事務次官会見記録 (平成16年4月26日(月)17:30~ :於会見室室)
中山総理特使の国連への派遣
(問)中山太郎元外相が政府特使のような形で国連に行かれるということですが、これについては現在どのように把握していますか。
(事務次官)今日、官房長官から記者会見で話があったと思いますが、近々、中山元外務大臣に国連に出張して頂いて、アナン事務総長、出来ればブラヒミ事務総長特別顧問とも会って頂きたいと思っています。申すまでもなく、イラクの問題については、政治プロセスが進められていく過程において国連の役割の重要性が広く認識されるに至っています。我が国政府としても従来から国連が大きな役割を果たすべきであるという主張を展開してきましたので、我が国の考えも紹介しつつ、更には日本として国連の中心的役割を支持することを表明して頂き、更に国連としての今後の考え方についても伺いたいと思っています。今後、政治プロセスを進めていく上において、これは小泉総理もしばしば言及されていますが、イラク人自身がいろいろな対立、恩讐を乗り越えて国家の再建に結集することが非常に重要ですが、それと共に国際社会がそういったイラクの人たちの努力をサポートすることが重要です。その中で国連に重要な役割があるというのが我々の認識です。期待されているのは新たな安保理決議の採択ですので、その点についても意見交換が出来れば有意義であると考えているところです。中山元外務大臣は去年の12月にもイラク問題について国連に特使として派遣されており、今回の特使もお願いしたということです。
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中東和平
(問)イスラエルのシャロン首相がアラファト議長への攻撃も辞さない旨の発言をされていますが、こうしたイスラエル側の姿勢について日本政府としてはどのように見ていらっしゃいますか。
(事務次官)事実関係は御承知のとおり、23日夜、シャロン・イスラエル首相がテレビのインタビューにおいて、先週14日にホワイトハウスで行われたブッシュ大統領との会談の際に、「アラファト議長に危害を加えないとの約束を撤回する」旨、大統領に伝達したと報じられているところです。我々としてはこういった発言について憂慮の念を禁じ得ません。アラファト議長は民主的な手続きを経て選ばれたパレスチナ人の代表です。こういった代表であるアラファト議長に対してイスラエルが実際に危害を加えるようなことは許されざる行為であると考えます。政府としてはこうした発言が実行に移されないよう強く求めます。現在必要なことは中東和平のためのいわゆる「ロードマップ」を活性化し、これを前進されることであると思います。シャロン首相のこのような伝えられる発言はパレスチナ社会及び地域全体の憎悪を更に煽り、事態を悪化させるものであると考えます。従って、事態沈静化のためにイスラエル政府が最大限の自制を行うことを求めます。また、「ロードマップ」を前進させるためには、過激派の取り締まりが重要です。我が国は従来よりパレスチナ側に対しても過激派の取り締まりを早急に実施して、目に見える成果を挙げるよう求めてきているところです。
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北朝鮮における列車事故
(問)北朝鮮の爆発事故ですが、日本としても国連を通じた支援というのを表明されていますが、今後、追加の支援のようなことも含めて検討されているのでしょうか。
(事務次官)御承知のとおり、今回の事故に関しては国連人道問題調整事務所(OCHA)から我が国の在ジュネーブ代表部に対し、緊急援助についての支援要請が行われたという経緯があります。現場におきましては4月2 4日から国連機関による合同調査団が被害状況等の調査を行っています。24日付のOCHAの状況報告書で一定の現場の状況が明らかにされているところですが、例えば医薬品等が不足していることもそこに書かれているわけです。当面、OCHAの報告を踏まえ、緊急性も考え、今回、緊急医療援助を行うこととし、OCH Aとの間で実施の仕方について調整を行っている段階です。今後、更なる調査結果が出てきた場合には、それに応じた追加支援も必要になるかもしれません。我々としては詳細な更なる報告が出てきた場合には、それを踏まえて必要に応じて追加的な支援を検討するというのが現在の考えです。
(問)北朝鮮に対しては食糧支援等を含めて、このところ日本政府としては支援をしてこなかったという現実が一方であるわけですが、今回、支援に踏み切った理由というか違いというのはどういうところにあるのでしょうか。
(事務次官)人道上の例外的な措置と考えて頂いて結構だろうと思います。現場の被害者の方々が非常に悲惨な状況にあるというのが、我が国の近くで起こっています。現にそのような状況が生じているということに直面し、我々としては対応が緊急を要するということで今回の例外的な援助を実施することを考えたわけです。その他にも、国連の機関から日本に対して要請があったことも当然背景にあるわけで、国際社会の一員として、日本として国連が行う支援に協力するという側面もあるわけです。ただし、北朝鮮に対する経済協力は国交正常化の後に行うことについては、その基本は日朝平壌宣言に書かれているとおりで、この点について変更があるということではありません。
(問)北朝鮮の場合、いつも輸送手段が問題になっていると思いますが、この辺は国連側との協議で行われるのですか。
(事務次官)まさにどのような手段が一番効果的、効率的かということをOCHAと調整をしているところです。
(問)支援物資がきちんと必要な人のところに届くかどうかというのがいつも疑問視される部分ですが、そこの管理はどうするのですか。
(事務次官)それはまさに今回は国連の機関が支援の実施に当たりますので、OCHAというのは調整をする機関でOCHA自身が実施するわけではありませんが、WHOであったり、WFPであったり、いろいろな国際機関が関与しますが、そういった国際機関がきちんとした支援を実施することを当然我々に約束するということであり、我々もそういった国際機関から実施の状況について報告を受けるということで行います。
(問)日本の方から報告してくださいということで要請したものですか。
(事務次官)これは当然のことです。通常、そのような形で行いますが、今回もその例外ではなく、当然、国際機関との間でそういったやり取りをした上で実施することになります。
(問)今回は非常に大きな事故ということで、6者協議の作業部会とか、あるいは日朝協議等への影響という点ではどういうことがありますか。
(事務次官)今は、この事故に対する緊急の対応が中心の問題だろうと思います。六者会合は六者会合で、我々として早期開催を求めているわけですので、北朝鮮の内部においてどのような問題がこの事故との関係で生じるかということは私から推測を申し上げるような問題でもないと思います。我々としては六者会合は六者会合として早期に開催されることを引き続き求めていくということです。
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川口外務大臣の外遊日程
(問)大臣の連休中の海外出張ですが、国内外の日程を勘案して今回は見送ると。去年は中東へ行かれたり、連休中の外遊というのは海外との交流を深める上で重要だと思うのですが、今回見送られた理由を具体的に御説明頂けますか。
(事務次官)大臣が体調を崩されて、今日から復帰されました。私も大臣と会いましたが、元気になられています。一方、連休後の外交日程はいろいろ目白押しです。G8外相会議もあり、いろいろな事態もありますので、残念ではありますが、連休中は体調を整えて頂くことを我々からもお願いしたところです。
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事務次官会見記録 (平成16年4月19日(月)17:30~ :於会見室)
イラク(米英首脳会談、邦人人質事件、スペイン軍の撤兵)
(問)イラクですが、アメリカとイギリスが政権移譲後の受け皿となる政権について、国連主導の人選を認めるという方針を打ち出していますが、この点について日本政府としてどのように評価されていますか。
(事務次官)ブッシュ大統領とブレア首相の共同記者会見が行われ、その際、国連の役割について、これを歓迎する、支持する発言があったと承知します。私の感じたところを申し上げれば、日本における報道ぶりでは米国が方針の大転換を行ったかの如く書かれていますが、例えばワシントン・ポスト等の報道ぶりをチェックしましたが、むしろ従来の方針を変えるものではないといったトーンの報道ぶりです。イラク問題について国連の役割が重要であることは我々日本政府からも度々米国には指摘してきました。私も行いましたが、むしろ小泉総理が重ねて米国の指導者の方々に繰り返し述べてきたところです。これに対して米国は、国連の役割は重要であって、それを尊重していく、大いに活用したいということを従来から発言していました。それが私の解釈です。この時期において、ブラヒミ国連事務総長特別顧問がとりあえずの考え方、予備的考察ということで一つの枠組を大まかに、極めて概観的なものを提示しました。従って、そういったブラヒミ特別顧問の大きな考え方に対する立場の表明が、記者会見で行われたということが言えると思います。新しい発言があったとすれば、それは新たな安保理決議を求めていくという言明がブッシュ大統領からあったということです。この点については今回明確に表明されたと思います。ただポイントとして、米国が国連の重要な役割を促進していくという考え方自体はこれまでも表明されてきたところであり、それを具体的にこの段階で共同記者会見で述べることになったのは、ブラヒミ特別顧問の新しい考え方の提示があったことがきっかけであると思っています。繰り返しになりますが、我々は国連の役割を通じて国際協調がイラクの復興、国家の再建に重要であるという立場ですので、今後ともそういった立場から外交を行っていく考えです。それはブラヒミ特別顧問を支持するということでもありますし、国連の新しい安保理決議を支持する、またその中に日本の考え方も入れていきたいと思います。また、欧州の各国をはじめとして国際協調に出来るだけ多くの国が参加出来るような環境を作っていく外交が、日本の重要な役割であろうと考えています。また、これは小泉総理が度々述べられていることですが、国連の役割も重要ですし、各国の役割も重要です。小泉総理は、イラク人によるイラク人のためのイラク人の政府ということを度々述べられていますが、やはりイラクの国内において国家のト建についての協力、いろいろな力の結集が実現出来るような環境も、具体的には困難なところもあろうと思いますが、彼ら自身が努力していくことが重要であろうと思います。
(問)今回のブッシュ大統領の声明というか、言明については日本政府としては望ましい方向であるということでしょうか。
(事務次官)従来から米国政府に対しては国連の役割を強化をするということは、我々の意見、アドバイスとして伝えてきたところです。それがブラヒミ特別顧問のとりあえずの提案をきっかけとして大統領自身の口から表明されたことは大いに歓迎すべきことであると考えます。
(問)人質事件ですが、一応5人無事解放ということで一段落はしたのですが、再発防止と、まだ世界には人質になっている国というのは幾つもあるわけで、そうしたところの人質事件の解決のためにも帰ってくる5人の方々から、法律上はやはり事情聴取は警察が主体的にやるのでしょうが、外務省は外務省として独自にお話を聞く、そしてそれを次の解決に役立てていく、こういったことについては如何でしょうか。
(事務次官)こういった事件、ケースというのはそれぞれの状況における特殊性というものがあります。ただし、述べられたような再発防止という観点から参考になることは当然あると思います。現地において解放された後に大使館において事情を伺ったということもあります。今後、必要に応じてまた話を伺うことは当然あり得ることです。御本人の健康状況等いろいろありますので、我々としても、我々なりにいろいろな情報を整理した上でそういったことを考えていくことになろうかと思います。
(問)スペインがイラクからの撤兵についてかなりはっきりと言明したのですが、この影響についてはどのように御覧になりますか。
(事務次官)その影響について、今具体的にどうこう言えるようなことはないと思います。スペインは確か1350人、派兵をしていたと承知しています。イラクの治安状況については予断を許さないところがあります。復興支援についてもスペインの果たした役割には大きいものがあろうと思います。仮に撤退ということになった場合、どのような形でその役割を埋めていくかということは課題であろうと当然考えられます。イラクにおいては、イラク自体の警察能力の向上ということで、非常に精力的な作業が行われていると承知しており、相当の力を発揮できる状況になっているとも聞いています。復興支援になりますと、スペイン政府においても、国際的な協力は行うということは言っているようですので、兵を退かせることが復興支援とか、イラク国家の再建から身を引くことではないと思います。いずれにせよ、これからいろいろな検討がなされることであると思います。
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北朝鮮情勢(金正日総書記の訪中)
(問)北朝鮮の金正日総書記が中国を訪問されているようですが、どのように御覧になっていますか。
(事務次官)そのような報道があることは承知しています。ただし、中国政府も北朝鮮政府もこのことについては一切公の言及をしていません。従って、我々の方からこのような席でコメントすることは控えさせて頂きたいと思います。ちなみに御参考までに申し上げますと、金正日総書記は2000年と2001年に中国を訪問していますが、そのいずれの場合においても公表されたのは北京における行事が終わった後です。それまでは一切、中国でも報道されていないというのがこれまでの前例です。これは御参考までです。
(問)日本政府の反応も正式の公表の後だったのですか。
(事務次官)当事者が訪問している、していないということについて何も言及していませんので、我々として訪問ということを前提として申し上げることは適当ではないと思います。
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横田基地軍民共用計画
(問)アメリカの横田基地ですが、軍民共用計画について東京都と外務省、防衛施設庁、国土交通省で作る連絡会で日本側の原案についてまとまったという報道がありますが、この点は如何でしょうか。
(事務次官)承知していません。
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事務次官会見記録 (平成16年4月12日(月)16:45~ :於会見室)
イラクにおける邦人人質事件
(問)人質事件の関係ですが、アルジャジーラが既に人質解放の情報を取っており、近くまた報道されるという情報がありますが、この点について外務省として確認されているのか、この点、お願いします。
(事務次官)そのようなことについては承知していません。
(問)24時間で解放されるという期限が午前3時で一応過ぎたことになっていますが、この次、一体どのような見通しというか、展望を持ってやっていくのでしょうか。
(事務次官)いずれにしましても、我々政府としては3人の方が無事に、安全に取り戻すことに全力を挙げてきているところであり、これからもあらゆる努力を続けるということに尽きます。
(問)3人の安否について、現時点でどのように御覧になっていますか。
(事務次官)我々はあらゆる努力を続けています。その中にはいろいろな情報収集、事実の確認ということも含まれます。いろいろな機会、チャンネルを使って情報の収集に努めていますが、現段階において具体的に申し上げることはありません。
(問)川口大臣が出演なさったビデオメッセージの中で自衛隊について言及したことで、御家族の方が刺激するのではないかと言って反発していらしたようですが、その件に関しては如何でしょうか。
(事務次官)あのメッセージは世界、特にアラブ諸国において放映され、我々の考え、気持ちをきちんと伝えるということを意図して行ったものです。全体として見て頂ければそういったメッセージは伝わっていると評価しています。
(問)御家族の安否の件ですが、現時点では3人が元気でいるかどうかを含めて確定的なことは言えないという意味でしょうか。
(事務次官)今、この時点ということについては、我々は承知しません。今、この時点においての安否については承知していませんということです。
(問)福田官房長官が、ある段階、ある時期においては3人が元気でいると思われる時点はあったというおっしゃり方でしたが。
(事務次官)つまり我々としては、今まで、いろいろな段階において情報の収集に努めてきているわけです。福田官房長官がまさに言われたことは、長官が言われたとおりですが、今御質問の、今のこの時点でということを聞かれますと、それについては承知していませんということです。
(問)ファルージャでの戦闘ですが、一応、今、停戦が成立しているということになっていますが、これがもし停戦切れになり戦闘が再開されると、かなり人質救出にも大きな影響を与えるのではないかと思われるのですが、日本政府としてはファルージャの停戦についてどのように。
(事務次官)我々としては、ファルージャにおいて出来るだけ早く治安と秩序が回復されることを望み、事態を注視しています。それとこの人質の問題との関連性とか、どういうことがあり得るかといったことについては、予断を持ってコメントすることは控えさせてもらいます。
(問)今日は緊急対策本部かオペレーションルームの方で夕方、夜にかけて会議は実施されるのでしょうか。
(事務次官)対策本部の会議は必要に応じて随時行います。朝は定例という感じではありますが、その他はまさにその時の状況に応じて、全員が集まることが必要か、適当か、また大臣の日程をはじめ、そういうことが日程上可能かといったこともあります。いつでも集まれるということが望ましいわけですが、状況を見て判断します。従って、御質問については、今晩開催することもあり得るし、その可能性を排除しているわけではありません。
(問)小泉総理とチェイニー副大統領の会談で、人質問題についてあらゆる努力を行うことを約束するとおっしゃったようですが、アメリカの協力についての評価というのはどのように御覧になっていますか。
(事務次官)我々としては、米国とは緊密な関係にありますから、当然のことながら連絡等を行っています。具体的なことについては申し上げるのを控えさせて頂きますが、これは御理解頂けると思います。我々として米国との今までの調整、協力関係といったことについては非常に満足しています。
(問)イラク国内のNGOの活動ですが、外務省もNGOのジャパン・プラット・フォームなどに支援をしたりして、イラク国内でのNGOの活動をサポートしている面があると思いますが、今回の事件を受けて外務省としてイラク国内のNGOの活動、人道支援というのをどのように続けていったらいいとお考えでしょうか。
(事務次官)NGOにはNGOとしての非常に大きな役割があるというのが我々の一般的な考えです。もちろん、その活動の内容、対応といったことについては、その地域、その国の状況に応じたものである必要があろうと思います。その点で、御質問ですから申し上げますと、今回のイラクということについては、NGOのみならずプレスの方々にもお願いをしていますが、我々としては情報収集し、それを綿密に分析した結果、退避勧告を出しているわけです。従ってそれを尊重と言いますか、尊重以上にそれに従って頂きたいというのが我々の考え方です。一般的になりますが、これは基本的な話ですが、外国の領域には日本の主権は及ばないわけです。当然、日本政府、外務省は在外邦人の保護について責任を有しているわけですが、日本の主権が及ばないところではその保護に限界があるというのも当然のことです。そういった国において、本来ならばその国が自らの主権に基づいて在留している外国人の保護について、更には治安について責任を負うというのが国際法上の原則です。そういったことを踏まえて、外国において我々の同胞、邦人の安全についての第一義的な権能を有しているのは当該国家であるということから出発する必要があろうと思います。そうしますと、皆さんが持っているパスポートにも書いてありますが、日本の外務大臣が相手国に対して、パスポートを持っている日本人があなたの国において安全であることを要請しますということが皆さんのパスポートの表紙の裏に書いてあります。それはやはり第一義的に、相手の国が安全について責任を持つということです。ただ、それを踏まえた上で日本政府、特に外務省としては、外国においても邦人の保護に全力を尽くす責任があるわけです。従って、外務省の我々の同僚は、命を懸けてというと大げさかもしれませんが、治安情報を収集し、それを我々一緒になって分析し、危険情報ということで国民の皆さんに周知しているわけです。人命は地球より重いということを言われますが、まさに人命を大事にするということで、邦人保護のためにこういった危険情報を発出しているわけです。イラクについて言えば、今年に入って退避勧告のスポット情報を13回出しています。是非これに従って頂きたいというのが我々の立場です。その点は、重要な役割を果たしているNGOについても同様です。もちろん、NGOの役割を我々も重視し、また協力関係もありますが、安全、生命の問題ということになりますと自己責任の原則を自覚して、自らの安全を自らで守ることを改めて考えて頂きたいと思います。また、私は今、長々とこのように話していますが、それは今回の事件もさることながら、同様の事件にまた日本国民が在外において遭遇することがないよう切に願うことから、改めて外務省が発出している渡航情報といったものに注意を払って頂きたいということを訴えたいからです。
(問)今回の事件を受けて、一部で渡航禁止ということを検討すべきではないかという意見もあると思うのですが、それについて次官はどのようにお考えですか。
(事務次官)そのような声が起こってくる背景を考えますと、これは個人の考えですが、今回のように渡航情報を出し、退避勧告を今年に入って13回出しても、自己責任の原則に基づいてお出かけになる方がいらっしゃるという現実を見ると、やはり何らかの措置が必要ではないかという意見が出て来るのが現状ではないかと思います。しかしそれを実際に実施するとなりますと、それは国民の渡航の自由といった、これまた重要な人間としての自由がありますから、そう簡単な結論が出る話ではないと思います。ただ、気持ちとしては今のままでいいのかなという問題意識が国民の皆さんの中に、一部とはいえ出てきているという背景、事情があるのかという感じを持ちます。
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事務次官会見記録 (平成16年4月5日(月)17:05~ :於会見室)
川口大臣の訪中
(問)大臣の訪中ですが、改めて先方から小泉首相の靖国神社参拝が続く限り、首脳交流は難しいと取れるような発言があったわけですが、どのように受け止めていらっしゃいますか。
(事務次官)日中関係については、言うまでもありませんが、近年、本当の意味で非常に関係が太く、深くなっていると思いますし、それには日本、中国共に関係の強化によって得るものが多いという共通の利益が背景にあると思います。そういった共通の利益を基盤にし、例えば人の往来であると300万人が1年間に往来し、また貿易関係でも1300億ドル、これは大変なボリュームですが、そういったことが出来ているわけです。更にこの地域の政治、安全保障状況についても日本と中国は共通の利益を持っているということで、北朝鮮の核問題を例にとりましても、いろいろな協力関係が進んでいるということが背景にあろうと思います。そういった関係が進む中で、近くの国ですから、いろいろな過去の長い両国間の関係がありますから、様々な問題が時によって出てくるというのも、一つ避けられないことと思います。尖閣についてもそうですし、その他、日本人観光客の態度(ビヘイビア)の問題もあります。更には日本における中国人の不法滞在ないしは犯罪の問題といったこともあります。しかし、そういった問題について率直な話し合いを行いながら、日中関係を更に太く強いものにしていくというところに共通の利益があるということにおいては、中国の指導者も同じ認識を持っていると思います。そういったところで、今御質問のようなテーマが浮かび上がってきているということはありますが、首脳同士の間においても、確かに相互の訪問については途絶えている、実現していないということはありますが、それをもって日中関係の大局が左右されるということではなく、共通の利益の基盤といったものがあろうと思います。今回の川口大臣の訪中においてもそういった大局における日中関係の重要さということについて中国側からも認識の再確認、表明といったものがあったと感じています。
(問)日中外相会談で李肇星部長が川口大臣に対して、李外相が北朝鮮を訪問した時の話を幾つか説明されたと聞いていますが、その説明の中で次回日朝政府間協議に向けた何らかのメッセージというものはあったのでしょうか。
(事務次官)別なことについては聞いていません。
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西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合
(問)今日、行われている西バルカンに関する平和定着の会合ですが、西バルカンから地域的に遠い日本でそのような会議を開く意義についてお聞かせください。
(事務次官)確かに地理的には西バルカンという地域は遠隔にあります。変な例えになるかもしれませんが、イラクも地理的には遠い関係にありますが、しかし世界のいろいろなところで起こっている事態、問題について、今や日本という国はそれを座視してはいられない立場、地位にあると思います。日本の国益ということから考えても、世界のいろいろな場所における問題、紛争に対して積極的な関与をしていくことが求められていると思います。私自身よく言いますが、昨年、日本で開催され、日本が主催した重要な地域を対象とする会議がありました。一つはアジア・太平洋の島々の首脳が集まった島サミットがありましたし、アフリカの国々の首脳が集ったTICAD IIIという会議もありました。更にはASEAN10カ国の首脳が日本に集まった会議もありました。これもそれぞれ日本がメンバーではない地域のブロックが日本において会議を行い、日本がその地域の発展とか、問題の解決に対して積極的な貢献をするということの表れであったわけです。そういったグローバルなパートナーを日本として構築し、貢献していくという外交の一環としてこの西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合をまず認識して頂きたいと思います。中身についても、日本外交が近年唱えている「平和の定着」、「人間の安全保障」といった概念をもとに、西バルカン諸国の閣僚のみならず、それに関与する多くの国々、国際機関の方々が集まってバルカンにおける「平和の定着」、「人間の安全保障」について具体的な策を練る、話し合いをするということは極めて有意義なことであり、日本の外交姿勢としても一つの象徴的な活動であると認識しています。会議の結果については私もまだ報告を受けていませんので、ここでは披露できませんが、いずれ然るべき担当者から説明させて頂きたいと思っています。
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北朝鮮問題(山崎前自民党幹事長と平沢議員の訪中、拉致問題)
(問)山崎拓自民党前幹事長と、平沢勝栄議員が中国に行かれて、北朝鮮の当局者と接触されたということですが、外務省としてこのルートについて承知されていたのかということと、どう評価されるのかということを。
(事務次官)我々としては、御承知のとおり、北朝鮮との間においては先般の六者会合の際に日朝間の問題について話し合いを行いたいということを言い、先方からもやりましょうということで日程の調整に努めているところです。まだ日程については具体的には定まっていませんが、北朝鮮側の姿勢も日朝政府間の話し合いをしようという原則のところでは既に一致しているわけですので、これを確定するというのが課題になっているという状況です。北朝鮮の方で、例えば六者会合の作業部会もその当時から作業部会を開きましょうということで、まだ日程、段取りが確定していない調整の段階にありますが、日朝政府間協議についてもそういう段階にあるという状況です。その間、北朝鮮側がいわば観測気球を上げたり、牽制球を投げたり、報道を通じて等、いろいろあるわけですが、私どもとしては北朝鮮の真意、日本との関係についての話し合いは、我々との政府間協議を通じて伝えられるものであり、我々としても政府間協議を通じて対応していくという方針には全く変わりはありません。従って、北朝鮮側において自ら日本政府と話し合いたいということがあれば、それは当然、我々政府のチャンネルで話し合いをしていくということになりますので、我々としてはこれからもそういったチャンネルを通じて北朝鮮の真意を確かめていく、話し合いをしていくという考えです。
(問)今回の接触はいわば北からの観測気球、牽制球の類であると受け止めていらっしゃるということですか。
(事務次官)それは私に聞かれるよりも、北朝鮮の行動を分析して頂きたいと思います。我々の確固とした方針は、一外務省のみならず、政府として一致しているわけで、それはいろいろな関係者の意向も踏まえて政府間で協議をしていくという方針です。これが今回のことによって変わりがあるということは一切ありません。
(問)平沢議員が、日朝の政府間協議が近く開催される見通しであるということをおっしゃっているようですが、先程、調整中ということでしたが、近く開かれる見通しというようなところは政府間では、話としてはあるのですか。
(事務次官)これは見通しですから、何とも申し上げられません。率直に申しまして、私の個人的な感じとしても、先方は政府間での話し合いを行うというところにおいては一度も否定したことはありません。段取り、日取りについて検討中ですという返事ですので、そういった状況の中でいろいろなことを先方は先方なりに考えているのだろうと思います。これは一種の交渉ごとですから、いろいろな思惑、作戦といったものもあるのでしょう。我々としては政府間の協議できちんとした対応をしていくということについて首尾一貫している立場です。
(問)今回の山崎氏らの訪中については事前に把握されていたのかということと、あともう一点、国内で特に政府間協議を折衝している最中に二元外交ではないかという強い批判もありますが、その辺はどう受け止められていますか。
(事務次官)直前にいろいろな報道が伝わってきたことはあります。それは皆さんもよく御存じだろうと思いますが、そういったレベルでの話は伝わってきたことはありますが、訪中について相談を受けるとか、事前に通報を受けるとか、そういったことはありません。二元外交云々ということについては、こちらがどう受け止めるのかということもあると思います。我々としては首尾一貫して政府間のチャンネルで、決まった政府の方針に基づいて行うということがしっかり確固としたものであるということです。我々の政府間の交渉がこれによって何らかの影響を受けるか受けないかということについては、影響は受けない、我々の方針は変わらないということです。
(問)5人の家族の帰国について、先方はずっと約束違反ということを言っていますが、それを巡って日本政府は1~2週間の調整という言い方を確かされていると思うのですが、先方との間に文書を取り交わしたり、そうしたことはあったのでしょうか。
(事務次官)一切ありません。
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外交官殺害事件
(問)今日、警察庁の方で射殺された奥大使の事件に関する鑑定結果が出ましたが、その鑑定結果についてはどう分析、受け止められていますか。
(事務次官)捜査当局の方で、非常に限られた資料の中で全力を尽くしての捜査をやって頂いたと思います。この事件はいろいろと不明なところが多いわけですし、そういう中での捜査結果ということで、私も捜査の専門家ではありませんので、その観点からは何も申し上げることはありませんが、真相の究明に向けての報告が一つ出たと思っています。我々外務省としてもそれなりの調査はやっていますので、今後とも引き続き力を合わせて真相の究明に努力したいというのが今の段階における感想です。
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