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演説

小野寺外務大臣政務官演説

第2回アジア文化協力フォーラム(香港)における小野寺外務大臣政務官演説(仮訳)


平成16年11月15日
英語版はこちら


 平成16年11月15日(月)~17日(水)、香港において、香港特別行政区政府の主催により、「第2回アジア文化協力フォーラム」と題する会合が開催されました。このフォーラムは、創造的産業(映画、アニメ、デザイン等)の発展に関する経験の共有、政府間協力の拡充、民間のイニシアチブの促進をテーマとしています。
 日本がこの地域において優勢を誇っている創造的産業の面で、今後ともリーダーとしてイニシャチブを発揮していく用意があるという姿勢をアピールするため、15日午前中に行われた閣僚会合には、小野寺外務大臣政務官が日本政府代表として出席し、「創造的産業こそ、アジアの域内協力を強固にする鍵となる」旨の演説を行いました(スピーチは英語。英文テキスト)。この会合には、中国の孫家正中国文化部長(大臣)をはじめ、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムより、関係閣僚が出席しました。



議長、
ご列席の皆様、

 私は本年9月に外務大臣政務官に就任しましたが、今回のアジア文化協力フォーラムへの出席が初の海外出張となり光栄に思います。本フォーラムの成功に向けて多大なる準備と努力をされた香港特別行政区政府に対し、敬意を表します。

 グローバル化の時代において、文化は益々、国と国の垣根を越えて共有されつつあります。日本では、中国の伝統楽器を演奏する「女子十二楽坊」が日本人の間で大きな話題をよんで成功を収めていることはご存じでしょうか。また、いま、韓国ドラマの「冬のソナタ」をきっかけにいわゆる「韓流」ブームが起きており、韓国を旅行したり韓国語を勉強したりする人が急増しています。最近の話題としては、本年10月末に開催された東京国際映画祭において、<アジアの風>部門が設けられ、30数本のアジア諸国の映画が上映され、アジア映画の注目の最新の動向がより多角的に紹介されたということがありました。

 日本の文化、特にポップ・カルチャーも元気であり、アジアや欧米で受け入れられ、「クール・ジャパン」といえる現象が起きています。例えばアニメ映画「千と千尋の神隠し」は米国のアカデミー賞を受賞しましたし、「ポケモン」や「キティ」ちゃんは海外でも愛されています。日本の人気歌手であるSMAPや、作家の村上春樹は海外でも多くのファンを有しています。また、日本の映画、例えば「シャル・ウィー・ダンス」や「リング」のように海外でリメイクされているものも多くあり、「ラスト・サムライ」や「メモリー・オブ・ゲイシャ」のように日本をテーマとした映画も数多く作られています。「メモリー・オブ・ゲイシャ」については、チャン・ツィイー氏が主演を務めると聞いていますが、中国を代表する女優が、ゲイシャに関する映画の主人公を演ずるということは、アジアのポップカルチャー交流の将来の可能性を占う上でも示唆的なものを感じさせられます。こうした日本のポップ・カルチャーは、日本がアジアや欧米との交流を通じて何世紀にもわたって育み、普遍性を高めてきた価値観を、現代のテクノロジーをフルに使って、新たな様式で表現しているものです。

 このような日本とアジア諸国の間の文化交流の現状を踏まえ、私は、以下の2つのことを強調したいと思います。第一は、文化は心の豊かさを育むと共に創造的産業を育成し、経済の活力を維持していくという意味で、これからのアジアの繁栄と世界への貢献にとって鍵となる分野であるということ、第二は、アジア諸国間の文化交流は、多様性を互いに認識し、尊重する精神を国民レベルで育成するとともに、国民間に一体感を醸成することを通じて、来たるべきアジアの様々な分野での地域協力を進める重要な土壌作りに繋がるという点です。

 では、まず第一のポイント、文化交流を推進することは、人々の心の豊かさを高め、創造的産業はこれからの経済の活力の源であることについて述べさせて頂きたいと思います。現在世界は21世紀に入っても、紛争の種は尽きないばかりか、テロ等新たな脅威が増しています。また、グローバル化の下、経済・貿易面の競争は激しさを増す一方です。このため、為政者の目も国民の目も安全保障と経済にばかり向きがちです。しかし、人間の真の幸福とは、心の豊かさを得ることです。安全も物質的な豊かさも、この人生の目的を実施し易くする為の手段にすぎません。しかし今やこの手段が自己目的化し、心の豊かさを育む文化の重要性を忘れがちです。グローバル化が多くの国民のアイデンティティーを危機に陥れている現状の一つはここにあるのです。また、これから経済的に成熟していくアジアや、日本のように高齢化が進む国にあっては、サービス産業とりわけ文化関連産業、いわゆる創造的産業が、経済の活力維持の鍵となります。人々は生活利便性を与える道具としてのモノではなく、その奥に秘められたメッセージ、即ち文化という付加価値に一層注目するようになるでしょう。そしてこうした文化産業は、文化活動の需要と供給を生み出します。人々は物質的に豊かになればなるほど、益々文化による心の充足を望み、また高齢者を含め、モノづくりの仕事の現場から離れた人々は、第二の人生において文化的・芸術的創造活動にエネルギーを費やすことになりましょう。このように、創造的産業こそ、これからの人類、とりわけ文化的伝統にあふれたアジア諸国にとって経済的・社会的活力維持の鍵となるのです。また、こうした産業が環境にやさしい産業であることも忘れてはなりません。我が国政府も色々な角度から、この分野の活性化のため今後力を入れていきます。

 次に第二のポイント、アジア各国が相互に交流を深め、相互の差異を認識し、尊重しつつも、同時にお互いが共通に持っている要素に思いを巡らせ、同じアジアの住民であることに対する一体感が醸成されることが、今後のアジアの地域協力の進展の鍵となることについて述べたいと思います。

 昨年、日本は、21世紀の日本とASEANが「共に歩み、共に進む」率直なパートナーシップを構築することを目指し、日本ASEAN交流年として両者間の文化交流を推進しました。市民や民間文化団体を中心とした様々な交流活動が行われ、日本とASEAN各国国民が友好を深めることが出来たと自負しています。特に、「J-ASEAN Pops コンサート」と称し、日本とASEAN諸国のポップス分野に於ける代表的アーティストが参加し、クアラルンプール、ジャカルタ、バンコク、横浜の各地でコンサートが行われました。本コンサートに出場したある日本のグループのリーダーによれば、そこで醸し出されたのはアジア人であるという共感と、日本人であることの自覚であったことです。

 アジア諸国がお互いの交流を進め、その中からアジア共通の価値観を見出し一体感を深める、そして各国の文化が、アジア文化の中でどの様に位置づけられるかということについてより良く把握する、こういったプロセスを通じて、アジア各国国民のアジア及び各国の文化に対する理解がより深みを増したものとなり、アジア及び各国の文化がより魅力あるものとなるのです。そして、平和、調和を重んじるアジアの価値観がより力強く世界に発信されることは、21世紀の人類の文明の行方にとって大きく貢献することでしょう。

 日本としては、私が述べたように、日本文化の発信と共に、アジア各国の文化を積極的に吸収し、アジア各国の一体感を醸成し、その価値観を世界に広めていけるような文化交流事業を推進していきたいと思います。文化芸術を創造し、伝播し、吸収し、発展させるのは個人です。政府の役割は、文化の中身に干渉することではなく、個人の才能がのびのびと発揮され、それが産業として育ち、そして世界各国と交流することを奨励するような政策をとること、無用な障りをとり除くことにあると考えます。とりわけ我が国は文化の交流を最も効果的にもたらすのは人の交流であるとの観点から、人の往来を増やすべく、2003年度からビジット・ジャパン・キャンペーンを展開しています。2003年の日本への外国人旅行者数は521万人にのぼりました。本年も600万人にのぼる勢いで増えています。明年は、愛知万博や中部国際空港開港等の機会を捉え、より多くの外国人、特に未来を担う若者やアーチストが日本を訪れ、日本の文化に直接接することを期待しています。

 アジア諸国が一同に会する本フォーラムにおいて、文化面での取組みについて活発な議論が行われ、斬新なアイデアが生まれることを期待しております。

 ご静聴有難うございました。


政務官 / 平成16年 / 目次


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