事務次官会見記録 (平成15年9月29日(月) 17:00~ 於:芝会見室)
中国における旧日本軍毒ガス訴訟
(問)中国の遺棄化学兵器による被害を巡る裁判で日本政府に賠償金の支払いを命じる判決が出ましたが、この件についての受け止め方と、今後どのように対応されていくのか。
(事務次官)本日、東京地裁において出された判決、厳しい判決であると受け止めています。今後の対応については判決の内容を十分に検討した上で、我々、国としての対応を検討していくということです。まずは十分、判決の内容を検討したいというのが現在のところです。
(問)この判決が例のチチハルの事件の今行われている交渉にどういう影響を与えると思いますか。
(事務次官)東京地裁の一審の判決ですし、我々としては裁判は裁判として、今申しましたような、今後、十分判決の内容を踏まえて対応を検討していくということです。他方、チチハルにおける問題については、我々としては中国側と誠意を持って話し合いをしていますので、基本的な方針に変更があるわけではありません。話し合いを続けて早くまとめたいと思います。更に、根本的なところでは、チチハルにおけるような被害が生じることがないようにするためにも、やはり化学兵器禁止条約に基づいて出来るだけ早く遺棄化学兵器を処理することが重要なことだろうと思います。その点では中国側と密接に協力をしつつ誠実に対応していくという姿勢です。
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日米韓非公式局長級会議
(問)今日から日米韓の非公式の局長級会議が開かれておりますが、今回の会合のねらいとか主眼、どのような成果を導き出したいとお思いでしょうか。
(事務次官)御承知のとおり次回の6者会合の開催については、まだ時期等決まっていません。そういう段階での日米韓の非公式の協議ですので、今後、あり得べき6者会合といったものを念頭において、それに向けた意見交換、当然のことながら北朝鮮の核問題を平和的、外交的に解決するための取り組みについて意見交換するということですので、現段階で何かこの非公式協議において決定をするといったようなことは想定していません。意見交換ということです。
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TICAD III
(問)次官、今日からTICAD IIIの会議が始まりましたが、日本政府は向こう5年間で10億ドルの支援を打ち出されようとしていますが、アフリカ関係のNGOなんかの間には、その前にこの10年間の総括を具体的なプロジェクトについてしっかりとやるべきではないかという声も聞かれるわけなんですが、そういう声に対してどういう。
(事務次官)当然、過去10年間のTICADプロセスの成果とか評価といったことは念頭にあるわけです。もちろん我々としても、例えばアフリカ開発のための理念といった点で、この10年間を振り返り、日本が従来から主張しているオーナーシップとパートナーシップの考えといったような開発の理念、更には全世界を見渡してみるとアフリカの開発、貧困の削減、人間が人間として生活をしていく状況を整えるといった認識について国際社会がもっと強力に取り組むといった点での成果といったものは言えると思います。もちろん我が国としても、この10年間で2国間のODAでは約120億ドルといった支援をアフリカに向けて供与してきたわけですので、そういった中身についての我々としての評価、認識といったものは当然TICADの会議の中でも触れられると思います。我々としてはオーナーシップとパートナーシップという考えはアフリカにおける開発の議論の中に反映されてきたと思いますし、それがいわゆるNEPADという新しいアフリカの動きと十分連携が出来るものと思っていますので、今後とも日本とアフリカの協力関係というのはこれまでの評価を基礎に発展し得ると考えています。昨日、小泉総理は19人の元首、首脳の方とバイでお会いになられました。これは非常に画期的なことだと思います。TICADプロセスというもの自体が、言ってみれば、大げさに申しますと世界の主要国の中でアフリカとこれだけ期待と親しみを込めた会合を日本が主催できるという点は、素直に認識してもいいのではないかと思いますが、それはただ単に自己満足で終わるものではないので、やはり我々としても自己評価をした上で、またアフリカの方々の話をよく聞いた上で、パートナーシップというものを構築していく更なる前進をしたいと思います。
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中国での日本人旅行者集団買春事件
(問)また中国なんですが、広東省の珠海市で日本人による集団の買春事件というのが報道されていて、相当中国の国民感情というのにひんしゅくをかっているようですが、何か政府としての対応とか考えていますか。
(事務次官)この点については、まず中国側における報道、更には中国外務省の報道官の発言というものがあります。我々それには注目をしているわけですが、そもそもまだ事実関係についての確認が出来ていないという段階です。日本の直接の関係者の方々は、これも報道で承知したところでは、事実関係について食い違いがあるということも言われているようです。いずれにしても、中国側当局と我々との関係においては、関係する現地の総領事館が中国側の当局から事情説明を受けるということがありませんと、また、日本側の当事者の話というものも確かめませんと現段階でどうこういうのはまだ早いと思います。いずれにしても、報道が中国側でなされているということは十分承知をしています。一般論として、外国に行った場合にはその国の法令に従う、更にはその国で恥ずかしくないような行動を取る、これはまた当然です。しかしこれは一般論ですので、個別の事実関係については、まだ明確ではないというのが現状です。
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事務次官会見記録 (平成15年9月22日(月) 17:00~ 於:芝会見室)
川口大臣再任
(問)大臣の再任についてどうお考えでしょうか。
(事務次官)この度、内閣改造にあたりまして、川口大臣におかれては再任されたわけですが、これまで我々は、1年8カ月にわたって川口大臣の下で仕事をしてきました。川口大臣は就任早々、外務省にとっては大変ないわば危機の時期でしたが、外務省改革を陣頭に立って推進をされ、外務省員の意識を改めるとともに、その士気を高めるということをされてこられたと思います。外交は課題山積ですので、その間も北朝鮮問題、イラク問題、更にはここ最近ではWTO交渉について、私が見ておりましても川口大臣は全てのエネルギーと全ての時間を注がれたと思います。外務省と日本外交のために邁進してこられた姿というのは省員から見ても非常に力強く感じられるものでした。我々の抱える課題というのは重大かつ山積しています。この留任の機会に事務当局としては改めて川口大臣の御指導の下、また大臣を支えながら日本の外交に邁進するという決意を省員として改めて思いを致したいと思います。ちなみに、これは大臣から後ほど話があるかもしれませんが、出張の回数という点からしましても25回、のべ44カ国だそうです。その移動距離たるや40万キロを超えまして、地球を10回以上周ったということになります。電話会談は125人とされたということです。これは、先程申しました全てのエネルギーと時間を外交の仕事に注がれたということの一端を示すものだろうと思います。
(問)次官、今おっしゃった外務省改革の関連でちょっとお伺いしたいのですが、大臣の陣頭指揮の下に意識を改めるという話もありましたが、それは職員がどういう意識だったものが、どういう意識に改まったと思いますか。
(事務次官)それはいろいろな面があろうと思います。大臣が日頃おっしゃっていたのは、「国民と共に歩く外交」であるとか、「国民に分かりやすい外交」であるというようなところもあるかと思います。私が特に感じますのは、やはり日々、緊張感を持ってみんなで一生懸命に考えて、議論をして、日本の国家と国民のために何が望ましいか、適当かということを詰めて、それを実施する、そういった一種の緊張感を持った仕事をするというのが、意識の点から言えば、私は一番大きいのではないかと思います。
(問)人事の件なんですが、今回の人事で、例えば安倍官房副長官が自民党の幹事長になったことや、あるいは川口大臣が再任されたということで、政府の拉致問題への取り組みに何らかの影響が出るのではないかという見方も一部にはありますが、次官はどうお考えですか。
(事務次官)拉致問題についての政府の方針というのは、これは既にきちんとしていると思います。当然、最優先課題として正常化との関係でもこの問題を取り上げるということですし、まずは5人の方々の御家族の早期帰国を正常化交渉再開の前に実現するように努めるということですし、他の方々の消息、事実関係についての解明を求めていくということにおいては、政府が一体としてこれに取り組むということで、この点については非常に明確だろうと思います。最近も総理御自身の口から、政府は一体として臨んでいるというお話もありました。今後ともそういうことで努力をしていくということです。
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事務次官会議
(問)別な話なんですが、総選挙に向けた民主党の公約と言いますか、党の主張の中に、事務次官会議の話というのが入っているわけなんですが、次官会議のメンバーとしてこうした考えについてはどういうふうに思いますか。
(事務次官)党の正式のマニュフェストの中に入っているということか、まだその段階ではないのか、おそらくその前の段階の、案の考え方の段階ではないかと思います。事務次官会議と言いますのは、もちろん法律案の決定であるとか、重要な物事の決定は閣議で行われるわけですので、その前に事務方として遺漏がなきように物事を詰めるという作業だと思っています。政策は当然、閣僚レベル、閣議で決めるという点ははっきりしていますので、事務次官会議における役割というものは、やはり重要なものがあるだろうと私は思っています。
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アザデガン油田
(問)内政から外交に話は変わるのですが、イランのアザデガン油田の件なんですが、これについてはイラン側が日本の優先交渉権の打ち切りを告げたというか、そういう報道がありまして、また日本以外のヨーロッパの国々なんかも水面下でイラン側と接触などを増やしている状況にあり、核問題も絡んで非常に複雑な事態の展開を見せているのですが、イランとの間の油田交渉、それとリンクした核問題ということについて、次官はどういうふうな見通しを持っていらっしゃいますか。
(事務次官)イラン側において幾つかの国際的な企業に対してアザデガン油田の開発に参入することを検討するよう話をしているということは承知しています。他方、イラン側においては日本企業のコンソーシアムとの油田交渉というのを継続するという意向も持っており、現にその交渉も現在継続中であると理解しています。優先交渉権というのは少なくとも形式的には6月末で切れていると承知していますが、その後も交渉が続いているわけですし、現在においてもそれが続けられているというのが現状であると思います。
他方、核問題については、これも御承知のとおり舞台はIAEAの方にあるわけです。先般、IAEAの理事会における決議も採択されました。イランが理事会の決議に沿った方法でIAEAに完全に協力してその疑惑を晴らすということがやはり一番大事なことだろうと思います。これは従来からも申しておりますが、油田の開発の交渉は、それはそれで契約交渉というのが続けられているわけですが、我々日本としてはそれはそれとして、核兵器の拡散の問題、不拡散の問題といったことは我が国自身、又、国際社会にとって非常に重大な問題です。これはIAEAを舞台として疑惑の解明、払拭ということを追求していくということです。
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事務次官会見記録 (平成15年9月1日(月) 17:00~ 於:芝会見室)
6者協議
(問)6者協議なんですけれども、核の問題と拉致事件についてそれぞれどういう進展があったかということについてどうでしょうか。
(事務次官)6者協議の評価、全体的な評価ということにつきましては、既に政府の関係者からいろいろ説明があったかと思いますけれども、第一に、我が国から致しますと、核の問題、さらには我々として非常に重視しております拉致の問題に加えて、ミサイル等いろいろな問題についての解決の重要性ということを、他の国がいる場で明確に指摘したということが言えると思います。いずれにしましても、今度の会合で、王毅外交部副部長が最後に総括をしていますが、この朝鮮半島の問題について、特に核兵器開発の問題について、平和的な解決ということにつき意見が一致したということ。更には朝鮮半島の非核化ということについて意見が一致したこと。こういった点で、皆が一同に会してそういう意見の一致ができたということは、よいスタートになったと思います。この6者協議のプロセスはまだ始まったばかりですが、これから重要なプロセスになる、従ってその継続が重要であると思います。更に、少し視点を変えてみますと、北東アジア地域の平和と安全の問題について、関係国が一堂に会して意見を述べ合うことは、直接には北朝鮮の核の問題ですが、地域的な安全保障の問題について関係国が集まったことの意義は、潜在的には将来に繋がりうる大きなものであろうと思います。御承知のとおり、かつて小渕総理がこの地域の信頼醸成ということで6者協議の構想を明らかにされました。また、昨年の日本と北朝鮮の間の平壌宣言におきましても、この地域の問題として安全保障の問題に関し協議をするということについても述べられたわけです。そういったコンテキストを考えますと、地域の関係国が地域の安全保障について話し合うというような場が出来たということは、今後の将来の地域的な枠組みの基礎となるかもしれない、そういった芽となりうるかもしれないといった点でも、意義があると思います。日朝間のやり取りに関しては明らかにされているとおりですが、28日と29日の北朝鮮との接触、話し合いがあり、引き続き拉致の問題について話し合っていくということになったわけですので、今後いろいろなことがあるかもしれませんが、我々としては原則的立場に立って、この拉致の問題について働きかけ、努力というものを続けていきます。これも糸口と申しますか入り口というものができたのではないかと思います。
(問)6者協議でですね、日本政府としては北朝鮮が核放棄をすれば、エネルギー支援や安全保障との点について議論を深めるという言及をしたわけですけれども、これはその核問題の解決に向けてですね、日本としてはどういう問題意識というか観点からそういったことについて言及されたのでしょうか。
(事務次官)これは大きな全体のコンテキストの中の一部ですので、一部分を取り上げて解釈するというのは必ずしも適当ではないかと思います。いずれにせよ、まだ一回目の会合で、これからいろいろな問題が協議されていくところなので、具体的な発言内容を明らかにしていくのは必ずしも将来のためにいかがなものかなと考える点については御理解いただきたいと思います。一般的にエネルギーの問題については、御承知のように、KEDOの枠組みというのがあって、これまでの経緯の話で御承知のとおりと思いますが、北朝鮮が軽水炉に転換する、核の活動を凍結する、ゆくゆくは解体するというコミットメントと引き換えと申しますか、裏返しとして一定のエネルギー支援といったものが予想されていたというコンテキストがあります。それはそれで今後のKEDOの扱いということも関係してくる将来の問題として、エネルギーの問題をどう扱うかという点は検討に値する問題である、こういう位置づけであります。しかし、具体的なことについて、何か日本が提案をしたとか、具体的な考えを提示したとかいった訳ではありません。
(問)今回の議長総括で言及されている北朝鮮の安全保障については、日本としても北朝鮮が核を放棄するのであればそれについても、議論を深めていくことができるということですか。
(事務次官)議長総括で言われているとおりです。北朝鮮が、これは前から言っていることですが、自国の安全保障について懸念を持っているということは今回も話がありました。それに対しては、懸念には及びませんということなのですが、そういうことを踏まえた上で、安全保障について北朝鮮側が懸念を持っているのであるならば、それについて話し合いは深めていく用意があるということですので、具体的に何らかの構想があったということではない、まだそこまで行ってはいないと思います。王毅副部長は、今度の一回目の会議の論点整理ということ行ったと思います。
(問)その論点整理なんですけれども、協議を継続していくということを確認したわけですが、日本政府としては、次回からの協議は何をメインにして話あっていくとお考えですか。
(事務次官)今回の会議を踏まえてこれから検討することですし、また日米韓で十分な打ち合わせをする、分析もやった上で相談をしていくということです。もちろん、会議の六ヶ国の共通の関心テーマとしては、核兵器開発の問題について朝鮮半島は非核化しなければならないという点と、平和的な解決を図るといった共通の認識があるわけですので、そういったことを踏まえていく訳ですが、まだ先週ついこの前終わったばかりですので、これからいろいろな整理をしていく必要があります。
(問)先程、6者協議が今後の北東アジアの安全保障を考える枠組みの芽になり得るかもしれないとおっしゃったんですけれども、そのまとめ役というか議長役を中国が行っている、今後も中国が果たしていきそうな流れにある。こういうことに関しての意義と日本の関わりというのはどういう風にお考えですか?
(事務次官)地域の信頼醸成の枠組みにこれがそのまま発展していくというような直線的な楽観的期待を私は述べているわけではありませんが、いずれにしても、これは今までなかった、地域の関係国が集まって、一つの安全保障の問題について議論する、協議する、という意味では画期的な事であったと思いますし、そういった空気、雰囲気、プロセス、といいますか試行、そういったものが将来の地域的な協力の芽になるというこであれば結構であると思います。今回は中国が非常な努力をし、ホスト役として皆を調整してまとめるという役割を果たしたと思いますが、将来のこととなりますと、いろいろなことから考える必要があります。いずれにしましても、中国にとりましてもこういった地域の問題についてイニシアティブを取るということは、いまだかつてそれ程なかったのではないかと思います。ましてや、安全保障の問題について、積極的な貢献をする、役割を果たすということについては、役割が肯定的、積極的である限りにおいては、我々としては大いに歓迎するところですし、今回中国はそういう役割を果たしていると思います。
(問)今後の日朝協議の進め方なんですが、拉致被害者家族の帰国問題という喫緊の課題を抱えながら、二国間協議、北朝鮮側は継続を合意したわけですが、どのようなタイミングとやり方を求めていくのでしょうか。
(事務次官)率直に申し上げて、現時点において、具体的にこういうタイミングでということをお示しすることは出来ません。これから先方と接触をして打ち合わせをしていく必要があります。大事なことは、我々の基本的な立場、主張といったものは先方に伝わっているわけです。これは6者協議の機会もそうでしたし、その前からも伝わっているわけです。それを踏まえて話し合いができるようになるよう、可能な限り早期にそういったことができるよう考えていきたいと思います。今、この日に、こういう段取りになっているということを申し上げるような状況ではありません。
(問)日朝協議の、二国間協議の正常化交渉の枠組みと拉致問題を、核問題に先行して解決するという枠組み、その2点で、クアラルンプールの時には150項目の宿題を出してますね。で、いつでもドアをオープンにしているんだと、向こうから答えがあれば応じるという姿勢できていたのが、今、ある政治レベルで、家族8人が帰ってこなければ日朝交渉に応じない、帰ってくることが前提だということになると、向こう側が何か話したいという協議の場が、家族が帰ってきてからじゃなければ話せないということになるのか、それとも、それは日朝交渉の枠組みとは別の日朝協議という形で話は進めていくとされてるのか、それはどうなんでしょう。臨機応変にやっていくということでしょうか。
(事務次官)家族の方々の帰国というのは早期に実現する必要がある。そうしませんと、何を話してても、物事は進まないということはあると思います。ただ、だからといって、拉致の他の問題について、興味を持たないというわけではありません。拉致に関係するいろいろな問題ができるだけ早く進展すれば、こちらにとってはそれが望ましいことですし、求めていることです。今の御質問については、少なくとも家族の帰国の問題については、早くやるべしということです。だからといって、他の問題の解決を遅らせていいというわけではありません。確かにご指摘のとおり、安否について質問状も出して、それに対する回答を求めているわけですから、その回答が遅くなってもいいというわけではありません。それも引き続き求めていくということには変わりません。ただ、現実に5人の方々が日本に帰られて、家族の方々の帰国ということが、人道上、今求められているこの状況においては、とにかく早くやるべしという主張が我々の主張であります。
(問)そうしますと、日朝正常化交渉という枠ではなくても、日朝協議ということはこれからもありうるということですね。六ヶ国協議と並行しながら。
(事務次官)厳密に考えてしまうとあれかもしれませんが、日朝正常化交渉というと、例えば正常化の細かな条件を話し合うという状況ではありません。円借云々というのはとんでもないと思います。そういう意味では、その前に包括的に全体を見たアプローチということが必要ですから、拉致の問題について言えば、今のところは今後も北京で窓口が開かれるのであれば、いろいろな問題といいますか、拉致の問題の中でもこの問題に限るということでもありませんし、拉致以外の問題についても向こうが何か言ってくれば聞かないという話でなく、聞く耳はもっているということです。
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日米戦略対話
(問)今週、日米戦略対話が開催されますけれど、特に北朝鮮とイラクについて、現時点では米側とどのような意見交換をしたいとお考えですか。
(事務次官)北朝鮮、イラク、中東和平、南西アジアの情勢、いろいろ意見を交換したいことはあります。北朝鮮に関する6者会合については、現に北京で非常に緊密な連携をやっておりましたし、評価等についてもそう違うようなことがあるとは思いません。今後については、TCOG等の場もありますし、そういったところで詳細は詰めてもらいたいと思います。
イラクについては、現地の状況というのは厳しいものです。我々としては従来から一貫してイラクの問題というのは、できるだけ国際社会が広く参画した形で取り組んでいくことが望ましい。そういう基本的な立場を維持してきましたし、その点は米国に対しても伝えてきたところです。従ってこれからも、国際社会が広くイラクの安定、国家としての一体性の維持、復興ということに協力しうる状況、体制といったことが望ましいので、それをどうやって構築していくかということについて、自由な意見交換をしたいと思っています。我々日本にとりましても、イラクの安定というのは、繰り返しになりますけれども、イラク一国の安定に留まらず、中東地域全体の平和と安定にとって重要ですし、中東和平との関係もあります。日本にとっては、直接的にはエネルギー資源の安定的供給という点からもこの地域の安定は重要ですので、そういった日本の国益といった観点からイラクの復興と安定の回復にはできるだけの努力をする必要があると思います。基本的にはそういう立場に立った上で、国際社会として、どういうことをやれば有効な支援ができるかということについて、ざっくばらんな話ができればと思っています。
(問)自衛隊を派遣するための政府調査団の派遣については、現段階どういう準備状況ですか。
(事務次官)現段階で具体的なことが決定しているとは承知しておりません。まさに現地の状況というのは非常に注視を要します。調査団の派遣を含めて現地の状況を把握することが先決であろうと思っています。現在検討中ということです。
(問)日本国内から、自衛隊の派遣は困難だという声が相次いでいることについて、アメリカ政府の中にも、ずいぶん、ネガティブな発言が続くことに苛立ちを感じている向きはあるようですけれども、それについて、今度の戦略対話で何かご説明する予定はありますか。
(事務次官)その点はあえて説明する必要もないと思いますが、慮って考えますと、現在のイラクの情勢というのは米国にとっても厳しい状況であろうと思いますので、そういった厳しさについての認識というのを日本も一緒に共有して、先程申しましたよう、安定し一体性を保ったイラクが自立していく、回復していくためにどういうことができるかということを日本も一緒に考え、一緒に努力してほしいという気持ちであろうと思います。そういった気持ちに対しては、これは対米追縦とかいったことではまったくなく、我が国自身のためにも、先程申しました観点から知恵を出し、意見も言い、努力していくということが必要である。私は個人的にはそういう姿勢で話をしたいと思います。
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