報道官会見記録 (平成15年10月22日(水) 17:00~ 於:芝会見室)
イランの核開発問題
(報道官)イランの核開発疑惑に関する合意ですが、イラン政府が21日に、ウラン濃縮、再処理を停止すること、追加議定書に署名すること、IAEAに全面的に協力することなどを表明しました。私たちはこの表明を、核問題を巡るイラン政府の前向きな姿勢の表れと受け止めており、イランがこうした一連の措置を速やかに実施に移すよう見守っていきたい考えています。イランが9月のIAEAの理事会が求めた全ての措置を誠実に実行していくことが大切であり、そうした方向に動くよう期待したいと思います。イランの核問題を巡っては、川口外務大臣がハラジ外相と話し合うなど国際的にもいろいろな努力が進められていましたが、今回、イギリス、ドイツ、フランス、3カ国の外相が直接テヘランに出向いてこうした合意にこぎ着けられた努力に私たちは敬意を表したいと考えています。
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イスラエル・パレスチナ情勢
(報道官)中東パレスチナ、イスラエル情勢ですが、今月20日以降、イスラエル軍がガザに対して一連の空爆を行ったり、ヨルダン川西岸のラマッラに侵攻したことにより、一般の市民に多くの死傷者が出ており、更なる事態の悪化を招いています。私たちはこれを大変遺憾なことと感じています。イスラエルに対しては最大限の自制を行使して事態の沈静化を図るよう求めたいと思います。パレスチナ自治政府に対しても早急に過激派の取り締まりを行って、着実に成果を上げるよう求めていきたいと思います。イスラエル、パレスチナ両者が一日も早く事態を沈静化させ、ロードマップ実施に向けた取り組みを再開するよう期待したいと考えています。これに関しては川口外務大臣が明日からマドリッドで開かれるイラク復興支援会議に出席しますが、その後、エジプトにまわって、カイロでエジプト政府首脳とパレスチナ、イスラエル問題を中心とした中東問題についても意見交換を行い、一日も早いロードマップの実施に向けての国際的な努力を進める所存です。
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瀋陽総領事館に保護された日本人女性
(問)瀋陽の総領事館に保護されている日本人女性ですが、その後、身元確認と進展は何かありましたか。
(報道官)身元の確認作業はまだ続いていると了解しています。もう一人、お兄さんは日本の方だと了解していますが、お二人の身の安全の問題もありますので、こちらから詳しい内容についてお伝えするような状況ではありません。いつ帰国が可能になるか、そうした点も今のところ分かっていません。
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イラク復興支援国会合
(問)マドリッドの支援国会合なんですが、いち早く15億ドル表明ということで、かなり他の国々に比べて桁が違ったりして評価されているようなんですが、イラクの現状、戦争に至った経緯、その他、いまだにいろいろな意味で国際社会に亀裂は残っていると思いますが、その中で日本がこういうコミットをするということはどういうメッセージを発しようとしているのか、改めてお伺いしたいのですが。
(報道官)イラクに対しては、私たち日本は随分長い間、いろいろな形で支援をしてきました。例えば、イラクの13の病院は日本の援助で建てられたものですし、発電、浄水、様々な形でイラクと日本との伝統的な繋がりというのは長くあったわけです。サダム・フセイン大統領が原因で、特に湾岸戦争の後、そうした援助は全く止まっていました。一方、イラク国内ではフセイン政権の下での圧政によって、例えば日本が援助して建てた病院の老朽化が甚だしい。そういう意味では、イラクの国民自体が大変苦しい立場に立たされているわけです。今回の軍事行動の後、様々なテロ活動なども続いています。そうした困窮状態に対して国際社会全体で支援をしていかなければいけないということで、今回、国連安全保障理事会でも決議が行われたわけです。その中にあって日本はそうした伝統的な立場、中東に対する日本の様々な形での繋がり、特に中東地域が安定していないと日本はエネルギー事情でも大変困った状態になります。また、貿易によって成り立っているこの国においては世界の平和と安定というのは大変重要ですが、もしイラクがこのまま破綻国家のような状態になってしまったとしたら、これは中東地域全体のみならず世界全体が極めて不安定な状態になってしまう。そういうことを考えると、一日も早くイラクがイラク国民の手できちんと自立した国になって、しかも周りに危害を及ぼさない平和で民主的で豊かなイラクが出来るということは、私たちにとっても大変重要なことです。そのために日本が出来る限りの協力をすることは私たち自らにとっても大事なことだと考えたいと思います。そういう考えから、小泉総理大臣を中心として日本政府は、当初、2004年をめどに、まず15億ドル分の無償資金提供を行い、特にイラクの人々の生活に密着した部分について支援を行う。更に国連、世界銀行などが呼び掛けている2007年に向けての、総額550億ドルという数字も出ていますが、そうした中期的な支援についても日本として出来る限りの協力をしていく。更に今の情勢の中で人的な貢献をどのような形でするかについても日本が主体的にものを考えていくということ。これは日本にとっても世界にとっても大変重要なことであろうと考えています。
(問)イラク復興支援会議で、中期的な支援の部分で川口大臣はきちんとした額を明示されるという方向性は変わっていないのでしょうか。
(報道官)出来る限りそのような方向に持っていくように、今政府部内で最後の調整をしているところですが、まだ額、方法等について詰めを行っている最中と聞いています。マドリッドの会議は各国がそれぞれイラクに対してどのような形の支援を行うのか、特に国連、世銀などが出している550億ドルという一つのゴールがあるわけですから、それに対して各国がどのような協力をするかということを明らかにする場でもあるわけです。従ってそれに間に合うようにということで鋭意作業が続いているというのが現状です。
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報道官会見記録 (平成15年10月15日(水) 17:15~ 於芝会見室)
北朝鮮による拉致被害者の方々の帰国から1年
(報道官)北朝鮮によって拉致された5人の方々が帰国されて今日でちょうど1年となりました。昨日以来、小泉総理大臣、福田官房長官、川口外務大臣をはじめ政府の要人の方々が縷々述べているところではありますが、5人の家族の方々の御帰国が今なお実現していないこと、北朝鮮側が死亡や行方不明とした方々についての詳しい情報が依然として得られていないこと、その他、北朝鮮に拉致されたのではないかと疑われる方々についての情報も提供されていないことなど、拉致事件の解決がいまだに見られないことが大変に残念であり、特に御家族との再会を待ちわびる5人の方々をはじめ関係者の皆様の御心痛は想像に余りあるものと感じています。私どもは北朝鮮側に対して、改めて5人の拉致被害者の御家族の帰国を直ちに認めることと、事件の真相を全て明らかにすることによって拉致問題の解決を図るよう強く要求してまいります。これと共に、核についての次の6者会合、日朝間の問題を話し合う会合の開催に応じるよう求めていく方針です。
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ボリビア情勢
(報道官)ボリビア情勢について申し上げます。ボリビアの首都ラパスとその近郊で反政府運動が激化しており、デモ隊と治安部隊の衝突で既におよそ50人の死亡者が出ています。この事態に、日本政府は昨日から今日にかけて東京とラパスにおいて、ボリビア政府に対して、ボリビア政府が民主主義を守るために国内各派と共同で事態の収拾を図るよう強く求めると共に、ボリビア在住の日本人、今2846人いらっしゃると私たちは承知していますが、この日本人の方々の安全確保のためにあらゆる手段を講じるよう申し入れています。外務省はボリビアへ渡航を予定されている方に渡航を延期するようにという危険情報を発しています。
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日・エジプトによるイラクへの医療支援
(報道官)エジプトと日本の協力によるイラクへの医療支援の問題ですが、これが動き出しました。今年の5月に小泉総理大臣がエジプトを訪問された際、ムバラク大統領との間でエジプト、日本が共同してイラクへの医療支援をすることで合意しています。このプロジェクトに参加するイラク側の関係者5人と、エジプト側関係者3人、両方とも医師や保健省の方ですが、明日から1週間東京に滞在されて川口外務大臣、岡本総理補佐官らと話し合いを持つほか、都内の医療施設を訪問する予定です。このグループは既に今月9日から昨日までエジプトのカイロで医療支援についてのワークショップを開いて打ち合わせをしていまして、その延長線上で東京に来られるのですが、このカイロ、東京での話し合いを元に今年から来年にかけて、併せて200人ぐらいのイラク人の医療関係者の研修を行うことが予定されています。当初、この研修はエジプトのカイロで行われますが、今後日本でも実施するほか、イラク情勢の推移を見つつ、適当な時期が来れば日本とエジプトの医師達がイラクに出向いて現地で研修を行うことも検討されています。
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イラクへの無償資金協力
(問)官房長官が15億ドルのイラク無償資金協力を発表したのですが、外務省の立場としては、このことについてはどのような印象をお持ちでしょうか。
(報道官)日本の財政事情が厳しい中で、イラクに対する国際的な支援を日本としてどこまでできるかということで、財政当局と外務省との間で随分長いこといろいろな検討を行ってきたわけです。15億ドル、これは初年度分でしかも無償の資金協力ですから、様々な形でイラクの人々に役立つこと、これが間違いなくイラクの復興支援に繋がっていくことを確かめながら出していくということになりますが、そうした形のものがまとまったということは外務省にとっても大変嬉しいことです。実はまだ国際社会がやらなければならないことは、更にこの先、2005年、6年、7年と続いていくわけですから、残りの年度に向けての中期的な支援策を一体どの程度出すことが出来るのか、どんな形にするのかということを財務当局と話し合いをするということ、また更に小泉総理大臣が繰り返し、資金的な支援と共に人的な支援をと述べております。どういう形でやっていくのか、特に自衛隊の方々にどういう支援体制に加わって頂くのかということを更に詰めていかなければいけない。まだ道は第一歩を踏み出したところという印象を持っています。
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メキシコとのFTA交渉
(問)メキシコとのFTA交渉なんですが、今後の見通しについてどのような状況なんでしょうか。
(報道官)フォックス大統領がお見えになっていますので、是非今回の訪日の間にメキシコと日本の間で経済的な包括協定に向けての原則的な合意を取り付けられないかということで、鋭意交渉しています。実は川口外務大臣をはじめ日本の3大臣がメキシコの経済大臣と昨夜から今日未明にかけて5時間以上の直接交渉を行ったわけですが、残念ながらまだ合意点に至っていません。明日、フォックス大統領と小泉総理大臣の首脳会談が予定されているのですが、その前にもう一回、閣僚レベルでの交渉をするかどうか、今、メキシコ側とも打ち合わせしている最中です。ありとあらゆる努力を重ねて、是非日本とメキシコの間の自由貿易に関する取り決めが結ばれる方向で基本的な合意に達したいと強く思っています。
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中国の有人宇宙船打ち上げ
(問)中国が有人の宇宙船の打ち上げに成功しましたが、この件が中国に対するODAの供与についての議論に関してどのような影響を与えるかの点についてお話頂けますか。
(報道官)中国の有人宇宙船の打ち上げ。大変におめでたいことでありますし、人類の宇宙への挑戦の歴史に新しいページを開く大変意義深いものと認識しています。このまま飛行が順調にいって、宇宙飛行士の楊利偉さんが無事に帰還されることをお祈り申し上げたいと思います。今御質問がありましたODAですが、実はこのところ、中国に対するODAは随分減ってきています。これは中国側の経済状況、発展がどんどん進んでいること、ニーズがだんだん少なくなっていること、しかし中国ではまだまだ発展途上の部分があって、日本からの支援を必要としているところがありますので、今後とも対中国経済協力計画という基本的な計画に基づいて、これからのODAの進め方を検討していくことになると思います。もちろん日本国内における対中OD Aに対する一般的な世論、考え方、中国国内におけるニーズ、更に日中関係といったものも総合的に勘案しながら、しかし今の段階でODAを止めるとかなくすといった状態には到底至っていないので、続けていくということですが、中身を精査しながら実行していくことになると考えています。ちなみに対中ODAですが、例えば2000年の段階で2273億円だったものが、去年2002年には1342億円に減っています。つまり41%も減っています。これはそうした厳しい精査の結果、中国側とももちろん話し合った上でこうなってきたわけで、そうした中国側と日本側の話し合いの中で対中ODA のサイズが決まっていく。もちろん日本政府としても日本国内の状況を考えながら、財政事情を見ながら考えていくことになろうかと思います。
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チチハルにおける毒ガス事故
(問)チチハルの毒ガス事故の対応の関係ですが、課長が行かれていた、今日まで確か協議されているのでしょうか、どういう結論になりましたでしょうか。
(報道官)結論から申し上げますと協議は続行ということになったのですが、状況を御説明します。実は13日月曜日、一日だけの交渉ということで、堀之内中国課長を団長とする日本側の代表団が北京に行って中国政府の代表団と話し合いをはじめていたのですが、話し合いをなんとか、できれば今週中にでもまとめ上げたいということで随分頑張って、結局1日半延長して今日の午前中まで話し合いを続けました。話し合った内容は、例えば今度の事故の元になったドラム缶の処理をどうしていくべきなのかとか、同じような事故が2度と起きないようにするにはどうしたらいいかとか、遺棄化学兵器処理全体の改善策なども中心に話し合ってきたのですが、今回はまとまるところまでは行かなかった。一旦、日本代表団は東京に帰ってくるということですが、たまたま胡錦濤国家主席と小泉総理大臣がAPEC首脳会議で同じ場所におられるという日程も迫ってきていることもありますので、出来ればそれまでの間に日中間でこの問題について話し合いによる解決をみたいということで、引き続き大使館ルートなどを通じて話し合いを続けていくことになっています。私が承知しているところでは、少しずつ双方の見解の開きは縮まってきているということなので、なんとか上手くいってほしいと願っています。
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報道官会見記録 (平成15年10月8日(水) 17:00~ 於:芝会見室)
天木前レバノン大使
(問)今日、レバノン大使の天木さんが外国特派員協会で講演というか記者会見をしまして、本の内容等は外務省の方はみんな御存知だと思いますが、中には非常に個人名が出て、いろいろなことが書かれていますが、今後どのような対応をお考えなんでしょうか。
(報道官)天木氏の書かれた本の内容を私も読みましたが、かなりの部分、既に調査が行われ結果が出て、必要な処分が行われたものもありますし、全く処分の必要のない、つまりそういう疑いはあったけれども全く問題がなかったというケースも幾つか含まれているようです。天木氏自身が事実誤認をされていること、または噂を聞かれたということであって全くその噂は根も葉もないものというのもかなり含まれているように見受けました。実際にこの本を読んで、しかもかつてそうした調査に携わった人間にも聞いてみましたが、問題は天木氏のそういった、どちらかと言うと既に白黒がついていること、事実誤認があるところがかなり多く、しかしはっきりしない部分もあるので、それについてはきちんと調査をするということです。どういう形の調べ方をするかというのは、今外務省内で検討していますが、少なくとも、もし問題があるとすれば、それについては然るべき措置を取ることになると思います。もう一つ、実はあの本の中には、本来国家公務員が職務上知り得た内容のものであって、しかもそれは退職後も漏らしてはいけない機密事項が入っている可能性があるように見受けられます。これについては、そうしたことが確認された場合には、どのような措置を取るかを外務省内で検討した上、必要とあれば措置を取ることになると思います。何れにせよ、私自身の印象としては、あの本は、全く事実に反するのですが、天木氏御自身が、意見具申をしたことによって外務省から解任されたと思い込まれたことで書かれているようです。意見具申をすることは在外公館の長、特に大使とか然るべき地位の方々については、現地の情勢を把握しながら、その都度、日本外交について外務省に対して、もしくは政府に対して意見を述べることは当然のことであるわけです。そのことを理由に職を解かれるといったことは全くありません。天木氏の場合には既に2つの公館の長をなさって、外務省の人事の刷新のために御勇退を願うということで退任をして頂いたということであって、意見具申が理由で解雇されたと思い込まれたというところからまず不幸が始まっていて、しかもその後、書かれていることの中にかなり私憤、私怨に近いような内容のものも含まれているようにも見受けられます。私自身は読んでいて大変残念だと思う気持ちがかなりありました。
(問)機密とおっしゃいましたのは、本人の意見具申や公電の内容を明らかにしたということを指しているのですか。
(報道官)そうではありません。秘密扱いにしているかどうかというのは公電の扱いによるものなんですが、それについて機密と言っているのではなくて、むしろ私がここが問題だということで外務省内で話をした部分は、実は外国の要人との会談の内容について、しかもそれがかなり外交上の機微に渡る部分について、本の中に書いておられる部分などが問題になり得るのではないかと判断しました。
(問)それはレバノンの大統領の訪日問題とか、ああいう辺りを指しているのでしょうか
。
(報道官)具体的にどこということは、今差し控えますが、つまり外交上の機密というのは、例えば要人の往来とか、各国との交渉の具体的な細かい内容であるとか、様々なことがあると思います。天木氏の場合には、御自身が関係された部分について書いておられる。これは本来、外交上の機密になるべきであろうと思われる部分がありました。こうした点については外務省内で検討しているところです。
(問)ここの役所の人たちは在職中も退職後も含めて本を書いたことがある方とかいらっしゃると思いますが、今までにそういう機密に絡んで何か、おっしゃるように必要な措置を取られたケースというのがあるのでしたら、それはどういう基準なんですか。
(報道官)私が承知している限りはありませんが、国家公務員法100条に、国家公務員は職務上知り得た機密は漏らしてはならないし、また退職後も同じであると書いてあると私自身も言われましたので、これは守らなければいけないことだと思っています。問題はそれをどのような形で公にしていくかということで、具体的な処分がかつてあったかどうかについて、私は直接聞いたことはありません。昔、外交上の機密文書をある方がある方に流してといったような例があって、あの時にはもしかすると処分が行われていたかも分かりません。それについては調べて、後刻御報告致します。
(問)天木さんの本の中で、外交機密費が毎年20億円ずつ官邸の方に上納されていたという部分があり、これは今日の会見でも、外務省の人でほとんど知らない人はいないというふうに話していましたが、この辺について外務省としての御見解はどのような。
(報道官)これについては、具体的な数字はともかくとして、上納されているのではないかということは、外務省の報償費の問題の時に既に取り上げられて、調査が行われ、そのような事実はないということが公にされたと聞いています。私自身、直接その時に外務省におりませんでしたので、細かいやり取りは承知していませんが、少なくとも私が今日、報告を受けたところでは、この部分については事実に反する、既に調査済みと聞いています。
(問)天木大使のことですが、前大使が在職中に外務省改革について何か言ったというのは全然ないわけですか。意見具申をよくやられていたようですが。外務省改革について、これだけ数年前から議論になっているのですが、彼は内部から、在職中に変えようという向きというのはあったのですか、なかったのですか。
(報道官)私はその辺のところは詳らかにしていません。天木氏が外務省を変えようといったところでどのような意見をお述べになったか。今回、天木氏が実際にこういう行動を取られたということがあってから、かつての書類などを外務省のいろいろなところで調べているようですが、あがってくる紙の中にそういう報告があったというケースはありません。
(問)オーストラリアの大使館時代とカナダの大使館時代に、現地職員の手当の一部の流用とか、公金の未使用を流用していたのではないかというような指摘をされているわけですがこの辺は。
(報道官)かなり古い話であるわけなんですが、私が報告を受けたところでは既に調査が行われたケースも入っています。それについては然るべき処分が行われたものも、全く事実に反するということもあったそうです。天木氏が本に書かれたこととかつての調査結果をもう一度照らし合わせて、もしはっきりしない部分、おかしな部分があった場合には、その先然るべき調査をどう進めていくかを決めると報告が来ています。
(問)先程の話では、はっきりしない部分が現在あるというふうにおっしゃいましたよね。
(報道官)今、この建物の中にその当時のことを知っている人がいる部分についてははっきりとしたことが分かるわけですが、書類がすぐに見つからないとか、もしくはもう既に廃棄されているもの、そうした古い出来事についてははっきりしないので、その点については調べる。具体的にどの部分ということを今の段階で申し上げるところまで来ていないのですが、天木氏が今回書かれたもので、今まで皆があまり知らなかったようなこともあるのかもしれません。そうした点については調べるということのようです。
(問)かなり個人的な批評というか、攻撃というふうに一般には理解されているようなものも含まれているのですが、この部分については何か特に対応なりお考えですか。つまり一人一人の具体的な個人名を挙げて、この人との会話からこの人の人となりついてのコメントが、かなり本の大部分を占めていると思うのですが、その辺はどのようにお考えなんでしょうか。
(報道官)私個人の印象としてはとても残念だと思います。それでは外務省として何か具体的にアクションをとるかというと、今はアクションをとるつもりはありません。ただし、個々の方がそれに対してどのような反応をなさるかは、それぞれの方の御判断ということになろうかと思います。
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中国における日本人旅行客の集団買春事件
(問)中国で日本企業の社員が集団で買春したとされる件なんですが、先日、福田官房長官が外務省の方で調査をするとおっしゃっていましたが、これは具体的には現在どのように調査をされて、どのような結果が出ていますか。
(報道官)当該の会社の方にお話を伺うべく手配を進めているところです。まだ伺ったという報告は来ていません。事実関係が果たしてどうだったのかということをまず承知する必要があると考えていますので、そのようなことをやることになっています。
(問)その問題に関連してですが、会社の方はそういう事実はないと既に言っている訳で、任意でお話を聞かれるわけですよね。
(報道官)もちろんです。
(問)そうしますと、なかなか裏付けも取れなくて、結局、容疑がないということになって、その後、どういうふうな処理の仕方になりますか。つまり、向こうはあると言って、公権力で関係者を拘束したりして、証拠がまた出てきて、瀋陽の時みたいに向こうがどんどん出してきて、日本側がないと言ったのが崩れたりとかという可能性もなしとしないわけですね。処理の仕方というのでしょうか、どういうふうに考えているのですか。
(報道官)私たちの質問に対してどういうお答えを頂けるかというのを待って、それから今の仮定の状況についてのお答えを申し上げたいと思います。基本的には、今まで伝えられているところでは、集団であのような行為をしたということはない、しかし若い人たちが、という留保がついていたと記憶しています。それが一つと、もう一つ、既に外務大臣からも、あのような出来事、女性の尊厳を傷つけるような出来事をしたということがそもそも遺憾なんだと公の場で申し上げていますし、福田官房長官もそうしたことについて、大変強い言葉で、あってはならないことという表現をしています。是非、こうした機会を通じて日本国内でも、そのようなことを容認するような風潮、もしくはそんな考えをする方がもしいらっしゃるとしたら、是非そこのところは改めて頂きたい。外国にあってはその外国の法規をきちんと守る、日本にあっては日本の法規をきちんと守るということは、そもそも外国を旅行する場合の、もしくは一般市民としての常識であり、そのことを守ることがまず最低の必要条件であるわけですから、特に今度問題になったような場所にいらっしゃる方々は特にその辺のところをお気を付け頂いて、万が一にも疑いをかけられるようなことのないように御注意を頂けたらと私は強く思っています。
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報道官会見記録 (平成15年10月1日(水) 17:00~ 於:芝会見室)
TICAD III
(報道官)29日から東京で開かれておりましたTICAD III(アフリカ開発会議)ですが、本日10周年の宣言を採択して無事終了しました。アフリカから50カ国の代表団が参加し、その他アジア、欧米、国際機関も多数参加した大変盛り上がりのある会議でした。ここで採択された10周年宣言はこれから様々な場所で、アフリカ開発について国際的な討議が行われる際の一つの大きな下敷きになる新しいアフリカの開発のための理念を盛り込んだ宣言であったと理解しております。参加された各国の代表も大変満足し、喜んでこの会議終了を迎えられたと聞いております。各報道機関におかれましても、この会議の成功に向けて、また意義を周知するという点で、大変な御協力を頂きました。心から感謝申し上げます。
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李根・北朝鮮外務省米州副局長との接触
(問)ニューヨークで北朝鮮の李根副局長と日米韓中のそれぞれの外務省の高位の方が接触をされて、お話をされていると聞いていますが、どういった内容のことをどういう性格のやり取りとしてお話をされているか教えて頂けませんでしょうか。
(報道官)この国際会議は外交問題を研究するアメリカの民間の機関が各国の政府の担当者も交えて、北朝鮮も含めたアジアの問題、世界の現状について意見交換をする場として開かれた会議であったと承知しております。御指摘のように日本からもアジア局の齋木審議官が参加しており、会議の途中で北朝鮮の李根氏と会う機会がありました。しかし、大変短い時間であったために突っ込んだ話し合いにはならなかったという報告を聞いておりますが、具体的にどのような内容であったかということについては説明を受けておりません。全体として、例えば5者なり6者なりがまとまって話すという機会ではなく、会議を通じてそれぞれが意見を述べ合うということもあったし、会議場の中で立ち話をしたりということはあったようですが、それはまとまった会談ということではなくて、あくまでも国際会議の途中における接触での意見交換なり挨拶といったようなことが中心だったと聞いております。従って、基本的には、そこで何かが決まったり、何かが大きく動いたといったことはなかったように報告を受けております。
(問)米朝の接触もあったという報道がありますが、アメリカの、北朝鮮の接触の窓口であるプリチャードさんが辞任された後の空洞の期間だと思いますが、それに代わる接触という位置づけと捉えておられますか。
(報道官)私ども日本と北朝鮮の接触については、あったという報告は受けておりますが、その他の接触については、例えば誰と誰が会っていたということは全く入ってきておりませんので、コメントをすることは出来ません。
(問)今のニューヨークの李根さんのあれなんですが、一部漏れ伝わるところでは、次の6者協議に向けて前向きな姿勢を示したという情報もある一方で、同じ日に開かれた国連総会では、チェ・スホン外務次官が6カ国協議を次いつやるなんていう約束はしていないという話で、非常に厳しい出方をしています。同じ北朝鮮の政府の人間が全く違う態度を示しているような兆候もあるのですが、政府としてはどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。
(報道官)次の6者会合がいつ開かれるかということについては、実は、29、30日に開かれた日米韓3カ国の非公式協議の場でも意見交換を行われたわけですが、どの国も確たる見通しを立てるには至っていないというのが結論であったように思います。私たちが承知しているところでは、中国側が北朝鮮側に対して様々な形で働きかけをして頂いているし、他の国々、つまり6者のうちの北朝鮮を除くそれぞれの国がそれぞれの形で北朝鮮側に対して、早く6者会合の再開に応じるようにと働きかけをしているところですが、北朝鮮側は今のところ、これについてまだ返事を寄越していないというのが実情と了解しています。今回の国際会議で北朝鮮側が一応前向きのという報道があったことは読ませて頂きましたが、先程申し上げたように、その中で一体どういう具体的なやり取りがあったのかについては、少なくとも日本と北朝鮮の話し合いは、内容について、そこまで突っ込んだような話になっていたという報告はありませんので、なんとも申し上げようがありません。少なくとも北朝鮮代表の国連総会での演説を読んだ限りでは、今までの主張を繰り返していたということです。あれを読む限り北朝鮮側が直ちに6者会合をいつ開くかということに対して、中国なり日本を含めた3カ国に対して、あの中でどんなメッセージを送ってきたのか、少なくとも今すぐ再開に応じるといったメッセージではなかったと読み取っております。従って、次の6者会合があるのかということは、今のところ見通しを立てるのは極めて難しい状態だと思っています。
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