報道官会見記録(平成8年12月)
INDEX
報道官会見要旨(平成8年12月31日(火)17:00~於会見室)
在ペルー大使公邸占拠事件
(1)報道官冒頭発言
- 1.
- あと数時間で1996年も終わろうとしているが、未だに80人余りの人質の方が大使公邸内に残留していることを思うと、当地及び現地対策本部で働く職員全員心の痛む次第である。
さて、日本時間の本日午前から昼にかけて、皆さんも御承知のとおり、現地大使公邸付近でいろいろな動きがあった旨報道がなされている。報道をかいつまんで御紹介すると、公邸近くにバスが到着し、ICRC(国際赤十字委員会)ミニグ代表が都合3回出入りしている。また、公邸内で拍手、歓声や、口笛が聞こえた旨の現地報道もなされ、公邸にパレルモ教育大臣が現れたが、程なく立ち去ったとの動きも報じられている。
- 2.
- 公邸付近の動きや今後の交渉の動向については、政府としても従来どおり、ペルー政府と緊密な連絡を取りつつ情報収集に努めているところであり、そのひとつひとつについてこの場でどうこう申し上げないが、この場を借りて一点自分(報道官)から申し上げておきたい。
- 3.
- 本日午前の一連の動きについて、数日前にペルー政府とMRTA側との直接対話が開始されたこともあって、一部報道では事態解決に向けての期待を込めた楽観的な見方があるやに聞いている。今後も様々な現地報道がなされるであろうが、政府としては、一つ一つの情報に一喜一憂することなく、引き続き、ペルー政府に全幅の信頼を置きつつ、同政府及び関係国等と緊密に連絡を取りながら、一刻も早い本件の平和的解決、人質の全面開放に向けて全力を傾注していく所存である。
(2)質疑応答
(問)ペルー政府警備関係者が、明朝10時から12時に報道関係者の公邸内立ち入りを許可したとの報道があるが、本件についてペルー側の意図等分析如何。
(報道官)かかる報道については我々も承知している。また公邸付近の警備状況についても、様々な報道がなされていることも承知している。また、そのような報道がなされることを承知すると同時に政府としてもペルー政府等関係者より情報収集を随時行ってきている。ただ、冒頭にも申し上げたが、そのひとつひとつについて当方からその意味合いといったものについての言及は差し控えさせていただきたい。
(問)報道陣が日本時間0時に公邸内に入る話は、日本政府は報道として確認しているのか、それともペルー側に確認済みなのか。
(報道官)我々はペルー側と随時連絡を取ってきているが、個々のことについて日本政府としてペルー政府等から確認しているかになると、ペルーの対応全体について我々の方で意見を言っているとか、それについて何か確認しているかというようなことになる。これを説明するのは日本の立場として必ずしも適切ではないであろうかということで、確認その他については差し控えさせて頂いている次第である。皆さんからすると、何故そんな所まで、という気持ちがあるのは分かるが、我々としては引き続き緊密にペルー政府と連絡を取り合っているということ以上に、個々のことについてお話し出来ない事情を理解頂けるとありがたい。
(問)本日、総理がASEAN訪問に予定通り行かれることを発表したが、その件についてはペルー側に通報したか。
(報道官)頻繁に連絡を取り合っているということと、総理はフジモリ大統領の対応に全幅の信頼をおいてASEANの訪問に出かけると本日言われたことからペルー側も十分に分かっている。
(問)現地報道で、空港に軍用機が待機しているという話と公邸から空港までの道路が封鎖されているという話があるが、確認しているか。
(報道官)事件発生数日後にそういう動きがあったのは記憶にあるが、今回のことについて自分(報道官)は、現地でそのような報道があったことは承知していない。
報道官会見要旨(平成8年12月30日(月)17:00~於会見室)
在ペルー大使公邸占拠事件
(1)報道官冒頭発言
(報道官)本日は皆様に御報告できる新しい動きはない。我が国は総理からフジモリ大統領に伝えられたメッセージに示されているようにフジモリ大統領に全幅の信頼を置き、引き続きペルー政府と協力していく。
せっかくの機会でもあり、現地リマで流された奇妙な憶測報道を披露させていただく。 スペイン通信社EFEは28日付リマ発の報道として「外交筋(複数)がEFEに述べたところによれば、日本政府は身代金の支払いの道を開く用意がある」とし、またペルーでの主要紙の1つであるヘスチオン紙が、29日付でこのEFE報道をもとに同様の趣旨の記事を掲載している。
日本に於いてはこのような報道が根も葉もないものであることは十分おわかりのことであるが、現地においてこのような「飛ばし記事」が出るのは困ったことだ。
(2)質疑応答
(問)青木大使が外務大臣にメッセージを送られたとのことだが、これに対し大臣より青木大使に対し返事を出されるお考えはあるのか。
(報道官)人質の方々と外の間の意志疎通というのは基本的に赤十字社を通じた家族との間のやりとりであり、今度の場合は解放された方を通じて受け取った手紙であった。池田大臣としては手紙に述べられている趣旨を十分に理解し、ペルー政府側と引き続き十分な意思の疎通を図りつつ、そこに述べられたようなことを具体的に実施していく考えである。また、国内におけるペルー人に対する嫌がらせについては、既に大臣自身国会でその点について問題を取り上げ、こうした嫌がらせは止めていただきたい旨要請されている。
(問)事件が年を越す見通しであるが、報道等で青木大使はしっかり役割を果たしていると報じられている。外務省、報道官として青木大使にメッセージがあらば伺いたい。
(報道官)自分(報道官)から個人的なメッセージを伝えるとすれば、やはり青木大使は、大使公邸における責任者であるので、今までと同様人質になっておられる方全員に対して信頼される存在として適切な対応をとって頂きたいと考える。幸いにしてこれまで解放された方々のお話によると、青木大使はまさにそういうことで動いているということである。われわれとしては、この事件が長引くということは決して望むことではないが、フジモリ大統領の真剣な努力に全幅の信頼を置いて協力させていただく、ということであり、ともかく、全員の人質の方々が安全に解放されるまでの間、これまでと同様の責任感と、また、人質になっておられる方との間のコミュニケーション等の点でこれまでと同様の役割を果たしていって欲しいと思う。
(問)20日付で人質の方々の何人かから本件の解決策が示されたが、これを政府としてどう受け止めるか。
(報道官)色々な方々が色々な意見を持っておられることは十分承知しており、また、我々も何度も御説明申し上げているように、広く色々な方々と意見交換をし、情報収集をしてきている。そういったなかで、具体的な対応については、何度も申しあげて恐縮だが、フジモリ大統領の具体的な対応振りに全幅の信頼を置いているということであり、その途中の個々のやりとり、我が方の考え方、対応つについては説明を控えさせていただければと思う次第。
(問)確認だが、公邸の電気は停止されたままか。
(報道官)要すれば、自家発電機の燃料がきれたままと承知している。
報道官会見要旨(平成8年12月29日(日)17:00~於会見室)
在ペルー大使公邸占拠事件
(1)報道官冒頭発言
- 1.ペルー日本大使公邸占拠事件
- 本日の大きな動きは、日本時間午前7時頃、20名の人質が解放されたことで、これは、大変喜ばしいことである。しかし、同時にまだ多数の方々が公邸内に人質として残されている状況であり、政府としては今後も、人質の方々の安全を確保しつつ、1日も早く全面的な解放を実現できるよう、最大限の努力を続けて参る所存である。
未だ公邸内に人質として残っている方々より、総理及び日本国民の皆様に宛てられた要請文については、総理自身述べられているように非常に冷静であるが、厳しい情勢を伝えるものであると受け止めている。これをも参考にして、総理はフジモリ大統領に宛てたメッセージを本日発出された。
また、本日解放された方々より、青木大使から外務大臣宛のメッセージも伝えられた。その内容は、「1日も早く人質全員が解放される日を待ち、頑張っている。引き続きご支援頂きたい。また、在日ペルー人に対する嫌がらせがあると聞いているが心を痛めている。」というものである。日本政府は人質全員の1日も早い解放のため全力を尽くしている。また、在日ペルー人に対する嫌がらせについては、青木大使と同様に感じており、既に総理及び外務大臣より、このような嫌がらせはやめるよう訴えている。
- 2.「潜水艦事件に関する北朝鮮の遺憾の意の表明」に関する外務報道官談話の発出
- 続いて、潜水艦事件に関する北朝鮮の遺憾の意の表明について外務報道官談話を発出したので、それについて説明する。
本日、29日北朝鮮外交部スポークスマンは声明を発表し、本年9月18日の潜水艦事件に関し、「深い遺憾の意」を示すとともに再発防止に向けた措置をとる旨発表した。
わが国は、今般の北朝鮮による声明の発出が朝鮮半島における緊張緩和につながることを期待し、これを歓迎するものである。
わが国としては、今後北朝鮮が朝鮮半島の平和と安定の増進に向けて努力していくことを希望する。
また、わが国は従来より、4月に米韓両国首脳が提案した朝鮮半島の永続的平和に関する四者会合を支持してきているところ、北朝鮮がこの提案を早期に受け入れることを希望するものである。
(2)質疑応答
(問)総理からフジモリ大統領宛に発出した書簡の骨子如何。
(報道官)まだ、書簡自体が時差の関係等で実際に大統領自身に届けられていない。外交上の問題として、その書簡が大統領に渡された後に内容についての説明をさせていただきたい。
(問)関連だが、その書簡は日本政府の基本的考えを改めて述べたということでよいか。
(報道官)種々の進展があったことを踏まえて、総理としてフジモリ大統領に書簡を出す。既に説明しているように日・ペルー間には、人質解放の問題について頻繁に連絡を取っているが、この度のペルー政府側とMRTA側の直接対話のスタートということを踏まえて総理からフジモリ大統領にメッセージを出すということになったものである。
(問)「直接対話のスタート」については外務報道官の冒頭のステートメントには含まれていなかったが。
(報道官)総理が既に述べられていたので、その点には触れなかったが本日の事態の進展をどのように受け止めるかについては、次のとおりである。
「フジモリ大統領はP8からの支持を受けつつ人質全員の迅速かつ安全な解放のために真剣に努力している。
ペルー側とMRTA側との直接対話のスタートや20名の人質の解放はこうしたフジモリ大統領の努力がひとつの効果を現わしてきたものと考える。
他方、未だ多数の方々が人質として大使公邸に残っており、状況は依然として厳しい。
わが国はフジモリ大統領の努力に引き続き全幅の信頼を置きつつ、わが国として成し得る限りの努力を行っていきたい。」
(問)パレルモ教育大臣とゲリラ側との交渉内容如何。
(報道官)頻繁に連絡を取っているということから、我々もこういった事態の進展について様々な形で話を聞いたり情報を収集しているが、他方そのひとつひとつについてどのような話を聞いたかどうかということを言うことは、フジモリ大統領の人質解放に対する努力に影響を与えかねない。どのようなやりとりが行われているかについての説明は差し控えさせていただきたい。
(問)直接対話が始まった事で、政府として今までと違って事態が動くととらえているか。
(報道官)未だに83名の方が人質として捕らえられており、一刻も早く人質全員が解放されることを強く望んでいるが、果たしてその方向で急に動くものかについては予断を持って見るべきではなく、やはり厳しい状況は続いていると見るべきと思っている。
(問)角田駐ウルグァイ大使の帰国を早めたとのことだが、これについてウルグァイ政府から何かの反応如何。
(報道官)ウルグァイ政府から何ら反応があったとは聞いていない。
(問)ペルー政府からの反応は。
(報道官)個々の国からの反応について申し上げるのは如何かと思うが、国際社会が一致してフジモリ大統領の真剣な努力を支持している、その支持についてフジモリ大統領も良く感じて様々な対応を示していることと当方は理解している。
(問)総理とフジモリ大統領は電話で頻繁に意見交換していると思うが、今回の書簡を出す意味合い如何。
(報道官)総理のメッセージをどのような形で伝えるかということについては、その時その時の状況で判断されている。(今回のことについては)新たに20名の人質が解放されたこと、また、直接対話が始まったことがあるのではないか。しかしながら、ペルーと日本との間では大きな時差もあるし、フジモリ大統領も非常に多忙を極めている。よってこの際橋本総理としては、自らの考え方をきちんとした形でフジモリ大統領に伝えることが適切と判断してそのようにされたものと自分(報道官)は解釈している。いずれにせよ日・ペルー間では、現地においても頻繁に連絡を取っている。
報道官会見要旨(平成8年12月28日(土)17:00~於会見室)
在ペルー大使公邸占拠事件
(報道官) 皆様御承知の通り、現地時間27日、ホイワイ・ペルー議会議長は12月21日のフジモリ大統領声明を支持する議会決議が採択された旨を発表した。その際、同議長はこの議決はペルー議会の団結を反映すると共に、ペルー国民及び国際社会のこの問題解決を引き続き模索するフジモリ大統領への連帯を強化するものである旨発言された。
日本政府としてはこの決議に述べられているように、ペルーが国を挙げ一致団結してフジモリ政権の、この問題解決への対応ぶりを支援する連帯を表しているものと認識している。
(問)本件決議の効力如何。
(報道官)これは恐らく日本の国会決議と同様に、議会としての支持声明といった趣旨のものではないかと理解している。
(問)大使公邸内に司教等が入っている模様なるも、右関連情報如何。
(報道官)赤十字の方々と現地対策本部において随時連絡を取るだけでなく、定期的にも連絡をとっている。その他ペルー側のいろいろな方々と情報交換のためにお会いしている。それらの方々のお話を見てみても、人質になっている方々は平静であって、お互いに話し合ったり、ゲームをしたりということで励まし合いつつ時を過ごしている模様である。国際赤十字よりの話によると、健康の問題についても、特に大きな問題が出ていないとのことである。また、水、健康の面についても状況は以前よりだいぶん改善されているとのことである。
(問)これは27日現在の最新の情報と言ってよいか。
(報道官)然り。
(問)議長声明の発出によりG7及びロシアの足並みがそろったものの、ウルグアイだけが足並みが揃っていない模様のところ、政府としては駐ウルグアイ大使を本国に召還することは行わないのか。
(報道官)召還と言われるが.....、角田駐ウルグアイ大使には既に帰国命令が出されている。政府としては本国との事務打ち合わせの都合上帰国日程を早めさせることとして、昨日そのための手続きを取ったところである。
(問)本件召還はウルグアイ大使の解放との関連性があるのか。
(報道官)若干具体的に申し上げると、角田大使には12月1日付けで帰国命令が出されており、当初1月7日に現地発離任の予定であった。この度本国との事務打ち合わせの都合上この日程を3日早めて1月4日離任させることとした次第である。この理由は先程申した通り、本国との事務打ち合わせの都合上我が国政府として帰国日程を早めさせるのが必要と判断して行ったものである。
報道官会見要旨(平成8年12月27日(金)16:50~於会見室)
セルビア情勢
(報道官)セルビア情勢について、お手元に配布したように外務省報道官談話を発表した。その趣旨は、12月24日の政府支持派と野党側デモ参加者との間の小ぜり合いによって、死者が出るなどわが国として現地情勢に懸念を強めざるを得ず、特に新ユーゴ当局に対し、現下の混乱を力に訴えることで解決することのないよう重ねて呼びかけるものである。
在ペルー大使公邸占拠事件
(報道官)まず昨日発表した査証発給業務について、その趣旨を改めて手短かに説明させて頂く。在ペルー日本大使館の査証発給業務を再開しうる態勢が整うまでの間の一時的な措置として今般、とることとしたものである。なお、無査証渡航を認めた場合であっても、上陸時の入国審査官による通常の審査は行われ、上陸希望者はその上陸審査に当たり、入国目的を立証する必要がある。そのため、今回の措置によって、不法残留者、不法就労者が増加するという懸念はないと考えている。△うことである。
(問)キューバ外務省の報道官がキューバ政府がペルー政府に対し事態の解決に向けて動く用意があると言っているというが、どう思うか。
(報道官)私自身はキューバ外務省の報道官の会見からは、具体的なそのような動きはないと読んだのだが、何か私の承知していないことでそのような具体的な動きがあるようなことを言っているのか。
(問)接触を続けているということだが。
(報道官)特に今の段階でキューバ政府がそのうような動きをしているとはわれわれ承知していない。
(問)現在、保証委員会の設置のメドについて、向こうから何か情報が入ってきているか。
(報道官)以前からたびたび説明しているように、わが国政府はペルー政府と緊密な連絡をとっている。ただ、今後人質全員の安全な解放を求めて、具体的にフジモリ大統領が行っていること、また行おうとしていることなどなどを含めて、ペルー政府側の人質解放に向けてのいろいろな努力に対しては、われわれの方から何か説明申し上げることは控えさせて頂きたい。
(問)本日のグアテマラ大使の解放は、今後の事態の推移にどのような影響を与えると考えるか。
(報道官)グアテマラ大使の解放の前提となった、グアテマラの最終和平合意は、12月29日に正式に確定するわけだが、これは1960年から続いていたグアテマラ政府とゲリラ側の内戦に終止符を打つものであり、国際社会が一致してこれを歓迎している。以前質問があったウルグアイ大使解放の前提となる件については、ウルグアイ最高裁判所はウルグアイで収監中の2名のMRTAのメンバーの釈放を決定し、直ちにこの2名は釈放されたわけである。この2名に対しては、ペルー政府などから身柄の引き渡しの要求が出されていたが、ウルグアイ最高裁判所はこの2名を政治犯罪人との認定を行って、ペルー政府などへの引き渡しの要求には応じずに釈放する決定をしたものである。このようにグアテマラ及びウルグアイの件は、異なる性格を有するものである。因みにグアテマラ大使は解放された際に、「12月29日に和平合意の署名がなされるグアテマラでの和平交渉への進展の評価として解放されたものである」と言っている。われわれも同じような理解をしている。
(問)犯人側は、一致団結している各国を分断させることを念頭に置いているのではないか。
(報道官)今度のグアテマラ大使の解放については、グアテマラ大使が言ったことを素直に理解していきたい。いずれにせよ、まだまだ多数の方々が人質となっているので、それらの方々のことが心配であり、引き続き日本政府はフジモリ大統領の対応に全面的に信頼して、協力をしているところである。
(問)査証の発給に関し、一時的ということであるが、日本からのペルーへの観光客が大使館の機能が低下していることで、トラブルに巻き込まれても大使館に駆け込めないということがある。この状態が続けばずっと一時的な状況が続くのか、それともある程度の目途で、領事機能だけのために人を派遣し、開始するとかそのような対策は考えられるのか。
(報道官)今回の件は、日本からペルーに行くというよりも、ペルーの方からこちらに来るという人に対する業務である。日によって違うが、大体年間3千件ぐらいの方々の申請があるということである。そうすると1日10件ぐらいだが、われわれとしては一刻も早いこの人質事件の解決を求めるわけで、とりあえずはこのような措置をとった。一般論としては出来るだけ大使館における査証発給業務を早急に開始し得るようにしてまいりたいと思うが、いずれにせよ今はその前提となる人質の解放を早急に求めていくということである。領事移住事務のことについては、とりあえずこうした措置で不都合がないとわれわれは思うが、新しい措置のもとで少し事態を見ていく必要があると思う。
総理、外相の外遊日程
(問)今朝の大臣会見の際にも質問が出ていたが、総理と外務大臣の外遊日程は人質事件が影響を与えそうで、大臣は「よく考えたい」と言っていたが、この外遊日程に変更があるとすれば、ぎりぎりどの辺で決断しなければいけないのか。
(報道官)いずれにせよ今日決断というところには至っていない。ペルーの人質事件について(今日は)グアテマラ大使の解放以外に大きな動きが見られていないわけだが、なんとかして早期に人質全員の安全な解放が実現するよう、今はペルー政府と協力しつつ、それを願っているところである。
(問)本来なら今日で仕事納めだが、明日以降はどれくらいの態勢で外務省は正月を乗り切るのか。
(報道官)われわれはこのような事態の中で仕事納めを迎えることになって非常に残念である。しかし、全ての人質の方々が完全に解放されるまでの間、われわれとして今の態勢を崩すわけにはいかない。24時間態勢でやっていきたいと思っている。
報道官会見要旨(平成8年12月24日(火)17:00~於会見室)
在ペルー大使公邸占拠事件について
(1)冒頭発言
本日午後3時から3時45分までペルー事件について関連企業代表の方々に対し外務省から第2回目の説明会を行った。先ず斉藤領事移住部長より19日に開かれた第一回説明会以降の現地の状況などについて説明をした。すなわち池田大臣のペルー出張関連、現地医療体制、現地と東京における連絡体制、手紙医薬品の送付についての赤十字のサービスについてなどである。
この関連で現地対策本部が赤十字から現地時間23日に得た情報として次の点が披露された。23日赤十字社の医師が人質の健康チェックのため1日中公邸内に入った。医者の話によれば残留している人質の方々は全員平静且つ落ち着いた様子とのことである。人質の方々は疲れているものの、健康上特に問題があるものはいなかったそうである。それから飲料水及び食料は十分人質の方々に行き渡っている。問題は依然電気水道が中断されていることである。それから斉藤領事移住部長より国際赤十字社によれば残留されている人質の方々は140人程度ということで依然として状況は厳しいという説明をした。
その後質疑応答が行われた。出席した関連企業の方々の関心は今後事態がどのように展開していくかという点及び人質の方々の健康状態ということであった。この説明会を通じ全体として関連企業代表が人質の方々の今後のことについて心配していることが改めてわかった。最後に今後とも現地及び当地の如何に関わらず連絡を良くとっていきたいということで説明会が終わった。
なお、この説明会で取り上げられた問題ではないが、先程来報道されている赤十字社が大使公邸内に仮設の診療室を作った件であるが、先ほど現地対策本部より入った情報によると、国際赤十字の医師に直接確かめた話として大使公邸内の1室に簡易医療室を作って看護婦が常時詰めているということである。そこには医薬品が備えられていうことである。
(2)質疑応答
(問) 電気、水道について、ペルー政府には復旧を強く要請しているのか。
(答) 公邸内に閉じこめられている人質の方々の生活環境についての現地対策本部の懸念はペルー政府側に伝えている。
(問) 電気、水道の復旧見通し如何。
(答) 現段階ではお伝えできない。
(問) 簡易医療室で医師は人質を診察したのか。
(答) 実際にどこで診察したかは聞いていない。推察であるが、簡易医療室で診断したのではないか。
(問) 医療室はいつから設置されているのか。
(答) 聞いていないが、最近のことだと思う。
(問) 看護婦は何名常駐しているのか。
(答) 人数については確認していない。
(問) 人質は医療室には自由に出入り出来るのか。
(答) 医療室に関する報道があったため、現地本部の者が赤十字の医師を捕まえて聞いたもので、情報として足りないところがあるかもしれないが、とりあえずお伝えした。別途、国際赤十字社に確認した医師の活動などを見てもとりあえず健康管理の問題について状況は改善されつつあるのではないかという感じを受ける。
(問) 看護婦は交代制で常駐するのか
(答) 交代制かは不明であるが、看護婦は常時詰めていると聞いている。
(問) 各企業は今後の展開に関心がある由だが、外務省としての具体的説明如何。
(答) 各企業の方のプライバシーに関わることであり、互いのやりとりに関わることは控えようという合意ができたので具体的な説明は出来ないが、それとは別に見通しなどについては、領事移住部長から依然状況は厳しいということで、我々がプレスの方に説明しているラインで説明した。
(問) 公邸内に女性はもういないのか。
(答) 我々の理解では、女性は全て解放された。
(問) 企業への説明会には何社、何名が出席したのか。
(答) 人質として残留した企業が心配であるので、我々から説明するのは控えるということで人質の安否に関わることであり理解いただきたい。
(問) 10社程度か。
(答)およそであるが、もう少し多かったと思う。
(問) 団体は入ってないのか。
(答) 企業及び団体である。
(問) 全員釈放された企業は来なかったのか。
(答) 意思の疎通をしていこうということでそういう方も含め出席頂いた。
(問) 各企業に簡易医療室の説明はしたのか。
(答) 説明会後に現地に確認したので、説明会では時間的に説明できなかった。
(問) 今後の展開について、厳しいということの他にどんな説明を行ったか。
(答) 領事移住部長としては、今まで会見の席上で説明した総理、外相の基本的認識や考え方を披露した上で状況は依然として厳しい、よく連絡をとりあっていこうという説明をした。
(問) 簡易医療室は赤十字の管轄か。
(答) 法的なことは分からないが、いずれにせよ公邸内の小さな部屋に場所を作ったということである。
雑誌「諸君」の記事について
(1)冒頭発言
(報道官) 前の定例会見で最終的に説明していなかった「諸君」掲載の記事について説明したい。
あの記事について、外務省は当時の関係者から事情を聴くとともに、当時の関係者が北京大使館の元専門調査員の方と直接会う機会があり、率直な意見交換を行った経緯がある。全般的なこととして雑誌にこのような記事が掲載されたことについて、内容的に当省として言い分があるが、かつて大使館に勤務した方からこのような記事が出たことについて、忸怩じたる思いがする。大使館の運営という観点から、円滑な人間関係の重要性をよく自覚して遺漏のないようにしていく必要性があるのは申すまでもない。記事の内容を含めて、当省として今回のことから汲み取るべきことは汲み取って、改善の糧としていきたいと考えている。
ただ若干個別のことに入るが、当初関係者が元専門調査員の方々と意見交換を行った際、わが方からいろいろ話を聞いた後で、依然としてわれわれの認識と大分異なるところが多いと感じている旨を先方に伝えた。それに対して、元専門調査員は、書いているのことの一部は確かに直接自分が見聞きしたことでなく、他人からの伝聞も含まれているが、その内容については自分(元専門調査員)の心証と一致しており、恐らく間違いないであろうという判断の下であのインタビューで発言したという説明があった。いろいろ個別のことについて説明するのも何だと思うので、前にこの記者会見で取り上げられたもの2つに限り説明する。
1つは、核実験の際の申し入れに関し適当でない事例があったという指摘が行われた点である。中国の核実験については、まず東京で在京中国大使館に対して、大臣ないし次官から緊急に申し入れを行ってきた。わが国の立場をさらに明確に伝えることを担保するという観点からも、東京における申し入れを行うとともに北京でもわが方の大使館を通じて申し入れを行ってきた。今年の実験についていえば、大使あるいは大使が帰国などで不在の場合にはそれに代わる臨時代理大使レベルから申し入れを行ってきた経緯がある。過去の北京における申し入れにおいて、中国側関係者の都合もあって申し入れのタイミング、レベルが必ずしも理想的ではなかった場合が1、2あることは事実であることが分かっている。しかし、全体としてわが国の立場が適時、適切に先方に伝達されるよう最大の努力を行ってきている。
2つ目に、雑誌の中で専門調査員の処遇が適切でないという指摘がある。これについては、ごく簡単に説明すると、この雑誌の中で元専門調査員が指摘するような処遇をしているとはわれわれは考えていないが、他方、専門調査員制度について、外務省として改めるべき点があれば改めていきたいと考えている。また個人的に特定の館員から特定の専門調査員にプライベートなことで依頼をしたといったようなことの場合、その専門調査員なりが不満に感じているという事態があれば、それは結果としてプライベートの依頼が適切でなかったと言わざるを得ない。今後の館務の運営において心していかなければならないと考えている。
なお、今回の記事を契機として、専門調査員制度の趣旨を確認するとともに、専門調査員が適切に活用されるよう、また専門調査員が十分に働いていって頂けるよう、関係の在外公館に対し指示を出す措置をとったところである。以上、その雑誌に掲載された記事についてのわが方のこれまでとってきた措置について説明申し上げた次第である。
(2)質疑応答
(問) 申し入れのタイミングが適切でなかったことも一因にある。ただし、それは中国の関係者の都合もあってと言われたが、その他にも何か理由はあるのか。
(報道官) 例えば、先方の大使が会うべきランクの方々がいないために、その下の方しかいないといった場合に、それに応じた大使館のレベルを出さなければいけなかったこととか、その他その時々の状況において、必ずしも迅速にそうしたレベルを定めて申し入れることが出来なかった事例があったことは事実である。その点について説明した次第である。
(問) あの記事では、いかにもその大使がサボったような印象になっているが、そういう事実はなかったわけか。
(報道官) その通りである。
(問) 具体的に誰に対して申し入れをし、誰が会えなかったのか。それに対してどうしたか、事実関係をもう少し詳しく出来ないか。
(報道官) この問題について、われわれはずっと調べ、また元専門調査員の方々と話した上で皆さんに今説明しているということである。
(問) 雑誌か出版元に訂正とか抗議は行わないのか。
(報道官) われわれとして同意しがたい認識というものも多々あったわけだが、先方は先方で人から聞いたことも含めてそれが正しいと思っておられるということで、これ以上話をしてみても、両者の間の意見の相違が埋まるものでもない。われわれとしてはもう少し具体的なことについて言いたいということはあるが、いずれにせよ、こうした元専門調査員からいろいろ指摘されるということに対して、じくじたる思いがあるということで、今後の糧にしていきたいという判断をするに至ったわけである。
報道官会見要旨(平成8年12月20日(金)17:00~於会見室)
在ペルー大使公邸占拠事件について
(報道官) 先のブリーフィング以降の件について、われわれが把握していることを説明する。
まず、人質の数についてだが、ゲリラ側は490人程度と言っている。これに対し、国際赤十字の方ではおよそ350人ぐらいではないかと述べており、現段階ではわれわれとしては全くの推測だが、一応400人前後ではないかとみている。前回のブリーフィングの際に申し上げたが、国際赤十字社はパン、チーズ、ハム、水を大使館に搬入しているが、それらは一応400人分ということである。
皆さんもご案内のように、健康を害している4人の方が解放された。国際赤十字社から聞いた話では、医薬品については国際赤十字社の方で人質の方一人一人に症状を聞いて渡しているということである。また、緊急時の医療体制については、近隣の建物に要員が常時待機しているということである。
池田大臣のリマにおける動静については本日、フジモリ大統領、教育大臣と会っておられる。ドイツ大使の表敬を受け、カナダの大臣より電話を受けている。現地時間の明日の午前中には、カナダ大使及びアメリカ大使と会談することになっている。また、国際赤十字ペルー代表との会談も予定されている。午後には邦人関係者、日系関係者と会う予定になっている。
先程解放された4人のうち3人の方はペルー国籍を保有している日系人である。ファン島袋さん、セイトク末吉さん、フィデル新井さんの3人である。その他カルロス・キャポリさんと以上4人の方が解放されたわけである。
日本時間で20日の先程、国際赤十字の方から次のような物資が大使公邸に搬入されている。われわれの得ている情報によると、扇風機20台、歯ブラシ・歯みがき各400人分、石けん150個、アルカリ電池30箱、ウェットティッシュ100箱、トイレットペーパー300個、リンゴ・バナナ400人分である。以上が私の方から説明する点である。
(問) 毛布や着替えとかは必要ないのか。
(報道官) 毛布については、室内温度が相当高いということのようである。そのために国際赤十字社としては、その搬入は必要ないのではとの判断をしている。
(問) 海外の報道で、イギリスやアメリカのテロ対策の集団が色々な準備を進めているというが、各国と連絡をとる中でどうなっているか。
(報道官) われわれとして申し上げ得るのは、例えばアメリカについては、警備の専門家がペルーに派遣されたということは承知している。また、イギリスについても専門家が派遣されるということを承知している。ただ、そういった方々の具体的な任務といったことについては、コメントを差し控えさせて頂きたい。
(問) その専門家は複数か。
(報道官) 複数である。
(問) 池田大臣の日程だが、今後の予定はどうか。しばらくいるのか。
(報道官) われわれとしては毎日毎日決まったところを説明していくということであり、今後どれほどリマに滞在されるかについては、まだ何も決まっていない。
(問) フジモリ大統領との再会談についてはどうか。
(報道官) まだその点については承知していない。
(問) 解放された4人の名前等はどんな形で、いつごろ確認したのか。
(報道官) どのような形で確認したかは、別途連絡したい。いずれにせよ、大臣がリマに着いて、わが方の現地における態勢も整ってきたので、今後こうしたことについて適時に説明できるようにしていきたいと思う。
(問) ドイツのキンケル外相はワルシャワでの記者会見で、同国の駐ペルー大使から得た情報として犯人は18人と言っているがどうか。
(報道官) われわれとしては、テロリスト・グループが何人であるかについての確認ということについては避けさせて頂きたいと思う。
(問) それは人質の安全のためというわけか。
(報道官) そうである。
(問) しかし、キンケル外相が言っているのに、それをわが国が避けるというのはどういうことか。非常に分かりにくいが。
(報道官) キンケル外務大臣がどのように言われるかはキンケル外務大臣の判断であろう。しかしながら今、多くの方々が日本の大使公邸に人質となってとらわれているわけだし、われわれとしては、人質の安全に関わるようなことがないよう、細心の注意を払っていきたいと思っている。従って、われわれの間でこれは人質の安全に影響がないというふうに判断できるもの以外については、コメントを差し控えさせて頂いている次第である。
(問) キンケル外相が言うように、犯人グループの人数を言うことが人質の安全に反するというか差し障りがあるということか。例えば日本政府がそういうことを発表すると、向こうが怒って何らかの害を加えるのでは、との判断か。
(報道官) いずれにせよ人質の方々は非常に長時間にわたりつらい目に遭っておられるわけで、そうした方々がわれわれ外の人間の発言等によって少しでも不利な扱いを受けることがないよう、最善のことをしていきたいとわれわれは思っている。
(問) フジモリ大統領は人命尊重を第一にすると言ったというが、これを政府としてはどう判断するか。日本と同歩調ととるか。
(報道官)われわれはペルーのこの問題に対する取り組みに信頼をおいてやっている。日本時間で今朝の外務大臣とフジモリ大統領との会談においても、池田大臣から人質になっておられる方々の生命の安全を第一に平和的に問題を解決することが日本及びその他関係国の希望であることを申し上げ、大統領も全く同じであるということを強調された。従って、われわれとしてはペルーに対して、そうした信頼をもっていくとともに、できるだけわれわれとしても協力をしていきたいという考えである。
(問) 先程の滞在日程に関係するが、韓国訪問が計画されていたと思うが、その日程が迫っているけれども、情勢次第でどうなるか分からないが、韓国とも問題があるが、訪韓についてはどの辺で判断するのか。
(報道官) 今池田外務大臣は正にこのペルーの人質の問題について、リマで全力を尽くしておられる。同時に、もちろん日本として韓国との関係、発展は極めて重要であり、そうしたこともあり池田大臣はリマに出発される前にユ長官に電話で話された。われわれとしては、日本政府、ペルー政府、関係諸国、関係国際機関の努力によって、この問題が早期に平和的に解決され、もってわれわれの通常の外交活動が予定どおりに行われるようになることを望む次第である。いずれにせよ、今は当面の問題に全力を尽くしているところである。
(問) そのとおりだろうが、問題が解決すればよいが、もしも長引いて大臣が韓国に行けないという事態になっても、それは向こうからは理解してもらえるというふうに考えるのか。
(報道官) 事態が韓国にとっても大変だということについては、韓国側も十分に承知しているところである。いずれにせよ、現時点において、この問題が大臣の訪韓日程に影響を与えるか否かについて予断をもって申し上げることは差し控えたい。
(問) 地元の報道によると、池田外務大臣の同行機に看護婦が34~35名というが。
(報道官) 外務大臣には外務省はじめ関係省庁より30数名が同行しているということである。
(問) するといわゆる看護婦さんとか厚生省、病院関係の人は一緒に行っていないということか。
(報道官) 同行者について男女の性別についての資料を持っていないが、その30数名の方の中に警察の医療関係者の方が入っているということは聞いている。
(問) 外務大臣と大統領との会談について、総理の方には直接連絡があるのか。
(報道官) 外務大臣から連絡が入ってきている。なお、本日解放されたもう一人のカルロス・キャポリさんは、日産マキナリアス社の社長さんである。
(問) 細かいことだが、先程搬入された品物の中で、電池30箱というのはどういうもので、どんな数量なのか。
(報道官) その用途については今お答えできる資料を持っていない。内容について具体的には承知していない。
報道官会見要旨(平成8年12月17日(火)17:00~於会見室)
日韓関係
(問) 昨日の事務次官会見の際に、竹島問題で韓国政府が灯台の有人化を計画しているが、日本政府としても何らかの対処、状況変化があった場合には行うべきではないかという質問に対し、次官よりそれも含めて検討したいとの返答だったが、その後外務省として何らかの方針を決めたか。
(報道官) 竹島における、例えばふ頭建設工事については、既にご案内のように10月31日及び12月9日、アジア局長から韓国側に申し入れをした次第である。今の点は、有人灯台云々という点の報道かと思うが、それについては、これが事実かどうか調査中である。
(問) 事実なら、何らかの申し入れを行うのか。
(報道官) 既に10月31日、12月9日に申し入れたように、わが国の竹島についての基本的な立場を明確にした上で、建設工事の中止を申し入れているわけである。この辺を踏まえて、昨日、次官は日本側の立場は韓国側に伝わっているものと思う、と答えたと私は理解している。いずれにせよ、今度の有人灯台の問題は、その報道が事実かどうかについて調査しているところである。
(問) 例えば国際司法裁判所等の場なり、韓国側に対して日本が有効なアピール、例えば局長以上のレベルから申し入れるとか、手段を取らないと韓国側が更に行動を強化していくのではないか。
(報道官) かつて政府は、国際司法裁判所に付託しては如何ということを言ったが、韓国側の同意には至らなかった。その後、本件についてのわが方の立場については長い間、口上書で伝えてきた。今般のように、口上書ではなく、担当のアジア局長が直接申し入れるということは一つのきちんとした政府としての対応ぶりである。そういうことを必要があるごとにやっていくということである。ただ今後のことについては、事実の確認等を踏まえ、その段階でまた考えていくことになる。
(問) 韓国の国防費がこの5年間で2倍になるという報道があったが、現在の東アジア情勢からいって、この韓国の国防費増額は理解できるか。
(報道官) 本件については、承知していないので、確認の上回答する事と致したい。
綱紀粛正
(問) 今週の木曜日に事務次官会議で綱紀粛正策がまとめられるというが、外務省の対応を含めて今回の厚生省の不祥事についてのコメント、綱紀粛正についてどう思うかを伺いたい。
(報道官) 現在、総務庁を中心にして政府全体として一層の綱紀粛正に向けて作業中である。外務省としても、国民の不信や疑惑を招くことのないよう、厳正に対処する所存である。まとまった段階で具体的な綱紀粛正の内容について発表する予定である。
ミャンマー情勢
(問) ミャンマー情勢だが、先日の会見の際にミャンマー政府がマスコミに対して群衆に近づかないように協力要請をするということであったが、それは行われたのか。もし行われたとしたら、それに対して、わが方としてはどういう返答をしたのか。
(報道官) 現地で12月12日、ミャンマー外務省の政務局長より外交団長に対し概要以下のような要請がなされた。すなわち学生が大学敷地内でデモを行っているうちはまだ問題がないが、外に出てデモを行うことになると警察の方も行動を起こさなくてはならない。現場では一見何事も起こっていないように見えても、いつ投石等が行われ、警官がそれに対応しなければならないということが出てくるし、そうした事態は予見しがたい。また、英語を解さない警察官も多い。従って、好奇心で現場に接近するのは控えてほしい。数日前、日本人記者が負傷して、日本大使から申し入れを受けたが、当局は外国人を標的にするつもりはないものの、危険な目に遭わないよう状況をよく理解してもらいたい、という説明があった。われわれとしては、そうしたミャンマー側の要請が出ているが、同時に既に読売新聞の記者及び読売新聞の現地の助手に対して暴行事件が起きたということで、ミャンマー側に申し入れを行ってきている。いまだに回答はなされていない。引き続き回答を督促しているところである。
(問) 政務局長の発言は、これを日本の報道機関等に伝えるべしということはなかったか。
(報道官) そういうことではない。あくまでも外交団長に対して一般的に説明し、その中で特に日本大使からの申し入れがあったということで披露をしたということである。わが方の申し入れに対しては、回答するようミャンマー側に督促しているところである。
(問) それでは好奇心から近づかないでほしいとの要請に対し、「分かった」と承知したわけではないということか。
(報道官) 先方は上層部に伝えるという言い方をしているだけである。
(問) 外交団長は何んと言ったのか。
(報道官) 外交団長が具体的にどのようなことを言ったのか詳らかにしていないが、外交団長を通じわれわれの大使館を含めて在ミャンマーの外国公館にこのような要望があったということの伝達が外交団長であるロシア大使から連絡があったものである。
中国における日本人留学生に対する実刑判決
(問) 報道によれば、北京市の中級人民法院で、窃盗罪に問われた日本人留学生が懲役3年の実刑判決を言い渡されたというが、それについて何か情報があるか。
(報道官) 本件については承知していないので、担当課において調査の上回答致したい。
報道官会見要旨(平成8年12月10日(火)17:00~於会見室)
ロシア人に対する査証について
(報道官)本日午後、記事資料で発表したロシア人に対する査証発給の簡素化、迅速化について若干の追加説明をさせて頂く。旧ソ連時代の査証発給件数は年間約1万人弱だったが、ロシア連邦成立後、ロシア人の日本入国は急増しており、今では2万人から3万人になっており、その入国目的も多様化している。このような状況の下で、これまで例えば商用、会議出席及び自治体交流などの案件については、平成4年12月からモスクワにおいて査証迅速発給方式(M方式)を開始し、平成7年7月からは全ロシア公館にこの方式を拡大するなど手続きの簡素化、迅速化に努めてきた。ロシア側においても出国査証制度など様々な制限措置があるということで、平成7年3月及び今年の7月に日露両国の領事当局間協議を行い、双方で改善出来るところは改善していくことで合意した。そのような合意も踏まえて、この度、簡素化措置を実施することになった次第である。この措置は、日露両国間の人的交流を一層促進し、両国関係の拡大発展に資するものであり、各般の分野で両国関係を前進させていくとのわが国の基本方針にも沿うものと言える。今後とも必要な簡素化措置を実施していく所存である。
(問)迅速化というが査証発給が9日目から7日目になっただけか。
(報道官)大きくいって3つの措置をとった。1つは、「M方式」については、今までワーキングデーで9日目に査証を発給していたのを7日目に発給するということ。2つは、この「M方式」自体の対象を拡大して、在留資格認定証明書を所持する人に対しては、従来の約20日からワーキングデー7日目の発給に短縮したこと。3つは、2回有効査証の発給をすることにしたことである。
(問)どうしてもこのワーキングデー7日というのは必須なのか。もう少し短くならないのか。
(報道官)ワーキングデー9日目という必須のものをワーキングデー7日目に短縮した。因みに、欧州においては、われわれの理解するところでは、国によっては違うが申請を受けてから2、3日で査証を発給するところや、1週間ぐらいで発給するところもある。
ミャンマー情勢関連
(問)ミャンマー政府に対して邦人の取材活動制限に関する申し入れを行ったようだが、その内容如何。
(報道官)この点については先程、官房長官から説明があったと理解している。今日の午前11時(現地時間)、山口在ミャンマー大使からミャンマー外務省のキン・マウン・ウィン政務局長に対し、この暴行事件についての事実関係の説明を求めるとともに、日本のプレスの合法的な取材活動が円滑に行われることを確保するよう申し入れを行った。これに対して先方から、この申し入れがあったことは政府・上層部に伝えるということ、また、先方は学生デモによる問題が大きくなっている状況に鑑みて、近く在ミャンマーの外交団長を通じて各国外交団に対して、群衆の集まる場所にはジャーナリスト及び大使館関係者が近づかないように協力を要請するつもりである、との回答だったようである。なお、この申し入れに際しては、12月3日の読売新聞のミャンマー人助手に対する暴行事件についての12月4日のわが方の申し入れについて回答してきていない。従って、ミャンマー助手の件、この度の読売の特派員の件双方について、今後ともわが方の申し入れに対して回答を求めていく考えである。
(問)この「群衆に近づくな」ということは、いわば取材活動の制限にもつながりかねないとも思うが、これに対して山口大使はどういうレスポンスをしたのか。
(報道官)本日わが方から説明したことに対し、先方は「ジャーナリストの仕事は情報を収集することであり、われわれは彼らの仕事に対して理解を持っているつもりだ」という説明もしている。しかし、学生デモを巡って問題が大きくなっていることもあって、人々が集まっているところに近づくと、不測の事態が生ずる恐れもあるということで、近々そのような協力を要請するつもりだということのようで、取材活動を制限するという意味ではないように思う。
(問)しかしこれは、いつでも制限の材料に使われる恐れありと私どもは感じるわけだが。
(報道官)わが方は先般もそうだが、今般も日本プレスの合法的な取材活動が円滑に行われることを確保するよう申し入れているわけであり、それは正式の申し入れである。それに対してどのように先方が回答してくるか、見ていきたいと思っている。
(問)ミャンマーの情勢そのものはどうか。
(報道官)情勢については、学生の動きを含め、ますます不確実性を増してきている。今後ともわれわれとしては、引き続き注意して見ていきたい。
竹島関連
(問)先の外務報道官会見後に竹島について新しい情報、判明した点を教えてほしい。
(報道官)先般の会見で、竹島の問題について調査するとお答えした経緯がある。竹島におけるふ頭工事の進捗状況について種々の情報もあるので、竹島に関するわが方の基本的立場に鑑みて、この工事の中止を求めることが必要と判断し、12月9日、東京で外交ルート(加藤アジア局長より在京韓国大使館金龍圭公使)で韓国政府に対し、この工事の中止を求めた。
(問)工事の中止を申し入れる必要があると判断したのは、どういうことからか。
(報道官)先般、写真を含めた報道が行われたこともあり、いろいろ情報を合わせて、われわれとしては工事の中止を求めることが必要と判断するに至ったものである。
(問)金龍圭公使の回答如何。
(報道官)我が方より竹島に関するわが国の従来からの立場を説明したのに対し、先方は韓国側の立場を繰り返した後に、日本側の申し入れについては本国政府に伝えるとの回答であった。
雑誌「諸君」の記事
(問)先般の記者会見でも質問したが、雑誌「諸君」の対談記事の中で中国が核実験を行った際の在北京大使館の抗議の実態について、分かったことを教えてほしい。
(報道官)この記事の問題について、わが方なりに調査をした。全般として、この記事中の元専門調査員の発言の中には、この人が直接見聞したと思われるものと、この人が他の人から聞いたと思われることが混在しているように見受けられる。従って、外務省としては、この人から直接事情を聞いて、その真意を質していきたいと考えており、今面会を申し入れ中である。
(問)それぞれの核実験について、それぞれ何日後に抗議したかについて教えて欲しい。
(報道官)ご質問の趣旨は、この鐸木氏という元専門調査員の言っていることがどの程度正しいかというご質問なのか、それとは別にということなのか。いずれにせよ、われわれとしてはまだ鐸木氏に会っていないので、この雑誌の中から読み取るしかないが、例えば、中国の核実験についてこの記事を読むと、どうも仏の核実験があった後の中国の核実験の際の大使館の対応について話し合っているように思われる。しかしこれは、昨年9月から今年1月にかけてのもので、その時期にこの方は既にわが方の北京大使館には勤務していない。
(問)それはもう一人の対談の参加者の発言ではないのか。
(報道官)その記事をここに持っているが、これを見てもよくその辺のことは分からない。従って、私が先程申し上げたように、どこまで直接の見聞に基づいて言っているのか、その辺のことは鐸木氏からよく聞いた上で判断していかなければ(ならない)。このまま信じてどうこうというのは如何なものか。
(問)前回の会見で報道官は、核実験の際の抗議については事実関係を調べると言っていたが。
(報道官)この記事とは関係なくということであれば説明するが、中国で核実験を行った場合には、まずは東京において在京中国大使館に対して、外務大臣ないし外務事務次官より直ちに申し入れを行っている。また、わが国の立場をより明確に伝えるとの観点からも、東京における申し入れを行うとともに、北京でも我が方大使館を通じて申し入れを行ってきている。例えば本年6月8日の核実験については同日、池田外務大臣より在京中国大使に申し入れを行い、6月10日、在北京臨時代理大使(大使は忌引休暇で帰国中)から先方に申し入れを行っている。7月29日の中国の核実験については、同日、池田外務大臣より在京中国臨時代理大使に申し入れを行っており、7月30日に北京でわが方の大使から中国政府に申し入れを行っている。
(問)94年6月10日の核実験は?93年12月5日は?・・・
(報道官)(質問を遮り)別途そのようなことでご質問があれば、自分(報道官)の所へ来て頂ければ、単なる事実関係であるので説明する。
(問)こういう雑誌に出た対談の内容について異議がある場合は直接本人から話を聞くというやり方なのか。雑誌社に対してはどう対応するのか。
(報道官)最終的に何かをする場合に難しいところがあるが、いずれにせよ、鐸木氏から話を聞くのがいいのではないかということで、とりあえず面会を申し入れているところである。何かこれが不都合なことでもあれば、それはそれでいろいろ考えていかなければならないが、一般の私人なのでわれわれとしても非常に慎重にやっていかなければいけないと思っている。
(問)掲載した社にはどんな対応をとるのか。
(報道官)とりあえず雑誌社に対してはまだ具体的なことをとることは考えていない。
(問)鐸木氏には何を聞くのか。
(報道官)われわれが調査して把握した事実と、鐸木氏が言っていることと食い違いがあるので、やはりその辺のことを当人から話を聞くということである。また、先程申し上げたように、当人が直接見聞したと思われるところと、明らかに他の人から聞いたと思われるところが混在しているので、その辺のところも当人に直接話を聞かないと分からないところもあると思う。いずれにせよ、昔一緒に働いた仲間であるとはいえ、今は独立している私人であるので、慎重にも慎重を重ねていきたいと思っている。
イラク石油禁輸解除について
(問)イラクの石油が解禁というか、これまでの制裁の一部緩和ということのようだが、これは日本への影響はどういうことが考えられるか。この緩和措置をどう見ているか。
(報道官)日本への影響という意味では、今の石油の需給状況にどういう影響を与えるかということかも知れないが、その点について市場としては既に織り込みずみのようである。従って、この石油市況に与える影響というのは小幅かつ一時的なものかと思う。ただ、われわれとしては、長い間にわたってイラク国民の窮状という観点から、出来るだけ早く決議986号を履行するようにと訴えてきた。そういった意味で(今回の合意を)歓迎する次第である。恐らくはイラク当局として、イラクの経済状況の悪化とか、それに基づくイラク一般国民の窮状が背景にあって国連との間でこの話し合いをまとめたものと思う。ただ、このこととイラクに対する経済制裁解除の問題とは全く違った問題であり、われわれとすればイラク国民の民生の向上に資するという意味では、イラクが国連の関連決議を完全に履行して、イラクが国際社会に一日も早く復帰することが必要であると考えており、この面で引き続き働きかけをしていく所存である。
報道官会見要旨(平成8年12月6日(金)17:00~於会見室)
ルワンダ難民支援について
(報道官)本日の閣議で決定されたザイール東部のルワンダ難民等に対する緊急援助について、若干の追加説明をしたい。
わが国としては、国際機関ごとの支援内容について必要性、緊急性などの観点から詳細な検討を行った結果、各機関への拠出をパッケージとしてまとめた。配布済みの資料の中に各機関による支援内容を付けているので、その点を参考にして頂ければ有り難い。なお、拠出額としては米国に続く第2の金額である。これら国際的な各機関による支援については、緊急支援という性格のものだけでなく、例えばUNHCRに対する支援、国連ボランティアに対する支援などは中期的な観点からの支援という性格も持っている。
わが国としては引き続き次の3つの分野での対応策を検討している。
1つは難民支援で、今朝発表した緊急支援の他にさらにルワンダの難民受け入れ環境整備への支援について、11月末に支援国会合が開かれたが、また再び支援国会合が開かれる可能性もあり、そうした中での議論を通じて中長期的な観点を入れた支援(インフラ整備等)を今後検討していきたいと思っている。AMDAに対して行っている支援やNGO支援も検討していきたい。また、現在、政府NGO合同調査団が現地に派遣されているが、人道的援助活動への人的な貢献について検討する。
第2は、多国籍軍に対する支援で、これは既に何度も述べているように、もしも多国籍軍にアフリカ諸国が参加する場合には財政的貢献を含めて検討していく方向である。
第3は、関係国により今、大湖地域国際会議を開いたらどうかとの考え方が議論されているが、これは直接の紛争当事者だけでなく、国際社会の関与が必要であるということであり、わが国も関係国とともに、こうした会議の考え方を継続的に検討していきたいと考えている。
(問)ザイール難民支援だが、外務省として今回の支出額は満足するものであったか。
(報道官)米国は約3000万ドルと聞いており、今回の額は米国に次ぐ2番目である。欧州諸国は検討の最中だが、1000万ドルから2000万ドル程度の間だということなので、われわれとしては、額として適切なものになったと考えている。
気候変動枠組条約議定書に関する日本政府提案について
(報道官)来年12月に京都で開かれる気候変動枠組条約第3回締約国会議に向けて、作業を行ってきているベルリン・マンデート・アドホックグループの会合が12月9日から13日までジュネーブで開催される。この会合で、来年12月の第3回締約国会議で採択が予定されている議定書についてのわが国の案を提出する予定である。
現在の気候変動枠組条約は、温室効果ガスの排出総領を2000年までに1990年のレベルに戻すことを認識して政策措置をとるべきであることを目的としているように、今の条約は温室ガスの濃度を安定化させることを目的とするものである。現行条約では西暦2000年以降の取り組みについては規定していない。
今回のわが方の提案は、2000年以降の国際的な取り組みに関するもので、関係各国はこれまでいろいろな案を提出してきているが、それに比べて具体的かつ詳細な提案と考えている。当面のわが方の目標は、この日本案を交渉のタタキ台となる議長案に反映させていくことである。わが方の今回出す案は3つの柱からなっている。
第1の柱は、温室効果ガスの排出抑制削減目的である。これについて2つのフォーミュラを提案して、このうちの1つを選択してはいかがかという考え方である。
第2の柱は、具体的にどのような政策措置をとるかということである。
第3の柱は、情報の提出及び検討である。この排出抑制削減の目的、具体的にとる政策措置に関する情報を提出して、専門家チームが検討し、この目的達成が困難な締約国に対しては、締約国会合は勧告を行うといったことをわが方は提案する予定である。
我が方の提案はこの3つの柱から成るが、(特に)二つフォーミュラーの中のどちらを選ぶか(が焦点である。)。またフォーミュラーの中でまだカッコ書きのところがある。その内容については、各国それぞれいろいろな意見があると思う。今後ともこれをまとめていくのはなかなか大変とは思うが、来年12月に京都で第3回締約国会議が開かれるということもあり、わが国としては積極的にイニシアチブをとって関係各国との間で話し合いを進めていきたいと考えている。
(問)この政府提案の骨子についてだが、2つのフォーミュラーで5年間というのは分かるが、次の「p」と「q」については各国ごとに数字が違ってくるという意味合いか。
(報道官)まだいろいろな考え方があって、まずその2つのフォーミュラーのうち、1つは二酸化炭素の一人当たりの排出量の平均をとっていこうという考え方であり、もう1つは二酸化炭素排出量の総量を規制していこうという考え方である。そのどちらをとるのが自分たちにとって有利か不利かについて関係各国の間で今後議論されるであろう。それを具体的に「p」とか「q」のところにどのような数字を入れていくかは、各国によって利害が非常に異なるところである。その辺を巡って、どちらかのフォーミュラーが採択されても、そのフォーミュラーに具体的な数字を入れる作業が今後出てくる。今回はその内容は提案することは考えておらず、とりあえずそのフォーミュラーを提案していこうという趣旨である。
月刊誌の記事について
(問)月刊誌「諸君」で在中国大使館で専門調査員をしていたという人が、中国が核実験をした際に本省からこれに対し抗議をするよう訓令を受けながら、大使は3日間行かず公使が行ったという証言をしているが、そういう事実はあったのか。
(報道官)申し訳ないが、その事実について今お答えできないので後でチェックして答えたい。
(問)その同じ記事の中で、専門調査員が新聞配達員のように総領事のところへ毎朝新聞をもっていくという使われ方をしているということも出ているが、外務省として専門調査員の意味として、まずそういう事実があるのかどうか伺いたい。
(報道官)ご指摘の雑誌に掲載した人は、在北京の大使館の政務班に働いていた人であり、大使館全体の活動ぶりについて客観的にいろいろ知り得る立場にはいなかった。(雑誌で述べている)その個々の点が正しいか、正しくないかについて、残念ながら今ここにお答えできる材料を持っていない。
いずれにせよ、それはその人が政務班にいて、そこで感じた個人的な感想を述べたものであって、全般的に見て在北京大使館の活動ぶりを客観的に反映したものであるとは思っていない。この人は、北朝鮮を含む朝鮮半島情勢を研究して頂くということで働いていたわけだが、外務省はこうした形で専門調査員をかなりの数で、いろんな大使館で働いてきてもらっている。こうした専門調査員の方々は、いわゆる外交職員ではないが、われわれと一緒になって働いてもらっており、専門調査員の仕事ぶりについては全般的にわれわれは高く評価しているところである。
(問)全般的な評価は別にして、個々の指摘で大使が本省の訓令に従わなかったとすれば、それは個別の事実といっても重要ではないのか。
(報道官)具体的に中国の核実験があった時の訓令の執行が(核実験も1回ではなかったので)その際どうであったかは具体的に調べないとお答えできないが、いずれにせよ、大使が本省の訓令に反したようなことをするとはちょっと考えられない。もしもそのようなことがあればその場で既に話題になっていたと思う。いずれにせよ、核実験は具体的に行われており、いかなる訓令が出て、いかなる執行の仕方をしたか具体的に調べてみる必要がある。この場でお答えできるだけの資料を持っていないので、改めてその点についてはお答え申し上げる。
(問)既に調べているのではないか。それともこれから調べるということか。
(報道官)既に調べている。
(問)既に調べているが、今は答えられないということか。
(報道官)ここで具体的なことについて質問があるとは予想していなかったので、自分(報道官)自身資料を何もここに持っていない。それなしにお答えすることは控えたいと思う。
(問)2日前にある外務省幹部から今報道官が言ったようことを伺った。詳細な部分についてはまだ言えないとしても、それから日にちが経っているが調べてみて何か対抗策みたいなもの、向こう側に何か言うとか、それを発表するとかを検討しないのか。
(報道官)われわれとしては、(この人が)いかなる考えのもとでこのようなことを言ったのか、やはりよくお聞きしてみなければいけないと考えている。
(問)意図はともかくとして、出ているものは出ているわけだから、このまま良いという立場をとるのか、あるいは悪いのなら相手に何を言うのかだが。
(報道官)この人は国家公務員ということで働いた人ではないので、われわれがどれほどのことをこの人に言うことが出来るのかについては慎重にならざるを得ない。しかし、われわれとしてはそこで言われていることが客観的事実を反映していないということでもあり、全体としてどうしていったらいいのか考えているところである。具体的に雑誌で述べられたことに対して、全てこちらとしてその時のいろいろな状況を把握できるかどうかは分からないが、今質問に出た中国が核実験をしたことは事実であり、その時に外務省が訓令を発し、それを執行したということも事実である。そうしたファクトについては、質問があればお答えすることも可能である。
(問)一昨日質問したのにいまだに同じような答えが続いている。具体的なことについてはいつごろまでに出すのか。
(報道官)具体的なことということが、今の核実験のことであればすぐに調べてお答えする。
(問)質問された部分についてのみ答えるということか。
(報道官)(相手は)今は私人である。過去にわれわれと一緒に働いた人が言ったことについて、いちいちそれに対してお伺いするのも如何かと思う。ただ、今の(核実験に係る)質問は正に外交活動そのものに関することなので、それは事実関係を調べてお答えする。
(問)大使自らが抗議しなかったということは事実か。
(報道官)事実関係なので正確を期さなければならない。調べてから説明したい。
竹島問題について
(問)竹島問題について、自民党の山崎政調会長が外務省に韓国側に抗議するよう指示したというが事実か。
(報道官)その件そのものについては自分(報道官)自身承知していないが、日本において竹島におけるふ頭建設工事についての報道があったということなので、現在、事実関係、背景等を含めて調査中である。
オルブライト新国務長官について
(問)米国でクリントン大統領は国務長官にオルブライト氏を起用したが、これに対して外務省としてコメントがあれば伺いたい。
(報道官)われわれが今日承知したのは、オルブライト大使の次期国務長官指名だけでなく、コーエン前共和党上院議員の次期国防長官の指名である。わが国としては、新閣僚と緊密に協力して、共通の課題に前向きに取り組んでいくとともに、幅広い分野における日米協力関係を一層発展させていきたいと考えている。今後、国内的な手続きが残されていることもあり、具体的な個々の人事についてコメントするのも何かと思うが、いずれにせよ、こうした方々はいずれも立派な方々である。わが国として協力して日米関係の一層の発展を図っていきたいと考えている。
報道官会見要旨(平成8年12月3日(火)17:47~於会見室)
1.冒頭発言
シンガポール・WTO閣僚会議の関連
(報道官)12月9日から13日にかけて開催されるシンガポール・WTO閣僚会議に関連してだが、閣僚宣言案については未解決の諸点が残っており、この会議でさらに調整が行われることになっている。わが方としては、例えば貿易と投資、情報技術合意、ITAなどについて合意の成立をめざして努力をしているところである。日本政府としては、この会議の成功のため未解決の諸問題についてコンセンサスが得られるよう、関係諸国と広く協力していく所存である。
ボスニア和平関連
(報道官)ボスニア和平履行評議会が12月4日から5日まで開催され、高村政務次官がこれに参加される。評議会の直接の議題ではないが、セルビア地方選の結果生じている大規模なデモは、旧ユーゴ全体における和平履行に悪影響を及ぼしかねないもので、わが方としても事態を注視してきている。わが国としては、開票等に不正があったか否かについて過早の判断をすることは差し控えたいと思うが、公正に進められるべき選挙手続きを巡ってこのような混乱が生じていることは遺憾であり、事態が民主主義の原則に則って解決されることを期待するものである。
江沢民主席のインド、パキスタン訪問について
(報道官)江沢民国家主席のインド、パキスタン等の訪問についてだが、中国は改革・解放政策の下、経済建設に全力をあげて取り組み、このような観点からも平和な国際環境を必要としているとの基本的認識に立って、活発な善隣外交を推進している。この度、江沢民国家主席がインド、パキスタンなどを訪問したが、これもこのような善隣友好外交の一環であると考えられる。インド、パキスタンをはじめとする南西アジア諸国は近年、経済自由化政策を積極的に推進し、域外諸国との関係緊密化に努力するなど、多角的な外交政策を進めている。わが国としても、この地域の重要性を認識しているところである。このような観点から、この度、江沢民主席が国家主席として初めてインドを訪問したことを注目しており、またアジアの大国である中国と南西アジア諸国との関係緊密化は、アジアの平和と安定に大いに寄与するものと期待される。
2.質疑応答
ザイールへの多国籍軍派遣
(問)ザイールに派遣される多国籍軍の規模は、最初の計画よりも(難民が帰還しているということもあり)小さいものとなってきているようである。日向参事官も現地に行っていろいろと情報を収集されたと思うが、このザイール情勢の見通し如何。また、多国籍軍の派遣は実際必要なのかどうか、現在のところ派遣することになっているようだが、予定どおり派遣されるものか、その辺の見通しがあれば伺いたい。
(報道官)いまだに事態は流動的だが、多国籍軍の派遣について、司令部をエンテベに設置すること、シュトットガルトに計画部を設置すること、キガリに戦術司令部を設置することは決まっている。他方、多国籍軍の規模は未定であり、今カナダから約300名、アメリカから約 400名が現地で活動しているが、これらの国を含め関係諸国が最終的にいかなる数の部隊を派遣するかはまだ不明であり、未定である。
また、アフリカ諸国の部隊の派遣の見通しもまだ立っていない。しかし、この多国籍軍というものが派遣されて、難民の所在を確認するための偵察活動の拡充、航空管制及び人道機関の支援物資の輸送などの任務に当たるとの方向性は出てきていると考えている。従って、規模の方は当初より小さくなると思うが、多国籍軍が派遣されるという方向で事態は進んでいると考えている。他方、先般も説明した経緯があるが、わが方は多国籍軍派遣の場合、いかなる貢献が出来るか検討すると同時に、人道的援助についていかなることが出来るか検討しているところである。先般発出された国連の統一アピールについて今、関係省との間で鋭意検討中である。事態の緊急性に鑑み、なるべく早くわが方の人道援助が実施に移るよう努力しているところである。
(問)ではわが国は多国籍軍の派遣を支持しているわけか。
(報道官)これについては安保理決議1080が採択されており、わが国もこれを支持している。他方、現地の事態が変わってきつつあることから、わが国としていかなる貢献が出来るかについては、昨日、林事務次官からも説明したように、アフリカ諸国が参加する場合、多国籍軍への財政的貢献について対応を検討していくつもりだが、先程も説明したようにまだアフリカ諸国の部隊が派遣されることは決まっていない状態である。今現地に政府・NGO合同調査団及び政府調査団が行っており、わが国としていかなる貢献が可能かについて、いろいろな角度から調査をしているところである。
(問)これはいつごろはっきりしてくるのか。つまり、時間が経てば経つほど難民の方々の苦労は深まると思うが、この多国籍軍の派遣もこんなに時間がかかっていいものかとの国際的な声もそろそろ起こりつつあるようであり、日本の人道的支援も早めに決める必要があるのではないか。
(報道官)多国籍軍の派遣については、関係国の間で鋭意検討が続けられており、既に約
700名のカナダ及びアメリカの軍隊が現地に派遣されているということで、その点については関係国の検討に委ねなければならないが、わが方の人道援助については、とりあえずは先般出た国連統一アピールに対していかなる人道援助が可能かということで、これについては正になるべく早く実施できるように関係省と協議をしている最中である。
(問)年内にもか。
(報道官)いや、もっと早くである。事態は非常に緊急なので、もっと早くやりたいと思っている。
日韓首脳会談
(問)先程、梶山官房長官が、来年1月25日、26日に、大分件の別府にて日韓首脳会談が行われると公表したが、事実関係如何。
(報道官)われわれも先程、官房長官が発表された件について承知している。明年の1月25日及び26日、金泳三大統領が別府を訪問されることになったということである。
(問)別府になった経緯・理由如何。
(報道官)ご記憶だと思うが、先般の済州島における日韓の首脳会談は非常にくつろいだ雰囲気のもとで成功裏に行われた。これを踏まえて、この度、同じような雰囲気で会談をして頂くということで別府を選んだということである。別府については、韓国からの観光客が年4万人といわれるほど数が多いこと、大分県と韓国各市との間の自治体レベルで活発な交流が行われていること、交通の便も比較的良好であることなどを勘案して決定したものである。今年もいろいろな場で日韓両国首脳が話し合う機会があったが、今後とも個々の懸案を解決するということよりも、頻繁に会って相互信頼を深めていくこと、それをもって日韓の友好協力関係の推進に貢献して頂くということで、このようなくつろいだ雰囲気のもとで忌憚のない意見交換を積み重ねていくことが重要だ。こういう判断のもとで、この度、別府において首脳会談をして頂くことになったものである。
(問)首脳会談は25日に行うこととなるのか。
(報道官) 今発表されたのは25日、26日に訪問して頂くということである。具体的な日程、首脳会談の時間、場所等を含めて今、話し合いを行っているところであると理解している。
(問)外務大臣も出られるのか。
(報道官)その点についてはまだ承知していない。
(問)首脳会談が行われるのはいいことだが、本日伝えられていたことで、韓国の外務次官の発言として、久しぶりに歴史認識についての厳しい発言をしており、まだまだ足りないという趣旨の発言だと伝えられている。また、天皇陛下の訪韓にしても慎重な姿勢でというふうな発言をしたとの報道もあるが、こうした外務次官の発言はどのように分析しているか。
(報道官)先方の外務次官が発言されたことの詳細の内容は承知していないが、われわれが理解しているのは、今年6月の済州島での日韓首脳会談終了後の共同記者会見において金泳三大統領が日本側の記者の質問に答えて言われたことと同じラインであると理解している。即ち、天皇陛下の開幕式出席問題はまだ時間が十分あるので、それまで両国国民がそのような雰囲気を醸成することが重要であるという認識を述べたものとわれわれは理解している。
歴史認識の問題については、第2次橋本内閣になって以降も昨年8月15日に当時の村山総理大臣より発表された総理談話を継承することを明らかにしている。こういった点について、韓国側も理解して頂くことを願う次第である。われわれとしては、機会あるごとにその点についての説明をしている。
韓中軍事交流
(問)韓国の関係では、今朝の新聞で、中国の軍事使節団が韓国を訪れ、これと関連して、国防相会談もプランに上がってきているとの報道があったが、これについて外務省としては何か情報をつかんでいるか。
(報道官)今お答えできるだけの材料はない。