についてどのように見ていますか。
(事務次官)今の質問の中でも言及がありましたが、日韓両国の本件に対する立場は非常にはっきりしており、そういう意味では双方に誤解はないわけです。そういった問題があるにもかかわらず、今年は「日韓友情年」としてやっていこうということで合意も見て、またいろいろな客観的な両国の関係をよくするムードも出てきて、非常にいい形になってきていると思っています。従って、長年の問題によって、双方が感情的な形で対応するということは何とか抑えて、この日韓友好の、私は「大義」と言っていますが、この「大義」に向かってお互いに努力していきたいと思っています。
目次へ戻る
日朝関係(国交正常化交渉・経済制裁)
(問)先日の王家瑞中国共産党中央対外連絡部長の訪朝の際に、日本政府として日朝国交正常化交渉を再開する用意があるということを伝えたという報道がありますが、この事実関係についてお聞かせください。
(事務次官)少なくとも私はそういうことを伝えたとは承知していません。我々が伝えたかったことは、(北朝鮮が)六者協議にできるだけ早く復帰するということであり、また拉致問題についても我々の強い関心を伝えていただいたと理解しています。
(問)国交正常化交渉はずっと止まったままですが、拉致問題、核問題が現状のような段階で、交渉の再開についてどのような条件が必要であるとお考えですか。
(事務次官)国交正常化交渉そのものについては、確か去年の秋頃ですが基本的な考え方を固め、要するに5人の家族の方々の子供達、あるいは家族の方々全員8人と言っていいかもしれませんが、この人たちを日本にできるだけ早く帰国させることができれば国交正常化交渉の条件が整うという考えだったと思います。8人の方は紆余曲折ありましたがお帰りになりました。これは事実としてあるわけですが、他方その後、実務者協議を踏まえて、我々として得た横田めぐみさんの遺骨とされるものが実際には本人のものではなかったという事実も判明し、これに対して我々はどういうことなんだということも聞き、且つまた、ともかく生存している方々の一日も早い帰国を実現すべきだということを強く言ってきているという状況です。これに対して我々は満足のいく回答を得ていないわけであり、そういった経緯を踏まえると、今、我々の国民感情の問題として、直ちに正常化交渉に入るということは、素直に気持ちとして入っていけない部分があるというのが、今の現状ではないかと思います。
(問)北朝鮮への経済制裁ですが、昨日、家族会などが一定の期日を切って制裁発動の期日を示しました。一方で、パウエル前国務長官が民放テレビに出演して、単独での経済制裁への効果にやや疑問を呈するような発言をしていますが、そういったことを受けて、現在の立場をお聞かせ願います。
(事務次官)この点もまだ検討中であり、従来述べている我が方の検討に際しての基本的な考え方というのは同じです。即ち、この制裁は我が方として取るべき厳しい対応の一つとして当然考えるわけですが、それを考えるに際してはどういう手段で、どういう方法でするのがいいのか、また具体的な効果はどうなのかというものを十分見極めながら、タイミングを考えてやっていかなければならないという問題意識で検討をしているわけです。制裁に効果があるのかどうかは正に今検討しているところであり、パウエル前国務長官も全く効果がないのだということを言っているわけではなくて、やる以上は国際的にした方がより効果があるのではないかとか、そういった視点も含めて述べているのではないかと思います。我々としてもそれは国際的に共通した形で行われることがより効果があると思いますが、一国だけでやったときに効果はゼロであるとは、今思っているわけではありません。それなりの効果はあるのではないかと思いながら、今検討しているということです。
目次へ戻る
日露関係(プーチン大統領訪日等)
(問)ロシアなんですが、先週金曜日に大臣とロシア側の大臣と電話会談されましたが、当初予定されていた外相の来日もありませんし、プーチン大統領来日の予定も見えておりません。準備としては遅れているという状態であるとお考えなのか、だとすれば今後どのように対応されるのでしょうか。
(事務次官)私どもが希望も含めてイメージしていたとおりにはいってないわけですから、そういう意味では遅くなっている、あるいは遅れているという感じは持っております。日露両国が今まで考えてきた段取りというものを、十分、更に検討して、なんとかプーチン大統領訪日ということに結びつけていく様々な努力が必要だろうと思っています。それは、貿易経済日露政府間委員会もそうであり、ラヴロフ外務大臣の訪日というのもあるでしょう。また、プーチン大統領が訪日される際に、合意すべき文書を作成するといった作業も同時に今、精力的に進めてきているわけであり、こういった段取りをなんとか早く実現したいと思っております。いままでの考えてきたラインが遅れてはおりますが、そのアプローチ自体をもう一度考え直すといった風には思っておりません。
(問)その結果、ロシア側が言っている今年前半のプーチン大統領来日というのは難しくなっているんでしょうか。
(事務次官)今はそのようには私どもは必ずしも見ておらず、まだ3月であり、今年前半に実現するということはこれからも追求していきたいと思っております。
目次へ戻る
サマーワ情勢
(問)サマーワですが、今日オランダ軍からイギリス軍への引き継ぎが行われますけども、治安維持また隊員の安全確保について、改めて方針をお願いします。
(事務次官)イラク全般を見ますと、1月30日の国民議会選挙以降、いろいろな形でのテロ、その他の暴力的な行為というのは、依然として、引き続き、残念ながら全土で行われていると見ております。他方、サマーワ地区、あるいはムサンナ県、このあたりは比較的平穏に推移してきており、これも1月30日の国民議会選挙前と比べて悪化しているとか、あるいはまた格段に改善しているということではありませんが、基本的には平穏裡にきているわけです。我々としてはあくまでも自衛隊がいるサマーワ地区での後方支援活動というものをこれからも継続していくべきだと思ってます。その場合に、今まで同様、治安状況についても十分に注意を払いながら、今まで行われてきた活動が今後も成功裏に行われるように全力を尽くしていきたいと思っております。
目次へ戻る
|