福島外務大臣政務官演説
OECD/MENAパブリック・ガバナンス閣僚会議(2月6日、於アンマン)福島政務官スピーチ(仮訳)
アブドッラー国王、
ファイサル首相、
ジョンストン事務総長、
ゲストの皆様
1.冒頭
本日、「中東北アフリカ諸国における開発のためのグッド・ガバナンス」会議という歴史的な会議に出席し、発言の機会を得たことは大きな喜びです。と言いますのも、私は、アラブの国々に大変親しみを感じており、ヨルダンを始め、この地域の8カ国との日本の友好議員連盟に所属しているからです。また、つい2ヶ月前には、パレスチナ自治区及びイスラエルに出張して中東和平に関する働きかけを行うとともに、リビアでは大量破壊兵器廃棄問題、及び、市場経済や人権に関する進展について意見交換を行うなど、私にとって中東地域は非常に身近な存在となっています。
私は、アラブ諸国が日本との友好関係を築いていくためにも、パブリック・ガバナンスの改善を実践していくことが重要だとかねてより考えております。また、パブリック・ガバナンス改革は社会の仕組みを広く変革する、難しい取り組みであるため、高い政治レベルでのコミットメントが大切だと考えておりました。今般、閣僚レベルで会議を開催することになったと聞き、アラブ諸国の強い意志の現れと感じました。本日、私は3点について、即ち第一に「アラブの伝統とガバナンス」について、第二に「パブリック・ガバナンス」について、そして第三に「ガバナンス構築のための日本の支援」について言及いたします。
2.アラブの伝統とガバナンス
ご列席の皆様、
アラブは長い文化・文明と伝統が豊かな地であり、かつてはヨーロッパのルネサンスを生み、そして今は地政学的に極めて重要な地域です。ガバナンスとは、つまるところ、統治機関と一般市民との間並びに一般市民の間の信頼及び協力関係の構築によって成り立つものです。また、この点は、企業を含む一般市民の重要な活動である「投資」とも相通ずるものと思われます。
MENA地域の経済発展に貢献しようとするOECDのMENAイニシアティブが、「投資」と「パブリック・ガバナンス」を二本柱としているのは必然であると考えます。さて、日本も長い文化・文明と伝統を有し、今日のグローバル化された世界でどう生きていくか、常に考えざるを得ない環境に置かれています。そうした中で、今申し上げたような「一般市民」を国造りの礎としてきました。
3.パブリック・ガバナンス
ご列席の皆様、
(1)私は、今申し述べた考え方を少々敷衍しますと、パブリック・ガバナンスの改善とは、単に国民の行政への期待と現実とのギャップを埋める取組というのではなく、何よりも社会構成員の相互信頼を軸として、生き生きと活力ある社会づくりのため、政府・ビジネス・市民社会の3セクターが、個人・組織・国や地域レベルで相互作用することにより、新しい関係を模索するプロセスだと考えています。その内容は、政策決定の透明性、行政サービスの質と速度の向上、法と秩序の整備、公企業を含めた情報公開など、政府活動のほぼ全てに亘る努力と言え、更には、3セクター全てにおける教育や人的開発という大きな課題も内包する取組です。伝統ある社会がグローバル化された社会に羽ばたくには、こうしたことが大いに役立つと思います。
(2)日本の経験について申し上げると、明治維新以前の近代国家建設にあたっては、第一にガバナンス、第二に教育及び人材育成、第三にインフラ整備を重視し、効率化を重視した関連法の整備にも努めました。戦後においては、これらの三点を引き続き政策上のキー・エレメントとしつつ、とりわけ社会における公正の確保を重視してきました。
(3)このように申し上げれば、パブリック・ガバナンスのあり方について、全ての国が画一的モデルを採用するのではなく、それぞれの社会に合ったガバナンス強化が行われるべきだと私が考えていると付言しても皆様は驚かれないと思います。まさに、今般、類似の社会を持つアラブ諸国が知恵を出し合うフォーラムが正式に活動を開始し、改革に向けた準備を整えたことは記念すべき一歩であり、必ずや地域発展のエンジンとなると信じます。
4.我が国の支援
日本としては、こうしたMENA諸国の強いオーナーシップに基づくOECD/MENAの2つのイニシアティブに連帯を表明します。具体的には、「開発のための投資プロジェクト」に関しては、ステアリング・グループの共同議長を務めているほか、資金面における協力も行ってきております。また、本日正式に発足する「パブリック・ガバナンス・プロジェクト」についても、日本がUNDPに設置しているUNDPパートナーシップ基金を通じて約10万ドルを支援するのは、このような共感をアラブ地域に感じるからであります。
またODAにつきまして、これまでにパブリック・ガバナンスの分野で二国間で行ってきた種々の協力も継続していきたいと考えています。これまで例えば、自治体行政、公共事業会計検査、政府の人事管理、警察行政などに関し、日本における研修事業を通じ、ノウハウや経験の提供による人材育成に協力してきました。また、ヨルダンにおいてパレスチナの判事に対する司法研修を行うというような海外における研修も実施しております。
5.結び
MENA/OECDイニシアティブでは、投資促進やガバナンス向上のため、従来のシステムに変革が必要となり、その過程においては多くの困難もあるでしょうが、皆さんがそれぞれの国を作っていくという気概を持って、着実に実施することが重要と考えます。
数年後、再びMENAの地域を訪れる際、生き生きとより活力ある社会を拝見できることを心より期待しています。
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