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逢沢外務副大臣演説
テロ資金供与防止条約締結促進セミナー
逢沢副大臣による開会の辞 1.(はじめに) 外務省を代表しまして、皆様の「テロ資金供与防止条約締結促進セミナー」ご参加を心より歓迎致します。 今年2月に開催された、バリ・テロ対策閣僚会議において、私は12本あるテロ防止関連条約全ての早期締結・実施の重要性を強調し、本日ご参加の各国の閣僚の方々に対して、そのための政治的イニシャチブを発揮するよう呼びかけたところであります。 またその会議に参加して私は、条約締結に向けての政治的意思はありながらそのために必要な技術的能力が不足している国々に対して、技術支援を実施していく必要性についても認識したところです。 このような観点から、条約締結における経験と知見を共有することを目的としたセミナーを、我が国で開催できたことを大変喜ばしく思います。また、今回のセミナーを我が国が開催することは、バリ・テロ対策閣僚会議のフォローアップのプロセスにおいて、テロ行為の条約による「犯罪化」を進める分野でのコーディネータ役としての貢献でもあります。 2.(テロ情勢) 2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、国際社会はテロとの闘いにおける協力を強化し、多くの進展が見られました。しかしながら、今なお世界中で多くのテロが発生し、東南アジア地域においても本年9月のジャカルタでの豪州大使館を狙ったテロに見られるとおり、国際テロの脅威は依然深刻であり、この点皆様も同感して頂けると思います。 様々なテロ組織の中でも、とりわけアル・カーイダや東南アジア地域において最大の脅威であるジュマ・イスラミーヤ(JI)は、自由かつ開かれた社会の特質や、国際的な運輸・通商・金融取引の発展に伴って拡がった、人・モノ・資金のグローバルな流れを悪用しています。 このような、国際テロ組織のネットワークを根絶することは、一国のみでは不可能であり、国際社会がテロとの闘いにおいて一致団結することが不可欠です。 3.(テロ資金供与防止条約の重要性) この点で、12本のテロ防止関連条約を締結することは、これら条約に規定された犯罪を犯した者は誰であれ、またどこにいるかを問わず、引渡しないし訴追することを確保する上で、極めて重要です。そして、全ての国々が、これらの条約をできるだけ速やかに締結することが、テロリストが網の目をかいくぐることを防止する上で不可欠なものです。 私は、テロ防止という目的において、12本のテロ防止関連条約のうちでも、特にテロ資金供与防止条約の締結が極めて重要である点を指摘したいと思います。それは、資金というものがテロ行為を準備する上での重要な要素であり、この条約はテロ行為が実際に行われたか否かを問わず、テロ資金供与行為を犯罪化しているためです。 4.(テロ資金供与防止条約締結状況) ただ、残念ながら、アジア太平洋地域は他の地域に比べ、テロ資金供与防止条約の批准・履行状況が悪いことを認めざるを得ません。すなわち、全世界で117国がこの条約を批准している中、ASEAN10カ国のうちこの条約を批准しているのは5カ国に過ぎません。 この地域がテロ資金供与防止条約の批准及び履行において進展を見せなければ、テロリストに対して、アジア太平洋地域ではテロ対策が十分に進展していないというメッセージを送ることになります。それは、アジア太平洋地域がテロとの闘いのグローバルなネットワークにおける抜け穴であると、テロリストの眼に映ってしまうことになると言えるでしょう。 言い換えれば、この条約の締結の遅れが、テロリストをこの地域に呼び込むことになるということであります。これが、我々に対するテロの脅威をより高めるものであるという点については、皆様にもご理解頂けると思います。 5.(犯罪化) 私は、この条約の締結、すなわちテロ資金の供与を犯罪化することの重要性を強調いたしました。この点で指摘したいのは、犯罪化とは、テロ防止関連条約の締結及び関係国内法規を通じたその履行ということに他ならないということです。国連安保理決議1566には、テロ対策のための地域的協定はテロ防止関連条約を代替するものではないと明記されています。これを念頭におけば、地域的枠組みでのテロの定義といったことに努力を払うのは、非生産的であります。 また、もし各国が12本のテロ防止関連条約に従ってテロ行為を犯罪化すれば、犯罪人引渡における「双罰性」の条件を満たすこととなり、関係国政府間での円滑な引渡・司法共助が容易になります。 6.(条約締結に向けた政治的意思) 私は、テロ防止関連条約締結の重要性について言及しましたが、同時に、各国の実務担当者のみによって、その目標を達成することは困難であるという点についても理解しております。テロ防止関連条約締結に向けての国内のプロセスを速めるためには、各国において、政治的意思をさらに強化することが不可欠であるという点を明確にしたいと思います。 この点に関し、つい一昨日、小泉総理大臣とASEAN諸国の首脳が「国際テロリズムとの闘いにおける協力に関する日・ASEAN共同宣言」の発出に合意しましたが、この中において、ASEAN諸国はテロ防止関連12条約全てを緊急の課題として締結することを要請されています。これは、条約締結促進に必要な政治的意思が首脳レベルで確認されたという点で極めて重要です。 7.(キャパシティ・ビルディングの重要性) 更に、私が申し上げたいのは、一部の国々は、条約締結に向けた強い意思があるにもかかわらず、条約の締結・履行のために必要な技術的資源が不足していることです。 この点で、そのような国々に対するキャパシティ・ビルディング支援をさらに強化することが必要不可欠です。テロ防止関連条約締結の分野におけるキャパシティ・ビルディング支援において、今回のセミナーが技術的障害を取り除くという点で大いに貢献できることを、私は切に希望しております。 日本としても、技術支援の強化について引き続き積極的に取り組んでいく考えであり、その一環として国連薬物犯罪オフィス(UNODC)の技術支援プログラムに対して貢献を行うことを真剣に検討しています。そして他の先進国に対しても、同様の努力を呼びかけたいと思います。 キャパシティ・ビルディング支援のための日本の努力はテロ防止関連条約に限られたものではありません。「国際テロリズムとの闘いにおける協力に関する日・ASEAN共同宣言」においても、法執行機関間の協力、テロ資金対策、出入国管理、交通保安等のキャパシティ・ビルディングを中心とする11項目の協力分野が明示されています。日本は既に様々な形でアジア太平洋諸国に対するテロ対策のための協力を実施してきており、今後さらに協力を強化していく所存です。 8.(結語) 最後に、皆様の訪日とセミナーへの参加をあらためて歓迎申し上げるとともに、特にUNODCと国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)からのご参加に対して、謝意を表したいと思います。そして、このセミナーが実り多く意義あるものとなり、条約締結の促進に貢献することを希望しております。 有り難うございました。 |
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