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演説

福島外務大臣政務官演説

保障措置と核セキュリティに関するアジア太平洋会議における
福島外務大臣政務官基調演説「保障措置強化の効用」(仮訳)


平成16年11月8日

(英語版はこちら)


(序)
議長、
ダウナー・オーストラリア外務大臣閣下、
エルバラダイIAEA事務局長、
各国代表団の皆様、
ご列席の皆様、

 本日、この「核テロを防護する保障措置と核セキュリティに関するアジア太平洋会議」に、日本国政府を代表して参加できましたことを、大変喜ばしく思います。

 保障措置と核セキュリティの問題は、現在国際社会において最も関心の高い問題の一つであり、今回の会議は、まことに時宜に適ったものであると考えます。また、今回の会議の対象であるアジア太平洋地域は、原子力分野でも最もめざましい発展を遂げている地域です。私は、まず、日本国政府を代表して、今回の会議を主催されたダウナー外務大臣閣下をはじめとするオーストラリア政府関係者の方々のイニシアチブとご尽力に対し、心からの敬意を表したいと思います。

(保障措置の強化)
議長、
 冷戦の終結によって、大規模な核戦争の脅威は低減しましたが、他方、核兵器の拡散の脅威は高まっています。近年、核拡散の地下ネットワークの存在が明らかになるなど、テロリストを含む非国家主体への核物質や放射線物質の拡散を如何に防ぐかという問題が顕在化し、北朝鮮等の核問題とともに、現在の国際社会が取り組むべき最重要課題の一つになっています。現行の核不拡散体制の「抜け穴」が指摘され、不拡散体制強化の重要性が叫ばれています。

 とりわけ、北朝鮮の核問題は、我が国の安全保障のみならず、北東アジア地域の平和と安定及び国際的な核不拡散体制への重大な挑戦です。北朝鮮の核問題は、拉致問題やミサイル問題とともに、外交的な手段を通じて解決することが重要です。我が国としては、この問題を解決するため、対話と圧力という考えのもと、米国および韓国と緊密に連携しつつ、外交的努力を傾注してきているところです。我が国は、北朝鮮が、速やかに、拉致問題を解決すること、並びに何らの前提条件を付すことなく第4回の六者会合開催に同意し、これに出席することを強く求めます。

 このような状況において、不拡散に関するブッシュ大統領の提案や、エルバラダイIAEA事務局長の国際核管理構想など、その「抜け穴」を塞ぐための方策が模索されています。しかしながら、現在の国際的な核不拡散体制の中核が、依然として核兵器不拡散条約(NPT)とこれを支えるIAEA保障措置であることに変わりはありません。従って、核不拡散体制を強化する鍵は、IAEA保障措置の強化にあると考えます。

 そして、我が国は、「追加議定書」の普遍化によるIAEA保障措置の強化こそ、現在のところ、核不拡散体制を強化するための最も現実的かつ効果的な方途であると確信しております。「追加議定書」は、従来の保障措置協定が、イラクや北朝鮮による核兵器開発疑惑を探知できなかった反省から策定されたものであり、申告された核物質の検認のみならず、未申告の核物質及び原子力活動の探知をも目的とする画期的なものです。この「追加議定書」により、IAEAの保障措置は大幅に強化されたものと考えています。

 しかしながら、「追加議定書」によって強化された保障措置が真の効果を発揮するためには、「追加議定書」が世界に広く行き渡ることが必要です。我が国は、志を同じくする国とともに「追加議定書」の普遍化のための努力を継続してきています。2001年6月、我が国は東京において、「アジア太平洋地域における核不拡散強化のための国際会議」をIAEAと共催し、その後も、中南米、中央アジア、バルト三国、アフリカにおけるセミナーの開催を支援しました。さらに2002年12月には、これらの各地域のセミナーの総括として、36カ国の参加を得て、東京において、「IAEA保障措置強化のための国際会議」を開催しました。

 こうした努力は少しずつ実を結びつつありますが、追加議定書の発効国数は、本年10月現在で61カ国であり、包括的保障措置協定締結国142カ国に比して未だ満足できる水準に達しているとは言えません。また、そのうち、東アジア、東南アジア及び大洋州諸国に限ってみれば、包括的保障措置協定締結国25カ国の中で6カ国に留まっています。更なる努力が求められています。

 無論、「追加議定書」が万能薬であると主張するものではありません。核不拡散体制強化のためには、IAEA保障措置を強化する様々な側面からの方策が活用されるべきでしょう。しかしながら、私は、「追加議定書」の普遍化こそが、まず達成されるべき目標であると考えております。この観点からも、この機会に、アジア太平洋地域の各国が早期に追加議定書を締結するよう呼びかけます。

(我が国に対する保障措置)
 我が国は、自らの原子力活動に関する最大限の透明性を確保すべく、常に率先して、国際的な核不拡散体制に参画し、IAEAの保障措置活動に最大限の協力を行ってきました。「追加議定書」についても、我が国は、豪州と並び、いち早くその重要性を認識し、1999年に原子力発電を行っている国としては初めてこれを締結しました。

 本年6月、IAEAによって、我が国の原子力活動に関して、我が国のすべての核物質がIAEAの保障措置下にあり、平和的目的のために利用されているとの趣旨の「結論」が出され、これを受けて、本年9月に我が国に対して統合保障措置の適用が開始されました。より多くの国が、「追加議定書」によって強化された保障措置を遵守し、統合保障措置の段階に移行できれば、IAEAの保障措置はそれだけ合理化・効率化され、ひいては国際的な核不拡散体制の強化に大きく資するものと考えます。

(核テロへの対応)
 テロリストの手に核物質や放射性物質等が渡ることを防ぐためには、国際協力が不可欠であり、また、各国国内における核物質管理及び輸出管理体制の強化を行うことが重要であります。この観点から、核物質を不法な取得及び使用から守ることを目的とする核物質防護条約の改正に係る最近の動きを歓迎するとともに、適用範囲を国内の輸送・使用・貯蔵及び原子力施設にも拡大するという形で措置を強化するために行われている条約改正交渉の早期妥結が望まれます。また、IAEAの放射線源の安全とセキュリティに関する行動規範を遵守することが重要であり、特に放射線源の輸出入に関するガイダンスに従って各国が国内規制を整備することが望まれます。

 更に、米露起源の高濃縮ウラン燃料及び使用済燃料の返還を中心に、国際社会の脅威になりうる核物質及び放射性物質を削減するための米国による「地球的規模脅威削減イニシアチブ」や我が国も参加しているIAEAの「核セキュリティ基金」を通じての活動も有意義と考えます。我が国は、「核セキュリティ基金」の一部を活用し、我が国が保障措置受け入れの経験から培った高度の計量管理技術の移転に係る支援を中央アジア等で行っています。このような核テロを直接防止する活動に加え、「追加議定書」の普遍化によって強化されたIAEA保障措置も非常に効果的であると考えます。「追加議定書」は、核物質のより厳格な国内管理を求め、IAEAの未申告の原子力活動を察知することを可能にするものであるからです。

(結び)
議長、
 来年2005年は我が国の被爆60周年に当たり、またNPT運用検討会議が開催される節目の年でもあります。この機会に、世界各国が核軍縮・不拡散へのコミットを新たにし、核兵器のない世界の実現に向けて着実に前進することを強く願っています。

 本国際会議の成功を祈念しつつ、私の基調演説を終えたいと思います。ご清聴ありがとうございました。



政務官 / 平成16年 / 目次


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