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事務次官会見記録(平成16年10月)


INDEX


・ 事務次官会見記録(10月25日付)
 ・ 新潟県中越地震に対する諸外国からのお見舞・義援金
 ・ 拡散に対する安全保障構想(PSI)海上阻止訓練
 ・ イラク・ムサンナー県看護師研修
 ・ 在日米軍の兵力構成見直し


・ 事務次官会見記録(10月18日付)
 ・ 東シナ海におけるガス田開発
 ・ 在日米軍の兵力構成の見直し
 ・ 北朝鮮の核開発


・ 事務次官会見記録(10月4日付)
 ・ 小泉総理のASEM出張
 ・ 北朝鮮問題




事務次官会見記録 (平成16年10月25日(月)16:50~ 於:会見室)

・新潟県中越地震に対する諸外国からのお見舞・義援金

・拡散に対する安全保障構想(PSI)海上阻止訓練

・イラク・ムサンナー県看護師研修

(事務次官)最初に3点紹介させて頂きます。第一に新潟県中越地震の関連です。諸外国からのお見舞いの表明に関し、これまでに外務本省で把握しているものとして、米国、中国、韓国等からのお見舞い電やお見舞いの言葉が寄せられています。ご承知のとおり、昨日、ブッシュ大統領、パウエル国務長官から、小泉総理、町村外務大臣それぞれに対してお見舞いの伝達がありました。更に本日、べーカー駐日米国大使から細田官房長官へも電話でお見舞いの表明がありました。中国は、温家宝中国首相から小泉総理へ、また、王毅駐日中国大使から町村外務大臣へお見舞いの表明がありました。更に、韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領から小泉総理、潘基文(パン・ギムン)外交通商部長官から町村外務大臣へのお見舞いの伝達がありました。パキスタンのアジズ首相から小泉総理、更にWFP(世界食糧計画)の事務局長から細田官房長官及び町村外務大臣に対してもお見舞いの表明が伝えられています。次に、義援金ですが、把握しているところでは、べーカー駐日大使から官房長官に対し、5万ドルの資金的支援の申し出があったとのことです。また、韓国関係になりますが、日韓間の交流の一環として日韓記者交流というものが行われていますが、その下で10月18日から25日までの日程で訪日中の韓国記者団より、この新潟県中越地域を襲いました大地震による被災者のために、本日、義援金が外務省を通じて渡されたということです。この義援金は新潟県対策本部宛に送金される予定です。
 第2点目として、我が国主催の「拡散に対する安全保障構想(PSI)」海上阻止訓練について、ご案内のことと思いますが、お知らせします。PSI海上阻止訓練を、本25日から27日まで相模湾沖合及び横須賀港外にて実施します。26日に実施予定の海上阻止訓練のシナリオとしては、国際法及び各国の国内法の範囲内で実施するものであり、法律を執行するための活動に関する比較的簡単な海上阻止訓練を内容としています。これに加え、27日には、海上阻止活動の一部をなす乗船・立入り検査に関する技量を相互に展示する、いわゆる展示訓練を実施する予定です。今回のPSI訓練は、我が国が主催する初めての訓練です。オーストラリア、フランス、米国及び我が国の艦船・航空機・部隊等が参加します。その他、18カ国のオブザーバーの参加があります。特に今回の訓練を通じては、アジアにおける不拡散のためのPSIについて理解を深めることを目的の一つとしており、アジアからは、PSIのいわゆる中核メンバーに既になっているシンガポールに加えて、今回からカンボジア、フィリピン、タイがオブザーバーとして参加することとなりました。いうまでもなく、このPSIは、国際社会にとって現在非常に深刻で重要な問題である、大量破壊兵器、ミサイル等の拡散を、国際法及び各国の国内法の範囲内で阻止するためのグローバルな枠組みです。決して、特定の国家や非国家主体を対象とするものではありません。今回の訓練についても、当然ながら、特定の国家や非国家主体を対象としたものではないということです。
 最後にイラクのサマーワ関連の具体的な新たな支援についてご紹介します。この10月29日から12月3日まで、イラク・ムサンナー県の医療機関から看護師10名を日本に招聘し、J ICAにおいて看護分野の研修を実施することを決定しました。10名は看護師長などムサンナー県の各病院の指導的立場にある看護師であり、研修で学んだ看護行政や看護管理などの技術が、研修終了の帰国後、ムサンナー県の病院で広く活かされることが期待されています。今回、招聘する、看護師が勤務しているのは、ムサンナー総合病院、ルメイサ病院、ヒドゥル病院等ですが、こういった病院に対しては、既に、草の根・人間の安全保障無償資金協力等により機材供与等の支援を行ってきたという経緯があります。こういった機材供与による協力と、人に対する協力ということを併せて行い、医療協力の実を上げたいという考えです。

(問)サマーワですが、自衛隊の宿営地内に砲弾を受けたわけですが、自衛隊の駐留に関する影響、援助の影響について教えて頂けますでしょうか。

(事務次官)事実関係の詳細は省略しますが、日本時間の23日午前5時頃、何らかの爆発音及び飛翔音が感知され、夜明け以降、宿営地内の捜索を行ったところ、宿営地内の空き地にロケット弾1個が発見されたということです。信管がついていない不発弾だったということです。今の御質問の観点から述べると、この1個のロケット弾が宿営地内の空き地にとどいたということが、一体どういうことを意味するのかということを分析する必要があります。今のところ、これが組織的な活動を示すものという兆候はみられませんが、もちろん安全には十分配慮をしなければなりませんので、現地においても、いろいろな調査・分析を行っているという段階です。現地の自衛隊及び外務省員の活動については、もちろん安全に配慮しつつ必要な活動との調整を行っていくということです。ちなみに、この22日には、日本から供与した給水車等が現地に届きました。日本でもテレビで報映される機会があるかもしれませんが、供与式を自衛隊の宿営内で行い、現地の子供達も集まりました。日本とイラクの国旗が描かれ、また、「キャプテン翼」のアニメが描かれた給水車が、サマーワにお目見えしました。現地においては、ムサンナー県のテレビで、供与式が全て放映されたということです。今後こういった活動に支障があるかどうかということについては、先程申し述べたような点を分析して、調整を行っていきますが、現在のところは、組織的な攻撃といった兆候はみられません。もちろん、繰り返しになりますが、安全には十分配慮して参ります。

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・在日米軍の兵力構成見直し

(問)米軍再編について伺いたいのですが、昨日、日米外相会談において閣僚級の戦略対話を作るということで合意したと聞いていますが、今後の進め方についてどういうイメージをお持ちでしょうか。パウエル長官は数ヶ月間位議論していくという一定の目処を示されたように思っているのですが、外務省としてはどのようにお考えでしょうか。

(事務次官)いろいろな観点から考えることができると思いますが、昨日、日米間で一致したのは、まず何について協議をしていくかということと、御質問のタイムフレームと言いますか今後の段取りという二点があったと思います。最初の点については、戦略的な観点、包括的な論点といったことについて、情勢認識も含め意見交換を行っていこうということです。更に、町村外務大臣の方からそれと並行して種々の具体的なアイディアについても考えていきたいと述べています。これはブリーフィングでもお伝えしたとおりです。パウエル国務長官からも今後とも日本側と緊密に協議していきたいということでしたので、基本的な論点及び具体的な見直しのアイディアについても掘り下げた検討作業が共同で行われるということだと思います。次に、来年の春までにというような報道もありますが、私が記録を読んだ限りでは、パウエル長官も別にタイムリミットを付けたという趣旨ではないという印象を持ちます。これも町村外務大臣が共同のぶら下がり会見で述べていますが、この見直しについては、既に一年あまりにも亘りいろいろなレベルで議論をしてきたが、この後何年もかけて議論をするという性格のものではなく、然るべきタイミングで答えを出していく必要があるという考えを述べた上で、現時点では明確な時間的なフレームワークが決まっているわけではなく、今後詰めていく予定であるということですので、米側との間においても、例えば来年の春までに結論を出すといったようなタイムリミットをつけているわけではありません。大臣同士の会談を受け、これから先方と調整をして段取りを決めていくことになると思います。

(問)議論の進め方ですが、基本的な論点についても結論が出ないと、大臣が述べられた具体的なアイディアについての議論に入れないのか、それともそれはセットで並行する形で議論を進めていくのか、どうなっているのでしょうか。

(事務次官)その点については、最初の哲学と言いますか、総論のところが全部終わらないと具体的なアイディアについて全く議論が進まないということではないと思います。従って、個別具体的なアイディアについての意見交換を後回しにするということはないということです。もちろん、その総論と言いますか、包括的な意見交換というのが全体をカバーするわけですが、それを横目で睨みながら、具体的なアイディアについての話し合いも行われるということが、外務大臣から日米外相会談で述べた趣旨です。パウエル国務長官もその点を含めて協議をしていこうということです。

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事務次官会見記録 (平成16年10月18日(月)17:00~ 於:会見室)

・東シナ海におけるガス田開発

(問)東シナ海の中国のガス田開発の件ですが、日本のEEZ側で中国が鉱区を設定しているという話が出ていますが、これは日中間で実務者協議を行うことになっているとのことですが、どういうかたちで行っていくことになるのでしょうか。それとは別に申し入れ等を行うようなことはあるのでしょうか。また、局長級に格上げしたいということを経産省が言っているということが今日の昼に出ているのですが、いかがでしょうか。

(事務次官)中国側が、いわゆる日本側水域において鉱区設定を行っているという報道があります。この点については、完全には未確認ですが、中国側がいわゆる春暁鉱区以外に日中中間線をまたがって、あるいは日本側水域において鉱区を設定しているという情報があることは承知しています。これについては、まだ事実関係を確認する必要があります。仮に、日本側の排他的経済水域内において鉱区が設定されているということが事実であるとすれば、当然のことですが、中国側に対し外交ルートで抗議や申し入れを行うという段取りになるかと思います。また、その削除を申し入れる等の必要な対応を行うこととなると思います。春暁構造の問題をきっかけとして、中国側からも日中間で実務協議を行おうという話しがありました。ご承知のとおり、それを開催する方向で現在調整を行っている段階です。開催時期については直接の質問がありませんでしたが、今月中の開催という可能性も念頭におきつつ、現在中国側と調整をしているところです。また、レベルについては、外務省としても局長級といったレベルで協議を行う方向で中国側と現在調整を行っているところです。

(問)鉱区設定の情報なのですが、どういったところからどのようなかたちで、そういった情報が寄せられるのでしょうか。

(事務次官)その点につきましては、この段階で申し上げることは控えさせて頂きたいと思います。

(問)この件について、今日、中国の王毅大使が日本記者クラブで会見、講演をしているのですが、その中で、日中双方の排他的経済水域を主張しているラインが違うことについて、境界確定も話し合いの対象にするという趣旨の発言をしていますが、この点も含めて実務者協議で話し合われるということでしょうか。

(事務次官)王毅大使の発言の具体的な内容については承知していませんので、それとの関連で直接コメントすることはできません。しかし、日中間でこの海洋の問題を巡っては、資源の問題もあれば、境界確定の問題もあります。これについては、実はかなり以前から日中間で海洋法に関する協議を通じて、例えば境界確定について法律上の観点からそれぞれの立場を説明したり、協議を行っていたものです。ご承知のとおり、日本側は基本的には現在の国際法に則り、等距離基準を基本にして中間線の考えを主張してきています。中国側は海洋協議において、いわゆる衡平の原則という彼らの主張に基づいた考え方を述べてきています。今度の協議については、直接のきっかけは、やはり春暁の問題です。ご承知のとおり、この問題については資源開発の問題と境界の問題がありますが、この春暁の問題の発端は、中国側が鉱区を設定して作業を開始したところにあります。我々日本側としては、まずは、中国側がいかなる考えに基づいて、いかなることを行っていて、且つ、具体的にその地理的な位置から鑑みて、中間線をまたいでいるのではないかといった点について、中国側に情報の提供を求めることを繰り返し強く行ってきました。そのような流れから、今回、日中間の海洋をめぐる問題について協議を行おうということです。従って、我々としては、先ずは春暁の問題について、中国側から情報の提供があることが極めて重要であると考えています。そういったことは、中国側にも既に申し入れをしています。それ以外の境界確定といった問題について、どの程度今回の実務協議で話し合えるかということについては、まだ中国側と議題について明確な合意ができているという段階ではありません。いずれにしても、この実務者協議を局長レベルで行おうというわけであり、日中間にまたがっているこの海洋問題の全体を視野にいれた上での問題解決のための話し合いを、これから行っていくための第一回目の会合という位置づけです。その後、どのように発展するかということについては、今、確定的なことは申し上げることができません。繰り返しになりますが、日中間に横たわっている海洋を巡る問題の全体を視野においた姿勢が我々にとっては必要であろうと考えます。

(問)事実確認ということですが、日本のEEZ内で鉱区を設定しているのかという事実確認の質問はされたのでしょうか。

(事務次官)その点については、今後の実務協議のアレンジとの関係もあるので、中国側とそれなりの接触を行っていかなければならないと思います。

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・在日米軍の兵力構成の見直し

(問)米軍再編について、大臣が週末の記者会見で、極東条項にはとらわれずという趣旨の発言をされているのですが、一方では、小泉首相がこの問題について安保の枠内で行うと発言し、両方の発言を比べると整合性がとれていないように感じるのですが、外務省としてはどのように考えるのでしょうか。

(事務次官)私は整合性が取れていないとは思いません。町村大臣も今日の国会の答弁で述べていましたが、日米間で行っている、この兵力構成の見直しについての協議の現状については、当面議論すべき点といったことを念頭に置くと、いろいろと報道は過熱していますが、具体的なアイディアとか、それがもたらす法的な整合性といった個別的・各論的な論点というよりも、先ずは、米軍の軍事態勢の見直しについての基本的な考え方、国際情勢認識、米軍と自衛隊の役割・任務といった総括的・基本的な論点について、それぞれ日米間で考え方についての理解を深めるための意見交換を行っているのが現状です。これは以前からも説明をしているとおりです。町村大臣は、そういった協議の現状について、そしてまずは、議論すべき点を特に強調されて話をされたのであろうと思います。総理はこの見直しというのは、当然のことながら現行の日米安保条約の枠内で行われるものであるという趣旨を述べられたと思いますが、これもまた当然のことであり、日米安保条約枠外の兵力構成の見直し、在日米軍基地の見直しといったことは、考えられていないということです。日米安保条約の効果的、効率的な運用は、常に我々にとっても課題です。日本の安全を高め、この地域の抑止力を維持することが、地元負担の軽減と並んで重要であり、そのような観点から日米安保条約の枠内での在日米軍基地のより有効なあり方を議論するということにおいて、町村大臣が述べていることも総理が述べていることも相矛盾するということは全く無いと思います。

(問)総理は現行の安保の枠内というように、述べていると思うのですが、そうしますと、極東条項を米軍再編の中で解釈を変えたり、その条項自体を変えたりする必要もないということなのでしょうか。

(事務次官)在日米軍基地の再編問題で現行の安保条約を改定するかしないかといったことは、全く議論にも問題にもなっていないことは、既に理解して頂いていることと思います。先程から申し上げているとおり、正に、1960年に発効した現行の安保条約の有効な効果的な運用と、それが国際情勢の変化に伴ってきちんとした対応をしていくこと、そういう前提のもとでの在日米軍基地の再編問題であることについては意見が一致しているといいますか、国内においても現在そういう前提で話しが議論されていると思います。現行の安保条約を改定すべきという議論は、聞いていません。

(問)「不安定の弧」をカバーする指令部を日本に置くことと極東条項は、直ちに矛盾するとは言えないのですか。これはよく吟味してみないと矛盾するかどうかを言えないということですか。

(事務次官)率直に申し上げて、いわゆる「極東条項」の見直しが、活字として踊ったりしていますが、一体どういうことを具体的に意味されているかというのは、定義しないとわかりません。安保条約を改定しろということであれば、そういうことは考えていません。いずれにしても、総理も言われたとおり、今度の在日米軍の兵力構成の見直し問題は、繰り返しになりますが、現行の日米安保条約の枠内で行うということであり、この段階ではそのように理解して頂きたいと思います。
 尚、この機会に申し上げさせて頂ますが、いわゆる「世界の中の日米同盟」と言われます。また国際協調と日米安保の両方を達成するということも我々政府の方から申し上げています。近年の安全保障問題、国際の平和と安全についての日本の努力については、私は、二つの柱があり、国民的な合意を形成しつつ進展をしてきていると思います。
 一つの柱は、日米同盟をもちろん基盤とした上での日米安保体制に基づく協力の強化です。この点についてはご記憶のとおり、まずは「日米防衛協力のための指針」が1997年9月にでき、その後、この指針に基づき、「周辺事態安全確保法」が国会を通過して成立し、また「船舶検査活動法」が続いて成立しました。更には今年、「武力攻撃事態対処法」の下での米軍の行動の円滑化法制というのも出来ました。こういった日米安保条約の効果的運用ということで、この東アジア・太平洋の安全を維持する、強化する努力が日米安全保障条約の下で行われてきており、この点については米国側も大変な評価をしているところです。
 先ほど「不安定の弧」ということを述べられましたが、もう一つの柱としてグローバルな安全保障面での日米の協力というのがあります。これは、日米安全保障条約を直接の根拠としたものではありませんが、やはり価値観を共有する日本と米国の同盟関係が背景にあるいろいろな努力でもあったという側面があります。具体的に言いますと、グローバルな安全保障面での努力として日本が行ってきたのは、まずは国連PKOへの参加があります。これはカンボジアにおけるPKO、その根拠となった「国連平和協力PKO法」の成立です。これは1992年のことです。その後、カンボジアのみならず東ティモール、ゴラン高原といったところで貢献をしています。更により近い時期では、9.11事件を背景として、「テロ対策特別措置法」が2001年11月に成立し、この下で自衛隊による補給活動がインド洋で行われています。もちろん米国の艦船も自衛隊から給油を受けておりますが、米国以外にも最近ではパキスタンも含まれましたが、現在は11カ国の艦船に補給が行われています。更に、ごく最近では「イラク人道復興支援特措法」を国会で成立させた上で、イラクにおける人道復興支援活動とか、安全確保の支援活動を実施しているわけです。
 この日米同盟と国際協調の両方をにらみながら、日米安保体制の効果的な改善と、国連の安全保障理事会の決議に基づいて国際社会の一員として安全保障に日本として協力する、その背後には日米同盟という基盤もある、こういう二つの流れがあるということです。「不安定の弧」とよく言われますが、それでは不安定な要素というものを北東アジアから中東にかけていろいろ何が問題かと具体的に吟味していくと、それに対する対応というものもそれぞれ違ったものであろうと思います。アフガニスタンにおける対応とイラクにおける対応は、今申し上げた国連の安保理決議に基づいた協力を行っているということです。そういった面でのグローバルな安全保障問題、国際の平和と安全に対する日本の貢献については、このような二本の柱で考えていく必要があると思います。従って、安保条約を改定しなければ、日本としてアフガニスタンやイラクの問題に全く何の対応もできないという前提は正しくないと私は考えています。

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・北朝鮮の核開発

(問)今日の国会でも取り上げられていましたが、週末に官房長官が地元の会合の中で、北朝鮮の核兵器について、長崎型のプルトニウム型の核兵器は既に保有しているというような発言があったのですが、改めて質問しますが、北朝鮮の核兵器の開発レベルがどの段階にあるのかということについて、外務省としてはどのように認識をしているのでしょうか。

(事務次官)官房長官の発言の趣旨については、官房長官自身が記者会見または国会で説明されていますので、私から、申し上げることではないと思いますが、今の質問について、我々として種々の情報を総合的に分析、勘案すると、北朝鮮が核兵器を保有している可能性はあると考えてはいますが、この点も含めた北朝鮮の核開発の現状について、我々として確定的な結論を有しているというわけではありません。可能性はあるが、確定的な結論は有していないということです。

(問)今の可能性というのは、ウラン型の原発ではなく、プルトニウム型の原発についての可能性だと受け止めてよいのでしょうか。

(事務次官)事の経緯を調べて頂ければ、この可能性といった場合にNPT脱退前に行っていたプルトニウムの抽出といった報道が伝えられました。米朝枠組み合意の下でのIAEAのその後の査察も、以前行ったプルトニウムについての活動には、まだ及んでいないわけです。それが、この可能性と申し上げる場合の大きな根拠です。それに加えて、つい2年前から、ウラン濃縮の疑惑が出てきたということですが、そのウラン濃縮が、核爆弾になったという確定的なものを資料として持っているわけではありません。

(問)首相が今日の国会で、日朝平壌宣言の中で遵守されてないところが、という風に答弁されたようですが、その点はどう認識されていますか。

(事務次官)総理に質問頂くのが一番いいと思いますが、総理自身も我々も、日朝平壌宣言というのは、日朝間のこれからのいろいろな懸案を解決する上で、非常に重要な方向性を示す政治文書だと位置付けています。ただその中で、こういったいろいろな問題について未だ解決していないとか、達成されていないという部分があるといったことを言われたのではないかと私は思います。ただし、総理自身から直接聞いたわけではありません。

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事務次官会見記録 (平成16年10月4日(月)17:00~ 於:会見室)

・小泉総理のASEM出張

(問)小泉総理のASEM出張では、日中首脳会談を行う方向で調整が進んでいると思うのですが、その現状、あるいは行われる場合にはどのような内容の会談になると思われるのか考えをお聞かせ頂けますでしょうか。

(事務次官)日中関係の重要性に鑑みまして、日中双方にとってこの秋予定されている、マルチの首脳会議の機会を積極的に活用し、首脳間の対話を実施したいというのが基本的な考えです。現在のところ、ASEM5の際の日中間の首脳会談につきましては、日程上の困難がありますので、その後予定されているAPEC首脳会議やASEANプラス3の首脳会議を念頭に調整することにしています。

(問)そうしますと、今回は難しいという結論ですか。

(事務次官)今回は、日程上調整が難しいということです。

(問)町村外務大臣の方の会談は、どうなのでしょうか。

(事務次官)町村外務大臣は訪米されますが、ハノイ訪問につきましてはまだ確定していません。従って、日程も確定しているものはなく、調整中であるということです。

(問)ASEMでの小泉総理のバイ会談ですが、日中以外でも他に調整を行っているものはあるのでしょうか。

(事務次官)現在それも調整中で、固まったものはありません。ASEMの会議は、日程が非常にタイトで、きっちりとしています。もちろん、マルチの会議ですから、私もASEMの首脳会議を担当したことがありますが、会議場においていろいろな人が顔合わせをするわけです。バイの首脳会談ということについては、まだ決まったものはありません。

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・北朝鮮問題

(問)北朝鮮の問題ですが、この週末にも町村外務大臣がテレビ番組に出演される機会があって、その際日本としては経済制裁をするカードを持っているということを北朝鮮に認識させる必要がある、という発言をされていましたが、改めて経済制裁について、外務省としてどのような考えなのかお聞かせください。

(事務次官)今おっしゃられた通り、これまで「対話と圧力」ということを基本的な方針として掲げてきているわけです。これは総理も外務大臣もそうですが、その方向性、政策に従って、外務省としては外交政策を実施してきているわけです。実務者協議の結果については、この前私が申しましたが、不十分なものであったという認識です。次回実務者協議において、安否不明者の消息等についてきちんとした説明・報告を得るべく工夫をしたいと考えています。制裁うんぬんということにつきましては、正にその、「対話と圧力」という枠組みの中で従来からいろいろな議論、検討が行われてきたわけですが、今後とも次回協議における北朝鮮側の出方というものも考える必要があるでしょう。いずれにしましても、様々な角度から一番効果的な方法は何かということを常に検討していくというのが基本的な姿勢です。総理も何度も繰り返しておっしゃられていますが、日朝平壌宣言を双方が遵守していくということが基本的に重要なことだろうと考えています。

(問)工夫の問題ですが、官房長官会見でも触れていますが、北朝鮮側にどういう提案を日本側はしていく考えですか。

(事務次官)そういったことについて全てを話してしまうと、先方との関係でこちらが有効な外交を行う上で支障があるかもしれません。一つ考えられることは、前回の実務者協議において斎木審議官がいろいろ質問しますとそれを持ち帰って報告する、という態度だったものですから、それならば、答える立場にある調査委員会の人達がすぐ答えられるような環境において協議を行うということが考えられるわけです。そういう観点からしますと開催場所についてもそういう人達がいる場所、すなわち平壌といった可能性も検討する価値があると思っています。

(問)既にそうした意向の打診を始めているのですか。

(事務次官)その辺のところは外交上の水面下のやりとりですから、今明らかにすることは控えさせていただきます。

(問)一部報道されている斎木審議官の人事についてですが、今現在どういうことになっているのでしょうか。

(事務次官)どうしてあのような根拠なき報道がなされたのかまったくわかりません。そういったことを我々事務当局としても考えたという事実もありません。いずれにしても、北朝鮮に関する政策というものについては、そういった個別の人事で影響を受けるということではなく、総理、外務大臣のご指示の下に方針が決まっていくということです。外務省のいわば中2階の人事がこれだけの話題になるということは、外務省の政策に対する関心の表れかと思いますが、あの報道には根拠はありません。

(問)実務者協議の開催場所を平壌に移したりするということですけれども、それに伴って斎木審議官ではなく藪中局長を派遣するということが一部報道されていますが、そういう方針を決めているのですか。また、格上げすることによる意味はどういうものなのですか。

(事務次官)それは先方の出方にもよると思います。意味があるかないかということも、先方もそれに見合った人が登場するかどうかということもありますので、こちらだけ格上げしたところで、先方がそれに見合った対応をするかどうか。してもらわないと意味がないわけです。大事なことは、実務者協議が我々にとって意義のあるものにするために、いろいろなことを考える、先方ともやりとりをしていくということです。

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