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「プール金」問題に関する調査結果報告書

平成13年11月30日

1.総括

 外務省においては、去る7月に九州・沖縄サミット準備事務局の職員がハイヤー契約に係る不正事件により逮捕、翌月起訴され、また、9月には平成7年のアジア太平洋経済協力(APEC)関連会議に係る不正事件により職員が逮捕・起訴されるに至った。これらの極めて遺憾な事件は、いずれも職員がそれぞれの部局の予算により取引先にいわゆる「プール金」を設け、これを不正に着服したものであった。そこで、外務省としては、他の省内部局の取引先との関係がどのようになっているかについて緊急に調査を行い、その結果に応じ必要な措置をとることが不可欠と判断した。
 外務省は、7月19日に「綱紀引き締めのためのプロジェクト・チーム」の下に「調査・再発防止のためのタスク・フォース」を設置し、園部監察担当参与及び監査法人の指導と助言を得つつ、平成7年4月以降13年7月迄の約6年半にわたる当省とホテル、ハイヤー、事務機器、旅行代理業及び百貨店の各分野の取引先計31社との取り引きの実態について調査を行ってきた。その結果、これらの取引先のうちホテルを中心とする計12社にいわゆる「プール金」があり、また、省内の71課室(全課室は119)が「プール金」を有してきていることが判明した。
 「プール金」は、外務省が経費を支出する各種行事(外国の賓客やその他要人の招聘、国際会議、レセプション等)の一部において、外務省から取引先に実績を上回る支払いがなされた結果生じたものであり、これを諸外国要人の本邦における接遇に関連して生じた経費(ホテルにおける連絡室の設置等)、諸行事に際しての弁当代など職務に関連した経費の他、職員間の懇親の経費等に充てていたものである。職務に関連した経費と職員間の懇親のための経費の割合は、概ね半々であった。

 調査の結果、今般、外務省員が費消した「プール金」として、約1億6000万円という額を算出するに至った。また、現時点においてホテル等に合計約4240万円の残高が計上されていることが判明した。外務省としては、「プール金」が省内で広くみられた慣行であったという事実を重く受け止め、職務に関連したもの及び職員間の懇親のためのものの双方につき、費消した「プール金」の全額を、利息を付して国庫に返還することとした。その際、職員が負担を分かち合うことが重要であり、勤務地の内外を問わず職員が下記4.(2)に従ってそれぞれの職責に応じて負担を行うよう呼びかけることとした。
 ホテル等にある上述の4200万円余りの残高については、取引先に返還を求め、国庫返納の手続をとる。
 また、大変遺憾ながら、「プール金」を特定個人が私的に使用していたケースが判明したので、これについては別途報告する。

 このような不適正な行為が行われてきたことは、誠に遺憾であり、国民の皆様に深くお詫び申し上げる。この不祥事に対する責任を明確にするため、関係職員の処分を厳正に行うこととした。
 今回の「プール金」の問題の背景には、何よりも省員の公金の使用・管理に対する認識の甘さという基本的な問題がある。この問題の解決のため、職種を問わず、公務員としての原点に立ち戻った倫理観の養成のための研修や会計研修を徹底する。また、既に調達の一元化を進めるとともに監察担当部局を立ち上げたが、年内にも監察を開始することとしたい。今後は取引先の協力も得つつ、取引先との契約内容の見直しに加え、取引状況を定期的に精査する等の措置を講ずる。さらに、従来の予算執行上の手続の運用等の実態を調査し、関係省庁との間で必要に応じて協議を行いつつ、現実に即した規則の見直しや予算の確保に取り組み、併せてその合理的な運用に努める。

2.調査の概要

(1) 調査対象の取引先
 最近の当省との取引実績額に基づき、ホテル10社、ハイヤー会社8社、旅行代理業者6社、事務機器会社5社、百貨店1社、会議運営会社1社の計31社との取引を調査の対象とした。

(2) 調査の対象期間
 今次調査は平成7年度以降本年7月末までを対象期間とした。これは、当省の文書管理規程による会計関連の証拠書類の保存期間(5年間)に基づき決定してものである。なお、他の公的機関における過去の類似のケース等をも参考にした。

(3) 調査方法
 取引先の協力を得て、外務省との取り引き状況に関する資料を入手し、必要に応じ取引先関係者からの聞き取り調査も行った。当省側では、全課室から「プール金」の有無等について聞き取り調査を行い、また、会計関連書類による裏付け調査を行った。基本的には取引先の資料・認識と当省側の資料・認識の突き合わせの作業が中心であった。
 なお、刑事被告人である浅川元職員が関与した「プール金」については、現在浅川元職員に対する刑事手続が進行中であることから同人から事情を聴取することが困難であり、また、関連資料の多くを捜査当局が管理している等の制約もあり、今般結論を得るに至らなかった。今後更に調査を進め、事実関係が判明次第然るべく返還請求を行うこととなる。

3.調査の結果

(1) 全体
 平成7年度以降現在までに「プール金」が存在したのは主としてホテル(株式会社ニューオータニを含む5社)であり、ホテル以外には旅行代理業者(社団法人国際交流サービス協会)、ハイヤー会社(日の丸リムジン株式会社を含む4社)、事務機器販売会社1社及び会議運営会社1社にそれぞれ「プール金」が存在した。

 取引先形態別の残高及び費消額は以下のとおり(千円単位)。
  残高 費消額
ホテル(5社)      
  株式会社ニューオータニ 31,098 119,697 150,796
  他の4社合計 8,861 34,454 43,315
旅行代理業者(1社)      
  国際交流サービス協会   4,210 4,210
ハイヤー会社(4社)      
  日の丸リムジン株式会社   332 332
  他の3社合計 674 1,255 1,929
事務機器販売会社(1社) 11 28 38
会議運営会社(1社) 1,762   1,762
42,406 159,976 202,382

 「プール金」の使途の態様は各課室によって異なるが、諸外国要人の本邦における接遇に関連して生じた経費(要人の随行者の接遇経費、要人に対する予算単価以上の設宴、要人の宿泊するホテルにおける外務省連絡室の設営、緊急の配車等、予算執行上認められにくいもの乃至認められるとしても手続きに時間がかかるものの手当てを臨機応変に行うための経費)、本来であれば予算が認められる可能性のある会議経費であるが一件毎の決裁の手間を省くために「プール金」から充当した経費、諸行事に際しての弁当代、職員間の懇親の経費などが主な例である。

(2) ホテル
 ホテルでは5社に「プール金」が存在した。
 「プール金」についてはホテル側認識と当省側認識との間に乖離のあることが多く、ほとんどの場合に、ホテルと各課室との間で「プール金」の額を常に確認し合うようなことが全く行われていなかったことが明らかになっている。

(3) 旅行代理業者
 「プール金」を有していた課/室では、被招聘者に同行する職員の出張等招聘事業関連の費用や残業時帰宅用のタクシーなどのために使用していた。

(4) ハイヤー会社
 ハイヤー会社では4社に「プール金」が存在したが、「プール金」を有していた課/室では、外国賓客や公務の際の職員の移動用などに使用した。

(5) 事務機器販売会社
 1社に「プール金」を有していた課/室では、文房具などの購入に充てていた。

(6) 会議運営会社
 1社に「プール金」を有していた。

(7) 各部局毎の「プール金」の残高及び費消額(千円単位)
  残高 費消額 合計
大臣官房 4,331 14,376 18,707
報道官組織 743 4,223 4,966
文化交流部 2,925 8,120 11,045
領事移住部 1,021 3,285 4,306
総合外交政策局 401 3,759 4,159
軍備管理・科学審議官組織 215 373 589
国際社会協力部 334 5,127 5,461
アジア大洋州局 5,505 22,362 27,867
北米局 1,197 8,512 9,709
中南米局 1,114 5,690 6,804
欧州局 6,080 22,578 28,658
中東アフリカ局 3,710 24,103 27,813
経済局 13,241 26,036 39,277
経済協力局 1,472 2,942 4,414
条約局 59 8,068 8,127
国際情報局 54 422 476
研修所 4 0 4

4.対応

(1) 残高の返還
 本調査を開始した時点から、取引先には現在ある「プール金」の返還を申し入れた。今般本報告書を作成するに当たって「プール金」の残高について確認するとともに、国庫に返還することについて関係するすべての取引先から同意を得たので、今後速やかに手続をとる。

(2) 費消額の返還
(イ) 職員の負担
 次の通り職員に負担を求めることとする。(10月31日現在の官職をもって算定。)
【本省】
○事務次官+外務審議官+官房長 ・・・・・ 各50万円
○上記以外の指定職の幹部 ・・・・・ 各40万円
○11級の職員(参事官、課長クラス) ・・・・・ 各30万円
○10級の課長・室長及び9級の室長 ・・・・・ 各20万円
○企画官及び首席事務官 ・・・・・ 各10万円
○課長補佐手当を支給されている課長補佐 ・・・・・ 各3万円
○その他の賛同する職員 ・・・・・ 任意の額

【在外公館】
特命全権大使(待命を含む) ・・・・・ 各50万円
総領事+特命全権公使+指定職の公使 ・・・・・ 各40万円
11級の職員(公使、参事官、領事) ・・・・・ 各30万円
10級の職員+9級の職員で室長経験者 ・・・・・ 各20万円
上記以外の9級の職員及び8級の職員で企画官ないし首席事務官経験者 ・・・・・ 各10万円
上記以外の8級の職員及び7級の職員 ・・・・・ 各3万円
その他の賛同する職員 ・・・・・ 任意の額
(ロ) 返還時期
 本年中に職員等からの負担分の徴収を了し、今年度内、即ち平成14年3月31日までの返還を期す。
(ハ) 返還方法
 職員は返還資金の徴収、とりまとめ及び国庫への支払いを行う任意団体として「外務省員等返還会」を設立し、同返還会を通じて国に一括返還する。

(3) 職員の処分
 個々の課室の「プール金」の発生又は使用に関与した職員をそれぞれ次の通り厳正に処分する。首席事務官以上については、「プール金」の存在を承知していなかった場合であっても、監督責任を問うこととした。
 また、現在の事務当局の最高責任者である事務次官について懲戒戒告処分、また、平成7年度以降の官房事務の総括責任者である歴代官房長及び会計事務の責任者である歴代会計課長については、外務大臣名による厳重訓戒処分とした。

処分対象者総数: 328名

【当時の役職別内訳】
  局長以上 課長等 首席事務官 会計担当
懲戒免職 0 0 1 1 2
懲戒停職 0 0 0 3 3
懲戒減給 0 0 0 4 4
懲戒戒告 1 3 0 0 4
厳重訓戒 11 16 13 9 49
訓戒 8 40 36 34 118
厳重注意 14 30 31 24 99
注意 7 12 12 18 49
41 101 93 93 328
【現在の役職別】
大使級 32名
本省幹部(局長以上) 次官、両外務審議官、官房長、外務報道官、総合外交政策局長、アジア大洋州局長、北米局長、経済局長、 国際情報局長、研修所長

【歴代大臣官房責任者】
歴代官房長 5名
歴代会計課長 5名

5.原因と再発防止策

(1) この「プール金」問題の発生を許した主な要因としては、以下が挙げられる。
  • 省員全般において公金に対する認識の甘さがあったこと。
  • 物品やサービスの調達について多くの場合、各局課が主体となって調達関連事務を行ってきたにも拘わらず、各課管理職にある省員の会計事務に対する知識と関心が十分でなく、課単位及び省全体のチェック機能が十分に働いていなかったこと。
  • 当省と取引関係にある民間企業等に対し、会計法令上、原則として「プール金」のような前払い金発生は想定されていない処理である旨周知されておらず、また、事後の精算を迅速に行うよう、当省より取引先に対し積極的な措置がとられていなかったこと。
  • 原局課においては、外国からの賓客の動きに臨機応変に対応するためにある程度の資金を手元に用意しておきたいといった誘因が強く働いたこと。

(2) 以上を踏まえ、当省としては具体的な再発防止策として次の各措置を速やかに講じると共に、検討を継続し、随時追加的措置を執っていく考えである。
  • 省員に対する会計研修を徹底する。
     特にI種職員及び専門職職員に対し、会計事務に対する知識と関心を高めるための研修を行う。
     また会計事務担当職員に対する会計教育の充実を図り、この一環として会計関連マニュアルを改訂する等、会計手続及びノウハウについて個人に依存しない体制をつくる。
  • 調達の一元化を進めると共に、先般立ち上げた監察担当部局の体制を早急に整備していく。
     監察担当部局は随時(ただし少なくとも1年に1回)、大手取引先企業等に対し、当省との取引に係る「プール金」の有無を調査する。
     また本邦における国際会議等の大規模行事や、大規模行事以外についても必要と判断される場合には、物品・サービス調達の適正性を確保すべく、抜き打ち調査やサンプル調査等の具体的な措置を講じていく。
     また、「プール金」の存在等について疑義がある場合には、職員が監察担当部局に対して直接問題提起を行える制度を整備する。
  • 企業等との取引に際し、「プール金」が生じないよう契約内容においても改善を図る。また、省内での支出手続終了後、公金が先方口座に振り込まれるにあたって、会計課より当該企業の経理部門に対し、振込の対象となった取引の内容を通知する。
  • 予算執行上の手続の運用等の実態を調査し、公務の遂行のために必要な経費に対しては公費から適切に支出がされるようにするなど、現実に即した規則の見直しや予算の確保に取組み、併せてその合理的な運用に努める。


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