事務次官会見記録 (平成14年10月28日(月) 17:00~ 於会見室)
日中首脳会談
(問)メキシコでの日中首脳会談で江沢民主席の方から、総理の靖国参拝について3度にわたって中止を求める発言があったということなんですが、この時期、江主席が靖国参拝を言及する背景みたいなものと、日本政府としての受け止めについて伺いたいのですが。
(次官)江沢民主席の考えについて私が忖度するのはいかがかと思いますが、従来からの考えを改めて述べられたのだと思います。何れにしても最高首脳の間で非常に率直な意見の交換があったということでありまして、小泉総理からも十分に自らの考えを説明されたと思います。お互い、過去の歴史、またこの歴史というのは、江沢民主席の方は阿倍仲麻呂まで引用して歴史に触れられたわけですが、日中間には長い歴史がありますので、歴史を鑑としていろいろと考えていくという認識が双方から示されていたと思います。小泉総理からは、今年の初めのボアオ・フォーラムに於きます朱鎔基首相との会談の際の発言にも触れつつ、中国を脅威とは考えずチャンスであるという新しい将来に向かっての姿勢を改めて示されたということも重要であろうかと思います。
(問)中国の話ですが、今日の会談を受けて、懸案となっている総理の訪中の時期については、影響は如何とお考えでしょうか。
(次官)総理の訪中については中国の方から招待があり、都合のいい時にということで、その状況が続いてきています。現在に於いて具体的にどの時期を目処に方向付けがなされているということではありません。お互いに都合のいい時を話し合って決めましょうという状況です。
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北朝鮮(日朝国交正常化交渉、日米韓首脳会談、拉致被害者家族帰国)
(問)北朝鮮との国交正常化交渉ですが、交渉の場所とか開始時間とかいうことについて、現状ではどうなっておりますか。
(次官)交渉の場所については現在も調整中であると聞いております。時間については正確に何時ということは記憶しておりませんけれども、当然、場所と時間と共に調整がされると思います。
(問)場所については北朝鮮側から変更を求めてきたという話ですが、この理由については何か。
(次官)それは推測の域を越えません。これは物理的な施設の都合というものも考えなければなりませんし、また北朝鮮には北朝鮮なりの立場ということがあろうかと思います。我々としては物理的なファシリティと、便利さといいますか施設の大きさ、設備等ということで、わが方の大使館がいいとは思っていましたけれども、それはお互いで調整して決めるべき話でありますので、現在調整中ということです。
(問)明日から正常化交渉が始まりますが、改めて拉致問題、特に北朝鮮に残されている家族を呼び戻すという点についての北朝鮮側の態度の変化は無いのでしょうか。それと交渉の中での見通しについてはどのようにお考えでしょうか。
(次官)北朝鮮に現在おられる家族の方々に日本に来ていただくという点については北朝鮮とは交渉をしていますけれども、先方からそれに同意するという回答は今のところありません。従って、おそらく明日からの交渉の際にこれを取り上げるという見通しであると思います。そこで北朝鮮がどの様な対応を見せるかということについては、これは予断は持ち得ませんので、我々としては全力を尽くして求めていくということが、現在において申し上げられることです。
(問)メキシコでの日米韓の首脳会談のところでは、日朝国交正常化交渉に向けてという話も視野に入れて話しになったと思いますが、例えばあそこでは北朝鮮に対して迅速かつ検証可能な核開発の撤廃ということも基本的にそこで出たラインで核問題に関しては日朝で北朝鮮にせまるということになるのか、あと、そのことも含めて3国会談の成果というのは日朝交渉にどういうふうに活かしていかれるのかということについてお伺いします。
(次官)まず、日米韓の間の調整というか意見の確認と、立場の確認ということについて、この3国共同声明は明確にしていると思います。いろいろな点がありますが、北朝鮮の核開発計画というものに対する重大な憂慮の念、関心を共通の問題としてとらえておりますし、それについてはいろいろな国際的な合意に反しているという認識でも一致しております。また、これを是正するためには北朝鮮がこの計画を早く撤廃するということが行われるべきであろうという点についても一致しているわけです。更に問題の解決には平和的な方法によるという点でも認識が一致しております。メッセージとしては北朝鮮に対して、これはAPECの首脳特別声明でも共通ですが、北朝鮮が国際社会の一員として参画するということをみんな望んでいるという気持ちが表れていると思います。ただし、そのためには朝鮮半島の非核化ということについて北朝鮮自らが責任ある対応をする必要があるということがメッセージとして表れていると思います。更に、日朝交渉との関係、又、先般の小泉総理の訪朝、その際の平壌宣言との関連においても、この共同声明では触れられているわけです。例えば北朝鮮によるウラン濃縮プログラムというものは「合意された枠組み」等々の合意に対する違反であるということで一致しただけではなく、その3首脳が、北朝鮮に対し、「このプログラムを撤廃して、日朝平壌宣言において北朝鮮が最近行ったコミットメントに従い、すべての国際的な義務を完全に遵守するよう」求めるというくだりがありますが、この点はまさしく平壌宣言というものが一つの3国間の共通の梃子というか、共通の問題認識の基盤ということとして認識されているということも言えるかと思います。当然、クアラルンプールに於ける正常化交渉の再開にあたっては従来から言われている通り、拉致の問題と並んで核問題を含む安全保障の問題が優先課題として取り上げられるというのが我々の立場です。
(問)核については、具体的に日米韓で合意をしたような具体的な内容を持って期待を迫っていくというようなことですか。
(次官)それはその通りです。
(問)この間の、10日ぐらい前の事務次官の会見の時だったと思いますが、要するに北朝鮮にいる日本に戻ってきた人5人の方の家族の方が日本に帰ってくるということについて、北朝鮮側との間で一定の合意があるというような発言があったと思いますが、今日は北朝鮮の家族、日本に来ていただくということについては、それに同意することはきてないということで、この10日間ぐらいでだいぶ事態が急に動いてしまったというような印象を持っているのですが、次官御自身のお言葉でこの10日間ぐらいの間に急速に事態が、ある意味で硬化したというのは何故だったというふうに思われますか。
(次官)元々、私が先ほど言われたようなことを申し上げたときは、5人の方々が1~2週間を目処に一時帰国されるということで前提があったわけです。金正日国防委員長の発言にしろ、一時帰国ないしは帰国について便宜を図ると、保証するということがあったわけです。更には9月17日の北朝鮮外務省のスポークスマンの談話の中にも。5人の方々とは言っていませんが、生存者について帰国、又は故郷訪問について、保証しますということが唱われていましたし、更には斎木調査団の際には家族の方々についても本人の意思がそうであれば帰国を保証しますということがあったわけです。それを念頭に置いて、私に限らず政府としてはそういう説明をしてきたということです。ただ、ここで非常に重要なことは自由な意思の確認というか、恐怖とかいうこと無しに自由な選択をされる環境を設定するということが非常に重要になってきたと、日本の中に於いてそういう状況が出てきたということだと思います。従って自由な意思を確保する環境の設定ということからして、5人の方々の滞在を延長し、更には北におられる御家族の方々にもこちらに来ていただくということを日本政府として求めるという決定をしたわけです。それに対して北朝鮮の方がそれは元々の話とは違うではないかというのが今のこの状況だろうと思います。拉致というのは言うまでもなく非常に非道なむごいことです。これは日本の主権が侵害されたということがありますが、更に加えて被害者の方々が全く暴力的に自由を奪われて、連行されたということに非常にむごさ・非道さというのを感じるのだろうと思います。大事なことは従って被害者の方々が自らの自由を回復されるということがやはり重要なことだろうと思いますので、その自由を回復するに当たって、まさに自由な雰囲気で、自由な環境で自らの選択を行えるということを設定するというのが、今我々に課せられている仕事であり、政府としてそのために努力をしているということで北朝鮮に対してもその点を引き続き求めていくということです。
(問)現段階までに北朝鮮側から話が違うではないかという話があるということですか。
(次官)交渉のやり取りについては何も申しません。また明日もありますし、これから、今、継続中(on going)です。我々としては全力を尽くして今の方針が実現出来るように努力するということです。
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イラク
(問)イラクの問題ですが、国連の安保理で今、決議の採択を巡って最終的にはというか、動きは詰まってきてますが、英米が出している武力攻撃をどちらかというと積極的な案と、フランスが出しているもう一つの案というのがありますが、日本としてはどちらの案に対して、より支持をされるでしょうか。
(次官)日本としてはどちらに対してということよりも、これは従来から申していることですが、大量破壊兵器についての査察が実務的に行われるということが非常に重要なことです。武力をするための安保理決議ということが今、考えられているわけではないわけですし、日本としてもその様なことを考えている訳ではありません。米、英とフランスないしはドイツとの考え方との差ということについても、根本のところは如何にしてイラクに対して実効的な査察を行わしめるか、そのためにはいかなる決議が有効かということが考えられていて、その方法論のところにおいていろいろ知恵が絞られているということで、何も武力行使をするが為の安保理決議に対してこれを無用とする決議との間で食い違ってるということではないと思います。
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第2回民主主義閣僚級会合
(問)11月10日、11日にソウルである民主主義共同体という、つまりこれは外務大臣は行かれるのですか。
(次官)いいえ、そういう話はまだ決まっておりません。これは確か今回2回目で、前回はワルシャワで2000年に開かれ、その時は日本からは有馬政府代表が出席したと承知していますが、次のソウルの時にどなたが出席するかということについてはまだ全く未定です。
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事務次官会見記録 (平成14年10月21日(月) 17:00~ 於会見室)
北朝鮮(北朝鮮の核開発疑惑関連、拉致被害家族の帰国)
(問)北朝鮮の核開発をアメリカ政府が明らかにしたわけで、これが日朝平壌宣言の精神にももとると思いますが、日本政府としては再開する国交正常化交渉ではどういうふうな姿勢で臨まれますでしょうか。
(次官)この北朝鮮の核開発計画の問題につきましては、我々としても我々自身の問題として重大に考えているのは当然です。過日、小泉総理が平壌で金正日国防委員長との間で会談をされ、その結果を平壌共同宣言という形でまとめたわけです。小泉総理としてはこの問題を念頭に置いて朝鮮半島における核問題の包括的解決のために、全ての国際的な合意を遵守するという点、それからそのために関係国との対話を促進するという点について、金正日国防委員長から確認を得ているわけです。従って、来るべき再開交渉の場においては、当然のことながらこの平壌宣言の精神と原則に基づき、交渉再開するわけですから、この問題も重要な問題として日本側から提起をし、核開発計画の目に見える形での放棄ということを求めることになると思います。
(問)その関連ですが、米朝枠組み合意の件について、今日いらっしゃったケリーさんもまだ判断をしていないということで、存続するや否やということでは明言を避けてますが、その件についてアメリカ側に今後どういうふうな姿勢で対応を求めていくかということと、その関連でのKEDOですが、これに対する日本の対応については今後何か変化はありますか。
(次官)今日、ケリー国務次官補が私との話し合いにおいても、まず言っておられたのは、米国内における一部の報道で米国政府が「合意された枠組み」の破棄を決定したというようなものがみられますが、そういうことは無いと、大統領は如何なる決定もしていないということを明言されました。それがまず第1点です。それから合意された枠組みについては御承知の通り、これまで北朝鮮の核開発を抑止・阻止する上で重要な役割を果たしてきたという点は認識しています。北朝鮮の寧辺における核開発活動というものが「合意された枠組み」によって凍結されてきたわけです。例えば使用済み燃料棒の再処理といったものも北朝鮮によって凍結され、その点は国際原子力機関(IAEA)の査察官によっても検証されているところです。また、これからの問題ですが、IAEAによる査察ということもこの「合意された枠組み」の中に含められているわけですので、「合意された枠組み」というものが重要な役割を果たしてきているという点については我々は現在も認識しております。それではこれからの取り扱いということについては、先程申しましたように大統領も何ら決定をしていない。それから基本的にこの核開発の問題については同盟国、関係国とよく協議をして、連携して、平和的解決に努めるというのが米国の基本的な立場ですし、我々もそのような立場です。以上のような点を踏まえ、関係国間でいろいろと相談をしていくということになります。
(問)KEDOも同様ですか。
(次官)KEDOはもちろん「合意された枠組み」の下で軽水炉プロジェクト、それから重油の供給といった事業に携わってきたわけです。これは「合意された枠組み」とは不可分のものです。従って、KEDOというものがこれまで重要な役割を果たしてきたという認識は持っております。何れにせよKEDOの場合には理事国というのがありますので、理事国の間でいろいろ協議をしていくということになります。現在までのところ、KEDOを解体するといったような意見というものが提起されたというようなことはありません。これから「合意された枠組み」と同様、話し合いをしていくということになります。
(問)軽水炉建設等の一時的な凍結ということを今後、検討するという可能性はあるのでしょうか。
(次官)それは今お答えした御質問でのお答えと同じことです。軽水炉プロジェクトというのはまさにKEDOの事業ですし、それは「合意された枠組み」の下で行われるわけです。その今後の扱いについて、この問題の平和的解決といったことも念頭に置いて、更には北朝鮮による核開発というものを、どの様に阻止するのが有効かと、更には北朝鮮がこれからどの様な対応をとるかといったようなことを踏まえて、分析して、3国間で、ないしは関係国間で相談していくということです。私が聞いているところでは現在のところ北朝鮮がKEDOのプロジェクト、軽水炉プロジェクトから逸脱すると、離脱するするといった動きは聞いていませんし、IAEAの査察官も現在、北朝鮮に常駐して活動を行っていると聞いております。
(問)枠組み合意及びKEDOのプロセスが、寧辺の核開発を凍結させているというところはその通りだったと思うのですが、他方、核開発全体を防止するという意味では既に北朝鮮が高濃縮ウランの開発をしたということで、枠組み合意及びKEDOプロセスの役割というのがないがしろにされた、及び機能していないという面があるかと思うのですが、こうした見方についてはどのようにお考えですか。
(次官)それはまさしく「合意された枠組み」というものに対する重大な違反であるというのが、米国が公式にも明らかにした立場ですし、我々としてもまさに「合意された枠組み」の遵守の観点、更には核不拡散条約、IAEAと北朝鮮との間の保障措置協定といった諸合意の違反の状況であるという認識ですので、まさしくそういう違反の状況というものをまずは北朝鮮が是正をするということが必要であるという立場であります。この点は強く今後の交渉においても北朝鮮側に働きかけていくということになるかと思います。
(問)今日のケリーさんとの会談では大臣も北の問題で進展が無ければ交渉は進まないという発言があったようですし、今、次官も違反の状況を相手に問い質して、北側が是正をすることが必要だというお話ですが、交渉の場で北に誠意ある対応が核開発について見られなかった場合には、交渉を止める、つまり中断させるという理解でよろしいでしょうか。
(次官)これは北朝鮮側がどの様な対応に出てくるかということに応じて、こちらとして考えるべき事ですので、今から具体的な対応振りといったものを予断することは出来ないと思います。ただ、総理大臣も言われましたし、外務大臣も言われてますけれども、そもそも北朝鮮との国交正常化交渉ですが、それは平壌宣言に基づいて行うということですので、その平壌宣言に違反するというようなことであれば当然我々としても考えなければならないわけです。更には元々日朝国交正常化というのは過去の不正常な状況を正常化するということともに、北東アジアの平和と安全に資するものでなければならないというのが一貫した日本政府の立場ですので、その北東アジアの平和と安全に資さないような形での正常化ということは我々としては進めることはできないというのも当然の考え方であろうと思います。
(問)この連休の間にパスポートが5人の方に発行されたということなんですが、パスポートの場合、本人の申請が普通あってパスポートは出るのですが、何処の意図でそういうふうなパスポートが出たのでしょう。それからパスポートには5年と10年があると思いますが、何年間のものでしょうか。それからつい先日まで渡航先として、それぞれの国が明記されて、特に北朝鮮は、北朝鮮を除く他の国ということで、北朝鮮は明記されてい
たものですから、いつの時点で北朝鮮がパスポートの中から渡航先で該当しない国として外されたのでしょうか。それから、今日の会見、お昼のテレビで見ておりますと、お母様方の中には、もう国へ出さないと、帰さないという人がおりますのに、パスポートを出したということは向こうへ帰国して、一時渡航して、また戻ってくるということの目処が立ったからパスポートを出したのでしょうか。
(次官)詳細な点について今、直ちにお答えできない点もありますが、そもそも5人の方々が日本国籍を持っておられる日本国民ですので、当然のことながら申請があればそれに対してパスポートを出すというのは基本的なところであろうと思います。そういうことで、申請があれば手続きに従って発行するということで処理されたわけです。あくまでも御本人からの申請があったということが基本です。それから年限について、申し訳ありませんが私は何年ということになっているかというのは今、承知しておりません。更に、北朝鮮を渡航先からの制限を解いたというのは、私も何年ということは正確に記憶しておりませんが、相当前からだと思います。何れにせよ帰国されるかされないかという点について、これはいろいろなところで政府の方々から話しているところですが、御本人、御家族の意向ということがやはり最優先されるべきものであり、我々としてはその御希望に沿えるように最大限の努力をするというのが役割であろうと思います。その観点で、先般、事実調査チームが派遣され、その後調査結果についての報告が安倍官房副長官の記者会見でありましたけれども、その際にも、記者会見で明らかにされていますとおり、北朝鮮側としては生存されているとされる方については本人の希望を踏まえ、家族を含めて出来るだけ早期に帰国を実現させるべく最大限努力をすることとするということを確認しているわけです。これは斎木参事官の調査団の調査報告において述べられている通りです。従って、重要なことは我々としては御本人と御家族のいろいろなお気持ち、いろいろな条件、いろいろあろうかと思います。我々としてはできるだけ自由な意思、希望が自由に叶えられる、そういうような状況を実現して、御本人の関係者の方々の御希望が出来るだけ早く実現し、早期という御希望であれば、それの実現に努めるということです。
(問)それに関連して、拉致事件の被害者、今帰国している5人について、来月にも家族を含めた永住帰国という報道が一部なされていますが、そういった事実関係というのはあるのでしょうか。
(次官)具体的な日にち等についてはまだ承知しておりません。北朝鮮側との間では今後、可能な限り早い時期にお子さん達を含む家族全員の帰国を実現させるということで、これは確認されているわけです。先ほど申し上げたとおり具体的な日程については未だ調整中ということですが、何れにせよ御本人の意向に沿った形で早期実現に努力したいというのが我々の考えです。
(問)確認ですが、今おっしゃった家族揃っての帰国の実現というのは永住帰国ということでしょうか。
(次官)そうだろうと思います。北朝鮮から確認しているのはまさに出来るだけ早期に帰国させるべく最大限度力をするということです。
(問)先ほどの質問にもありましたけれども、今回帰国されている5人の方の御家族とかあるいは政府与党内の一部にも、このまま北朝鮮に戻したくない、あるいは戻すべきではないという意見もありますが、外務省としては一旦北朝鮮に戻っていただいて上で、また改めて帰国してもらうという段取りを想定されているのでしょうか。
(次官)これまた繰り返しになるかもしれませんが、一番大事なことは御本人の方々が自由な環境において自らの将来というか、帰国の希望についてお考えになって、それを我々は尊重するということだろうと思います。その場合にいろいろな事情がそれぞれの方々についてあろうかと思います。それは我々として何か先入観を持って処理するということではなくて、やはり今回の日本滞在中にいろいろお考えになった結果という、御本人達の
希望というものに沿った処理をするというのがやはりいいのではないかと私は思います。そのためにも内閣の方で御家族の支援の組織が出来ているわけですし、我々の方から何か押しつけるというような、例えばそういうような印象を与えるということは決して好ましくないと思います。
(問)現時点で5人の方々が北朝鮮に戻るという意思表示をされているのでしょうか。それと北朝鮮に戻る日程については一度に一緒に戻るのかどうかを含めて決まっていますでしょうか。
(次官)その点は外務省のところには、というか私はまだそういう結論といったものは聞いておりません。御家族との折衝というかお世話といったものは内閣の方で中山参与の下で組織が出来ているわけですし、本当に御本人、御家族の方々がお考えになるものを静かに待つというのがいいのではないかと思います。
(問)すみません、度々パスポートの件ですが、私の手元に20年前に沖縄が日本に返還されましたときの、本土と沖縄との間の旅行を、日本人として渡航する、日本人であることを証明する身分証明書、これは今回の拉致の5人の方々にまさに北朝鮮と日本の間だけを限定したようなこの身分証明書、パスポートに替わるもので良かったのではないでしょうか。それでないと5人の方、もしかしたら第三国への出国を希望するというような場合が出てくると思います。その辺りは如何でしょうか。
(次官)質問の趣旨がよく分かりませんが、日本国民の方は日本の旅券を申請する事が出来るわけです。5人の方々は日本国籍をお持ちですので、申請があれば外務省としては手続きに沿って発行するというのは当然のことであろうと思います。
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