報道官会見記録 (平成15年1月29日(水) 17:00~ 於:会見室)
脱北者
(問)北朝鮮から脱北した脱北日本人妻であるとか、在日朝鮮人の方、そういった方が日本に来られるケース、迎えるケースが今後も増える事だと思いますが、こうした人たちへの支援策というか、こういったものについて政府はどのようなものを検討しているのか、または実際問題、具体的に何かやっているのか、そういったことについてお聞きしたいのですが。
(報道官)戻って来られる方の中には、例えば交通費にも事欠くという困窮状態で助けを求めてこられる場合もあるわけで、これまでの例として交通費を援助したとか、その様な例がないわけではありません。しかし、個々、具体例についてはその時々の状況、それから他の国との関係の問題もありますので余り詳しくは申し上げることは出来ませんが、現実問題としては今までにも支援をしたことがあるし、これからもそういう支援が必要な場合には、出来るだけのお手伝いをする。しかし外務省として出来ることは大変限られておりますし、また今日戻ってこられた方についてはこれから生活を始められる上でも、我々も出来るだけのお手伝いをしたいと思っておりますけれども、私達だけではなくて日本政府の中で、それぞれいろいろな分野を担当しているセクションがあるわけですから、そうした他の省庁とも連絡をしながら何らかの方法を考えていくということになろうかと思います。これから先、具体的にどういう方法を考えるかということについては、今、日本政府部内で様々な検討は行っておりますけれども、まだどういうことというのは、やはりケース・バイ・ケースの面が多いために、具体的な方針をまとめるといった段階には至っておりません。
(問)関連して、北朝鮮を脱出して日本に来るまでのルートというものについては、これは今後も水面下で処理するのでしょうか、あるいは中国とか、関係する国際機関と何らかのルートというのを作ろうというふうに協議していくのでしょうか。
(報道官)私たちが承知しておりますところでは、先日かなりの数の方々が北朝鮮から逃れようとして、中国に入ったところで不法入国の疑いで中国当局によって拘束されたという出来事があったときに、ジュネーブに本部があります国連の難民高等弁務官事務所の中国の出先が、中国当局に対して、是非会って話をまずさせてほしいということ、北朝鮮に直ちに送り返すようなことをしないでほしいといったようなことを申し入れたと聞いております。私たちだけではなくて、国際機関の中でもそういった問題を検討するところも出ているということですので、具体的にどういうルートということは別にして、いろいろなところがいろいろな形で関係をしてくるということもあろうかと思います。これは日本だけで処理が出来る問題では決してありませんし、様々な方々の協力を得ながら出来るだけそうしたケースがあった時、特に日本人ということがはっきりしている場合には、出来る限り力を尽くして保護をして、帰国を実現するということに努めてまいりたいと思っています。
(問)日本人以外の元在日朝鮮人の方というケースについてはどの様に対処されるのでしょうか。
(報道官)それについても、やはりそのケース、ケースでもって考えていかなければいけないと考えておりますし、個々のケース、いろいろな例がこれからも想像されるわけですが、今、仮定の問題として、何をどうすると申し上げる段階には至っておりません。ただ、真っ先に私たちの頭に浮かんでくるのは邦人保護ということです。日本にゆかりのある方々についても、出来るだけのことを考えたいということを考えております。
(問)ゆかりがある人がいて、日本に入国される時の法的根拠、そういうものはどうなんでしょうか。
(報道官)これは外務省が担当するというよりも、例えば法務省が関係する問題にもなるわけでして、そうした意味でも先程申し上げたように関係する各省庁の間でも協議をし、どんなことが考えられるかということを、それこそ日本政府の中心である内閣府、官邸も含めて検討して頂くということになると思います。
(問)いわゆる、今日帰国された日本人妻の方のことなんですが、外務省はこれまで、こうした会見の場では、個々の事案については一切答えられないということでしたが、今回の件については、先程のお話では本人及び家族の方に身の安全に危険があると。一方で今回、この件についてああいう形で外務省として明らかにされた理由というのはどういうことなんでしょうか。
(報道官)やはり何と言っても、今回残念なことに、この御本人の方の日本への帰国を巡って、他の人物が関係していて、しかもその人物が日本政府に対して身代金とも思われるようなかなりの金額の支払いを要求し、その要求に応じなければこの方を北朝鮮側に引き渡すという脅しとも思えるような発言を繰り返して、しかも居場所は転々として明らかにしない。極めて特異な例だったと思います。そうした事実を果たしてどこまで、理解をして頂いたのかどうかは別にして、残念なことにそれとは異なるような一部の報道もあったりしたため、事実関係を明らかにすること、それからもう一つは、この女性が無事に日本に帰ってきたということを国民の皆様に知って頂く、安心して頂くという意味も込めて、今回、例外として御報告申し上げたわけです。私たちが一番心配しておりますのは、何と言ってもこの方のプライバシーの問題、身の安全の問題、更にこの方と、家族の皆様の安全ということを考えると、これ以上のことを申し上げることは極めて危険だという気もしますので、これ以上のことは申し上げないし、出来るだけこういうケースは静かな形で、特に本人ということが分からないような形で無事な帰国を実現していきたいと思っております。
(問)これ程高額な金銭を要求されたというのはこれまでにあったのでしょうか。
(報道官)私が承知しております限りでは、今までは例がなかったと思います。
(問)こういう例はなかったということでしょうか、身代金を要求するとか。
(報道官)はい。
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ブッシュ米大統領の一般教書演説
(問)今日、ブッシュ大統領の一般教書演説がありましたけれども、その内容に対する感想、どう受け止められますか。
(報道官)ブッシュ大統領、いろいろな問題についてお触れになったわけですが、敢えてここでイラクの問題と北朝鮮の問題について申し上げさせて頂くとすれば、イラクの問題については2月5日に安全保障理事会を召集するということを提案されて、その場にパウエル国務長官が出て、イラクが如何に、今まで国際社会から求められている査察、大量破壊兵器、更にテロ組織との関係、そうした問題についてアメリカが持っている情報を明らかにしつつ、そうした点を国際社会に示していくという方向を示されたと承知しております。これは、先程も川口外務大臣とイラクのシャーキル臨時代理大使の会談で、川口外務大臣が伝えたことでもあるのですが、出来るだけ平和的な解決を求めていきたい、そのためにイラクがもっと能動的に査察に協力すべきだと私たちは考えているわけですが、そうしたイラクに対する呼びかけを更に強めて、国際社会の連帯を維持し、強めていくという効果がある、アメリカ側の思い切った措置だと思っております。そうした点でブッシュ大統領、それからアメリカ政府の努力を多としたいと思います。私たち、これから国連安全保障理事会でどの様な報告が行われ、またはどの様な論議が展開されるのか、重大な関心を持って見守っていきたいと思います。
同じことは北朝鮮についても言えることで、ブッシュ大統領は北朝鮮の核問題を解決する上で、韓国、日本、中国、ロシアとも連携を取りながら北朝鮮に対して核開発計画を放棄すること、やめることが、北朝鮮側が国際社会の中でそれなりの地位をきちんと維持し、北朝鮮の国民にとってもそれがプラスになることなんだということを諄々と説いたわけでありまして、私たちが今まで続けていた努力を今後とも続けていく意思表示と受け取って評価しております。
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報道官会見記録 (平成15年1月22日(水) 17:00~ 於:会見室)
北朝鮮(アーミテージ米国務副長官の包括提案、ロシュコフ露外務次官の訪朝、邦人保護、NGOの会見)
(問)先日、アメリカのアーミテージ国務副長官が言及した北朝鮮の核開発問題を巡る包括提案について外務省としてはどの様にお考えでしょうか。
(報道官)今までいろいろな形でアメリカ政府がこの北朝鮮の問題についてどの様に対応するかということが様々な形で出ていたわけですけれども、大統領の発言を始めとして、それを集大成して、これがアメリカの考え方だということを極めて明確に示されたという点で、その内容を私たちは高く評価しております。北朝鮮側がこのアメリカ側の提案を真摯に受け止めて、前向きにこれを検討し、一刻も早く核兵器の開発の廃棄を含めて、アメリカ側に対して回答すること、また、そういうことになれば、私たち日本側としても日朝交渉が今止まってしまっておりますけれども、そうしたものも前進を始めるのではないかということを期待しておりますので、北朝鮮側の対応に期待したいと思っております。
(問)この案の中で、軽水炉の建設に替わって火力発電所の建設についての案がありますけれども、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
(報道官)これは、今のところまだKEDOの中で具体的に出ている話ではなくて、一つの案としてアメリカ側はむしろこちらの方が早く完成するということも踏まえての提案だろうというふうに承知はしております。けれども、まだ具体的にこれをどういうふうに扱っていくかというような話はKEDOの中でも出ておりません。従って、これもアメリカと北朝鮮の話し合いもあることでありましょうし、それに基づいてKEDOの、特に日米韓、それからEUも含めた検討が将来行われると思います。今の段階ではまだ検討は始まっておりません。
(問)確認ですけれども、今、アーミテージ提案を高く評価するとおっしゃったのは、アメリカが包括的に北朝鮮の対応をこの時期にまとめた、あるいは発表したということを評価されたということなのか、それとも今後に検討が委ねられているこの火力発電の点を含めて個別の提案内容を指して高く評価されているというのか、どちらなんでしょうか。
(報道官)北朝鮮側からもいろいろな反応が今まで出ていたわけですけれども、それに対してアメリカ側からは、大統領を始めとしていろいろな方々が、例えばアメリカは北朝鮮を攻撃する意図は全くないといったような発言が幾つか出ておりました。しかしそれを北朝鮮に対するメッセージの形でまとめて提案をしたこと、北朝鮮に対してアメリカ側が考えていることが一点の曇りもなく伝わっていくということ、それが大変に重要でありますし、またその内容については私たちも北朝鮮に対するアメリカの提案として確認をしておりますし、それを北朝鮮側が前向きに捉えること、そちらの方に期待したいという意味です。
(問)ロシュコフ・ロシア外務次官と金正日が会談した内容について、ロシア側から外務省に対して説明なり連絡なりあったのでしょうか。
(報道官)まだ入ってきておりません。先日、外務大臣も発言されたとおり、私たちとしてはロシア側からその内容について何らかの形でもって通報があるものと思っておりますけれども、今のところまだ入ってきておりません。
(問)今日、一部報道で朝鮮半島有事を想定して、邦人の避難についてアメリカと韓国の具体的な協力を呼び掛けるという趣旨の報道がありましたが、そういう方針でいらっしゃるのかということと、それとは別に日米の間ではガイドラインに基づいてそういった協力をしようという検討が進められていると思いますが、その進捗状況は今どんな感じでしょうか。
(報道官)まず前段の方の御質問ですが、あらゆる場所において緊急事態が発生して、そこにいらっしゃる邦人の方々をどのように無事に退避させるかということは、常に一番重要な、外務省にとっての課題であるわけで、これは外務省というよりも日本政府全体の課題であるわけです。従って常にいろいろな検討をしておりますけれども、具体的に朝鮮半島の有事について、アメリカ、韓国と話し合っているかということについては、そういう事実はございません。検討しているという段階です。それからもう一つ、ガイドラインの話がございましたけれども、ガイドラインの中では、一旦非常事態が発生した時には日米双方が協力しあって民間人を救出するという取り決めになっているわけで、その協議は行っておりますが、具体的な進捗状況ということになりますと、細かい内容については今は申し上げる段階には至っておりません。
(問)昨日、NGOの団体の方が明らかにした脱北者の問題なんですが、その中に在日の方が含まれているという報道もあるのですが、この方の引き渡しというものを中国政府に日本として求めているのかどうか、対応についてお聞かせください。
(報道官)この件に関しては現在日本側から中国政府に対して事実関係を照会しているところです。また、様々な形で情報収集に努めております。事実関係、もしくは情報収集の結果が出た段階で今後の対応についてどの様にするか検討したいと考えておりますが、今の段階で個々のケースについて具体的にどの様なことをやっているというようなことを申し上げる段階には至っておりません。事実関係の照会といったところです。
(問)このNGOの団体は、国際機関に対して難民認定をしてほしいというようなことを言っているわけですが、今回、船で50人の方が出国したということなんですが、今後も、大人数で日本に来るということも考えられるのですけれども、日本政府として対応を検討されるつもりはありますでしょうか。
(報道官)先日、竹内事務次官の方からも申し上げましたように、日本政府としては今までのこうした問題について国際機関、特に難民の問題になりますと国連難民高等弁務官事務所がその責務を負っているわけですけれども、そちらとこの問題について協議を続けて参りました。たまたま、今日本を訪れております高等難民弁務官事務所のモジャン高等弁務官補と、日本側、外務省が中心でありますけれども、定期協議をやっております。この席でも、いわゆる脱北者、北朝鮮から中国に逃れてきた人たちの扱いについて、どの様なことが考えられるかという話し合いをしているところです。今回の件について、国連難民高等弁務官事務所が中国側に対して、まず面会を認めるように要請し、更に逃れてきた人たちを直ちに北朝鮮に送り返すことのないようにという申し入れをしたということは承知しておりますし、そうした意味で国連高等難民弁務官事務所が実際に行動されているということは私たちも評価しております。そうした動きを通じて、こうした問題が円満に解決し、逃れてきた人たちが無事でいる、そういうことを切に願いたいと思っております。
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