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記者会見

報道官会見記録(平成8年10月)


INDEX

・報道官会見記録(10月29日付)
 ・エジプトに国際緊急援助隊
 ・アフリカの難民問題
 ・ 中国の国産空母問題

・報道官会見記録(10月25日付)
 ・在日米軍オリエンテーションプログラム
 ・ナミビア大統領来日
 ・ APEC(査証)
 ・ミャンマー情勢

・報道官会見記録(10月22日付)
 ・安保理非常任理事国選挙当選
 ・竹島問題
 ・尖閣諸島問題
 ・NEC製スーパーコンピューターに関する米のダンピング調査
 ・ノドン1号の関連
 ・ アフガニスタン情勢

・報道官会見記録(10月18日付)
 ・日ソ共同宣言による国交回復40周年について
 ・ 国連安保理非常任理事国選挙について
 ・北朝鮮のミサイル実験問題
 ・レベジ書記解任について
 ・アフガン情勢関連
 ・ 竹島問題について
 ・東チモール問題関連
 ・NECスパコン問題

・報道官会見記録(10月15日付)
 ・東ティモール問題の関連
 ・ イラク情勢について
 ・中国の人権運動について
 ・北方領土問題の関連

・報道官会見記録(10月11日付)
 ・「アジア原子力安全東京会議」の開催について
 ・ 北朝鮮のミサイル配備について
 ・ブルンジ情勢について
 ・ロシアの国境政策の原則について
 ・アフガン情勢について
 ・尖閣諸島問題について

・報道官会見記録(10月8日付)
 ・ ニカラグア大統領等選挙への選挙監視要員の派遣について
 ・ ミャンマー情勢について
 ・朝鮮半島情勢について
 ・尖閣諸島問題について
 ・アフガンへの政務官派遣について

・報道官会見記録(10月4日付)
 ・インドネシアの「国民車」構想について
 ・欧州連合の対KEDO交渉マンデート決定について
 ・尖閣諸島問題
 ・ミャンマー情勢の関連
 ・ロシア情勢について




報道官会見要旨(平成8年10月29日(金) 17:00~ 於 会見室)

・ エジプトに国際緊急援助隊

(報道官) 今朝、池田外務大臣が記者会見で検討していると話したエジプトのビル崩壊事故に対する国際緊急援助隊の派遣について説明する。
 わが国政府は、10月27日にエジプトのカイロ郊外で起こったビル崩壊事故の被災者救助のため、外務省、警察庁、消防庁、海上保安庁関係者等24名からなる国際緊急援助隊を派遣することとした。この業務の内容は、ビル崩壊現場においてがれきの下に人がいるかどうかを探知して救助するということであり、単独で救助活動するだけでなく、エジプト側の救助隊とも協力して人命救助に当たることになる。主な携行機材としては、検索のための資機材、破壊救助のための資機材等だが、検索資機材については、見えない所で人の鼓動を周波数で読み取る電磁波探査装置、また声の出せない人などを覗き込んで探すファイバースコープ、人のかすかな声などを探知する音響探知機を携行することになっている。
 なお、これまで過去4回、救助チームを国際緊急援助隊として海外に派遣した実績がある。最近では93年12月中旬に起こったマレーシアにおけるビル倒壊事故がある。この度の緊援助隊は10月30日に日本を離れ、31日にカイロで関係者と打ち合わせをした後、直ちに緊急援助活動に入り、11月4日に緊急活動を一応終え、エジプト政府などに報告した上で、11月5日にカイロ発という予定をもっている。なお、この事故が発生したのは先程説明したとおり10月27日だが、エジプト政府より緊急援助隊を正式に派遣してほしいとわが方に要請があったのは、日本時間で今早の早くのことである。われわれが得ている情報によると、スイス及びフランスからも緊急援助の供与等について提案が行われているようだが、現時点においてエジプト側がスイス及びフランスからの救助隊の受け入れを決めたかどうかについては確認がとれていない。

(問) エジプトから要請があったのは今朝の早くということだが、わが方から促すというか、その前に照会等はしているわけか。

(報道官) こういう情報が入った後、直ちに事情を調べるとともに、緊急援助隊を派遣する用意がある旨伝えている。とりあえずエジプト側は現地でできることをやっていくという方針だったようだが、最終的にわが国の緊急援助隊を受け入れるということを決めたものである。

(問) 直ちにというと、27日の事故発生直後と理解してよいか。

(報道官) 具体的に何時に行ったかは分からないが、事故が起きたのが27日の夜なので、わが方がアプローチしたのは恐らく時間的には翌朝だと思う。

(問) 4省庁の所属についてだが、警察庁、消防庁は移動部隊を置いていないのにどうしてか。

(報道官) 警察庁については、警察庁国際第1課の人が警察のチームの中の責任者となり、その下に警視庁の機動部隊の人々が主として入っている。消防については、自治省消防庁の人が責任者となり、東京消防庁、大阪市の消防局、札幌市の消防局及び松戸市の消防局から担当の方が参加する。なお、起きた事故自身は陸上だが、海上保安庁も国際緊急援助隊救助チームということで日頃から訓練をしているということで、海上保安庁の方からも羽田にいるレスキュー隊員、横浜の海上保安部にいる専門官の人たちが参加することになっている。

(問) 救助隊の輸送はどこの飛行機が行うのか。

(報道官) 商業機でロンドン経由でカイロに行く。

(問) 生き埋めがかなりあるようだが、できるだけ速やかに派遣することになった、ということか。

(報道官) われわれとしては、何分にも派遣する用意があるといっても、先方がそれを受け入れるかどうかが一つのポイントであり、今朝受け入れを確認し、日頃から訓練をしているこうした方々に声をかけ、必要な機材を集め、できるだけ早い段階で日本を離れるということで、われわれとしては限られた時間の中で最短の時間で派遣することができたと考えている。

(問) 27日の事故で生き埋めがあるのに、要請がきてから24時間たって態度を決めたのは早急に対応できたといえるのか。

(報道官) われわれとしては今ある既存のスキームの中で、早急に対応したということだ。

(問) 要するに今日は向こうに行く飛行機はなかったということか。

(報道官) 機材の問題、いろんな所にいる人が集まるということもある。 これはエジプト側ともいろいろ話しつつやるわけで、向こう側の受け入れも確認 しなければならず、そういうことで最低限のことが必要だったということである。

(問) 出るのが遅すぎて、着いた頃に絶望では困るのではないか。

(報道官) そのようにならないことを祈っている。ただ、これは別に比較する意味ではないが、エジプトに距離的には非常に近くにあるスイス及びフランスからもオファーが出ていながら、まだ今の段階ではエジプトは受け入れを確認していないようである。従って、エジプトとしては自らの手で救助活動を行うと同時に、補完するものとしてとりあえず日本からの救助隊の受け入れを決意したものと思う。

(問) よく分からないのだが、近くの国から受け入れず、日本からというのはどんな理由だろうか。

(報道官) なぜスイス及びフランスからの緊急援助のオファーに対して今の段階で受けていない理由は分からない。いろいろこの災害のことを考えての、とりあえずのエジプト側の判断だと考えている。日本としては、他国のことは別としても、こうしたことで出来るだけ早く現地に行き、出来る限りの救助活動をしてきたいと考えている。

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・ アフリカの難民問題

(問) ブルンディ、ルワンダのあたりで難民がまた大量に流出し、虐殺等も行われているようだ。この間、堀内ケニア大使がブルンディに行き、この地域の安定のため日本の態度を説明したが、この新しい事態を受けてどう対処していくか伺いたい。

(報道官) まず情勢が複雑なので、現地の事情をごくかいつまんで説明させて頂く。周知のようにルワンダ及びブルンディにおいては、人口の15%という少数に属するツチ族が政権を握っている。そうしたこともあり、人口の85%を占めるフツ族の方がザイールに難民として出ていって、難民キャンプにいるという一つの事実がある。それに対して、これとは別に16世紀から18世紀ごろ、今のルワンダとかブルンディ地域からザイールの方に移住していったツチ族系の住民(これはバニャムレンゲという)が一方におり、その住民とザイール正規軍との間の対立が今生じているという事態がある。ザイール政府の方としては、ルワンダがバニャムレンゲを使ってフツの難民を圧迫しているといった疑いをもっているようである。これに対し、ルワンダ政府はこれを否定している。こうした状況の中で、フツ系の難民がキャンプを追われ、流浪化しており、人道的見地から憂慮すべき事態が生じている。また、ザイールの東部、ルワンダ、ブルンディといった地域を含む大湖地域全体の不安定化に最近の事態がつながることを関係国が懸念している。こうした事態を踏まえて、咋28日、中近東アフリカ局アフリカ第一課長が在京ルワンダ大使及び在京ザイール臨時代理大使を招致して申し入れをしている。その内容は、まず情勢の悪化を憂慮していること、難民の流出に伴う人道的な問題を懸念していること、戦闘の激化に伴う大湖地域の不安定化を懸念していることを伝えた。同時に、関係当事者の自重と戦闘沈静化に向けての節度ある行動、難民の安全の確保を呼びかけた。これに対して、在京ルワンダ大使及び在京ザイール臨時代理大使はこの申し入れを本国に伝える旨約束している。こうしたことが最近のザイール東部地域における情勢とそれに対して日本がとった措置である。

(問) これは申し入れのみか。例えば何らかの会議などイニシアチブをとって積極的にやることはないか。

(報道官) ザイールの状況については関係国またUNHCRといろいろなところが懸念を表明している。今はともかく事態が生じたばかりだが、わが方としては、そうした関係国等とも意見を交換しつつ、適切な措置をとっていく考えである。因みに、ザイールにおいては、これまで3人ほど日本人のNGOの関係者が滞在していたが、その3人の方々はザイールを離れ、ナイロビに避難しているということである。

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・ 中国の国産空母問題

(問) 報道によると、中国が国産空母を持つ計画があるということを香港の新聞だったかが伝えていた。また、国産空母ではなく、フランスからクレマンソーを輸入するのではないか、フランスが無償供与するのではないかという噂が流れているといった報道もあるが、それについて外務省は何らかの情報を持っているか。

(報道官) これについては関係各国等から情報収集をしているが、今のところ報道されたような事実は外務省としては確認できていない。

(問) もし空母導入が東アジアで現実のものとすると、かなりこの地域の軍事態勢、パワーバランスに影響を与えると思うがどうか。

(報道官) これはまだ確認されたことでもないので、仮定の議論にお答えするのもなにかと思う。今日、柳井外務審議官と唐家せん次官との間で協議が行われているが、果してこのような問題について意見交換されたかどうかは分からない。協議の規模については別途、後刻ブリーフィングさせて頂くことになっているので、とりあえず日中の間でどのような意見交換が行われたかについては、それを待って頂ければ有り難い。

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報道官会見要旨(平成8年10月25日(金) 17:00~ 於 会見室)

・ 在日米軍オリエンテーションプログラム

(報道官)沖縄での少女暴行事件を契機として、米軍の施設・区域の存在を巡る問題について注目が集まってきている。そのために日米両国政府とも種々の措置を実施してきた。他方、在日米軍、特に若い軍人は、折角日本に暮らしていながら日本の歴史、政治、経済などを学ぶ機会が少なく、結果として日本に疎い状況にある。このような事情を背景として、外務省は在日米軍の士官クラスを招きわが国の安全保障、内政及び文化につき専門家による講義を行うとともに、産業界の先端技術、史跡等の視察の機会を与え、わが国全般についての理解を促進するための企画を昨年より開催してきており、この度、第2回目を開催することになった。参加者は尉官級計25名で、在日米軍司令部が全29の在日米軍施設・区域を対象として選考したものである。このプログラムは、10月28日より11月1日まで行われる。
 これとは別に、民間の女性の有志がボランティア活動として、沖縄の海兵隊員を東京に招待し日本事情に接してもらうという企画を進めていると外務省は承知している。偶然のことだが、これは今説明した士官を対象とする在日米軍オリエンテーションプログラムをいわば補完するものであり、外務省としてはこのボランティア活動を歓迎する。この企画に携わっている方から聞いた企画の概要は次の通りである。
 企画の趣旨は、日米安保体制の最前線で使命感を持って任務を遂行している海兵隊隊員に対し、感謝の意を表明するというもの。また、折角沖縄に滞在していながら日本本土に行く機会を持たず、基地周辺住民からともすれば白い目で見られがちな海兵隊の一般隊員に対し、東京及び東京近郊を見る機会を与えようとするものである。この企画は今後毎年実施の予定であり、この企画が海兵隊隊員の励みになり、日本及び日本人をより正しく理解してもらえるようになることを期待する。
 これを企画した主催者は、民間の女性の有志の方々であり、これらの方々が中核となってこの企画の趣旨に賛成する人たちから募金を募り、プログラムを実施するものである。招待の対象は、在沖縄海兵隊に属する約40名の兵士である。招待時期としては12月上旬の予定で準備を進めていると聞いている。

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・ ナミビア大統領来日

(報道官)先般発表したヌヨマ・ナミビア共和国大統領訪日の意義につき簡単に説明したい。
 第1は、新生ナミビアの国造りへの貢献である。同国は、90年3月、南アの統治下から独立したが、その過程でわが国は国連ナミビア独立支援グループへの財政支援や、制憲議会選挙の国際選挙監視団への参加などを通じて、これに積極的に貢献してきた。独立後、ナミビアはアフリカで最も民主的といわれる憲法の下、よき統治を実践してきている。こうした国造りの努力に対し、支援姿勢を表明する。
 第2は、ヌヨマ大統領との協力関係の確立である。ヌヨマ大統領は95年には「ハンガー・プロジェクト」のアフリカ賞を受賞するなど、国際的に高く評価されている政治家である。わが国は98年を目途に、第2回アフリカ開発会議の東京開催を表明しているが、同大統領との間で緊密な協力関係を発展させることを考えている。
 第3に、ナミビアを含む南部アフリカ諸国との協力関係の推進である。他のアフリカの地域とは異なり、南部アフリカ諸国はアフリカ大陸の中で最も肯定的な動きが見られる地域である。今年の4月に池田大臣が南アを公式訪問した際、南部アフリカ開発共同体諸国閣僚と有意義な意見交換を行った経緯がある。わが国としては今般、同大統領を日本にお迎えし、引き続き南部アフリカ諸国との協力関係の推進について、いろいろと考えていきたい。

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・ APEC(査証)

(問) APECの査証に対する日本政府としての立場如何。

(報道官) APECメンバー間の関係者移動促進は今後ともAPEC各メンバーが努力していくべき課題である。わが国も昨年の大阪の会合で、当初の措置として数次査証発給基準を大幅に緩和することを述べ、今年の1月1日から実施に移している。
 今後のAPECの人的移動については、今のところ2つのアイデアがあるようである。1つは、豪州が推進している、APECビジネストラベルカード制度の導入である。そもそも査証は受け入れ国が発給するものだが、このAPECビジネストラベルカードは、派遣国が発給するというもので、査証発給ということと哲学上の違い、制度上の大きな違いがある。即ちこの考え方によると、APECの1つのメンバーが発給したトラベルカードが、他のメンバーでも有効として使われることになる。わが国としては、APEC地域の多様性を考慮すると、こうしたことの導入は時期尚早と考えており、査証免除措置や数次査証発給緩和措置を含む現行の査証制度の枠内において、ビジネス関係者の移動の促進を図っていきたいと考えている。
 また、最近発表された、APECビジネス諮問委員会の報告書の中で、APECビジネスビザの導入ということが提案されている。これは、1つのAPECのメンバーが発給したAPECビジネスビザを他のAPECメンバーも認めるということで、例えば、日本があるAPECメンバーから来る人に対してビザを出すと、そのビザで全てのAPECメンバーへ入国することができるというもので、これについてもAPEC地域の多様性を考えると、わが国のみならず他のメンバーについても、なかなか実施していくのは困難ではないかという感じがする。いずれにせよ、目的はAPECメンバー間のビジネス関係者の移動促進であり、そうした面について今後どのように現実的な措置でこれを促進していくかについて、意見交換が行われていくものと考えている。

(問) 今のところ日本政府はこの両案とも受け入れられないということか。

(報道官) 今のところ、わが国の査証制度とかなり違うものであり、わが国としては既にAPECメンバーに対しては、8カ国について査証免除措置をとっているし、先程説明したように、今年の1月1日からAPEC地域のビジネス関係者に対しては、数次査証発給基準を大幅に緩和するなどしている。そうした既存の制度の下での移動の促進に努めて行きたいと思う。

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・ ミャンマー情勢

(問) ミャンマーで、アウン・サン・スー・チー女史の側近が拘束されたとの情報があったが、それについて外務省がつかんでいる情報如何。またこの事態をどう見るか。ミャンマー政府に何らかの意向を伝えるのか。

(報道官) チー・マウンNLD副議長が当局に連行されたということで、わが国は大使館を通じてSLORC側に説明を求めた。それに対して先方は、アウン・サン・スー・チー女史とは関係なく、先般起こった学生の騒ぎとの関係でチー・マウン副議長から事情聴取をするため連行はしているが、NLDの政党活動禁止との関連はない、との説明を受けている。わが方としては、そういうことであるならば、事情聴取が終わった後、できるだけ早くチー・マウン副議長が自由の身になることを期待する旨申し入れている。
 なお今、ミャンマーにおける情勢はなかなか難しいところがある。われわれとしては、SLORC側とNLD側が対立していくことになった場合有り得る措置として4段階の理論的な可能性を考えている。第1段階が道路の封鎖、第2段階がNLDの政党活動の一定期間の禁止、第3段階がNLDの非合法化、第4段階がアウン・サン・スー・チーさんその他NLD幹部の拘束である。われわれとしては、一応現段階では、第1段階の道路封鎖という状況に推移していると考えている。他方、事態はどうも流動化しているようで、経済状態もあまりよくないようである。こうした中で、アウン・サン・スー・チー女史自身、慎重な対応ぶりをされているように見受けられる。いずれにせよ、先行きが不透明なこともあり、当面われわれとしては当事者間の動きを見守っていくことが重要ではないかと考える。

(問) 4つの段階に応じて日本政府としてはある程度対処方針を考えているのか。

(報道官) 基本的には以前から説明しているように、わが国はSLORC側、NLD側とのパイプがあり、いろいろ意思の疎通を図っている。そういった中で、わが国は民主化の流れの逆行は見逃すことができず、政党活動の自由は認められるべきであるという立場である。そうしたことから、ミャンマー政府に対しては、拘束された者を釈放し、また自制した対応をとるよう求めてきている。今後ともこのような対応を続けていく所存である。

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報道官会見要旨(平成8年10月22日(金) 17:00~ 於 会見室)

・ 安保理非常任理事国選挙当選

(問) 本日午後、日本とインドの外相間で電話会談が行われ、「国連安保理の非常任理事国選挙はフェアに行われ、二国間関係はみじんも影響を受けなかったことを確認した」とし、さらにインドよりは祝意を述べられたということだが、これは、こうした選挙の際には通常行われることなのか、それとも今回非常に激しい選挙だったからやったということなのか。

(報道官) 今までの経緯は必ずしも承知していないが、今回の選挙についてはインドも非同盟諸国の一員として非常によく活動を続けていたということで、われわれとしては、このような結果になって両国の関係が悪くなるとは考えていなかったが、いずれにせよ、今後とも日・インド間の協力関係を進めていこうということで、池田外務大臣から電話会談をして頂いたものである。御指摘のとおり、先方も祝意を表明し、両国の協力関係を進めていこうということで意見が一致したことは喜ばしい。

(問) 先方から、池田大臣の早期訪問を招請され、池田大臣より謝意を表明したということであるが、これは前向きの返事をしたということか、あるいは単にお礼をしたということか。

(報道官) 申し訳ないが、そのニュアンスについて今お答えできる材料を持っていない。

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・ 竹島問題

(問) 先週質問したことの関連だが、現在、竹島でどんな工事が行われ、どういう進捗状況なのか、情報をつかんでいたら教えてほしい。

(報道官) 今報道の根拠となっている事実関係について、在韓国日本大使館を通じて調査中である。まだその調査の結果は出ていない。

(問) かなり工事が進んでいるのか。

(報道官) 調査を始めているが、どの程度工事が進んでいるのかどうかも含めて詳細はまだ分かっていない。

(問) そういうことが進行していることを確認の上検討するということだったが、その検討はどういう状態か。

(報道官) この調査結果の報告を踏まえて対応ぶりを検討していくことになると思う。いずれにせよ、竹島の領有権問題についてのわが国の立場は、この前も説明したように一貫している。他方、この問題に関する日韓両国の立場の相違が両国民の感情的な対立に発展して、両国の友好協力関係を損なうことは適切ではないと考えており、今後とも両国間で冷静に話し合いを積み重ねていくよう努力していく所存である。

(問) 前回の会見の際、竹島についての日本の立場を口ごもっていたようだが、おさらいをしてもらえないか。

(報道官) 竹島に関しては、政府は従前より、これがわが国の領土であるとの立場を繰り返し明らかにしてきており、この立場は一貫したものである。

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・  尖閣諸島問題

(問) 尖閣諸島にヘリコプターを飛ばす動きについて、日本政府に問い合わせがあったり、回答したということはないか。

(報道官) 申請やコンタクトがあったとは承知していない。いずれにせよ、民間団体を通じてわが方は日本と台湾との実務的なよい関係を進めていくことを希望しており、このような問題については自制を求めてきたという経緯はある。

(問) 航空識別圏といった具体的な話をしたわけではないのか。

(報道官) そのような話が先方からきたとは承知していない。

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・ NEC製スーパーコンピューターに関する米のダンピング調査

(問) これも前回の会見でもう少し伺いたかったことだが、NECのスーパーコンピューターの問題について、報道官はアメリカの立場に若干不透明な部分があると言われたが、この不透明な部分について具体的に教えて頂きたい。

(報道官) それでは説明したい。アメリカの反ダンピング調査は、関係会社が米商務省及び国際貿易委員会に対して提訴を行うということがあって初めて商務省が価格調査を、また国際貿易委員会が損害調査を行うこととされている。しかるに全米大気気象センターのスーパーコンピューター調達問題については、アメリカの会社がこの提訴を行う前に、商務省が必ずしも出所のよく分からないデータを用いて、NECによるダンピングを示唆する不透明な見積もりを同センターの母体である全米科学財団に提示したという経緯がある。これは、日本製品導入を阻止するためとも受け取られかねない動きであるので、日本側はこの米側の対応に不透明な点があるということを今まで述べてきた経緯がある。
 なお、最近の日本側の報道によると、ジュネーブで反ダンピング委員会が開かれ、その中でアメリカの国際貿易委員会による日本の関連会社の新聞印刷用輪転機に対するダンピング認定の問題に対して、日本側がWTOでの権利を留保すると述べたという報道があるが、これは事実関係に違いがあるので、この場を借りて説明したい。反ダンピング委員会において、日本側が説明したことは、日本製大型新聞印刷機及びその部品に関するアメリカのダンピング調査の問題について、調査開始時に定められた調査の対象範囲が、最終決定の際には当初調査対象とされていなかった部品に拡大されていることに対して、懸念を表明したということであり、わが方の代表がWTO協定上の権利を留保するということを述べた事実はないので、その点併せて説明しておく。

(問) NECの件だが、現在、政府はNECの問題であって、との発言があったが、確かにNECの導入を巡る行動であるとしても、それは政府としても理解できる行動であるということか。

(報道官) NECの提訴は、国際貿易裁判所の方に出したもので、アメリカ側の会社による提訴の前に、商務省が先程述べたような不透明な手続きをしたということで、NECが国際貿易裁判所に差し止めを求めて提訴した問題である。先程説明したのは、アメリカの会社が商務省及び国際貿易委員会に提訴した問題である。なお、このNECによる国際貿易裁判所に対する提訴については、先般説明したように、これは個別企業としてNECが判断して提訴したものであり、これについては政府としてはコメントをする立場にはない。

(問) 先程の新聞輪転機のダンピングのところで、部品に拡大されていることに不満を述べたということだが、これは多国間委員会で単にテークノートしたのか、あるいは次のことを予期してのものか。

(報道官) これはとりあえず懸念を表明しておいたということである。他の案件のように、例えばWTO上の権利を留保したりはしておらず、懸念を表明したということに今回は止めている。

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・ ノドン1号

(問) 北朝鮮のノドン1号について、昨日の官邸などの会見によれば、今すぐにも実験があるような雰囲気はないということだが、外務省としては何か新たな実験が近々のものでないというような根拠をつかんでいるか。

(報道官) 本件については、昨日、事務次官が記者会見で申し上げた以上の新しい情報を持っているわけではない。私どもとして申し上げることは、仮に北朝鮮がミサイル発射実験を行うようなことがあるとすれば、北東アジア情勢に深刻な影響を与えることが懸念されるということであり、わが国としては引き続き北朝鮮が地域の平和と安定を損なうような行動をとることのないよう希望する。

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・ アフガニスタン情勢

(問) 今日新たにアフガニスタンについて渡航情報、渡航をやめてくれと改めて自粛を求める情報が出たようだが、これは何か向こうでの情勢急変とかいうことを受けてのものか。

(報道官) アフガニスタン情勢については、この前の機会にも話したことがあったと思うが、3派の間の戦闘が続いており、カブールを巡ってまだ武力衝突が続いている。そのような状態が続いているということで、改めてそのような措置を取ったものである。なお、3派の間の話し合いの可能性等についての新たな動きはわれわれとしては把握していない。

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報道官会見要旨(平成8年10月18日(金) 17:00~ 於 会見室)

・ 日ソ共同宣言による国交回復40周年について

(報道官) 明日交換される総理大臣と大統領のメッセージの内容についての日本政府の評価について、以下説明したい。
1
日露両国首脳は、1956年10月19日の日ソ共同宣言の署名の日から40年が経過した機会を捉え、両国間の国交回復40周年を記念してメッセージを交換したところ、双方のメッセージは、新生ロシアの時代になって種々の分野において両国関係が着実に進展し、肯定的な発展がみられているとの認識において概ね一致している。特に、93年に署名された東京宣言が、両国関係史上画期的な功績であるとの点では、双方の認識が一致している。
2
北方領土問題を含む今後の日露関係については、エリツィン大統領のメッセージは、困難な諸問題については、相互に受け入れ可能な解決に向け現実主義の立場に立って前進し、もって質的に異なる新たな二国間関係の段階に早期に至るよう努力したいとの意向を表明しているものと受け止めている。わが方としては、ロシア側が、東京宣言に規定されているとおり、領土問題の早期解決のための交渉を進展させるよう引き続きわが方とともに努力することを期待している。
3
政府としては、橋本総理のメッセージにその決意が表明されているとおり、平和条約の締結による両国関係の完全な正常化という東京宣言の課題の実現に向け、また、各般の分野における日露間の協力と関係強化のために一層努力していく所存である。

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・ 国連安保理非常任理事国選挙について

(問) 来週、国連安保理非常任理事国の選挙があるが、日本はニューヨークで活発な選挙運動をしているようだが、今回の非常任理事国選挙は、日本としてどんな意味をもつと考えるか。

(報道官) 安保理改革の問題は、まだまだ時間がかかる問題である。従って、国際の平和と安全のために日本は貢献を行いたいと考えて今回立候補したものである。今度の非常任理事国選挙において、もしも日本が当選した場合には、97年1月から98年12月まで非常任理事国としての役割を果たすことになる。この2年間は、21世紀の国際社会の平和と安全の枠組みを作っていく上で非常に重要であり、わが国としても貢献できると確信している。なお、既に中東和平の問題とかアフガニスタンの問題とか、安全保障理事会において、いろいろと活発な議論が行われていることもあり、もしも非常任理事国として当選するならば、来年1月には今までの国連のプラクティスによって、日本は直ちに安保理の議長になることでもあり、積極的な貢献を果たしていきたいと考えている。

(問) この選挙で仮にインドに負けたら、これまでの日本の外交が評価されなかったということにならないか。

(報道官) 今一生懸命、当選するよう努力しているところであり、われわれとしては負けることを予想するわけにはいかない。既に相当数の国より、わが国の立候補に対する支持が示されている。ただ、インドは非同盟諸国などに影響力を有する強力な相手なので、予断は許さない。最後まで各国からの支持の取り付け、拡大に努めていく所存である。

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・  北朝鮮のミサイル実験問題

(問) 北朝鮮のミサイル実験問題について、その後何か公表できること、追加することはあるか。

(報道官) これまで説明してきたことに加えて、何か新しいことを言える段階には入っていない。いずれにせよ、ノドン1号の開発状況については、まだ明確なことを言える段階にはないというのがわれわれの判断である。

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・ レベジ書記解任について

(問) ロシアのレベジ書記の解任について、政府の見方、その後の日露に与える影響はどうか。

(報道官) レベジ氏は政権に参画してからの期間は短く、また対日政策に関与し始めているという形跡は必ずしもなかったことから、同氏が今まで書記として働いていた間に、日露関係に影響力を行使するほどに至っているとは思えない。従って、レベジ氏の書記解任が日露関係に影響を及ぼすものとは考えていない。

(問) 解任によってロシアの今後の政治の安定、社会について、どのように予想しているか。

(報道官) とりあえずはチェチェンの問題だと思うが、これまで日本政府としては、一貫してチェチェンを巡る紛争の一刻も早い終結と、平和と秩序の回復を強く希望してきた。従って、今回のレベジ氏の書記解任が、チェチェン問題の最終的な解決の妨げとならないことを期待している。なお、その他のロシア内政全般に与える影響については、われわれとして引き続き注視していきたい。

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・ アフガン情勢の関連

(問) アフガンの和平東京会議について当事者から何らかの反応はきているか。ある一派は受け入れられないとも言っているようだが。

(報道官) 最初に、この度の各派会合開催の提案に当たっては、日本はこれまでの各派との接触を通じて、各派会合の場所を提供する用意がある旨伝えてきた。わが国の提案は、中立的な会合の場所を提供することができるというところであり、会合の中身に介入することは考えていない。報道では、タリバーン派の反応が若干ネガティブなように受け取れるが、この報道されたタリバーン側の反応を政府としてはまだ確認していない。いずれにせよ、今ご説明したように、あくまでもわれわれは「中立的な場所を提供する用意があるということで、会議の内容に介入するということではない」との立場を各派にも繰り返し伝えていきたいと思う。他の国の反応となると、小和田大使が発言した直後に、パキスタン及びアフガニスタンの国連大使が小和田大使の発言を高く評価する旨口頭で述べている。また、バーンズ米国務省報道官は、この提案は日本が世界で積極的役割を果たしていることの現れである旨の評価を行っている。

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・ 竹島問題について

(問) 報道によると、韓国政府が竹島に機械を入れて本格的取り組みをするという報道がある中で、実際に既成事実が作られるまで日本政府としては何か対応をとらないのか。

(報道官) 今ご質問があったような事態が進んでいるということは承知している。わが方としては、これまでの一貫したわが国の立場を踏まえて、こうしたことにどのように対応していくか、しかるべく検討していくことになろう。

(問) 検討して、それからやるということか。

(報道官) そうである。

(問) 一貫した立場をおさらいしてもらえないか。

(報道官) いろいろ説明することは可能だが、これに基づいたいろいろの反応等もあるので、この場では皆さんがよくご存じの一貫した立場ということに止めさせて頂ければと思う。

(問) 日本固有の領土であることを今ここで言うのは適当でないということか。

(報道官) 竹島問題についての立場は、今まで何年も、また今年になっても明らかにしている通りである。その点をもう一度ここで確認させて頂くということにしたいと思う。

(問) 竹島は歴史的にも国際法的にもわが国固有の領土であると常々政府は言っていたが、その態度は変わっていないということでよいのか。

(報道官) わが国の立場は決して変わっていない。

(問) 検討すると言われたが、既成事実化されているのであれば、なぜ早急に遺憾の意なり、抗議なりの意を先方に伝えることが必要と考えないか。

(報道官) 自分(報道官)は既成事実化ということを直接肯定したという意味でなくて、あそこ(竹島)にいろいろな動きがあるということは皆さんも報道されている通りなので、そうした動きについては承知しているということである。わが国の立場は一貫したものだが、現実にいろいろなことを勘案して、日本は韓国との友好的な関係を維持、発展させていかなければならない状況にある。従って、こうしたことについて、正にいろいろな面を今後とも総合的に勘案した上で、どうしていくか検討していくことになると思う次第である。

(問) 民間の右翼が灯台を建てるというような話ではなく、向こうは政府がやろうとしており、今までの政府対政府の話し合いから逸脱しているのではないか。

(報道官) 例えば北方領土問題をとっても、わが国固有の領土ではあるが、ソ連及びロシアが第2次世界大戦終了後、いまだに占拠しているという事実が一方にある。わが国が基本的な立場に立って何とか解決していきたいということで努力はしているわけである。そういった(向こうの)政府による直接の行為に対しても、われわれとして粘り強く話していくことに専念してきている。皆さんのお気持ちはよく分かるが、クリアカットな対応はなかなかできないところもある。

(問) そのクリアカットな対応ができないところもあるというのはなぜか。

(報道官) やはり現実に、例えば、いくらわれわれが北方領土が固有の領土であると言ったからといって、現実に向こう側が北方領土を占拠しているということは事実である。これを何とか話し合いによって解決していかなければいけない訳であるが、この占拠の事実ということをなかなか変えることもできない。そうした中で、例えば現実に漁船がだ捕されるという事件が起った場合には、なんとかこれについては日本の基本的な立場を守ると同時に、やはり船員の方々の早期釈放も求めていかなければならないということもあり、現実においては本当にいろんな面を考慮しながらやっていかなければならず、苦しいところがある。

(問) 韓国との友好関係を壊したくないから今ここで言いにくいというのは分かる。しかしながら、北方領土は既に人も住んでいるという背景があったが、竹島は住んでおらず、また今まであったものを直すのでもなく、わざわざ政府が新しい物を作ろうとしている訳で、北方領土と比べるのはおかしいのではないか。

(報道官) 竹島のことについては、今言われたことも参考にさせて頂く。

(問) 竹島の問題は、わが国固有の領土であるがクリアカットでないという今の発言を聞いていて思うのだが、どうしてわが国固有の領土であるということさえも言うのをためらわれるのか。

(報道官) わが国の竹島に対する態度は、これは明らかであり、一貫したものである。ただ、現実に日本と韓国との間の友好関係を考えなければいけないということから、この問題をどのように取り扱っていくかについては、いろんな面を考慮しなければいけないということである。

(問) でも日本固有の領土であれば、いわば日本の立場からいえば韓国が不法占拠しているわけである。そこで友好関係を考え、慎重に云々と言っていて本当に話し合いの機会が得られるのか。日本の立場をはっきりと申し述べることも必要ではないか。

(報道官) 領土問題というのは本当に難しい問題だと思う。だからこそ第2次世界大戦後、50年以上を経た後でもまだ尾を引いている。この点については日本の立場を明らかにすればそれが直ちに問題の解決につながるということでも必ずしもなく、われわれは当該国との間の関係を総合的、包括的に考えて、なんとかいい形で解決を図っていきたいと考えている。

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・  東ティモール問題の関連

(問) 東ティモールの問題についての関係者の対応については、国際的に一定の評価を得たことについて、日本の東チモールへの対応に何かの変化があるのか、また国際的に評価を得た関係者の対応に対する日本政府の評価を聞きたい。

(報道官) これは、この前の記者会見の時に説明させて頂いたが、東ティモールについては国連事務総長の仲介で、インドネシアとポルトガル側の話し合いが始まっている。われわれとしては、その話し合いを支持するものであり、この話し合いによってこの問題が解決していくことを望む次第である。ただ一方において、インドネシアはこの問題を内政問題と捉えており、わが国として東ティモールの問題をどういうふうに捉えるかについては、こうしたインドネシアの立場もあり、この点については判断することはできない、というのがわれわれの基本的な立場である。

(問) ノーベル平和賞についてはどうか。

(報道官) ノーベル平和賞そのものは日本政府として高く評価している。ただ、ノーベル平和賞を受賞される方が、やはり当該国の多くの人々によって祝賀、祝意を表明される環境が整っていって欲しいというのが、われわれの基本的な立場である。

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・   NECのスパコン問題

(問) NECがスーパーコンピューターの調達問題について、米政府を裁判に訴えて抗議の行動をとっているが、これを日本政府としてはどう見ているか。

(報道官) これはNECが自らの決断に基づいてされたものであり、政府としてはそれを見守るということである。いずれにせよ、今までアメリカ政府がこの問題に対して取ってきた手続き面において、若干透明性を欠けているところがあるのではないか、そういった点できちんとした手続きをとってほしいというのが日本政府の基本的な立場である。

(問) 手続きに若干透明性に欠けているというのは、具体的にどこを言うのか。

(報道官) 申し訳ないが今手元に具体的に申しあげる資料がない。今まで何回かこうした機会に日本の基本的な立場ということで説明させて頂いたことがあると思うが、別途、担当課から個別に説明させて頂く。

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報道官会見要旨(平成8年10月15日(火) 17:00~ 於 会見室)

・ 東ティモール問題の関連

(問) 東ティモールのベロ司教とホルタ氏の2人の活動家がノーベル平和賞を受賞するが、これについて政府の見解はどうか。

(報道官) 日本はノーベル平和賞を高く評価している。同時に、ノーベル平和賞授賞者が関係者に広く祝福されるような環境が整うことが望ましいと考えている。わが国としては、東ティモールの帰属問題について国連事務総長の仲介によって、インドネシアとポルトガルとの間で進められている話し合いを支持しており、その推移を今後とも注目していきたいと考えている。

(問) 現状では祝福される環境が整っていないというわけか。

(報道官) インドネシアはこの問題を国内問題としてとらえているが、その後、国連事務総長の仲介の下でポルトガルとの間で話を進めるというふうになってきている。先般7月のASEAN拡大外相会議の際の日本とインドネシアの外務大臣会談においても、東ティモール問題、特にそこにおける人権状況については、我が方として注視している旨先方に伝達してきている。このように、この問題は基本的に内政問題であるが、国連事務総長の仲介によって話し合いが進んでいるということである。われわれとしては、この帰属問題について判断を下す立場にはないが、この話し合いを支持しており、その推移を今後とも注目していきたい。

(問) 人権の状況を注視するというが、人権状況をどう判断しているのか。

(報道官) 基本的に人権というものは普遍的な価値であり、この人権は擁護されるべきであるという観点から、東ティモールの状態を注目して見ている。このことについて、わが方の立場をこれまで累次にわたってインドネシア側に伝えてきているところである。

(問) インドネシアの人権、それから政治的自由からいうと、インドネシア政府の野党に対する姿勢に西側諸国から批判の声が強いが、日本政府としてはどういう姿勢で捉えているか。

(報道官) メガワティさんの事件について、これは日本政府としては基本的に外国の国内事項にかかわるものだから、内政干渉にならないよう注意していかなければならない。同時に、先程も申し上げたように、やはり基本的人権が普遍的な価値として擁護されていかなければならないということで、ああした問題について、われわれとすれば事あるごとにそういう基本的な点について先方に立場を伝えているというところである。

(問) 日本政府としては、あの問題についても注視しているということか。

(報道官) 個々具体的な問題について、一つ一つコメントするのが正しいかどうか分からないが、いずれにせよ全体として微妙な国内問題ではあるが、やはり基本的人権が擁護されることが必要であるという立場そのものであり、それは伝えている次第である。

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・ イラク情勢について

(問) イラク北部のクルド人自治区での戦闘がまた激しくなってきているようだが、現在までに外務省がつかんでいる状況はどうか。

(報道官) 諸情報によると、北東部山岳地帯の多くはクルド愛国同盟(PUK) が再び支配するようになった模様である。なお引き続き政府としては情報を収集していく考えである。いずれにせよ今度の事態がクルド・グループ間の武力の衝突の拡大をもたらすことを懸念しており、当事者が武力による抗争を自制して、話し合いを通じての問題の平和的解決を図るよう、そのために努力するよう期待している。

(問) 現在のところ、イラク軍の介入の情報はないか。

(報道官) 今のところイラク自体は同地域への武力介入について自制しているようである。もしもイラク政府が武力介入をするとなると、事態を一層悪化させることになると考えており、日本政府としてはイラク政府の自制を強く要請するものである。

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・   中国の人権運動について

(問) 中国の民主運動家の王希哲氏が香港からアメリカへ脱出するのではとの情報があったが、外務省として何かつかんでいるか。

(報道官) その点についての情報を手元に持っていない。

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・ 北方領土問題の関連

(問) 昨日、次官への質問でまだ情報をつかんでいないとのことだったが、先般、ロシア警備艇によって日本漁船が銃撃され負傷者が出た際、その警備艇員にロシアが勲章を授与するという報道があったが、その後、実際に勲章は授与されたのか。

(報道官) その問題に答える前に、第31若竹丸の状況についてお話する。本日の午後、在ウラジオストクのわが方総領事館よりロシア側に再度、照会したところ、ロシア側は既に日本側に通報した状況に変わりはない、ただし、この第31若竹丸に関する捜査書類はまだ検察官には送致されていない、という回答を受けている。政府としては引き続きロシア側に対し、同船及び同船乗組員の早期釈放及び関連情報の提供方を強く求めていく所存である。  御質問の銃撃事件だが、この点については9月9日に、わが方在ロシア大使館からロシア外務省に対して、もしもこのような表彰が行われるとするならば、人道的見地及び北方領土問題に関するわが国の基本的立場から見過ごすことはできないということで、極めて遺憾である旨申し入れた。これに対しロシア側は9月18日、この問題についてはロシア国境警備庁の内部の問題であって、外部に対して公表することはできず、回答できないと、わが方の大使館に通報してきている。

(問) 回答できないということで、実際に表彰されたかどうかは確認できないということか。

(報道官) そうである。

(問) 先程の若竹丸のことだが、検察官に書類が送致されていないということは、釈放の可能性も出てきていることなのか。

(報道官) いや、ロシア側の説明によると、この乗組員の今後の取扱いについて、具体的なことは言える状況にない、今まで日本側に説明している通り、船長が古釜布に移送され、船長以外の乗組員4人が泊湾内に停泊中の若竹丸船内にいること、健康状態は問題ないとしていること以上に何も知らせる情報はないとしている。

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報道官会見記録(平成8年10月11日(金)/17:00~/於:会見室)

・ 「アジア原子力安全東京会議」の開催について

(報道官) 「アジア原子力安全東京会議」が11月5日に外務省で開催される。議題は、原子力発電の安全と今後の国際協力となっており、その中で3つのことについて意見交換されることになっている。
 第1が原子力発電所の安全確保、放射性廃棄物の安全な管理である。例えば、現在、IAEA(国際原子力機関)の枠内において、専門家の間で廃棄物等管理条約の策定作業が行われているが、その策定作業への積極的参加の呼びかけをすることもその1つである。第2の議題が、原子力損害賠償制度の整備等ということである。今、IAEAで行われているウィーン条約改定作業を加速化させることを訴えるのも1つであり、またアジアにおいては原子力発電所の導入が始まったばかりのところもあるので、関係各国における法整備の必要性を訴えることも議題としてあがるものと思われる。第3は、総括、フォローアップである。
 なお、この会議には正式参加国とオブザーバー参加国及び機関がある。参加を呼びかけるに当たり、われわれが基準として考えたのは、まず正式参加国については、核不拡散条約非締約国を除き、アジアにおいて原子力発電を導入済みか導入する可能性を有する国、あるいはアジアの原子力安全に協力する治験や技術を有する国ということで、そういった国々に正式参加を求めた。
 それ以外は、域内でこうした問題に関心を有する国、また4月の原子力安全モスクワ・サミット参加国、その他関連国際機関に対して、オブザーバーとして参加するよう招待状を出した。その結果、アジアにおいては中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、オーストラリアからの参加を得、オブザーバーとしてわが国以外のG7、ロシア、シンガポール、パキスタン、欧州連合のほか、IAEA、OECD原子力機関から高級事務レベルが代表として出席する予定である。
 なお、北朝鮮、インドに対し、この会議への参加を呼びかけたが現時点では、先方から確たる反応は寄せられていない。しかし、今後、北朝鮮、インドから参加の意図が表明されれば、これを歓迎したい。

(問) シンガポール、パキスタンがオブザーバーになっているのはなぜか。

(報道官) 正式参加国については、アジアにおいて原子力発電を導入済みか導入する可能性を有する国ということ、それにプラスしてアジアの原子力安全に協力する知見・技術を有する国に参加を認めているので、シンガポールはその範疇に入らないのでオブザーバーとして参加してもらうということである。

(問) パキスタンもか。

(報道官) パキスタンのオブザーバー参加については、先程のNPT非締約国を除くという基準からである。よってインドが参加することになった場合、これはオブザーバーとして参加して頂く。他方、北朝鮮については、参加して頂く場合は、正式の参加国として取り扱うことになる。

(問) 北朝鮮への呼びかけは、どんなルートで行ったのか。

(報道官) ルートについては承知していないが、国際機関等を通じてしかるべく先方に伝えている。

(問) インド、北朝鮮からは全く何の反応もないのか。検討するとも言っていないのか。

(報道官) イエスともノーとも、要するにまだ何もない。どちらの方向ともまだはっきりしていない。

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・ 北朝鮮のミサイル配備について

(問) 「ミリタリー・バランス」によると、北朝鮮で射程1000キロのノドン・ミサイルを今年末か来年初めには配備される見込みというが、外務省としてこうした情報をつかんでいるか。

(報道官) 外務省としては、北朝鮮のノドン1号などのミサイル開発状況の詳細は不明であり、現在、明確なことが言える段階にはない。

(問) 日米両方の関心事と思うが、この情報をつかむ努力はしているのか。

(報道官) われわれとして、射程が1000キロメートルともいわれるノドン1号を開発中であるということは理解しており、関係各国とも情報収集、意見交換している。ただ、「ミリタリー・バランス」の記述のように、今年中に1号が開発を完了すると言われているが、それがどのような根拠に基づいて言っているのか、外務省として把握していない。

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・  ブルンジ情勢について

(問) アフリカのブルンジについてだが、堀内在ケニア大使がブヨヤ大統領と会ったと聞くが、どういうことで会ったのか。また、ブルンジに米国がが部隊を派遣するとの報道もあったようだが、それとの関連も含めて聞きたい。

(報道官) ブルンジの件については、まず先般のニューヨークにおける日米首脳会談において、クリントン大統領から、アフリカ危機対応部隊創設についての話が出たわけである。この部隊についての対応については、関係各国と今協議を続けているところであり、まだ政府としてどういうことができるか、どういうことをするかを発表できるまでの段階に至っていない。
 今指摘のブルンジを兼轄している堀内在ケニア大使が最近、ブルンジに行った件だが、これはブヨヤ・ブルンジ新政権首班の要請を踏まえ、10月3日から6日にかけて出張してきたものである。これは、わが国としてのブルンジ問題への取り組みの一環としてブヨヤ新政権首班その他の関係者と会って、わが国の立場を伝えることを目的としたものである。 なお、これによってわが国がブヨヤ政権を承認するという意味ではなく、その点については先方に明確にしている。堀内大使はブルンジ滞在中、広い範囲の関係者と会談し、軍の規律の確保、治安の回復、人権の尊重が必要であること、また全当事者参加の政治的対話の実現が必要であるとの2点を先方に伝え、前向きな対応を求めてきた。
ブヨヤ新政権首班は、この間起こしたクーデターについての背景説明をするとともに、今周辺諸国がブルンジに経済制裁を行っているが、堀内大使に対して、関係諸国に経済制裁の解除を説明してほしいとの要請があった。これに対し、堀内大使から、機会をとらえてそうしたことは伝えるが、しかしながら先程伝えた2点について、積極的、前向きの対応が必要であるということを申し伝えたということである。

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・ ロシアの国境政策の原則について

(問) 今朝の大臣会見でも出たが、エリツィン大統領が示した「国境政策の原則」について全文はまだ入手していないだろうが、外務省として本件への対応如何。

(報道官) 10月10日にモスクワにおいてわが方大使館を通じ、ロシア外務省に対して、かかる文書が作成、発表された背景及び意義について照会した。同時に、日ロ間の文書である東京宣言によって、その存在が確認されている北方領土問題との関係で、今度発表されるというこの文書が何ら意味も有していないということを確認することを求めた。
 それに対してロシア側は、われわれに公式の回答はまだ寄せていない。なお、タラソフ・ロシア報道局長は今度の文書については、東京宣言とは矛盾していない旨を記者会見で述べているようである。なお、先日東京で行われた平和条約作業部会で述べたように、東京宣言に基づいて北方領土問題を解決して平和条約を締結し、日ロ両国間の関係を完全に正常化したいというのがわが国政府の基本政策である。

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・ アフガン情勢について

(問) アフガン情勢だが、カブールは緊迫しているようだ。カブールにいる国連職員に退避勧告が出たようだが、日本の職員はどうするのか。

(報道官) 事態は予断を許さないようである。国連の職員については必要不可欠の人員を除いてカブールから退去している。日本の職員については、出張ベースで必要に応じてアフガニスタンに入っているということである。今後、カブールにいる国連職員の全員引き揚げということになるのか、そのまま必要な要員が留まることができるのか、もう2、3日情勢を見てみないと分からないようである。なお、前にご説明した邦人について、2つの宗教団体のうち、1人がまだカブールに残っているが、安全は確認されている。

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・ 尖閣諸島問題について

(問) 香港でわが方総領事館に抗議グループが抗議書を手渡そうと入り込み、一時座り込んだ事件があったが、これに絡み中国当局が好ましくないと言ったと報道されているが、これは尖閣諸島問題が沈静化する、いいシグナルと受け止めているか。

(報道官) 中国外務省の新聞司長がそのようなことを言われたということは承知しているが、何分にも外交使節であるわが方総領事館に対してあのようなことが行われたということは極めて遺憾であり、このようなことが二度と起こらないよう強く希望するものである。
 なお、この抗議運動そのものについては、わが方は実際に責任をもって対処すべき香港政庁及び英国政府に対して、事件が起きたその日、9日に、極めて遺憾であること、また今後このような事態の再発を防止するよう申し入れた。また、先方からもこのような事態の発生は遺憾であって、今後、総領事館の警備に一層万全を期す旨の反応が示されている。中国外務省の新聞司長の発言によって、こうしたことが起こらないようになるのかどうか、見通しはよく分からないが、いずれにせよ、わが国外交使節に対しこのようなことが二度と起こらないように強く希望するものである。

(問) ガードマンが負傷したと伝えられたが、これはどんなことでケガしたのか。

(報道官) 抗議団の一行が受付ホールに乱入した際、警備員が左手の人指し指及び中指に裂傷を負った。それに加えて、総領事館の館員1名がボタンをひきちぎられ、カスリ傷を受けるという事態が生じたと承知している。

(問) 乱入を阻止しようとして、そういうことが起こったのか。

(報道官) 当初は、抗議文を手渡すということで、香港総領事館に来たので、当方がドアを開けようとしたところ、一行は受付ホールに乱入したということのようである。この過程において、今みたいな残念な事故が起きたようである。

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報道官会見記録(平成8年10月8日(火) 17:00~ 於 会見室)

・ ニカラグア大統領等選挙への選挙監視要員の派遣について

(報道官) 1990年2月にニカラグアでチャモロ大統領が選出されて以来、わが国はニカラグアの安定にとって民生向上と経済回復が重要であるとの観点から、ニカラグアに対して積極的に支援をしてきた。来る10月20日に、チャモロ大統領の任期満了ということで、それに伴い新しく95年に改正された憲法に基づく初めての大統領選挙が実施されることになる。
 先般7月、東京で開かれた第2回日・中米フォーラムで、また8月に橋本総理大臣がコスタリカを訪れて、中米の大統領、首相等と会談した際、わが国としてはこの選挙が公正に実施され、民主的に政権委譲が達成されることがニカラグアの民主化政策にとり極めて重要であるという認識を伝えている。日本は既に6月に選挙監視と投票者登録のために71万ドル強の資金協力をしたが、この度選挙プロセスの監視に当たっている国際監視にも参加するということで、人的貢献をすることになったものである。この度、6名の外務省職員を選挙監視要員として派遣することを決定した。

(問) この方々は、それぞれ投票所及び開票で実際に立ち会いをして監視に当たるのか。

(報道官) そういうことである。既に中米においては、かなりいろいろな国々において民主的な選挙が行われ、わが国も監視要員を派遣してきた経緯がある。因みに、先程申し上げた90年2月のニカラグアにおける大統領選挙では結果としてチャモロ大統領が選出されたが、その際にも政府として選挙監視要員を派遣した経緯がある。

(問) このごろ海外の選挙監視要員にはいろんな地方自治体の職員や民間からも出ているが、今回、外務省だけというのは国の方針か、それとも別に理由があるのか。

(報道官) 先方から日本に、派遣してほしいと申し入れてきた人数が少なかったということ、語学上のこともあるということで、今回は外務省の職員に行ってもらうことにした。因みに、過去においては例えばエルサルバドルの大統領及び国会議員の選挙に際しては、民間の方々も含めて選挙監視要員を送った経緯がある。従って、その都度、事情に応じて政府及び民間の方々と一緒になってやってきている。

(問) OASのこの選挙監視は、おおまかな概要はどの程度のものか。その中に加わるのだろうが。

(報道官) その中に加わるものだが、具体的にどのようなことをやるかは承知していない。

(問) 人数もか。

(報道官) 全体としての人数についても承知していないので後で担当課から連絡させる。因みに、そもそもチャモロ政権ができる前に政権をとっていたオルティガ氏がまた立候補しており、アレマン氏という保守系の候補と今激烈な戦いをしている。結果予想はよく分からない。もちろん、アレマン候補が勝つ可能性もあるが、今のところは決選投票に持ち込まれる可能性があるのではないかといわれている。当初は、アレマン氏の方が随分リードしていたようだが、今の段階になって労働組合だとか農民だとか貧困層を支持基盤としてオルティガ氏が急速に勢力を伸長しているとのことのようである。
(問) チャモロ大統領はもう出ないのか。

(報道官) 今の憲法の下では任期満了後、再選することはできないということで、立候補できないようである。

(問) それでアレマン氏が後継ということか。

(報道官) そうである。ニカラグアの首都のマナグアの市長を90年から95年までやっておられた方である。

(問) 6人の帰国はいつごろになるのか

(報道官) 本省から行くのは1人だけであり、他はニカラグア及び周辺の大使館からの派遣である。具体的にいつまでか出張予定は手元にないので、後で連絡したい。

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・ ミャンマー情勢について

(問) ミャンマー情勢だが、拘束者の全員釈放、解放とかアウン・サン・スー・チーさんの自宅への道路封鎖が解除という報道が流れているが、外務省としても確認しているか。

(報道官) 道路封鎖が解除されたことをわれわれも承知している。

(問) 山口大使が申し入れてから8日、「一両日中に」ということが8日後になったのは許容誤差内か。

(報道官) 確かに今、ミャンマーの国内情勢が相当流動的であることは事実で、今回、道路封鎖が解除されたわけだが、これが事態収拾に向けての一歩であることを期待する。わが国としてはアウン・サン・スー・チーさん自宅前の集会が今週末に再び実施されるのかどうか、とりあえずその点を注視していきたい。

(問) ASEAN諸国の中でも、ASEANの仲間に迎え入れるべきかどうかで異議が出ているようだが、日本政府としても現在のところは、ASEANは別の問題としても、まだ不安をもって見ているのか。

(報道官) ミャンマーにおけるこの状態、要すればSLORCとNLDの直接対話がまだ実施されていない事態に対し、われわれとしては、なんとかして直接対話が実現するように今後とも働きかけていきたい。なお、ミャンマーのASEAN加盟については、わが国は第三国だから、その可能性云々についてコメントする立場にないが、若干日本における報道にもバラツキがあるようなので(説明すれば)、われわれの把握しているところによると、この問題についてはASEANの中でさまざまな意見が存在しているようであり、また今年の11月に開かれる予定のASEAN非公式首脳会議においてミャンマーの来年からのASEAN加盟が決まるものか、そういう方向が出てくるのか否かは確定はしていないものと考えている。

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・ 朝鮮半島情勢について

(問) 金泳三大統領が今日、野党党首を集めて緊急会談を開いたようだが、あの潜水艦事件の時の緊張した状態以上の緊迫感が何か最近増しているようなことがあったのか。

(報道官) 北朝鮮の軍の行動については、特別な動きはわれわれは把握していない。金泳三大統領が軍に対して態勢整備を指示しているが、それに基づいて軍の方が具体的にどのような措置をとるかについても、まだ承知していない。特に大きな動きはないようである。因みに、今度の大統領の発言については、北朝鮮に対して超党派的に協調して対処していくといったことが趣旨であるとわれわれは理解しており、KEDOだとか4者会合についての日米韓の政策については考え方に変わりはない。

(問) 今回、金泳三大統領は北朝鮮側に対しかなり強い姿勢で出ているようである。経済協力の縮小の方針も出しているようだが、そうした潜水艦事件の結果 でとった金泳三大統領の北朝鮮対策は日本政府としても理解できるということか。

(報道官) 潜水艦事件と、先程触れたKEDOとか4者会合に対する対応ぶりとはやはり区別して考えるべきであると思う。この潜水艦の事件については、日本としてもこれは受け容れることはできないものだが、既に協力関係が進んでいるKEDOについては、これまでどおり進めていく考えである。いずれにせよ、北朝鮮の動きはなかなか読みにくいところがあるが、(北朝鮮に対し)引き続き誠意ある対応を求める次第である。

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・ 尖閣諸島問題について

(問) 尖閣諸島問題で香港、台湾の協力要請を外務省はしているが、新たな動きはあるか。

(報道官) 昨日のうちに中国のみならず、台湾については民間ルートを通じ、香港政庁に対してはわが方の総領事館を通じて、昨日の夕方加藤アジア局長より武大偉・在京中国大使館公使に行なったと同様の申し入れをしている。それに対して、台湾側は「関係者に伝達する」という反応であったというふうに聞いている。また、香港政庁側は「日本の立場を承っておく」といった反応であったというふうに承知している。

(問) 香港、台湾とも現地でか。

(報道官) 台湾については民間ルートを通じてで、それぞれ向こう側において行なった。

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・ アフガンへの政務官派遣について

(問) 先日も次官に質問したことだが、国連より求められていた、アフガンへの政務官を派遣する方向だったが、もう出発したと思うけれども、アフガンはなお動乱が続いているようである。現地でどういう仕事をするのか、アフガン情勢と併せて伺いたい。

(報道官) 先般、アフガンの中の一派のタリバーンがカブールを制圧した。その後、タリバーンとラバニ派との間の戦闘は継続しているようだが、勢力範囲については特に大きな変化は見られないようである。また、タリバーンともう一つのドストム派との間では、戦闘は行なわれていない模様である。そういった中で、ホル国連アフガン問題担当特使は既にカブール入りして、タリバーン指導者と会談をしたり、マザリシャリフに赴いてドストム派とも会談している。国連としては、各派が敵対行為の即時停止、各派の間の政治対話の早急な開始を求めている。そうしたことで和平の道筋を見つけるべく努力している。 高橋政務官は、既に現地に着任しており、早速、カブールを視察するなど現地のいろいろな情報収集に努力するとともに、ホル特使を支えて、和平のための努力を開始している。

(問) 確認だが、高橋政務官の他はドイツ、フランスか。

(報道官) ドイツは特使であり、ロシアなど、数名の政務官がいる。その中でも高橋政務官は上級のアドバイザーということで働きを開始している。

(問) (高橋政務官の)任期はいつまでか。

(報道官) 任期はとりあえずは決まっていないものと承知している。

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報道官会見記録(平成8年10月4日(金) 17:00~ 於 会見室)

・ インドネシアの「国民車」構想について

(報道官)インドネシア政府の「国民車」に対する優遇措置に関しては、国際ルールに則った解決をめざして日本とインドネシア両国政府間で協議を重ねてきた。しかしながら、わが国政府が強く要請してきた既成事実化の回避が尊重されず、韓国から無関税で完成車が輸入されたことを受け、わが政府は10月4日付で(現実にはつい先刻だが)WTO協定に含まれる1994年のガット第22条に基づく協議をジュネーブにおいてインドネシア側に要請した。
 インドネシアによるこの措置は、本質的に多国間ルールにかかわる問題であって、放置すればWTO協定の形骸化を招く危険性があることから、今回の協議要請に至った次第である。この協議を通じて、WTO協定に整合的であって、かつ日本、インドネシア双方にとって満足できる解決が得られることを期待するものである。わが国としては、この問題が長年にわたって育まれてきた友好的な日本とインドネシアの二国間関係に影響を及ぼすべきではないと考えており、この点はインドネシア政府も同様の考えである。わが国としては、インドネシアの国造りのため、引き続き最大限の協力を行っていく方針である。
 なお、欧州連合は10月3日にわが国と同様の協議要請を行った。また、アメリカは本件について、WTO協定に基づく協議要請を行う予定である旨、10月1日に発表している。

(問)「国民車」問題のWTO提訴に関し、韓国が利害関係国として協議に参加の意向を示していたと思うが、これは日本政府としては異論がないか。

(報道官)韓国政府が具体的にこの協議に参加することを求めるかどうか、まだ具体的に承知していない。

(問)まだ意向は伝わってきていないということか。

(報道官)まだ伝わってきていない。

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・ 欧州連合の対KEDO交渉マンデート決定について

(報道官)10月1日、欧州連合外相理事会で、ヨーロッパ連合の対KEDO参加貢献問題に関して、欧州委員会が今後KEDOと交渉を行うためのマンデートが決定された。この決定は、国際的な核不拡散体制及び国際社会の安全保障に関する重大な問題である北朝鮮の核兵器開発問題の解決に向けた欧州連合の積極的な姿勢を示すものであり、わが国としてもこの決定を歓迎するものである。今後、KEDOと欧州連合との間で協議が行われることとなるが、欧州連合が国際社会において占める地位及び責任にふさわしいKEDOに対する貢献が年内のできるだけ早い時期に実現することを期待するものである。

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・ 尖閣諸島問題

(問)尖閣諸島の灯台の問題について、処分を保留するとの決定に対し、中国あるいは関係地域等からの何らかの反応はあるか。

(報道官)今朝、外務大臣が皆さんにお伝えしたように、中国等への連絡を外国ルート等を通じて実施しているところだが、まだ結果及び向こう側の反応は届いてきていない。

(問)外交ルートを通じてだと、具体的には現地大使館からということか。

(報道官)大使館といっても北京なので、外交ルート等ということで。いずれにせよ、北京については正に大使館を通じて向こう側に説明している。

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・ ミャンマー情勢の関連

(問)今朝の大臣会見でも伺ったが、ミャンマーに対して現地の山口大使が、ミャンマー外務省当局者に日本政府の懸念を申し入れた際の先方からの対応と、その翌日、軍情報部の大佐の発表内容は食い違っているようだ。少なくとも公表した拘束者の数は 109人ではなく 559人であったり、アウン・サン・スー・チーさんの自宅に通じる道路の封鎖の解除の見込み等についても違っているようだが、少なくとも日本国の大使に対しては真実を述べたと理解したいところだが、その後の新聞発表等の食い違いに関する見解如何。

(報道官)9月30日に山口大使からミャンマー外務省政務局長に日本側の懸念を表明した際、確かに先方の政務局長から一両日に道路封鎖を解除する可能性を示唆してきた。従って、その点について官房長官にも報告し、官房長官がその点を発表されたわけであるが、その後道路封鎖の解除の動きが見えていないのは事実である。その間、どのような判断がミャンマー政府で行われたものか詳らかにはしない。いずれにせよ、3日の午後現在の時点では、市内は全般的に平静ではあるが、道路封鎖は依然続いている。今後の状況次第では緊張の高まりがエスカレートする恐れがあり、事態の展開を注視しているところである。心配もしている。いずれにせよ、最大の問題はミャンマー政府とアウン・サン・スー・チーさん側との間のコミュニケーションが欠けていることであり、わが国としてなし得ることは、双方に対してコミュニケーションを作っていくよう、粘り強く働きかけていくということであり、今後ともそうした努力は続けていく考えである。

(問)一国を代表する特命全権大使に対する回答がその後のものと違うことについて、どうしてこういうことになったのか何らかの問い合わせ、あるいは正すべきではないのか。

(報道官)なぜそのようになったかというよりも、われわれとして希望している道路封鎖の解除がなかなかなされないのに、その可能性があるような考え方を聞いておきながら、それが実施されていないということは、われわれとしても心配しているところである。向こう側がわれわれに真実を伝えたか否かの究明というよりも、是非とも道路封鎖を解除し、SLORC側とNLD側との話し合いがつくようにしていくということで、われわれとすれば今後ともそうした方向での努力を続けていきたいと考えている。

(問)それを具体的にはどういう形で行うのか。また新たに申し入れをするとか。

(報道官)現時点においては、つい最近山口大使から申し入れたばかりであり、 また現実にSLORC側、NLD側とチャンネルを持っていることは事実だが、向こう側にもわれわれと意見交換するのはいつもメリットを感じると考えてもらわなければならないということもあり、いいタイミング等をよく勘案してしかるべくまたこのチャンネルを使って対話をしていきたいと考えている。

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・ ロシア情勢について

(問)ロシアの国防大臣が、ロシア軍が給料を支払われないなど非常な窮状にあり、将校の違反もあったと言い、レベジ書記もロシア軍にはクーデターの計画はないけれども、その悲惨さはかなりなものであると言っている。このままでは横流し等も起こりかねないといったことも言われているようだが、もし実際にそうなったら大変なことになると思うが、外務省としてこれについて見解があれば伺いたい。

(報道官)こういった問題については、報道等を通じて承知しているし、事態の推移を注意深く見守っている。ロシアが、軍の給料未払いに限らず、種々の困難な問題を抱えていることは分かるが、わが国としては、引き続きロシアが民主化と適切な経済改革政策を実施していって、こうした事態を克服していくことを期待するものである。

(問)実際、発表のような窮状にあるとの情報はあるか。

(報道官)われわれは、何分にも他国のことであり、いろいろな発表等を通じて承知していくしかないが、ただ、クーデターといったようなこととか、何か軍が特別の動きを示すといったような兆候は現在のところ把握していない。

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