事務次官会見記録 (平成14年12月16日(月) 17:00~ 於会見室)
北朝鮮(国交正常化交渉、IAEA)
(問)日朝交渉が9月17日に行われてから3カ月になるわけですけれども、現在、日朝交渉が非常に停滞していて、国際的な圧力をかけるというのが日本の現在の立場かと思いますけれども、日本政府としてそれ以外、それも含めてでもいいのですが、日朝交渉において今後どの様な点に力を入れていきたいとお考えでしょうか。
(次官)日朝交渉に対するわが方の姿勢は、これまでずっと一貫しています。即ち日朝間のいろいろな懸案を解決して不正常な関係を正常なものにする、協調的な関係にしたいというわけですが、それは、単に日朝関係だけではなく、正常化というものは北東アジアの平和と安定に資するものでなければならないという考えで、いわゆる包括方式というもので臨んできているわけです。そのことは9月17日の日朝首脳会談における平壌宣言にも書かれていると思います。我々の基本的な姿勢、方針は一貫してそういうものですが、その後の事態の動きというのは御承知の通り、拉致の問題については、北朝鮮側から交渉を再開するような環境には今無いということが伝えられてきたわけですし、また核の問題については北朝鮮が現在に至るまで濃縮ウラン計画について国際社会が求める対応をしていないということです。我々としては常に話し合いの門戸は開いているつもりです。これは正に相手のあることですから、我々としては粘り強く、対話のチャネルは常に開いているという姿勢で現在に至っているということだと思います。その間、核の問題を巡り、北朝鮮側からいろいろな動きがあります。濃縮ウラン計画については、これは日本だけということではなく、KEDOの理事会において11月に声明が出まして、北朝鮮に濃縮ウラン計画を具体的に信頼のおける方法によって撤廃すべきであるという態度を伝えたわけですが、それに対して北朝鮮は応じていないということであります。核の問題は、我々としては、もちろん日朝のパイプにおいても安保協議という場が平壌宣言でも書かれており、何時でも話し合う用意はあるという基本的な姿勢ですが、日本のみならず国際社会においては、アメリカ、韓国は言うに及ばず、中国、ロシアも朝鮮半島の非核化についての姿勢を示しております。また、IAEAにおいても北朝鮮に対して自制を求め、またIAEAとの間での専門家同士の協議も求めるといった対応をされているというのが現状であると思います。
(問)今日付けの朝鮮中央通信で、北朝鮮側から日本が執拗に騒いでいる拉致問題については既に解決済みで、一考の価値すら無いと。更に日本の一連の行動について敵対的行動であるという、名指しで批判しているわけですが、この北朝鮮中央通信をどう受け止められているかということと、先日の北朝鮮の核施設稼働再開の時は、日本に対する批判が無かったわけですが、今日また日本をターゲットに声明が出たことについてはどうお考えですか。
(次官)北朝鮮側がいろいろな戦術的なことも考えて報道を通じて声明を出したりするということはよくあることですので、その一つ一つに対して具体的な対応をあれこれするというのは、必ずしも適当ではないと思います。我々としては先程申したような基本的な姿勢に従って、対話のチャネルというのは、日本に関する限りは開いているという姿勢をきっちりと守っていくということが大事なことだろうと思います。
(問)今現在IAEAと北朝鮮との話し合いは続いているという認識なんですか。IAEAはもう安保理に報告するような段階にきているのですか。
(次官)そういうことではないと思います。IAEAと北朝鮮の間では書簡の交換といったことでやり取りが続いているという状況です。
(問)先程、日朝交渉のところで門戸は開いているというおっしゃり方を繰り返しされたのですが、それはボールが北朝鮮側から投げ返されるのを待つということなのか、それとも日本からも年内に、例えば何らかの交渉をしようということで働きかけはしないということなのですか。
(次官)先程申しましたように、先方から、現在、交渉を再開する環境に無いという態度が示されたわけですが、我々としては、対話というのはどういう状況においても、それなりの意味があると思っています。今、我々が何か焦って北朝鮮側に対して交渉再開を、例えば何かの「飴」というか「人参」を示してやるということを考えているわけではありません。ただ、常に日本と北朝鮮の間で話し合いのチャネルはオープンにしておくべきだと、いうことです。
(問)そうすると、今のIAEAの査察に対するこういう事態、北朝鮮側の発表についての日本側の懸念というのを表明する場というのはどういうところになるのでしょうか。
(次官)それはいろいろな形があります。日本が直接やる場合もあれば、例えばIAEAと我々とは常に緊密な協議をやっています。この前の理事会での決議もIAEAでの場を通じて国際社会のメッセージを北朝鮮に伝え、尚かつIAEAと北朝鮮とが話し合いを行うチャネルということも決議には含まれていたわけです。日本としてもこの決議の採択に協力をしましたし、この数日来もIAEAとは緊密に協議をして、一つのチャネルとして日本の意向もそういった形で伝えるということは出来るようになっています。また、北朝鮮との間においても外交チャネル等を通じ、北朝鮮の再稼働の方針、考えというのは極めて遺憾であるという、我々の考え方を北朝鮮側に伝えるということはやっています。
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ロシア・イワノフ外相来日
(問)明日、イワノフ外相が来られますけれども、今出ている北朝鮮のところについてどういうような。
(次官)それは会談の後、会談内容について御報告することになろうかと思いますが、基本的にはロシアもこの北朝鮮の核の問題については真剣に考えていると思いますので、種々の情報交換、意見交換ということが行われると思います。具体的にどういうことになるかということは、会談前ですので余り申し上げることは適当ではないかと思います。何れにせよ会談の後、然るべく報告されるということでお願いします。
(問)日露外相会談に向けて、ロシア側は来年の首脳会談に向けて新しいことは行動計画に盛らないということを言っているニュースがあるようですけれども、これについては何かあちらの方に伝えるお考えでいらっしゃるのでしょうか。
(次官)「行動計画」については、まだ鋭意作業しているところですので、余り結論的なことは申せませんが、日本もロシアもこの「行動計画」というのは非常に重視をしています。日露関係を幅広く、深いものにしようという意欲を双方ともに有しているわけですので、何か消極的であるとか、停滞的であるとかと先入観を持つことは正しくないと思います。是非、前向きな「行動計画」にしたいと我々も思っていますし、ロシアにおいても同様の考えがあると思います。
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事務次官会見記録 (平成14年12月9日(月) 17:30~ 於会見室)
アーミテージ国務副長官との会談
(問)アーミテージ副長官との今の会談の中で、日本の復興支援ですとか、難民支援についての幾つか言及があったように伺っておりますが、その時のやり取りを若干紹介していただきますでしょうか。
(次官)少し長くなるかもしれませんが、私の方からアーミテージ副長官に対して、そもそもの我が国の姿勢ということについて説明をしました。話は今年の8月末の日米戦略対話の時に遡りますが、この時、アーミテージ副長官が訪日されて、戦略対話をやると共に、日本政府要人に会いました。当時、当然御承知の通りイラク問題が話題になりました。その時に我々から、同盟国としてアメリカに伝えたメッセージの最大のポイントは、イラク問題への対応に当たっては国際協調が必要であるということでした。これはその後のニューヨークにおける日米首脳会談で小泉総理からも特に強調されたところです。即ち、イラクの大量破壊兵器問題というのは、国際社会全体としての問題であって、日本もその国際社会の一員として、我々自身の問題としてこれに対応するということを申し上げました。更に、その際に国際社会の協調ということを維持していくためには、やはり国連、安保理事会の関与が必要であろうというメッセージを伝えたわけです。このようなことを受け、今朝、まず冒頭からアーミテージ副長官からは、8月の訪日の際に日本から貰った、その国際協調が必要だというポイントについては自分たちは一生懸命やったつもりだということを述べていました。即ち、安保理事会で満場一致の決議を採択する努力をおおいに行ったし、冗談めいて、日本からもらった宿題を自分たちは果たしたというようなことを述べていました。
そういうことですので、我々の方からは今回、これまで米国が国際社会の協調ということに重点を置いて外交努力を行ってきたことは日本としても高く評価をする、今後についても、やはり安保理決議の実施を確保するという点において、国際社会の一致した努力が必要である、国際社会の協調は益々もって重要であるというポイントを指摘したところです。そして、日本としても外交努力として総理特使を派遣したことなども紹介しました。これに対してアーミテージ副長官からも、日本が中東・湾岸の周辺国にハイレベルの総理特使を送って、先方と十分な意見交換をし、また先方の考え方も聞いてきたということについて日本の外交努力を高く称賛するという話がありました。その総理特使が行かれた時に、各国から、例えば難民に関して起こりうる困難な問題、更には経済に対する悪影響といったようなことについても意見がありましたので、そういうものを紹介しました。
アーミテージ副長官と私は20年来の知り合いですが、我が国の貢献ということに関して、今回も特に強調していましたことは、これは米国が日本に要請するというものではないということです。日本が主体的に国益も踏まえて、どういうような対応するか、どういう行動を取るかということを考えていくべき問題であるということを、何度も何度も強調していました。そういう中で、我々としては正にその大量破壊兵器の問題については、国際社会の一員として責任ある対応をするということで、そういう意味で、検討をしています。
もう一つは、やはり日本の国益というものを踏まえて対応を考えます。それは、大量破壊兵器の問題の処理という点もありますが、やはり中東・湾岸地域の安定といったものが、我々日本自身の国益にとって有用ですし、また中東和平といったものについても、その努力が滞ってはならないという考えを先方に伝えました。そういう流れの中で、難民支援、周辺国への支援等、いろいろな選択肢について検討していくということで、その復興の問題についても簡単に触れられたということです。ただ、復興の問題になると、いわゆる"the day after"の話ですし、今の段階で具体的にどうのこうのということではないので、具体的な点に立ち入って触れたということはありません。ただ、中東地域、湾岸地域の中・長期的な安定といったようなものは、我々としても当然関心を持っているわけです。いろいろなことを考えるに当たって、将来のことについても検討課題となるであろうという意味で話をしたところです。
何れにせよ、具体的な中身に入ったわけではありませんが、我々として一般的な姿勢として、大量破壊兵器の問題、中東地域の安定の問題、中東和平の問題といったことを総合的に考えて検討をしていくし、また米国とは緊密に情報交換、意見交換を行っていくという話をしたところです。
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平和定着イニシアティブ/国際平和協力懇談会
(問)今のに関連しまして、イラクとちょっと切り離して、国連のPKOではない形での、いわゆる多国籍軍型の、アフガンでやっているようなピースキーピングに日本として積極的に参加すべきではないかという意見があって、官房長官の方の私的な懇談会でも、そういう方向で報告書がまとめられるようですけれども、次官としては日本の外交というか、国際社会の一員として、これにつき、治安維持という戦後の治安維持というものはどうあるべきだとお考えですか。
(次官)それについては、今「国際平和協力懇談会」というものがありまして、その報告書というものを待っているところです。その中の一つの考えとして、おそらく「平和の定着」への努力ということがあろうかと思います。従来、ODAの下での緊急援助であるとか、PKO法の下におけるいろいろな支援というのがありましたが、その間の隙間といったものに対する対応というものについて何が出来るかという問題については、まだ充分に議論が煮詰まっているとは思いません。従って、有識者の方々にお集まり頂いて、いろいろな御議論、御検討をお願いしているということと思いますので、それを踏まえて考えるということだろうと思います。ただ、実は今日のアーミテージ副長官との会談でも、イラク問題、北朝鮮問題と並んで日本の「平和の定着」外交イニシアティブということについて先方から取り上げられました。それは、最近のスリランカの和平復興に関する我々のイニシアティブであるとか、インドネシアのアチェ問題についての東京会合の開催であるとか、そういった「平和の定着」面において最近日本がイニシアティブを取っているということについて、米国としては非常に高く評価しているということを述べていました。御質問の点については、私もこれから、その報告書が出た時にいろいろ勉強させて頂きたいと思いますが、直ちにイラクとの関係でということではなく、今申しましたような「平和の定着」が冷戦後のいろいろな軍事紛争への対応と、日本としての国益を踏まえた貢献といった文脈で考えられるべきだと思います。
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フセイン大統領の謝罪
(問)イラクのフセイン大統領が、クウェート侵攻について週末に謝罪をしてますけれども、これについてはどんな見解をお持ちですか。
(次官)即断することは出来ないだろうと思います。クウェート侵攻に対する謝罪という面もありますが、もう一つ、やはり現在のクウェート政権に対する強い批判ということも言っているようですので、やはり全体を見て考える必要があろうかと思います。謝罪の部分だけ取り上げてソフトな対応と考えるのは、もう片方のクウェートとかアメリカに対する批判ということと併せて考えれば、そう簡単なものではないという見方が出来るかと思います。何れにせよ、サダム・フセインの心の中を私は読み切れませんので、即断することは出来ないと思います。そして、どういう動機があるにせよクウェートを含む近隣諸国、国際社会がそれをどう受け止めるかということに関し、外交的効果があるかどうか、サダム・フセイン大統領が意図していることがもしあるとすれば、それが成功するかということが判断されのだろうと思いますが、今のところは特段そういった外交上の効果といったものが見られないと思います。
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北朝鮮(KEDO)
(問)先週、KEDOの理事会が延期になりましたけれども、この延期という事態と、対北朝鮮交渉に与える影響についてはどう受け止められますか。
(次官)延期については、年末ということで、日程が合わなかったということのようですが、北朝鮮とKEDOとの関係という問題については、これはこの前も述べたかと思いますが、11月の理事会においてKEDOとしての立場、考え方、またその時の決定というものを明らかにした声明を発出しています。重油については12月分を凍結する、その他の活動についても見直しをするということです。他方、こういった問題についての今後の見方については、北朝鮮が濃縮ウランの計画について、どういう具体的な信頼のおける対応をするかということにかかっているということを、明確に表明しているわけです。従って、我々の立場からすればボールは北朝鮮側にあるということで、北朝鮮の対話、出方というものを注視しているという状況には変更ありません。
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事務次官会見記録 (平成14年12月2日(月) 17:00~ 於会見室)
IAEA理事会における北朝鮮に関する決議採択
(次官)まず、私の方から2点、申し上げたいと思います。始めに、去る11月29日、ウィーンのIAEAの理事会におきまして、北朝鮮の核問題に関する決議が、コンセンサスで採択されました。この件について申し上げますが、この決議の採択に当たりましては、わが方のウィーン代表部が、高須大使を中心に決議案の起草、コンセンサス採択にいたる取りまとめ等において、積極的な外交活動を行いました。この決議は、もう御承知の通りですが、IAEAを通じて北朝鮮に対して、国際社会の明確かつ強いメッセージを発出しております。特に、北朝鮮に対して「関連する全ての情報をIAEAに提供する」こと、また、「あらゆる核兵器開発計画を即時かつ検証可能な形で放棄する」ことを求めています。さらに、この決議はIAEAが「北朝鮮の核問題の平和的解決を進める用意がある」として、そのためにも北朝鮮とIAEAとの間の協力・対話を呼び掛けています。具体的には、特に、ウラン濃縮計画についての説明を求める事務局からの書簡、これは10月17日付ですが、この事務局の書簡に迅速かつ前向きに応えることを求めると共に、また、IAEAから高級使節団を北朝鮮に派遣する用意がある、又は北朝鮮側からの使節団をウィーンに受け入れる用意があるということを提案しましたIAEAの事務局の提案を直ちに受け入れるように北朝鮮に求めております。我々としては北朝鮮が、この理事会決議を重く受け止め、IAEAからの呼び掛けに応えて、IAEAとの対話のチャネルを活用して、速やかに具体的な行動をとることを強く希望しています。
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我が国の「平和定着」に向けた取り組み(アチェ、スリランカ)
(次官)明日(3日)、東京においてインドネシアの「アチェにおける和平・復興に関する準備会合」が開催される予定です。この機会に、この件を含め、わが国の「平和の定着」に向けた取り組みについて一言申し上げたいと思います。冷戦終了後、現在に至るまで、宗教的・民族的要因に根ざした紛争、特に国内紛争が頻発しています。このような紛争を恒久的に解決するためには、従来の意味での人道・復興支援だけではなく、国際社会が一致して「平和の定着」に向け、機動的かつ隙間のない形での支援を行うことが重要であると考えています。即ち、地域紛争の恒久的な解決のためには、和平合意を達成すると共に、紛争の終結した地域を再び紛争に後戻りさせないように、紛争の再発を防ぐことが重要であるという考えです。このような認識を踏まえ、川口外務大臣は、本年5月のアフガニスタン訪問に先立ち、「平和の定着」の重要性を指摘し、その後も一貫してこれが今後の我が国の国際協力の重要な要素であることを繰り返し強調してきたところです。このような「平和の定着」への我が国の外交イニシアティブの一環として、明3日、東京において、「アチェにおける和平・復興に関する準備会合」を開催する予定です。この会合においてわが国は、米国、EU及び世銀と共に共同議長を務めることになっています。この会合は、インドネシアのアチェにおける分離・独立を目指す武力紛争が、現在和平合意の達成に向けて、大詰めの段階に来ているということを踏まえ、インドネシアの領土の一体性の下での問題の平和的解決を勧奨する、更には和平達成後の「敵対行為停止の監視」や「アチェの社会・経済復興」に対する国際社会の支援姿勢を表明することを目的とするものです。
更にスリランカにおいても、和平プロセスが進展を見せています。その中で、わが国としては「平和の定着」への貢献の一環として、10月に政府代表に任命しました明石康氏を11月にはスリランカに派遣しまして、先方政府及びLTTE双方を含む関係者と意見交換をしました。更に、11月25日のオスロでのこの問題に関する支援国会合では、紛争地域であったスリランカの北・東部に対する緊急人道支援の表明を行ったところです。明3日から7日までは、スリランカのウィクラマシンハ首相が来日されます。5日には小泉総理との会談が行われる予定でありまして、今後のわが国の具体的な支援のあり方等についも議論されるという見通しです。
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(社)日本外交協会による対北朝鮮乾パン等支援
(問)外務省の外郭団体が、北朝鮮に食料支援を行っているということを、石原慎太郎都知事が指摘して、今、問題になっています。外務省としてはこのことについてどの様に把握されて、どの様な見解をお持ちなのかをお伺いしたい。
(次官)日本外交協会が地方公共団体から乾パン等を譲り受けて、これは従来から行っておられる事業ですが、今回、この乾パンを利用して、日本外交協会と民間の方々が専ら民間の資金を用いて支援に充てられたと承知しています。外務省としてこの支援自体に関与しているわけではありません。また、日本外交協会としても、今回の支援は、いわゆるNGOとしての人道的見地から、協会独自の判断として行ったものとされています。外務省としては、この協会がこの支援を実施するに当たり、協会側に対し、北朝鮮に対する食料支援についての政府の基本的立場というものを説明しました。更に、たとえ民間が行う支援であっても当面実施を見合わせる等、慎重に対応してほしいと伝達をした経緯があります。従って、日本外交協会が独自に行われた事業であるということです。日本外交協会の考えは既に日本外交協会から発表されている通りと承知しています。
(問)日本外交協会なんですが、外務省から慎重にするようにという申し入れが伝えられたということですが、これは北東アジア課のほうからお伝えになっているのでしょうか。
(次官)そうです。北東アジア課長から伝えています。
(問)それは先月の26日に、実施することについてという話があったのですが、それ以前にということでよろしでしょうか。
(次官)そうです。具体的には22日に伝えています。それから25日には先方の方から平松北東アジア課長に対して、お申し越しの次第はあるけれども、協会としてはこれを実施する見通しだという通報がありました。
(問)外郭団体ということなんですが、外務省のOBの方が理事とか、役員に就かれていることで、関係は大体どうなっているのでしょうか。
(次官)外郭団体という表現は必ずしも正しくないということは日本外交協会の声明にも、実は書いてあるのですが、外務省から特段の補助金が出ているということもありません。外務省を主務官庁とする社団法人ということはありますが、いわゆるNGOに類するものと考えいただくことが正しいだろうと思います。従って、日本外交協会の個々の活動について外務省が許可する不許可とするというような立場にはないということです。ただ、先程申しましたような、我々として慎重な対応を申し入れるということはやっております。それから理事長は元スペイン大使の坂本氏ですが、これも日本外交協会の理事会等の決定を経て迎えられたもので、特段、外務省から送り込むとか、そういうような関係ではありません。
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北朝鮮(日朝交渉、ジェンキンス氏、KEDO)
(問)日朝交渉で北朝鮮側の副局長が日本の一部のメディアに意見を言ったりして、非常に強い、強硬な反発をしているようですけれども、次官として日本の今後の外交の戦略とか、何か長期的にならざるを得ないとか、その辺の御判断はありますか。
(次官)日本側政府の考え、立場というのは既に北朝鮮側にも明確に伝わっていると思うのです。拉致の問題についても、5人の御家族の方の帰国を求めるということは、先方に伝わっているわけですし、核の問題についても先般のKEDOの理事会でも声明ということで、また更には、先程申しましたIAEAの理事会の決議というものもあって、我々としては北朝鮮側がこういったことに対してどう対応をするかというのを待つというか、それに注目していくということが現在のスタンスです。
(問)ジェンキンスさんの入院については、その後何かありますでしょうか。
(次官)その後、先方からの回答はありません。
(問)次回のKEDOの理事会ですが、これは延長ということが伝えられていますけれども、これについては。
(次官)延期ということで調整しているというようなことはありません。具体的な動きとして、特段、韓国から例えば伝えられているような、延期を申し入れしたいと言われているというようなこともありません。現在のところは先般のKEDO理事会で出された声明に対する北朝鮮の反応に注目をしているということです。
(問)そうすると、予定通り11日に実施される見通しであるということでよろしいでしょうか。
(次官)今の段階ではそうです。
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ベラルーシ外交官の行方
(問)別件ですが、インターファックス通信が伝えたところで、東京でベラルーシ外交官が行方が取れなくなったということですが、この問題発生から、日本外務省として承知している経緯と、それに対する現在までの対応についてお話しいただきたいと思います。
(次官)まず結論から申しますと、本日の午後、ベラルーシのクラウチェンカ大使が外務省を訪ねてきました。そして、同大使からは亡命に関する報道は事実無根である、自分は帰国する予定であるという通報がありました。本日、外務省の欧州局新独立国家室長に面会に来たというのが、顛末です。昨日からインターファックス通信で報道されたことをきっかけとして、いろいろ取材もありました。我々としてはとにかく事実関係を調査することが必要ということで、関係方面にも問い合わせをしたりしていましたが、今申しましたような結末であるということです。
(問)連絡が取れなかった事情などについては何かお話になられていましたか。
(次官)そこまでは詳しくは私のところには報告は来ていません。御本人が別途機会を見て説明をされるということがあるかもしれません。
(問)次官は直接はお会いにはなられていないのですか。
(次官)はい。欧州局の新独立国家室長が面会したということです。
(問)帰国はいつになりますか。
(次官)それは我々は承知していません。御本人がお決めになることです。
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イージス艦の派遣について
(問)イージス艦の派遣問題なのですが、現段階での政府の検討状況というのは。
(次官)それは官房長官等、いろいろ記者会見でも話をされていると思いますし、今日の予算委員会でも、その点について質問がなされていますので、私の方から新しいこととか変わったことを言うことは全くありません。一部の報道にありましたような、12月末にも派遣する方針を固めたというような事実は全くございません。テロ特措法に基づいた日本の活動は、何れにせよ我々の判断で現地の情勢等々、考えながら決定していくということですので、イージス艦を派遣することについての問題についても、いろいろなところで政府の関係者から明らかにされている通り、今後の状況を踏まえて慎重に判断していくということです。
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対外関係タスクフォース
(問)先週、対外関係タスクフォースの方針が小泉総理などがなされていまして、外交方針の変換を求めると共に、総合外交戦略会議の設置というものを求めていますが、あの中に書かれたことについて、外務省としてどういう見解をお持ちかということと、そういう会議の設置の必要性について、現時点で外務省としてどうお考えなのかというのをお聞きしたいのですが。
(次官)私も読ませて頂きました。非常にいろいろな議論を経て、基本的なところから日本の国益を踏まえた外交をやっていくという視点を非常に明らかにされた報告書であると思います。何れにせよこれは我々としては今後のいろいろな政策課題を考える場合の参考にさせて頂きたいと思います。非常に参考になる点があると私個人的には思っております。ただ、個別の内容については、序文にもはっきりと、委員のみによって取りまとめられたものだということが明記されており、それぞれの1つ1つについてあれこれというよりは、これからのいろいろな施策にあたって参考にさせて頂きたいということです。それから、戦略会議については、今後、外務省としてというよりも、官邸の考えもあるでしょうし、一つのお考えとして承ったというのが現在のところです。繰り返しになりますが、読んで、非常に中身の深い、スティミュレートされるというのですか、そういう感じを私個人としてはしました。
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