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茂木副大臣挨拶 国連機関共同アピールと日本
平成14年11月20日 ジム・モリスWFP事務局長、 ご列席の皆様、 (序) 今日、世界8都市で国連は緊急アピールを出します。 国連は、第2次大戦後の世界のガバナンスをつかさどる機構として創られました。近年における国際社会は、私たちの予想をはるかに越えるスピードでグローバル化という実態が進んでいます。世界を律するルールはそれに追いつかず、また、あらゆる次元でガバナンスの基礎をなすべき人々の「参加」は確保されるどころか、世界人類の5人に一人は極貧にあえぎ、700人に一人は結核にかかり、250人に一人は殺し合いを逃れてふるさとからはるか離れた土地で仮の宿に夜露をしのいでいます。 1.90年代の世界 思い返しますと、1990年代は希望と絶望の交錯する十年でした。共産主義という悲劇に満ちた実験がソビエト連邦で終り、人類はついにイデオロギー論争から開放されたかに見えましたし、情報通信技術は等比級数的に発達し、新しいビジネス・モデルは世界中に富をもたらす魔法の絨毯のように輝いていました。この新しい世界が与えてくれたチャンスをつかんで大きく飛躍した国も多く、また、それまでの暗いイメージを一新した国もありました。 ところが、このような動きに無縁で、経済成長や社会の発展からずるずると滑り落ちて行く国も現れてきました。深刻なのは、例えばサブ・サハラ・アフリカに見られるように、途上国の間に較差が静かに、しかし着実に広がり始めていることです。サブ・サハラ・アフリカ47カ国のうち、約20か国は年率4ないし5パーセントの経済成長を続けており、中には数年前のモザンビークのように13パーセントを越える経済成長を遂げる国も見られました。しかし、残りの国の経済は低迷し続け、多くの国では一日一人1ドル以下の生活を余儀なくされています。 2.9月11日の意味するもの 一年二ヶ月前、夜の、これは日本時間ですが、テレビニュースを見ていた私たちは、現実のものとは思えない光景を、ライブで目の当たりにしました。9.11の連続多発テロ事件です。この9月11日のテロ攻撃は、罪のない一般市民を民間航空機とともに武器に仕立て、多くの市民を民間ビルとともに無差別の攻撃対象とする、人類史上類を見ない卑劣なものでした。米国だけの問題ではありません。少なくとも24人の日本人がその犠牲となりました。あの攻撃は、私たちが考えてきた国家の形であるとか、国際関係というものが大きく変わっていることをもまた見せつけたのです。伝統的な国家は、国民、領土及び権力から成り立ってきましたが、2001年9月11日には、そのいずれをも持たない、いわゆる非国家主体が誰もが考えなかったような形で民主主義国家に対し暴力的挑戦を図ったのでした。 ところが、振り返って国家とは、国境とは何かということを深く考えてみれば、すでに金融の世界では一日に十兆ドルものお金がコンピューターのクリックによって、国境を無視して飛び交っていたことに気付かされます。タイ・バーツの暴落に始まるアジア金融危機は、ボーダーレス・エコノミーの典型的な例でした。 この様に、21世紀に入った今日の世界は、1648年に形成されたウェストファリア条約的な意味における国と国との関係を律する「国際」関係の時代を終えて、いわば人と人、ないし市民と市民が直接その活動を通じて面と面で重なる関係に入ったと認識しなければなりません。これが、世界がグローバルな時代に入った事の最大の特色だと思われます。 3.日本のリーダーシップ さて、この様に急速に変わってきている世界の中で、まことに残念ながら、時代の変わり目につきものの混乱が今私たちの目の前で起きているのではないでしょうか。そして、その混乱の中で自分の生きる道や方途を見つけられずにいる人々がいる、あるいは混乱そのものの直接の犠牲となっている人々がいる、このことに心を痛めずに入られません。 今日は時間の関係で長くは申しませんが、私たちはそういう時代にこそ、リーダーシップを発揮して行くべきではないでしょうか。 その第1は、急速に進んでいる経済社会実態に追いついていない世界のルールを、沈着に、しかし急いで、つくることだと思います。国連等の場で真剣に検討されてきた国際組織犯罪条約やサイバー犯罪条約は、いわばこれまで法秩序が形成されていない穴を塞ぐための典型的な例ですし、WTO交渉や国際金融システムの改革は世界中の人間が貿易や金融に参加できるようにするためのルールの模索です。日本の知恵を活かしていきたいものです。 第2は、厳しい環境下での国造りのあり方です。私たちは、ほとんど何の天然資源もなしに、勤勉さと人的資源だけで今日の日本を作りました。経済危機といわれながらも、今でも世界の富の7分の1を生み出す国なのです。「人づくりこそ国造りの源である」ことをヨハネスブルグ・サミットで小泉総理が強く訴えた所以です。 さて、こうした中で、今日の国連統一アピールについて考えてみますと、今そこで苦しみにあえいでいる人たちがいることにも思いを馳せる必要があります。今日の国連統一アピールは、世界の約三十の国や地域に生きている、いや、生きようとしている、五千万人の老若男女が、少しでも人としての尊厳ある生を送ることができるように、世界の連帯を呼びかけるものです。日本はここでもリーダーシップを発揮したいと考えています。 もとより、冒頭申し上げましたように、国連に象徴される今日の世界のガバナンスのシステムは、年をへてほころび始めています。糸の乱れを快刀乱麻というわけにはなかなか行かないかもしれませんが、国連各機関も今日の世界と自分たちの実態をよく見て、正すべきは正さなければなりません。日本が提唱している国連改革こそは、日本がリーダーシップを発揮すべき大きな柱であることを、国連アピール発出の機会にあらためて申し上げます。 このことが、国連統一アピールが多くの国々の共感を呼び、具体的成果をもたらすことにつながるものと信じてやみません。 ご静聴ありがとうございました。 |
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