事務次官会見記録 (平成16年3月29日(月)17:30~ :於会見室)
日朝関係
(問)日朝関係ですが、北京で6者協議の際に日朝の交渉があってから1カ月過ぎましたが、この間、北朝鮮側から返答がないことについて、外務省としてはこの理由をどういうふうに分析しているのかということと、今後、政府としてどういうふうに対応していくのか、この2点をお伺いしたいのですが。
(事務次官)当方として推測の域を超えないわけですが、事実関係としては督促を行っています。その度、向こうからは検討しているという回答です。おそらく文字通り、これは私の個人的な見方ですが、検討しているのであろうと思います。一方で六者会合作業部会についての調整も進んでいることもありますので、いろいろなことを睨んで検討しているということだろうと思います。それ以上は、先方の中でどのようなことが行われ、考えられているのかということになります。私として何か申し上げるというものはありません。
(問)今後の対応は。
(事務次官)引き続き我々としては北朝鮮に対して早期の開催を督促していくことを続けて参ります。
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岡本首相補佐官の辞意表明
(問)岡本行夫首相補佐官が明日付で退役されるということですが、外交担当の首相補佐官というのは過去にあまり例がなかったと思うのですが、果たした役割についての評価と、そういうことでいろいろ情報共有とか役割分担で難しいような点もあったかと思うのですが、そういう教訓等、もしありましたら伺いたいのですが。
(事務次官)岡本補佐官の辞意の表明については報道で承知していますが、直接、その理由等について個人的に聞いたわけではありません。今の御質問の点に関して言えば、私は岡本補佐官の活動に非常に感謝し、評価もしています。いろいろなことがありますが、一例を挙げればイラク復興問題について非常に献身的に貢献して頂いたと思います。外務省のやれないところ、彼が持っている馬力を十分に駆使して、いろいろな活動をして頂いたと思います。特に仏・独との関係においては、イラク復興について国際協調を回復、打ち立てるために個人的なパイプを使って非常に努力されたし、顕著な成果を挙げてきていると思います。更に言えば、エジプトと日本の合同協力ということで、イラクの医療関係者に対する研修を、スピード感を持って実現して頂きました。これは岡本補佐官がかつてエジプトに勤務されていた経験もありますし、その後のいろいろな人脈、岡本補佐官が現地で持たれた信頼感といったものがあったと思います。非常によくやって頂いたと思って、私としては大変感謝の気持ちを持っています。
(問)外務省と岡本補佐官との連携という点ではどうでしょうか。
(事務次官)まさに一緒に仕事をしてきたという思いで一杯です。岡本補佐官がイラクに何度か出張されましたが、その時には常に外務省の経済協力局の課長クラス、技術協力課長、無償資金協力課長といったポストの人が帯同していましたし、その後のフォローアップといったことにも連携してやってきたと思います。非常にいいチームであったと思っています。
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産業スパイ事件
(問)遺伝子のスパイ事件で日米犯罪人引渡条約に基づく被告の引渡について、東京高裁の方が引渡さないと決定して、今後、アメリカからの反発等が予想されますが、外務省としてはこれをどういうふうに受け止めていらっしゃいますか。
(事務次官)基本的にこれは司法部、東京高等裁判所の出された決定ですので、その決定自体について我々が外務省の立場ないし行政機関の立場として云々することではないと思います。その決定の内容については引き続き勉強したいと思います。米国との関係で、現在この事件において何か問題になっているということはありませんが、米国からは当然、犯罪人引渡条約に基づく引渡の要請があったわけですから、それに対応する手続きというのは外務省として、外交機関としてやっていくべきことはあろうと思いますが、それ以上のことについては今何か考えているということはありません。
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日米刑事裁判手続き
(問)刑事裁判手続きに関する日米協議ですが、先週ワシントンで協議があったように聞いていますが、現在までの進捗状況と、外務省としてのお考えをお聞かせください。
(事務次官)これは御承知のとおり日米地位協定上の刑事裁判手続きについて、日米間で昨年以来、いろいろと立場の相違というものがありました。粘り強く日本の立場、考え方も説明し、米国の問題意識というのも十分聞き取るということで時間をかけて折衝してきています。先週も北米局の長嶺参事官を筆頭とする各省のチームが折衝し、これは実質的な進展があったと評価していいと思いますが、主たる問題は取り調べにおける米側の同席の問題ですが、相当の進展がありました。ただし最終的な合意には至っていませんので、もう少しお待ち頂きたいと思います。
(問)その件で合意ということになれば、地元が求める引渡のスムーズな実施というところは期待されるわけですが、そういう方向で十分実りある結果に至っているということですか。
(事務次官)合意が出来た際に皆さんにも御判断頂きたいと思いますが、私もかかわってきましたが、今後、日本側における取り調べ、引渡の下における取り調べというのが円滑にいくような成果があるものと私は期待していますし、そのようになるだろうと思っています。
(問)一方で地元では地位協定そのものの改定を非常に強く求める声があり、国会でもそのような意見も強いかと思いますが、地位協定の改定の必要性については外務省はどういうふうに判断されますか。
(事務次官)この点は何度も外務大臣をはじめ述べていますとおり、日米地位協定の運用を通じて問題を解決していくというのが現実的な選択ということで、今回の折衝もその一つの例ですし、他にも沖縄の方々の関係で問題とされる点もあろうかと思いますが、こういった努力を重ねていきたいと思っています。
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日中外相電話会談
(問)26日の日中外相電話会談の発表が27日の午後にまでずれ込んだ理由は何でしょうか。
(事務次官)元々は中国側からこの電話会談については公表は控えたいという話があったわけですが、その後、事実問題として中国側において明らかにされたということを踏まえ、こちらとしても公開、説明に踏み切ったということです。ただ、更に一言申し上げておきますが、外務大臣ないしは外務省の誰かが外国の要人と電話会談なり協議を行ったという時に、全て即刻事実を公表することが必ず求められるということですと、一般論として申し上げて、外交上の支障ということもあります。その点については御理解を得たいと思います。相手もあることです。今回の件について申せば、先方から公表は控えたいという話があったというのが物事の発端です。
(問)そういう合意はあったのですが、中国側が一方的に公表していますが、これは信義違反だと思いますが、外務省から何か抗議なり何なりはやっているのですか。
(事務次官)抗議というか、我々としてそういうことは困るという気持ちは持っています。レベルの問題は別としてそういった気持ちは伝わっていると思います。我々として一番の対応は日本側から正確なことを公表するという対応であったと思います。
(問)抗議等は特になさっていないのですか。
(事務次官)抗議という正式の形ではありませんが、不快感の表明と言ってもいいかと思いますが、それは中国に伝わっていると思います。
(問)正式に伝えられたわけではないのですか。伝わっていると思うというのは、それは雰囲気として向こうが把握しているというそれだけの解釈ですか。
(事務次官)例えば文書で抗議するとか、このために出掛けていくとかということはないと思いますが、先方とのやり取りはいろいろな形であるわけですから、話が違うではないかということは伝わっているということです。
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いわゆる新潟中国人強制連行訴訟
(問)26日金曜日に新潟地裁の方で強制連行されている中国人労務者の損害賠償訴訟で初めて国に賠償を求める判決が出たのですが、控訴も含めて今後の対応は決まっていますか。
(事務次官)まだ政府、国全体として考えることだと思いますので、控訴するとかしないとか、結論が出たという話は私はまだ聞いていません。判決をよく読んで検討するということだろうと思います。
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事務次官会見記録 (平成16年3月22日(月)17:30~ :於会見室)
ウルーム・イラク統治評議会議長来日
(事務次官)イラク統治評議会議長一行の訪日について申し上げます。バハル・アル・ウルーム・イラク3月期統治評議会議長を団長とし、同評議会メンバーとその代理及び閣僚を含めた、23名からなる代表団一行が、明日23日(火)から25日(木)まで来日されます。一行は、滞在中、小泉総理大臣への表敬等を行い、今後のイラクの政治プロセス、我が国のイラクに対する復興支援等について意見交換を行う予定です。また、我が国からは、改めて、我が国の対イラク復興支援への取り組みを伝える予定です。更に、御一行には衆参両院の関係議員とも懇談の機会を持っていただく予定です。
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ドミニカ共和国移住者問題
(問)ドミニカ移民の件ですが、以前に総理が国会で、政府として、外務省として反省すべき点が多々あるとおっしゃって、今日、阿部副大臣の方に対応等、指示があったようですが、外務省として今後どのようにこの問題に取り組んでいきたいと思いますか。
(事務次官)これは長い経緯がある問題です。その時々においていろいろな対応をしてきましたが、法律上の点については、現在、裁判において議論がなされているところです。我々としては、裁判で議論されている問題については裁判所の判断に委ねることが適切だろうと思いますが、他方、裁判を離れ、今後、ドミニカ共和国日系人社会全体のため、更には日本とドミニカ共和国の両国の友好関係の発展のために何が出来るのかについて関係者ともよく相談してほしいという指示が、今日、総理からあったところです。具体的に、それではいかなる措置をとるか、行動を起こすかについてはこれから早急に検討したいと考えています。
(問)裁判は裁判として引き続き政府の主張を続けていくということですか。
(事務次官)裁判においては裁判所の判断に委ねるということです。
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イスラエル軍によるハマスの精神的指導者ヤシン師の殺害
(問)パレスチナですが、ハマスの精神的指導者のヤシン師がイスラエルの空爆で殺害されたのですが、このままいきますと暴力の連鎖ということで、中東情勢は非常に厳しい側面を迎えるかと思いますが、今後の情勢について外務省としてはどのように御認識されていらっしゃいますか。
(事務次官)非常に痛ましい、あってはならない事件だろうと思います。また、暴力の連鎖、悪循環といったようなことで、事態が更に悪化することは、我々としては避けたい、あってはならないことであると思います。我々としては、イスラエル政府も最大限の自制を行って、事態の沈静化を図るといったことも希望しているところです。中東和平についてはいろいろと困難があります。我々としては、いわゆるロード・マップに基づく和平のプロセスというものを何としても維持して話し合いによる解決を切望しております。外交的な努力として、日本として何が出来るかということもいろいろ考えてはいます。有馬政府代表がしばしば中東諸国を歴訪し、関係国にいろいろな努力を促すといったことも行っております。また、いわゆるカルテットによる外交努力も我々としては期待するところですが、事態が我々の希望するような方向に進んでいないことは極めて憂慮すべき状況だというのが今の認識です。
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台湾総統選
(問)台湾の総統選ですが、陳水扁さんが当選されたということと、その後、若干混乱が続いているようですが、この事態というのは政府としては。
(事務次官)総統選挙については、今御指摘のとおり、選挙そのものが無効であるという訴えも提起されているということですので、この点について我々が何らかのコメントをするというのは適当な時期ではないだろうと思います。今後の事態を注目していくということであろうと思います。公民投票については、投票総数が有権者の過半数に達しなかったということで不成立となったわけですが、この点についていろいろな評価もあろうかと思います。もう少し私自身も、その意味するところについて分析をしてみたいと思っています。今の段階であまり断定的、確定的な判断をするというのは、私は少しためらうところです。もう少し情報を集めて分析してみたいと思っています。
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事務次官会見記録 (平成16年3月15日(月)16:45~ :於会見室)
プーチンロシア大統領の再選
(問)プーチン大統領がロシアの大統領選の結果、再選を確実にされたようですが、日本との間で平和条約という問題を抱えているわけですが、プーチン大統領の再選についてどのように受け止めていらっしゃいますか。
(事務次官)70%程度の得票率で当選されたということですので、一口で言うと、これまでのロシアにおける実績が国民に評価されたのではなかろうかと思います。政権基盤が一層安定したわけですので、今後とも、国内におけるいろいろな改革を推進していかれることを期待しています。日本との関係においては、御承知のとおり、小泉総理との間で「日露行動計画」が採択され、それが着実に実施されてきていますので、これが今後とも継続されると考えています。「日露行動計画」の中には平和条約交渉も一項目として入っております。日露間におけるいろいろな協力関係の拡大・深化の潜在的可能性をもっと実現していくためには、やはり平和条約交渉の進展が避けられない問題であろうと我々としては認識しています。プーチン大統領も、平和条約交渉については取り組むことを前々から言っていますので、今回の選挙の結果、政権基盤がより強固になったこともありますので、我々としても前進があることを期待し、努力をしていく必要があろうと思います。先程、本日新しく着任されたロシュコフ大使の表敬訪問を受けました。新任大使が着任されますと、正式に信任状を天皇陛下に奉呈する前に、その写しを事務次官のところに持ってきて、その後、大使としての活動が公式なファンクションではないとしても、挨拶回りといったことは出来るというのが国際慣行です。その際に私からも申し上げましたが、日露関係においては、もっと発展できる可能性がたくさんある、それを是非新しい大使の力で進めてもらいたい、その中でも、平和条約交渉については日本国民の心の問題としても、実体的な問題としても乗り越えなければならない問題ですので、是非解決に向けて双方で協力し、努力をしたいという話をしました。ロシュコフ大使も、自分としてもまさにそういう気持ちであると言っていました。具体的にどう進めるかについては、いろいろ戦略を練る必要があります。ロシア側の対応も前向きな姿勢は感じられます。賢人会議もありますし、行動計画も進めることを踏まえつつ、平和条約交渉についてもこれから弾みをつけていくことが必要であろうと認識しています。
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スペインにおける総選挙
(問)スペインの総選挙の結果について、野党側が勝利しましたが、アスナール政権はブッシュ政権のテロとの戦いに積極的に協力してきたと思うのですが、今回の総選挙結果についてどういう認識をお持ちでしょうか。
(事務次官)外国の国内選挙のことですから、云々するのは適当ではないと思います。総選挙の前の世論調査では与党が優勢であったと聞いていました。結果としてはこれまでの野党が勝利をおさめたということです。絶対過半数ではないようですので、連立を組む必要が出てくるかと思います。これまで野党であった社会労働党の選挙前の姿勢としては、イラクとの関係で申しますと、スペイン軍の派遣期間は今年の6月30日までということになっていますが、それについては遵守していく、ただし7月1日以降については、国連がイラクにおける中心的役割を引き受けていなければスペイン軍も撤退する方針であるという考えを述べていると承知しています。政権についた場合に、どのような具体的な政策をとっていくのかについては、一言で申し上げて、注視していくということです。一言加えますと、新しい政権を担うと思われる社会労働党のサパテロ党首は勝利宣言の中で、最大の優先事項はテロ対策だと発言しています。あの事件の凄まじさを考えれば当然のことだろうと思います。事件の真相究明もこれからであり、犯人についてもいろいろな可能性が言われているところですので、そういった問題も含めて、イラクとの関係、テロとの関係についての考慮がなされることもあろうと思っています。
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中国(温家宝総理の発言)
(問)中国の全人代の記者会見で、温家宝首相が日本の歴史問題に対する姿勢について大変厳しく言及していますが、この件に対して如何でしょうか。
(事務次官)温家宝総理自身が記者会見で発言されていますが、日中関係の主流は良い関係にあることを言われた上で、例えば貿易も今1300億ドルを超えていることも言及されていますが、日中関係に存在する主要な問題として靖国神社参拝の問題も言及されています。その上で日中関係の大局を重視してほしいという内容だったと思います。日中関係はいろいろな側面がありますが、大局的に見た場合、日本と中国の利益の共通性、相互互換関係が最近急速に顕著になってきていると思います。今日、戴秉国外交部副部長と会談をしました。内容についてはプレス・ブリーフィングで説明しましたが、私自身、非常に印象に残りましたし、強いメッセージとして伝わってきたのは、やはり中国にとっても日本との関係が極めて重要であるというメッセージでした。中国は自分たちの国益、自分たちの国民の利益のためにも日本との関係がどうしても良好であってほしい、国際環境が経済発展に資するものであってほしいということで、日本と中国の良好な関係は永久的なものであると述べていました。これはただの言葉というよりも、現在の中国の状況、将来の中国のことを考えた場合、日中関係、更にはより広く国際環境といったものが中国の将来にとって非常に重要である、良好なものにしておきたいという気持ちが表れていたと思います。その方向で日中関係が進んできていることについての評価もあったと思います。もちろん温家宝総理もそういったことを踏まえて、日中関係の主流は良好であるし、大局的に見守っていく必要があるという趣旨の発言がなされたのであろうと思います。
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事務次官会見記録 (平成16年3月8日(月)17:00~ :於会見室)
日墨FTA
(問)メキシコとのFTA協議ですが、先週末に結論を見ないまま結局終わったのですが、今後の交渉の進め方と今後の展望をどういうふうにお考えなのか。
(事務次官)御承知のとおり、先週、精力的に協議し、一定の進展があったという評価をしていますが、まだ埋まらない溝、立場の違いがあります。それが現在の状況です。双方とも交渉についての熱意は変わらないものがありますので、これからも協議は継続していきますが、具体的にいつ、どのような形で再開するかについて、現時点において定まったものはまだありません。外交チャンネルを通じて打ち合わせをしていくという段階です。確たる具体的な日程等については調整中であるというのが現状です。
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ロシア首相の交代
(問)ロシアで首相がフラトコフさんに代わられて、大統領選が間近ではあるのですが、今回の首相交代をどういうふうに見ていらっしゃいますか。
(事務次官)ロシアの首相というのは日本の総理大臣とはだいぶ違う機能をもっていると思います。今回、このタイミングで首相が交代になったことについては、任命権者のプーチン大統領にいろいろなお考えがあったのだろうと思います。大統領選挙を間近に控えての体制ということも言われておりますが、その辺りはロシアの内政の問題ですので、我々として特段コメントすることはありません。いずれにしても、これからのロシアを見ていく場合には、来るべき大統領選挙があります。プーチン大統領の政権基盤がその結果固まっていくという予測が一般的です。その下でのロシアの首相、特に経済面についての権限を持っている首相の立場、地位ですが、そういうことを考えて、日露関係という観点から見ますと、特段、基本的な変更があるというようなことは予測されないと考えて差し支えなかろうと思います。我々としては、日露間においては「行動計画」もありますし、更には平和条約交渉についても、新しい政権の下での段取りも考えていかなければいけないことですので、ひとまず大統領選挙が終わって、「行動計画」を進めて平和条約交渉などについてもいろいろ相談していくということです。
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天木元レバノン大使による2冊目の本の出版
(問)前のレバノン大使の天木氏が今度2冊目の本を出したわけですが、1冊目の本が出た時から大臣などは国家公務員法違反、守秘義務の部分でそれに違反がないかどうか内々に調査をしているということをおっしゃっておられました。この調査というのはその後どう進捗したのでしょうか。あるいは、司法的な手続きに入る準備というのは今どうなっているのでしょうか。
(事務次官)結論だけ申しますと、今の段階において司法的な手続きに入るという結論を出したということはありません。いろいろ事実に反する記述が多いわけですが、それが守秘義務に反するかどうかについては、現在、明確な結論を出しているところではありません。
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中国船による海洋調査
(問)中国の船が日本のEEZで調査活動をしていたということですが、これについてどう受け止めているのか聞かせてください。
(事務次官)最近の例で申しますと、3月2日から4日にかけて我が国の排他的経済水域内で海洋調査と思われる活動を行っていました。これについては2日当日から、3日、4日と続けて中国側に、東京においては在京中国大使館に対し、北京においては日本大使館から北京の外交部に対し重ねて申し入れを行いました。我が国の同意を得ずして海洋の科学的調査を行うことは認められない、ただちにその水域から退去すべきであるということを申し入れ、5日未明に公海に出たというのが事実関係の経緯です。海洋調査船の活動については、我々としても非常に遺憾な活動があるということを感じており、基本的に国連海洋法条約に基づいた行動をとってもらいたいものですし、また日本と中国の間においては海洋調査について事前の申請を審査した上で同意する、しないを通告するシステムがありますので、こういったことに従ってもらう必要があると考えています。これからも事案ごとに我々として取るべき態度、措置をきちんと行っていきたいと思っていますし、個別の場合の処理だけではなく、中国政府に対しきちんとした申し入れをすることも必要です。これまでも、例えば昨年12月に日中間の海洋法の問題に関する日中協議という機会にも申し入れを行いました。更に本年2月の日中安保対話は王毅外交副部長と田中外務審議官の間で行われていますが、こういった機会にも中国側に対して東シナ海における事前通報の枠組をきちんと守るべきであるということを強く申し入れています。中国側においての事情というのは必ずしもつまびらかではありませんが、外交部と実際の実施をしている官庁との間の連絡といったことにも時間がかかるところがあるようですので、この問題については我々としては今後ともより厳格に取り組んでいくことが必要であると考えています。
(問)最後におっしゃっていましたが、中国側は、2、3、4と申し入れた時に何という言い訳というか、説明をしていたのでしょうか。
(事務次官)中国側窓口の外交部は、直接担当している関係部局に伝えますということでした。
(問)安保対話などでも再発防止みたいなことは恐らく作っていると思いますが、もう少しまとまった回答みないなものは得られていないのでしょうか。
(事務次官)中国側から、海洋法条約に従ってきちんとやります、事前通報も必要な場合にはやります、再発防止についても努力をしますという回答が今まではありました。現実において再発が行われていることもありますので、この点については、我々としては更に今後とも注意をしていきたいというのが今の姿勢です。
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事務次官会見記録 (平成16年3月1日(月)17:00~ :於会見室)
六者会合
(問)6カ国協議ですが、小泉総理が報告を受けた後に、(作業部会を)3月にも開催する方向でというようなことも言及されているのですが、開催の目途と、日本としてはどういうような性格のものにしたいとお考えなのか、その2点をお伺いします。
(事務次官)今回の六者会合で制度的なプロセスとして作業部会を設ける、そして準備を行って6月の末までに、「までに」ということはその前ということで、6月末と決まったわけではありませんが、6月末までに次回の六者会合を行うことが議長総括という形で明らかにされています。作業部会の日取りについては、今回の六者会合で合意はありませんでした。作業部会が行う作業の中身及び開催の時期については、今後、外交チャンネルを通じて打ち合わせをして決めていくというのが流れです。従って、決まった日取りは今のところありません。もちろん我々としても、また他の多くの参加国にしても、出来るだけ早くこの問題について前進を図りたいという気持ちはありますので、我々としては出来るだけ早くそういった作業が行われるための努力を行うことを考えています。
(問)作業部会の中身についてはどういうものを話し合うと決めていますか。
(事務次官)今回の六者会合でいろいろ話しがあったことに基づいて、これからまさに外交チャンネルで打ち合わせるということです。具体的にどれを優先するといったことが決められているということではありません。
(問)日本政府としては特にどういう点をということはありますか。
(事務次官)これから関係者と協議していきますが、我々の基本的立場はいわゆるCVID、北朝鮮による核開発計画について完全かつ検証を伴い、また不可逆的な廃棄を目的とするということですので、それに沿うような形での作業部会を我々としては探求していくということです。
(問)拉致問題ですが、北朝鮮側から核問題と拉致問題の間の関連性という発言があったようですが、これはどういうふうに受け止めていらっしゃいますか。
(事務次官)北朝鮮の方がそういう言及をされたということについて、それがどういう意図に基づくものかという解釈については私自身は予断を持ちません。それは北朝鮮の人に聞かないと分からないと思います。いずれにせよ、重要なことは、今回も具体的な前進はありませんでしたが、政府間の協議を続けていきましょうということで、ボールは今、北朝鮮側にあって、これからも我々としては回答を督促していくということです。大事なことは、この問題を解決することが日朝関係を前進させるために必要不可欠である、また我々としては何度も申し上げていますが、北朝鮮に対する経済協力は国交正常化が出来なければ行わないという一貫した方針を取っていますので、そういったことは北朝鮮側も当然考えているだろうと思います。核問題と拉致問題の関連性ということからすれば、いずれも早く解決することが好ましいわけですので、どちらが先でなければならないということではなく、どちらも早く解決したいというのが我々の思いです。
(問)福田官房長官が国会で、核問題が動いていく中で拉致問題は解決する可能性が非常に高いと思うということをおっしゃられていますが、そういう見方は共有されていらっしゃるのですか。
(事務次官)いろいろな見方がありますし、確かに核問題が解決されればいろいろな他の問題も動きやすくなるということはあろうかと思います。しかし他方において、別の角度から見れば、拉致問題が解決することが日本と北朝鮮との関係でプラスの作用が働くということもあるでしょうし、それが核問題との関係での対話の雰囲気も良くするということもあるでしょう。お互いプラス、プラスとなればいいわけですが、どちらが先でなければならないということは言えないと思います。
(問)作業部会についてですが、イメージとしては検証、完全、不可逆原則に沿う形という、日本としては検証の部分に基点が置くと思うのですが、エネルギー支援とか、幾つかの分科会に分けるとか、そういうイメージなのでしょうか。それとも1つの部会でということでしょうか。
(事務次官)そういうことも含めて外交チャンネルで打ち合わせるということです。2月29日に北朝鮮の朝鮮中央通信で外務省のスポークスマンのコメントを出しています。それを見ますと、今回の六者会合に関して一定の評価をしているわけです。その中では、朝鮮半島の非核化という言葉を使っていますが、その中でやはり問題を引き起こしたのは米国の敵視政策だと言い、それが変わらない限り六者会合の意味がどこにあるのかといった根本的な疑問も呈しているわけです。そういった相手と一緒に作業部会を行っていくということですから、作業部会のこれからの役割、仕事についても私はかなりの詰めの作業が必要であるという感じを持っています。
根本的な話になりますが、そもそも原点に立ち返って北朝鮮の核問題というのを我々の目から考えてみますと、もちろんこの地域及び日本自体の安全保障に関わる問題であるわけですが、それと共に国際社会が直面している大量破壊兵器、特に核兵器の拡散を防止するといった観点から、やはりこの国際的な問題という側面もあるわけです。北朝鮮が、拉致にしてもそうですが、核の問題についても国際社会の一定の行動規範、行動基準に従った行動を取ることが、北朝鮮が国際社会に受け入れられて北朝鮮自身の利益にもなるということを自ら認識する、またそういった認識を持つように我々としては仕向けることがやはり一番大事なことであろうと思います。そういった大きな観点も踏まえて、これからの作業部会、六者会合を進めていく必要があろうと思います。いわば小手先の核カードを使っての外交ということでは、こういった大きな問題の解決、引いては国際社会が北朝鮮を受け入れて、北朝鮮も国際社会から利益を受けるという目標には到達しないことを悟ってもらう必要があると思います。
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日墨FTA
(問)メキシコとのFTA交渉ですが、先週から事務レベル交渉が続いているようですが、これについての先行きの見通しはどう見ていらっしゃいますか。
(事務次官)今、精力的に事務レベルの交渉を行っているところで、予定としては3月5日まで、第14回目の事務レベル協議を行っています。その進展を見た上で次のレベル、ハイレベルの方に移って交渉するのが適当かどうかという判断をすることになります。現在のところは、まだそういう判断をしているわけではありませんが、必要に応じて高いレベルでの会合も開催を検討していくという状況です。市場アクセスの問題とか、協定案文の問題とか、問題は非常に多岐に渡っていますので、精力的に協議を続けているという状況です。
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ドビルパン仏外相の訪日
(問)ドビルパン仏外相が日本に来られていますが、明日、いろいろな会談があるということですが、基本的にはイラク復興支援についての協力ということがメインのテーマになるということでしょうか。
(事務次官)むしろメインのテーマは日本とフランスの関係全体とお考え頂いた方がいいと思います。確かフランスの外務大臣が日本に来られたのは2000年でした。外務大臣の訪日はしばらく間があいていました。日本とフランスの関係は非常に幅広いものがあります。思い出して頂ければ、昨年、エビアンサミットがありましたし、その前の水フォーラムで日本とフランスが協力したこともあります。もちろんイラクの問題を巡ってもいろいろ意見交換を行ってきました。武力行使の前にもそうでしたし、復興の問題については御承知のとおり、橋本総理特使がフランスを訪問されて、日本がイニシアティブを取って、フランスもイラク復興支援の輪の中に入ってもらいたいという話も進めてきましたし、具体的に話は進んでいます。従って、今お尋ねのイラク復興との関係では、ドビルパン外務大臣が訪日中、川口大臣との会談が予定されていますので、そういった会談において最終的な詰めを行い、フランスと日本とでイラク復興についてどういうことが一緒に出来るかを明らかにすることも出来るかと期待しています。
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