事務次官会見記録 (平成16年7月26日(月)17:00~ 於:会見室)
ジェンキンズ氏訴追問題
(問)ジェンキンズ氏の処遇ですが、独立法務官、弁護士にあたる人を今週中にもジェンキンズ氏に会わせて話をするという話がありますが、外務省としてどのように考えられていますか。
(事務次官)毎回、申しておりますが、法律上の手続きの問題について、どのようなことが行われるかという点につきましては、ジェンキンズ氏自身が決められることです。米国の法律制度のもとで、どのように対応されるかということについて、我々から何か申し述べるということは適当ではないと思います。米国の法律制度の中に於いて、独立法務官という制度があるということは我々も承知しておりますが、そういった制度を利用されるかどうかといったことに関しては、まさしくジェンキンズ氏本人がお決めになることですので、今報道されているような今週中に面会が行われるといったことについて、我々としては全く承知をしておりません。ただ、そういう制度があるということは、我々も承知をしております。
(問)そういった制度があるということ自体は、ジェンキンズ氏にアドバイスをされているのでしょうか。
(事務次官)アドバイスといいますか、当然ご存知のことだろうと思います。推測ですが、そう思います。我々として、ジェンキンズ氏がどのような対応をされるかといったことについて現時点で承知しているわけではありません。まさに病院に於いて治療に専念されている状況だと思います。
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主権移譲後のイラクについて
(問)イラクの主権移譲からまもなく1ヶ月になりますが、この間にフィリピン軍の撤退などもありましたが、この1ヶ月をどうご覧になっていますか。あわせて、日本の大使の派遣についても状況をお聞かせください。
(事務次官)主権移譲が行われた後、暫定政府がいろいろな面で重要な役割を担い、実績を積んできていると思います。国際的に見ても、アッラーウィー首相の下において、暫定政府が治安の回復と復興の為に全力を挙げて、イラク人自身で前進させようという意欲を持って活動されているという評価がされていると思います。来年の1月に予定されている総選挙に向けても、いろいろな準備を国連の協力を得つつ行っていく必要があり、また、いろいろな問題が残されていることは事実ですが、これまでのところよくやっているという評価ができると思います。もちろん、治安の点につきましては、いろいろな事件も起こり、問題も多いわけです。それに対応して、イラク人自身の中で、警察、国防軍を編成して、訓練していくという段階にあると思います。治安を乱している勢力、分子、グループ、いくつか考えられますが、元々のフセイン政権と残党勢力、外国からの過激派分子の潜入といったことがあり、なかなか劇的な改善ということにはなりませんが、そういった中でいろいろな政治勢力、おおまかに言いますと、シーア派、スンニー派、クルド族といったグループがありますが、そういった部族間の協調、共同の努力といったことにも努力をされていると思います。
イラクの状況を「モーターバイク」に例えて考えてみますと、前輪が政治プロセス、治安改善の問題であり、後輪が復興支援、経済復興、雇用増大といったようなことになると思います。我が国としては、後輪の復興支援に力を注いでいるわけで、この点につきましては、サマーワのみならず、国際的な場裡における努力も続けてきております。復興支援ということについては、是非ともできるだけ多くの国の参画を得たいということで、外交努力を続けてきておりますが、それが先般5月のドーハの支援国会合という場においても、例えばフランス、ドイツ、ロシア、トルコ、イランといった新たな国の参加が得られ、それなりの成果を我が外交にもたらしていると思います。治安が改善しないとなかなか復興プロジェクトの実施については、思うような活動ができません。そういった中で、いろいろな工夫をしつつ、昨年11月、マドリッドの支援国会合で、日本政府が支援を目指した15億ドルのうち、約12億ドルについて実施中、ないしは実施が決定しているという状況です。またサマーワにおいて、自衛隊は非常な酷暑の中、できる限りの活動を行い、現地においてもこの努力は評価されていると思います。もちろん、イラクの人たちの期待には非常に大きなものがあり、それとの関係で、もっと大きなプロジェクトを迅速にやってほしいという期待感があるのも事実でありますが、与えられた状況の中で、自衛隊、そしてODAという車の両輪で全力を尽くしていくという我々の努力というのは、いろいろなところで、認識、評価を得ていると考えます。
大使については、具体的にいつ派遣するということについてはまだ決定しておりません。現地の治安状況を考えつつ、決定したいと思います。各国の例を見ても、本任の大使を送っている国は、米国、英国等がありますが、それほど多いわけではありません。実際の現地における外交活動においては、これまでの人脈、日本に対する評価といったことがあり、現在、外交活動ということではイラク政府との連絡、各国との調整といった点で、特に支障を来たしているということはありません。状況を見つつ、判断をしていくという段階です。
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事務次官会見記録 (平成16年7月12日(月) 17:00~ 於:会見室)
参議院議員通常選挙
(問)参院選ですが、与党・自民党が負けた原因として、総理は年金とイラク多国籍軍への参加問題について十分に有権者の理解が得られなかったという風に述べられていますが、イラクの問題で有権者が厳しい評価をしたことについて外務省としてはどう思われますでしょうか。
(事務次官)外務省としてはということで考えを固めたということはありませんので、私の(個人的)感じということになると思いますが、いずれにせよ、今日、総理が記者会見で述べられたことに尽きるであろうと思います。もちろん参議院選挙において、このイラク問題が国民の関心事項であったこと、更に、その問題意識が投票結果に表れたということは広く言われていることです。その上で私の思いを申し上げれば、日本は、議員内閣制をとっているので、個別の政策についての国民投票が行われたわけではないということが、一つ基本的なことではないかと思います。しかしながら、繰り返しになりますが、問題意識をもって投票、行動に臨んだ国民が多かったということは事実だろうと思います。イラク問題に関して出てきた問題意識として、いろいろな見方があるのだろうと私自身は思います。もちろん、多国籍軍への自衛隊の参加そのものについての反対論ということもあろうと思います。他方、また別の角度から、それに至る手続き、説明が十分だったのかどうかといった思いもあろうかと思います。一つに絞って政策上の結論をだすということについては、どうかなという感じもします。そのように述べた上で、今日まさしく総理が会見で改めて述べておられましたが、イラクの復興、安定ということは、国際社会全体にとって非常に重要なことであり、また、国際社会が望んでいることであろうと思います。そして、それよりも、イラク国民が一番それを必要とし、望んでいるということです。そういったイラク国民の気持ちを受けて、国連の安全保障理事会において多国籍軍を含む各国からの支援が、全会一致で、決議というかたちで求められています。それに対して日本がどのように応えていくかということについて、政府としてはこれまで施策を展開してきている訳です。また、これから、この参議院選挙の結果を踏まえ、いろいろな論議が日本国内で行われ、日本のとるべき姿、行動についての国民の理解がいろいろと深まると考えています。
(問)今の関連で、総理は説明する時間が必ずしも十分でなかったというふうに述べられていましたが、外務省としては、例えば国会の場における大臣の説明、記者会見において、多国籍軍への参加については、説明が十分できたと考えますか、それとも十分でなかったとお考えですか。
(事務次官)我々としては、できるだけのことを説明してきたという気持ちがあります。もちろんタイミングの問題として、国会会期の最終の段階において、国連安保理決議が採択されたという、客観的な状況がありました。国会、衆参両議院におきまして、閉会中審議を含めて議論され、質問に対し答弁する機会がありました。その時に説明を行ったということです。さらに、私自身、テレビ等を見ておりましても、小泉総理はいろいろな遊説先、記者とのやりとりの機会に、いろいろ説明されていたと思います。しかし、時間的にそれらが十分であったかというと、結果からすれば、そうではなかったということは、客観的に言えるのではないかと思います。
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曽我さんご家族の再会
(問)インドネシアのジャカルタで再会をされた曽我さんとジェンキンスさんの来日ですが、ジェンキンスさんが来日に前向きな姿勢を示しているという話もあるのですが、それについて、何かお聞きになっていますか。
(事務次官)そのようなことは、私は承知していません。今、ご家族の方々が、久しぶりにと言うと語弊がありますが、再会されているわけです。水入らずと言いますか、静かに話し合いをされているという段階です。それ以上のことは、私達として承知するような状況ではありません。
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事務次官会見記録 (平成16年7月5日(月)17:40~ :於本省会見室)
第2回イスラエル・パレスチナ和平信頼醸成会議の開催について
(事務次官)イスラエル・パレスチナ和平信頼醸成会議の日本に於ける開催について話をさせていただきます。外務省は、イスラエル・パレスチナ側双方の有力関係者を招聘し、7月12日から14日まで東京および東京近郊において「第2回 イスラエル・パレスチナ和平信頼醸成会議」を開催します。今回の会議は、中東和平問題に対する我が国の取り組みの柱の一つに位置づけているイスラエル・パレスチナ側双方の信頼醸成を図ることを目的とし、双方の有力関係者及び日本側からは有馬政府代表が参加し、日本において和平プロセスの現状のみならず、望ましい経済面での協力のあり方などにつきまして、率直に意見交換をする場を提供するものであります。我が国の中東和平の為の外交努力の一環としてご承知おき願いたいと思います。
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北朝鮮関連(「よど号」犯人の帰国、曽我さん一家再会)
(問)北朝鮮のよど号グループの件なのですが、北朝鮮中央通信が、グループから帰国の支援の要請があったということですが、これに関連して北朝鮮の政府、あるいは関係者が、外務省に何か話をしていますか。
(事務次官)そういった連絡は何らありません。今の段階におきましては、受けておりません。もちろん我々としては、本5日付けの朝鮮中央通信の報道ということには、それなりの関心を寄せておりますが、先方からは何ら連絡はありません。当然のことながら、もしそういうことになった場合には、これまでも求めてきているところである引き渡しを受け、日本の法律に従って処置をするということが考えられることですが、これが果たしてその通り実現するかどうかということにつきましては、現在まだ報道の段階ですので、断言ないしは予断を持つことができないというのが現在の状況です。
(問)関心を持っていらっしゃるとおっしゃいましたが、日朝首脳会談が、この話の根となって、それのフォローアップという可能性も。
(事務次官)先方の意図について、即断をするのは、必ずしも適当ではないかと思いますが、御承知の通り、これまでもずっと日本政府としては、日本の刑法に反した人たちであるということで、引渡を求めてきた訳です。それがこの段階でもし前進をするとすれば、私としては一定の前進という評価ができると思いますが、今まだこの段階でそう言ったことを、明確に申し上げる段階ではないと思います。一定の関心をもって注目しているということです。
(問)よど号犯人が、一連の日本人拉致事件に関与しているという見方をされているのですが、そこについてはどう思われていますか。
(事務次官)そう言ったことについては、まだ今の段階で、報道が朝鮮中央通信から出たばかりの段階ですので、何とも申し上げることができないと思います。
(問)曽我ひとみさん、ジェンキンスさん再会の件といい、それからこれからのよど号の件といい北朝鮮の姿勢が非常に目立っているように思うのですが、まるで半年前とは別の国になったような今の北朝鮮の状況、それをどのように評価していますか。
(事務次官)私がいつも申しておりますとおり、北朝鮮との関係につきましては、一つの物事の動きについて一喜一憂することなく、また先の見通しについてもあまり予断はしないで一歩一歩進めていくということが基本的に重要な姿勢であると思います。そう申しました上で、感じますことは、やはりこの前の小泉総理の第2回目の訪朝という機会において、両首脳の間で率直な話し合いが行われたことが、その後のいろいろな流れを作り出しているということが言えるかもしれないという気は致します。それが行き着く最終的なところがどうなるかということについては、今申しましたように、我々としては一歩一歩、一つ一つ確実に積み重ねていくということが、大事なこと、肝心なことであろうと思います。もちろん北朝鮮が大きな政策の変更をするといったことで国際社会に開かれた、かつ国際社会との調和のとれた関係を保っていくというような大きな決定をした上で、こういったことが進んでいるということが仮定としてあれば、それは、方向としては好ましいことであるとは思いますが、しかし、そういったことを断定する、予断をもつことには慎重である必要があると思います。一つ一つ積み重ねていくということが、繰り返しになりますが、肝心なことだと思います。
(問)曽我さんの再会については、参院選の投開票日迄に間に合わせるようにという指示は官邸からあるのですか?
(事務次官)ありません。この件については申すまでもありませんが、先程も触れました平壌における日朝首脳会談において金正日国防委員長の方から一定の方針はすでにその時に打ち出されていたわけです。北朝鮮としては、第3国での再会に協力するという姿勢が出てたわけですが、それを実現するにあたってはいろいろな詳細な詰めが必要です。我々としては、できるだけ早く、一日も早く、その実現に努力をしてきたところです。まさに一日も早くということで、こういったタイミングで進む運びになったということです。更には事柄が人道的な性格の問題ですので、そういった観点から、できるだけ早い再会を実現することを目指していろいろな外交努力を続けてきたところです。
(問)ジャカルタでは、支援室中心ですか。それとも外務省、大使館が中心なのでしょうか。
(事務次官)総括責任は内閣官房の拉致被害者支援室の方にあたっていただくことになります。もちろん、政府で関係する者は他にもおりますので、外務省、特に現地の大使館の館員も支援体制を担っていきますが、内閣官房の拉致被害者家族支援室、外務省、警察庁から出張者が参ります。先ほど申しましたように総括責任者は内閣官房の拉致被害者家族支援室の幹部が交代で務めることになっております。また当面必要な期間については、中山内閣官房参与が現地に滞在する予定です。
(問)当面、中山参与が窓口というか代表でしょうか。
(事務次官)それは総括責任者、事務方の責任者は支援室の方になると思います。
(問)外務省からどなたが行かれるかというのはもう決まっているのですか。
(事務次官)今、詰めているところだと思いますが、ここで名前を申し上げるのはどうかと思います。
(問)チャーター便を使う必要性といいますか、例えば高麗航空を使うということは。
(事務次官)これは極めてはっきりしていると思います。平壌とジャカルタの間には直行便がありません。いろいろな乗り継ぎを必要といたします。そういったことを考えてチャーター便を使うのが必要かつ正当であるという判断を総合的にしたということです。もし直行便があればそれを利用するということも考えますが、そういった状況ではありません。
(問)費用は北朝鮮政府も出すのですか。それとも全額日本政府が出すのですか。
(事務次官)滞在にかかる費用は日本側にて負担いたします。
(問)チャーター便も。
(事務次官)はい。
(問)北朝鮮側から誰か来るのでしょうか。
(事務次官)北朝鮮側から誰が来るのかという点については、ジェンキンス氏の希望ということもあり、検討されております。
(問)検討されているのですね。
(事務次官)はい。恐らく同行される方がいると思いますが、我々が聞いているのは、ジェンキンス氏の希望によって身の回りを世話する人が必要だということです。
(問)その人の滞在費用は、当然北朝鮮側で持つということですか。
(事務次官)そうだろうと思います。
(問)身の回りの世話をする人であれば、政府としても認めざるを得ないと。
(事務次官)ジェンキンス氏の希望ということであれば、本人の意思を尊重するということです。
(問)今回、滞在期間はどの程度を想定されているのですか。
(事務次官)滞在期間については、今のところは期限を付しておりません。ジャカルタでご家族がお話しになって、ご希望、ご意向があると思いますので、そういったことを踏まえて検討するというのが今の考えです。
(問)当面はホテルで、後は落ち着いた所でとなるのでしょうか。
(事務次官)当面、ホテルです。その後の状況につきましては、先ほど申しましたご家族の意向も踏まえ、状況に応じて検討していくというのが現段階の考え方です。
(問)インドネシアに入られる際のジェンキンス氏の身分保障についてなのですが、ご自分のパスポートを作られるのでしょうか。それとも日本政府で何らかの身分証明書を発行されるのでしょうか。
(事務次官)申し訳ありませんが、それについては承知していません。ジェンキンス氏は日本国籍ではありませんので、日本の旅券ということは考え難いことでありますが、どういう書類になるかということについては、申し訳ありませんが私も存じません。インドネシア側との間ではもちろん入国等については打合せしておりますので、その辺のところは詰まってはいると思います。
(問)インドネシア政府には、例えば小泉総理から先方の代表の方に直接この件について協力を要請をしたりとかそういうようなことは聞いてらっしゃるのでしょうか。
(事務次官)事実の問題として、そういうことは今まで行っておりません。外交ルートを通じて、現地の大使館、飯村大使が先方の関係者と相談をしてきたということです。
(問)この間の外相会談で直接依頼をして、後は外交ルートでやってらっしゃると。
(事務次官)そうです。インドネシアのハッサン・ウイラユダ外務大臣も、この件については人道的観点、それから基本的には恐らく日朝関係というものに対する思いもあるだろうと思いますが、極めて前向きに検討してくれたというのが、これまでの経緯で感じられることでございます。
(問)ジェンキンス氏の引き渡しの問題で、日米間ではどういう状況ですか。
(事務次官)米国の基本的な姿勢というのはご承知の通りです。ただし、インドネシアにて再会するということについては米国にも説明しております。
(問)その説明の結果は、どういう感じですか。
(事務次官)米国にはこういうことで行いますということを説明してあります。それに対しての特段のコメントはありません。
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