報道官会見記録 (平成15年3月26日(水) 17:00~ 於:会見室)
イスラム世界との対話と交流の強化
(報道官)昨日、川口外務大臣が在京の中東18カ国の大使の方々と話し合いをして、日本の中東政策、対イラク政策について説明した時に、今後の方針として、日本と中東諸国の国民レベルでの相互理解を深める目的で、いろいろと文明間の対話を推進する案を進めていくということをお伝えしました。この点は3月20日の外務大臣の声明の中にも盛り込んでありましたが、今日、具体的に何をするかをまとめて掲示をさせて頂きました。内容としては、これから益々、中東地域やイスラム諸国との間の青少年交流とか、女性の交流、文化無償協力を進めるというものです。実際には、今頃もう既に開かれているはずでしたがイラク情勢で延び延びになっております「文明間の対話セミナー」という、イスラム諸国の15人と日本の15人の有識者の方々のセミナーを、情勢が落ち着いたら出来るだけ早く開く。イスラム研究会のようなものを今後ともどんどん開いていく。更に国際交流基金では大体3億円規模で中東地域での知的な交流事業を促進していくということを盛り込んであります。こうしたことを通じて、日本と中東、イスラム世界との間の人の繋がり、また、知的な交流を深めていきたいということを計画しております。
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イラク情勢
(問)午前中、茂木副大臣の会見でもあったのですが、バグダッドに残っておられる「人間の盾」の方の中で退避を希望されている方がおられて、邦人保護課としては、要するに「盾」の方々の意見が集約された段階で然るべき措置について御相談したいということだったのですが、その後、進捗はあったのでしょうか。
(報道官)具体的にまだ、どういうことをしてほしいのか、また、我々の方で出来るのかといったようなことがまとまるところまでは来ていないと聞いております。実際問題として、外務省としては既にイラクの大使館を閉鎖して、現地には現地スタッフしか残っておりません。それからアンマンからの電話連絡、そうしたことでバグダッドにいらっしゃる方々の退避についてどの様にお手伝いが出来るかと、いろいろと考えてはおります。しかし、どうしても難しい場合には車を手配するだとか、その様なことのお手伝いぐらいしか出来ないのではないかなと思っています。実際にどういうことをしてほしいのかということがはっきり分かった段階で、アンマンの方に今移動しておりますイラク担当の外務省のスタッフ、それから現地の大使館に残っている現地のスタッフ、そうした者が連絡を取り合いながら出来るだけのお手伝いをしようと思っています。
(問)関連なんですが、これは仮定の話かもしれませんが、例えば「人間の盾」の方がアンマンに車両を出して戻る時に、この費用はどなたがどう負担されるのでしょうか。というのは、雪山で遭難された時に、怪我したり何かした時にヘリコプターで搬送する場合は、あれは後からきちんと御家族の方に請求が行くんですね、例え死んでいても。今回、この方々というのは、官房長官も言っておられるように自己責任で行っているわけで、この退避について我々の税金が使われるというのは、国民として納得しない人もいるのではないかと思うのですが。
(報道官)お手伝いというのは、例えば車を斡旋したり、こういうルートを通った方がいいのではないかというようなアドバイスをするということは出来ますが、費用を外務省なり大使館なりで負担するということは全く考えておりません。万が一、お金が全然ない、着払いで立て替えてほしいということがありましたら、大使館で一旦立て替えた上、きちんと請求させて頂く、払って頂くということになります。
(問)この戦争は、どういう状況になったら戦争目的が達成されたというふうにお考えですか。
(報道官)私たちはイラクに残っているであろう大量破壊兵器が見つかってこれが破壊されるということが、この武力行使の最大の目的だと思っておりますので、まずそのことが達成されるということが大変必要だと思っております。今、時々それに近い情報が現地から流れてきておりますが、まだ実際にここと思われるような場所を捜索したり、もしくは発見に至ったりという情報は、私たちは耳にしておりません。もう少し時間がかかるのかなと思いながら、しかし出来るだけ早くこの武力行使が終わってほしい、しかも最小限の犠牲で速やかに終わってほしいと思っています。
(問)そうしますと、大量破壊兵器が発見されるなりした時が戦争終結の時点だというふうにお考えですか。
(報道官)ういう形になって終結するのかというのは現地の問題だろうと思いますが、目的はあくまでも大量破壊兵器を発見し、これを完全に破壊してイラクから大量破壊兵器の危険がなくなることが目的だと私たちは考えております。
(問)イラクからの難民なんですが、当初、国連では60万から140万という説明を出していたのですが、どうも今のところ、たくさんの難民が出ているというような状況ではないように思うのですが、その状況を把握されているかどうかということが一つと、もし難民の数が分析と違う場合に、日本政府として人権支援の政策自体を少しシフトさせるというお考えは、今もっていらっしゃるのでしょうか。
(報道官)まず、日本が今行っております難民支援は、例えば国連の難民高等弁務官事務所といった国際機関からの要請に基づいて行うということが基本的なベースになっているわけです。もちろんその政策は既に出されている予測に基づいて我々の判断で、ここにこういう人が行く、もしくはここにこういう物資を送ることが必要だろうということでやっているわけなんですが、例えば今週の末に送り出すはずのテントも、一旦はヨルダンに送るわけですが、実際にそのテントが設営される場所は果たして何処になるのかというのは、現地の情勢に応じて国連の難民高等弁務官事務所に任せるということになろうかと思います。実際の難民の流入の問題ですが、確かに今のところ当初予想されていた程はまだ出てきていない。私たちの所に伝わってきているそうした国際機関からなどの情報ですと、例えばまだイラクの主だった都市にサダム・フセイン大統領率いるところの政権の組織が残っていて、一般の人たちが出るに出られないといったような状態にあるとか、もしくは事前に食糧が配布されているので、食糧がまだ不足というところには至っていない地域もあるのかもしれない。更に、前回の湾岸戦争その他の記憶で、難民となること、それから自分の家を捨てるということに対して住民の間の気持ちが多少、変化が来ているのかもしれない。しかし今後、もし武力行使が激しくなったり、それから生活状況が厳しくなったりした場合には、大量の難民、もしくは国内避難民が発生する可能性はまだまだあるので、私たちとしてはそうした状況に応じた対応をしなければいけないというふうに、現地との連絡を取りながら判断をしたいと考えています。
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報道官会見記録 (平成15年3月19日(水) 17:00~ 於:会見室)
イラク
(報道官)一点、お願いがございます。イラク情勢でありますが、アメリカのブッシュ大統領の昨日の演説の中で、48時間という期限が設定されました。その48時間は、日本時間ですと明日の午前10時ということになろうかと思います。10時過ぎとアメリカ側が言っているということも聞いておりますが、何れにせよ事態が大変に切迫しつつあります。実は私どもが掌握しているところでは、まだ私たちが退避の勧告をしたイラク、クウェート、イスラエル、西岸ガザ地区、更にサウジアラビアのカフジ、この地域にまだ日本人の方々がかなりの数、残っておられます。私たちは現地、東京の両方で、この方々に速やかにこの地域を離れて安全な場所に移動して頂きたいとお願いしております。特に現地にいらっしゃる方々に対して即刻行動を起こすようにとお願い申し上げてあります。各メディアの皆様におかれましても、様々な手段を通じて出来るだけそうした、外務省からのお願いを何らかの形で記事・ニュースとして伝達して頂ければと思います。よろしくお願い申し上げます。
(問)その関連で、人数はどうなっていますか。
(報道官)人数を具体的に申し上げます。退避勧告が出ている地域にいらっしゃる邦人の方々、これは日本時間の今日、午後1時現在の数字であります。イラクが29人、クウェートが83人、イスラエルが555人、カフジが97人であります。この地域にいらっしゃる方々に関しましては、外務省の方から既に退避の勧告が行われております。
(問)明日、攻撃が始まりますと、外務省としても情報収集体制とか、何れにせよ全省的な体制を組まれると思うのですが、その辺の段取りはどんなふうになるでしょうか。
(報道官)万が一、武力行使が行われるということなりますと、外務省では情報収集、とりわけ今申し上げた邦人の方々、またその周辺の地域にいらっしゃる方々についても、出来るだけその状況に関する情報を入手する必要がありますし、また、現地の情勢についても可能な限りの情報収集を致したいと思っております。もちろん、現地の大使館、在外公館と外務省との連絡を密にする必要もありますし、そうした点を中心にオペレーションルームを機能させて、そこを中心に情報収集及び必要な情報伝達を図るつもりです。
(問)何か、何とか本部みたいなものが立ち上がるという感じではないのでしょうか。
(報道官)対策本部といったようなものを立ち上げることになろうかと思います。
(問)大臣はヘッド?
(報道官)外務省は外務大臣を本部長にお願いすることになろうかと思います。
(問)イラク問題についてなんですが、今日の一連の国会答弁や党首討論なんかを見ていると、政府としてはアメリカが武力行使に踏み切った場合でも国連憲章に沿っているものであって、国連決議に基づくものであるという見解のようですが、1441では、イラクに最後の機会を与えるというふうになっていて、最後の機会を与えた結果がどうなったかということについては安保理としては何も認定していない状況だと思うのですが、それにも関わらず国連決議に基づく行動であるというふうに言えるのでしょうか。
(報道官)国会答弁の中で、外務大臣を始め関係者が述べておりますように、私たちの見解としては1441という決議はイラクに、確かに最後の機会を与えるということでもありますが、同時に、イラクは今まで12年間、国連の様々な決議に従ってこなかった。大量破壊兵器を破棄する、しかもそれがはっきりと分かる形でという約束をしたにもかかわらず、一切守ってこなかった。そのことが依然続いているということを認定していて、これからの最後の機会の中で、きちんとした対応をしなければ重大な結果を招くということも述べているわけであります。既に査察団からの何回かの報告の中で、イラクの対応については、まだ完全な対応はしていないということが述べられているわけですので、それを基にした判断があって、1441の中には、もしそういう状態になった場合に、それではどういうことになるかと言うと、湾岸戦争停戦の時の決議、これが履行されていないということになるので、湾岸戦争が始まった時の、つまり国連はあらゆる手段をとるというその決議に遡っていって、戦争状態はまだ続いているということになろうかと思います。そのような判断が、日本、アメリカ、イギリスも、法的にも正当な判断であるということで、支持を表明したわけです。
(問)そうすると、まさに国連では武力行使に今踏み切るのかどうかという判断を巡って、安保理の議論はまとまらなかった、しかし、これまでの過去の決議を加盟国が独自に判断して、これは違反しているから武力行使は正当だということになると他の国が同じようなことを起こすことも正当化されてしまう。国連決議に対して、例えばイスラエルだとか、そういう問題も出てきかねないと思うのですが。
(報道官)1441という決議は、安全保障理事会の常任理事国、非常任理事国15カ国が全会一致で採択した決議であるわけです。その1441が認めたことというのは、イラクがこれまで一向に約束を守っていないということ、つまり重大な違反をしていることをまず認定した上で最後のチャンスを与えるからその間に何かしなさい、しなければ重大な結果を招くということを述べているわけです。1441という決議が全会一致で採択されたということの事実の重み、国際社会の判定というものは極めて重大なことでありまして、それに基づく今回の行動、もしくは今回の決定、また日本国はそれを支持するということに繋がっているわけです。ですから、どこかの国が全くなんの根拠も無しに武力行使なり、最後通告なりをしたということではなくて、あくまでも国際社会は一旦一致して、そういうことを決めていて、更にそれを念押しをするために新たな決議を作ろうかという動きがあったわけですが、残念ながらそこのところは実らなかった。しかし、その基になる国連安全保障理事会の決議、1441号というのは依然、効力があり、またその出来た経緯から言っても国際社会の意思というのはそこに十分反映されていると私たちは考えております。
(問)日本政府はこれまで、新しい国連決議があった方が望ましいと言っていたのは、1441だけで武力行使に踏み切るには正当性に疑問があるというふうに考えていたからではないのですか。
(報道官)むしろ新しい決議があることによって更にイラクに対してプレッシャーをかけるということが大きな狙いだったということであります。1441という決議が自動的に武力行使に繋がるものかどうかという点については、様々な議論があったわけですが、しかしその根底となる考え方というのは、1441は国際社会の意思がこの中に集約されている、しかも15対0という圧倒的な、全会一致の判定であったと。その場でもって、イラクの国際的な約束に対する違反行為というのが認定されているということには一切変わりはない、そういうふうに理解しております。
(問)日本は戦後、日米同盟と国際協調を両輪とする二本柱で外交を展開されてきたわけですが、新たな決議無しで武力行使を踏み切ることで日本外交への影響というのは多大だと思います。その辺を踏まえて、今後の日本外交のあり方について如何に受け止められたのか。
(報道官)日本の外交の三本柱というのは、何と言っても日米の同盟関係、近隣諸国との友好関係、更に国際社会全体との付き合いの中での国連重視という、その3点に依って立っているということは、全く揺らぎようのない事実であるわけで、国際協調というのはそうした中での大変重要な、一つの柱であるわけです。しかし、それと同時に日米の同盟体制、友好関係というのは日本の安全保障のためにも極めて重要でありますので、この2つを車の両輪として進んでいくということはこれからも変わらないことだと考えています。私たちは残念ながら、安全保障理事会の理事国ではありませんので、実際に中に入って15カ国の一員として行動するというわけにはいかなかったわけですが、側面から関係国に連絡をするなり、働きかけをするなりという形で精一杯の努力はしたわけです。残念ながらそれが実らなかった。しかし、出来る限りこれからも国際協調という形をとって、特にイラク、それから大量破壊兵器、こうした極めて危険な存在をどの様に対処していくかといのは、一国が対応するというのではなくて、国際社会が全体でまとまって行動するということが依然大切だということは、これは変わりのないことであります。出来るだけそちらの方向になるようにと願っているわけです。今回の場合にも出来るだけ多くの国々がイラクに対する軍事行動を、我々と同じように支持することを願っています。
(問)報道官、先程三本柱とおっしゃいましたが、これはこの順番で重要だというふうに捉えてよろしいのでしょうか。
(報道官)三本柱というのは1本が弱くて、1本が強くというわけではなくて、重要度はそれ程変わりのあるものではありませんが、もし3つを順番に並べるとしたらそういう順番になるのかなというつもりで申し上げたわけです。
(問)ブッシュ大統領の昨日の演説は、フセイン政権を無くすというか、フセイン政権の転覆を図るということを強く前面に押し出していると思うのですが、これまで日本政府は大量破壊兵器を持っているということが問題なんだというふうに言い続けてきて、そこにちょっとズレがあるとおもうのですが、そのズレがあるまま、いきなり昨日、総理は支持を表明しましたが、その点についてはどう説明されますか。
(報道官)今度のブッシュ大統領の演説の、特にフセイン大統領及びその息子たちに対する国外退去への呼びかけというのをよく読んでみますと、彼らが国外に退去した後で、コアリション、つまり多国籍軍が平和にイラクに進駐して大量破壊兵器を破壊するということをきちんと述べているわけです。つまり、大量破壊兵器を出来るだけ損害も、戦闘行為も少なく破壊していく方法として、フセイン大統領とその息子2人が国外に去る、つまりフセイン無きイラクに多国籍軍が進駐するということで、より損害の少ない、被害の少ない形での大量破壊兵器の破壊が出来るということを狙ったものと私たちは理解しています。従って、フセイン政権打倒ということだけを狙った行動では無くて、むしろフセイン政権無きイラク、そこで、今まで我々がずっと問題にしてきた大量破壊兵器無きイラクを作る一番近道が、残された道としてはこれだということで、アメリカも選んだと思っております。
(問)政権打倒について触れましたが、国会と国会質疑にも出ていましたが、国連憲章違反にあたる内政干渉にあたるのではないかという指摘についてはどうですか。
(報道官)私は内政干渉という言葉を越えて、サダム・フセイン大統領がこの12年間、国際社会に対して常に約束を守らないで、外交というものを隠れ蓑にしたり、時には目くらましに使ったり、更にだましたり、様々な形で国際社会の意思に反する行動を続けてきたということ、その罪は極めて大きいと考えています。従って、今回、最後の手段として武力行使が行われるかもしれない、その最後の武力行使回避の手段としてサダム・フセイン大統領と、その後継者と目される2人の息子、この3人が国外に去れば武力行使は無くて済むんだという、そういう最後の条件というのはそれなりに理解できるものと考えております。
(問)決議の話に戻るのですが、去年の11月ぐらいからイラク情勢が緊迫してから、ずっと国会答弁で外務大臣が言ってきたことをもう一回振り返ってみますと、最初は武力行使の問題を、武力行使を支持するかしないかという野党の質問があって、最初は仮定の質問だから答えられないと。それが段々シフトして仮定の質問には答えられないは無くなったのですが、当時、仮定の質問に答えられないの頃からも含めて、どうして武力行使を日本として支持するかしないか言わなかった。1441の決議が出来たということで、それをもってして自動的に武力行使をすると決まったわけではないと。だから武力行使を支持するかどうかということは言えないという、そういうロジックだったと思うのです。ところが新しい決議が採択されることが無くなった途端に、今度は、今まで自分たちが、これはオートマティックに武力行使をすべきものではないと言っていたことを持ってして、それを根拠に武力行使を支持するというのは、この論理というのは私はよく分からないのですが、直接言っていた大臣にお聞きした方がいいのかもしれませんが、これはどういうロジックになるのですか。
(報道官)武力行使があるか無いかという問題について言えば、様々な形で、あるのではないかという推測、憶測は流れていたにせよ、武力行使をするということを公式に表明した国も無ければ、そういう人物もいなかったわけです。つまり昨日のブッシュ大統領の演説までは武力行使が行われるということは誰も認定もしていないし、またそういう意思も表明していなかったと、今、振り返ってみて思います。武力行使が行われる、もしくは誰がやるのかということがはっきりしていない段階で、それを支持するかしないかということを言うことは、日本政府として責任ある立場とは言えないと思いますし、今までそれを避ける道、つまり平和的にこの問題を解決する道を探すということに全力を傾ける、しかもそれは各国がいろいろな形で努力をしてきた。
アメリカやイギリスは軍隊を使ってサダム・フセインにプレッシャーをかけるということまでやっていたわけですから、そうした一連の努力が行われた上で、しかもなおサダム・フセイン大統領が、まさに国際社会全体からの圧力に逆らって、最後は小出しにしながら、しかしいつまでたっても肝心な点は明らかにしないで来た。果たして例えばVXガスや、マスタードガス、更に生物兵器、こうしたものを一体何処に捨てたのか、隠したのか、それすら言わない状態をここまで続けてきたということ、そちらの方に大きな問題があるんだろうと思います。遂に国際社会は、もうこれ以上、サダム・フセイン大統領の勝手な振る舞いをさせておくことは危険であるし、許すことが出来ないという段階に立ち至って、アメリカ、イギリス、両国が武力行使をとらざるを得ないという選択をした。ここに至って、我々は日本国の国益というのは一体何だろうかと考えた末に、支持をすることが日本にとって極めて大事なことだということを判断して、小泉総理大臣が昨日、これを支持すると表明された。こうした一連の流れがあったと思うのです。ですから、これまで支持する、しないという言葉を口にしなかったというのは、今申し上げたような理由によるわけで、私は大変正当な判断であったと、今思っております。
(問)ブッシュ大統領の昨日の演説の中で、国連が責任を全うしていないと、従って我々がそれを全うするんだというふうにもおっしゃっていますが、日本政府としても国連が責任を全うしていないという認識をお持ちですか。
(報道官)私たちは国連安全保障理事会が一致した行動がとれなかった、つまりイラクに対して更なる国際社会の決意を示すという意味でも新たな決議が出来なかったということについては大変残念だったと思っています。それともう一つは、アメリカ、イギリスが武力行使を行う、これにオーストラリアなども加わるわけですが、こうした国々が武力行使を行うという判断を下した時に、これが国際社会が一致して、というよりも国連が一致してこうした決断を下さなかったということは、やはり残念なことだと思います。つまり国連の安全保障理事会が一致した意思を持ってこの決定をするという姿になっていれば、それはそれで望ましいことであったと思いますが、今回のアメリカ、イギリス、そしてオーストラリアなどの決定というのは、これはやむを得ない、まさに小泉総理大臣が昨日、ブッシュ大統領の決断は苦渋の決断という言葉で表現されておりましたが、やむを得ないものであったと感じております。
(問)目的と手段の関係でお尋ねしたいのですが、今日の国会の審議でもありましたが、国連の見通しで十数万の死傷者がイラクで出ると。それと隠されている大量破壊兵器で、10万、100万の人が死ぬかもしれないという時に、外相は、きちんとそこははっきりとお答えにならなかったと思いますが、10万の人が死傷するけれども、やらなければならない、死んでもこれはしょうがないということを、日本政府はアメリカの武力攻撃支持という中にそれを読み込んでいるのでしょうか。
(報道官)昨日、小泉総理大臣は、日本としては出来る限りそうした形での、民間人への被害が少なく、戦闘行為がもし行われたとしても出来るだけ短期間にこれが終わることを願っているということを述べておられます。また、ブッシュ大統領自身が演説の中で、イラク軍に対して抵抗しないように、戦闘行為に加わらないように。イラクの一般民衆に対しては、これが一般民衆を敵とした、もしくは相手とした戦闘行為を行うのでは決してないと言っています。これから実際にイラク国内で戦闘が行われるとして、これがどの様に展開していくのか、今予測することは極めて困難ではありますが、まず、出来るだけ早く、しかも民間に対する損害が出来るだけ少なく行われることを今でも私たちは期待しています。それからもう一つ、これから、将来生ずるであろう大量破壊兵器による危険と、イラクの戦闘による推定の死傷者の数という、これを比較するのは、両方とも仮定の問題であって、様々な論議が生まれるだろうと思いますので、それを今、こういうところで比較するというのは、事実上不可能に近いと思います。様々な考え方はあると思います。しかし、一つ確実に言えることは、大量破壊兵器、特に核ですとか化学兵器、生物兵器というものが独裁者で、しかも無責任な行動をとる独裁者の手に渡ると、例えばフセイン大統領が実際に毒ガスを使ってイラク兵を殺したり、自国民であるクルド人を殺したりした。それから更にこうしたことが何処で起こるか分からないといったテロの時代を迎えたという説もありますから、そういうことを考えると、やはりここは大量破壊兵器を隠し持っている疑いが極めて強いイラクに対してはやむを得ない手段として、こういう武力行使による大量破壊兵器の一掃を試みるのも、これは将来の、人類全体にとっての一つの大きな仕事と思いますので、これは先程来申し上げているようにやむを得ない措置だということを言わざるを得ないと思っています。
(問)仮定の話なんでしょうが、例えばベトナム戦争がありました。これもやはり同じように大義があって、アメリカ軍は出ていったわけですが、結局、彼らは大義を実現することなく撤退ということになりました。それはある時点で、日本がアメリカを支持したという目的と手段の関係でアメリカを支持した。この判断が変わるということはあり得るというようなお考えですか。
(報道官)判断が変わるとは、私は今も到底思えないし、今度の武力行使の最大の狙いというのは、はっきりしています。イラクが、先程来申し上げているように、隠し持っているであろう、その可能性が極めて高い大量破壊兵器を見つけ出して、これをきちんと処理をするということが一つ。それからそうした大量破壊兵器を隠し持ったであろうサダム・フセイン大統領、それから彼の政権、これに対して、何故そういうことをやったのかということをきちんと、はっきりさせて、必要な処罰を加えるんだったら処罰を加える。そういう目的があって行われるものと理解しておりますので、目的がはっきりしている以上、そしてまた手段を出来るだけ限定的に使って行うということをブッシュ大統領も昨日の演説の中で述べていると私は読み取りましたので、その意味からするとベトナム戦争と今回行われるであろう武力行使を比較するということはちょっと無理かなという感じが致します。
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北朝鮮
(問)今、外報官がおっしゃったロジックでいきますと、北朝鮮にも同じ様な論理で、それこそイラクの今回のケースがあって、犯罪的な、国際法的な性格を持った場合に適用される可能性もあるわけですが、そういう危険性、あるいは逆に、北朝鮮に関しては、アメリカはそういうことはしないだろうという確証というか、そういうことを踏まえての今回のイラク攻撃に対する日本の支持というふうな理解でよろしいでしょうか。そういうことで何か検討されたのでしょうか。
(報道官)アメリカでは、北朝鮮に対して武力は使わないということを明言しております。それからもう一つ、北朝鮮は少なくともフセイン大統領がやったような侵略行為、更には自国民もしくは敵に対して化学兵器を使う、そのようなことをここ近年はやっていないわけです。ですから、当然扱いが違ってもおかしくはないことでありますし、今、イラクがあったから北朝鮮にも同じことがあるということを想像することは到底不可能だと思います。
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報道官会見記録 (平成15年3月12日(水) 17:00~ 於:会見室)
対イラク修正決議案を巡る状況
(問)イラク問題ですけれども、イギリスの中でイラク攻撃反対論が政権の内部でも出たり、あるいは逆にアメリカサイドではラムズフェルド国防長官が、英国抜きでもアメリカとして戦争を遂行する用意があるという趣旨の発言をされるなど、米英の中で亀裂が生じてきているようにも思えるのですが、この点について日本政府の受け止め、現状認識、どういうふうに。
(報道官)先日来の小泉総理大臣とブッシュ大統領との電話会談、また川口外務大臣とストロー外務大臣との電話会談などを通じて、アメリカ、イギリス共に決議案を安全保障理事会で通して、それによってイラクに残された最後のチャンスを活かして大量破壊兵器を完全に廃棄させようという強い決意を持っているということは私たちも確認していることころであります。また、その決議を通すためにイギリスを中心に安全保障理事会で、今様々な働きかけ等が行われておりますし、日本も独自のルートを使って、例えば小泉総理大臣や川口外務大臣が安全保障理事会の常任理事国、非常任理事国に対して、この決議をまとめることによって国際社会が一致した態度を示すようにという働きかけを行っている最中です。従ってそうした外交努力を通じてこの問題が解決されること、特に国際社会が一致した姿勢を示すという形がとられることが一番望ましいことですし、今そういう方向に、イギリス、アメリカ、両国政府共、進んでいくと理解しております。もちろん、各国で戦争を避けたいという動きがあることは私ども十分承知しておりますし、日本自体も戦争が起きないことが最善の途であると、武力行使は最後の手段だと考えて、要はイラクがどの様にこの問題に対応するかということにかかっているという姿勢で問題に臨んでいるところです。
(問)いわゆるミドル6とかが45日間の延長とか言っていますが、日本政府としてはこの延長は認められないという立場ですか。
(報道官)45日間という提案が正式に安全保障理事会に出されたという情報は私たちはまだ入手しておりませんが、何れにせよいわゆる中間派6カ国、非常任理事国の6カ国が様々な形で、今後の対応について話し合いをしきりにしておられるということは承知しております。実際にどの様な形のまとまり方をするのか、またどの様な提案が出てくるのかというのは、まさに安全保障理事会の中で今、舞台裏、または表の舞台で検討が進められているところだと思います。日本は今、残念ながら安全保障理事会の理事国ではありませんので、その討議に加わることは出来ませんが、討議というか協議がどの様な方向に進んでいくのか注意深く見守ってまいりたいと思っています。何しろ、安全保障理事会が分裂した姿でイラクに誤ったメッセージを伝えないようにするということが一番肝心でありますので、どの様な形で安全保障理事会がまとまっていくのかということを期待しながら見守っていきたいと思っています。
(問)安保理が割れている時に、アメリカは何をすべきか。
(報道官)アメリカはブッシュ大統領が今、安全保障理事会の、特に非常任理事国に対して、アメリカとしての働きかけを大統領自らもされていると聞いております。そうした外交努力は当然必要でありましょうし、また、特に常任理事国はある意味で国連の中心メンバーでもありますし、安全保障理事会という、国連にとって、国際社会にとって一番重要な国際的な協議体を如何にまとめていくかという特に重い責任を負っている国々でありますので、その中で出来るだけ上手く話をまとめてもらうということが、今の世界にとって大変重要なことであると考えています。
(問)ミドル6が言っているように、猶予期限を先に延ばすということについて、日本は今、17日までという修正決議案を支持しているわけですが、例えば仮に45日という延長幅、猶予幅があるということがもしあった場合、そこはどういうふうにお考えですか。
(報道官)あの決議案を支持した最大の理由は、川口外務大臣の談話にも出ておりますように、国際社会が一致した、断固とした姿勢を示すこと、それを決議案でまとめていこうという意図で提出されたと理解して支持したわけで、一番肝心なところはまず安全保障理事会が一致して動くということ。決議案の内容については、その後、提案者であるイギリスも柔軟な姿勢を見せながら、意見がまとまりやすいように動いていると私たちも聞いておりますので、こうした動きを注目していきたいと思います。期限が延びるかどうか、更に、例えば17日という日付がその後どの様に変わる可能性があるのか、そうしたことはやはり安全保障理事会に委ねる必要があると思いますし、まさにそこが今、国連の中の外交の最大の焦点になっていると思われます。関係国が努力されることを期待したいと思っています。日本としては、日本時間ではちょうど明日の午前5時頃になりますが、原口大使がそうした点も含めて安全保障理事会でスピーチを行って、日本が強く安全保障理事会の一致した行動を求めるという意向を示すものと理解しております。
(問)今、米・英・スペインが出している決議案について、パウエル長官は、あの決議案が採択された場合は武力行使が適当だというふうに国際社会の認可が出たものと判断するというふうに週末のテレビでおっしゃっているのですが、日本政府としてはそこまでのことを支持しているというわけではないと。
(報道官)私たちはまず、あの決議、特にイギリスの修正案というのは、安全保障理事会が、イラクがきちんと対応していると認めない限りイラクは最後のチャンス、与えられた最後の機会を逃すことになるという内容であって、その戻っていくところは安全保障理事会決議の1441、更に1441に敷衍されている様々な安全保障理事会の過去の決議であります。そうした点を踏まえて、これから安全保障理事会として、または国際社会としてイラクに対してどの様に臨んでいくかということがはっきりしてくるわけで、当面はまだ、あの決議が通った後どういうことになるのかということについては、今はまだ何とも言えない状態、つまりイラクがどういうふうに反応するかというのをまず見極める必要があろうかと思います。
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報道官会見記録 (平成15年3月5日(水) 17:00~ 於:会見室)
イラク問題(総理特使の現状等)
(報道官)私の方からは総理特使の動きについて簡単に、今どういう状態になっているかを申し上げます。まず、シリアに向かわれている中山特使でありますが、4日にダマスカスに着いて、5日、日本時間ですとまさに今頃ですが、バッシャール大統領と会談を始めておられるはずです。そのまま夜、日本時間では明日の未明になりますが、ミロ首相と会談。さらに6日、トルコに向かい、8日は帰国ということになります。
一方、高村特使でありますが、エジプト滞在を終えられて、4日の夜、サウジアラビアに到着。5日、つまり日本時間の今日でありますが、サウジアラビアの要人と会談するということになっておりますが、実際にどなたに会うことになっているのか、情報を手にしておりません。6日に向こうを発って、7日に帰国される予定であります。
イラクを訪問しておりました茂木副大臣ですが、4日にバグダッドを出て、ヨルダンのアンマンに向かっており、5日、日本時間のたぶん今夜遅くになるかと思いますが、アンマンを発って、6日成田に到着する予定です。
一方、アフリカを訪問しております矢野副大臣ですが、5日、やはりちょうど日本時間で今頃になりますが、ナイロビからアンゴラに向かわれている途中だと思います。6日にアンゴラで政府首脳と会談して、8日に日本に帰ってくるという予定であります。
皆様それぞれ、予定の行動を元気にこなしておられるというふうに聞いております。
(問)茂木副大臣がイラクのアジズ副首相との会談の中で、日本のとっている立場について、先方からいろいろよく熟考して、立場をお決めになった方がいいという趣旨の発言があったというふうに聞いているのですが、それについてどういうふうに考えられますか。
(報道官)私たちは、例えば小泉総理の親書の中で、また茂木副大臣の直接の発言の中で、イラク側に対して、国際社会はこれ程長いことイラクがきちんと対応するように待って、また求め続けて、今、最後のチャンスが与えられているんだということを理解してほしいということを伝えたわけです。しかもイラク側に対して、今、国連の査察団のこれまでの報告の中で出されている様々な疑問、これを、まだ解消していないではないかということを伝えたわけですけれども、これに対してアジズ副首相の方からは、いや、化学兵器も生物兵器も全部廃棄したんだという発言があって、持っていないということを主張されたわけです。しかし持っていないのであれば、持っていないということを様々な形で世界に対して明らかに出来るはずだし、そうすべきだということを伝えたわけで、日本の基本的な立場はアジズ副首相の発言があろうとなかろうと、変わってはおりません。敢えて申し上げると、アジズ副首相のあの発言の中でも、事態が切迫している、もう時間は残り少なくなっている、国際社会の圧力が極めて高まっているということに関し認識して頂いたのではないかなということでありますので、茂木副大臣が帰ってこられて、どの様な印象を持たれたか詳しく伺った上で、これから日本がイラクに対して更にどういう働きかけをやる方がいいのか、出来るのか、そんなことも検討していきたいと思います。
(問)川口大臣は、日本として言うべき事は言ったというふうに先程の会見でおっしゃっていましたが、更にもう一段、何か検討の余地はまだあるということでしょうか。
(報道官)茂木副大臣が戻ってこられると、もちろん、川口大臣とは既に電話で話しておられますが、小泉首相にも報告をすることになっております。そうした中でどの様な指示が出るかは私は分かりません。ただ、その報告を聞くということは、日本がこれからイラクの問題についてこの先態度をどの様にとっていくのか、川口大臣がぎりぎりの選択をする時が来るだろうということを言っておられますが、そういう選択をする、判断をする極めて重要な材料になるだろうというふうに考えています。
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対北朝鮮政策
(問)対北朝鮮政策の話ですが、多国間による会合の準備というのはどの程度進んでいるのか分かるでしょうか。
(報道官)準備という点では、そういうことをやった方がいいのではないかということで、いろいろなチャンネルで、また多国間で話し合いを進めているところでありますが、まだ形が整ったとか、もしくはどういうレベルでというところまでは至っておりません。ただ、日本としては北朝鮮もそうした話し合いの場に是非臨むようにというふうに求めておりますし、また、いろいろな機関がいろいろな形で協議をしているということも承知しております。先程も申し上げましたように、具体的に今、形になったかというのにはまだのようです。
(問)イラク問題が進行していますが、国連の決議だとか、対戦の可能性もあるわけですが、例えばその前に、こうした多国間の会合があるという可能性もあるのでしょうか。
(報道官)話し合いというか、下準備がまだ行われている最中なので、一体いつ頃まとまるかということについては全く、今予測が出来ない状態だというふうに聞いています。これとイラクとの関係については、一応、北朝鮮の問題は北朝鮮の問題として、関係国の間で様々な折衝が行われているというふうに御理解いただきたいと思います。
(問)フランスの外務大臣が2日前に発言したことですが、大量破壊兵器への対処のあり方ということをお伺いしたいのですが、彼、こういうふうに言っているのですね。「イラクの大量破壊兵器と、国際社会との関係というのは、どういうふうにやっていくかということが、取りも直さず北朝鮮の大量破壊兵器への国際社会の取り組み方の試金石になる」という言い方をしているのですね。外務省の人に聞くと、アメリカが言ったことを引き合いに出して、それぞれの国で対応が違うことはあってしかるべきだということを言うのですが、大量破壊兵器対国際社会というコンセプトの中では、それはイラクに対して今、国際社会が行っている圧力なりなんなりということが、北朝鮮に対する対応の中に生かされるというか、踏襲されるのでしょうか。
(報道官)フランスのドビルパン外相がその様な発言をされたということは承知しております。まず、イラクの大量破壊兵器については、国際社会が過去、湾岸戦争以来、ずっと、大量破壊兵器を廃棄しなさい、そのことをきちんと証明しなさいと言って求めてきて、既に12年経って、今、最後のチャンスなんだよということを伝えている最中です。もちろんその最後のチャンスだということをきちんと伝えるということもあって、アメリカなどによる軍事的な圧力がどんどん高まっていく。それによってまたイラクが小出しにしているという状態が今続いているわけです。査察に対してどの程度協力しているのか、7日にブリックス委員長が改めて報告を出されると聞いておりますし、そうした内容の中で果たしてイラクがどこまで国際社会の要求に応えているのかということが明らかになってくるだろうと思います。大量破壊兵器をそういう形では持たないようにする、これはある意味では国際社会全体の強い願望でもあるわけで、北朝鮮に対しても既に核の開発を凍結することによって、例えばKEDOのようなアレンジが行われて、北朝鮮に抑制を求めていた。それを残念ながら最近になって、北朝鮮はその抑制を破って、例えば濃縮ウランによる核の開発に着手したようだとか、それからもう一つ、寧辺の黒鉛炉を再開する、また寧辺の核施設に派遣されていた国際機関、IAEAの査察官を追放する、封印を破るといった行為に出ているわけで、これに対しても今、国際社会がそういうことをしないようにという強い圧力をかけている最中です。ただ、この圧力には今のところ軍事的な圧力だとか、経済的な制裁といったような圧力が加えられているわけではなくて、あくまでもこの問題を平和的、外交的に解決していこうという方向で国際社会が動いているわけです。その意味ではドビルパン外相がおっしゃっている具体的な手だて、方法論について、今、その違いが果たしてどのようにあるのかということは、先程御指摘のように、ケースによって、または歴史、経緯によっても違いがあるということは当然でありましょうし、また、その効果が何処まであるかということを見極めた上で、各国と協議しながら、もし必要であれば次はどのような措置を取るべきかということを協議していくというのが、今、例えば日本と韓国、アメリカの間の緊密な連携ということの、大きな要因になっているんだろうと思います。ですから、ドビルパン外相の言われたことと、今、日本政府が言っていることの間に、別に開きがあるというようなことではなくて、あくまでも方法論を、しかも具体的なケースに対してどのように適応していくかということについては、大きな意見の違いがあるというふうには私は見ておりませんし、また、今国際社会がやっていることは、まさにドビルパン外相が言っておられることとそんなに差がないことではないかと思います。
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