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矢野副大臣スピーチ

「創造的パートナーシップのための日豪会議」

平成14年11月7日

(英語版はこちら)



1.冒頭発言

 ダウナー外務大臣閣下、エリス豪日交流基金理事長、
 室伏伊藤忠商事会長、並びにご列席の皆様、
 本日、創造的パートナーシップのための日豪会議において、日本政府を代表して基調講演を行う機会を頂き、光栄に存じます。
 本題に入ります前に、まず、10月12日に発生したバリ島の爆発事件について触れたいと思います。この極めて卑劣なテロ行為により、多数のオーストラリア国民、そして15名の日本人を含む多くの方が、亡くなり傷つきました。命を落とされ、あるいは負傷された方々、そしてそのご家族に対し、心よりのお悔やみとお見舞いを申し上げます。
 この事件を受け、ハワード首相の指揮のもと、ダウナー外務大臣閣下も早速現地に入り現場の指揮を執られ、ジャカルタではメガワティ大統領と会談し、インドネシアとの合同捜査チームを立ち上げるなど奔走されました。
 昨年の9月11日以来、我が国も、この卑劣で許し難いテロとの闘いで重要な役割を果たしてきました。引き続き、我が国は、国際社会と連携し、この闘いに積極的かつ主体的に寄与していきます。そのために、今後、あらゆる機会を捉えて、テロに対抗する国際的連携を強化していきたいと考えます。

2.日豪関係の基盤

 さて、本題に入りたいと思います。
 昨年4月の「シドニー会議」の際にも、確認されたことですが、日豪関係は、アジア太平洋地域の中で最も成功している二国間関係だと思います。それにはいくつかの要因があります。
 まず第一に、日豪両国が民主主義と人権の尊重、市場経済という価値観を共有していることです。この事実は、先の大戦の経験にも拘わらず、両国がパートナーシップを築くに至る上での礎を提供しました。
 次に、価値観の共有によって、両国が東アジア地域における利害も共有していることです。民主主義と人権の確保が実現されるような形で、東アジアにおける平和と安全保障が確保されることは、両国が共に目指すところです。そして、この地域に、市場経済を基礎とする開放的な経済体制が普及し、同時に地域各国の経済連携が深化していくことも、両国共通の利益です。
 更に、実体経済面を見ますと、日本にとって、オーストラリアは鉄鉱石、石炭、アルミニウム等重要な資源の最大の供給元であり、オーストラリアにとって、日本は農産物も含めて最大の輸出市場であるという、相互補完的な経済関係が築かれております。これも両国関係の基礎を提供しております。
 このように、日豪両国は、価値観と利害を共有する自然なパートナーでありますが、本日は、特に両国が位置するアジア太平洋地域、特に東アジア地域における両国の役割について論じてみたいと思います。

3.アジア太平洋地域における日豪両国の位置づけ

(1) アジア太平洋地域における現状
 歴史、文化、民族、伝統などにおける多様性がアジア太平洋地域の重要な特色であります。多様性は、アジア太平洋地域の発展の重要な要因でありますが、現在、この地域が大きな課題に直面していることも事実です。
 バリの爆発事件は、依然としてこの地域がテロの脅威に晒されていることを明らかにしました。また、この地域の多くの国で、国内に政府と対立する勢力があることも事実であり、こうした勢力が過激な行動に出るおそれがあります。また、北朝鮮による核開発問題は、北東アジア地域、ひいては国際社会の平和と安全にとって極めて深刻な問題です。
 経済面に目を向けても、経済体制のあり方から実体経済の動向まで、非常に際だった多様性が見られます。現在、この地域での経済連携の深化に向けて、多くの動きが同時に出現し加速しています。こうした動きは経済制度の調和や経済交流の拡大に貢献することになると思われますが、多様性の存在がこうした動きの障害になることも十分考えられます。
 こうした政治、経済面での多様性の根本には、文化や社会のあり方の多様性があります。この地域では、こうした多様性を尊重しつつ物事を進めることがどうしても欠かせません。多様性の存在を無視したような教条主義的なアプローチは、たとえ正義に根差したものであっても、この地域では逆効果になることがあります。
 こうした多様性を反映して、まだこの地域には、欧州のようなはっきりとした枠組みはできていません。むしろ、APEC、ASEM、ARF、ASEAN+3といった様々な多国間の枠組みがあり、また同時に、多くの二国間の協力関係があります。それぞれがそれなりに有益な活動を展開しているのが現状です。

(2) 小泉構想:「共に歩み共に進む」コミュニティ
 小泉総理は今年5月の訪豪の際に、東アジア地域で、オーストラリアやニュージーランドを含む「共に歩み共に進む」コミュニティを形成するとの提言について、説明をしました。
 この提言の核心は、東アジア地域における多様性を考えると、この地域に現在確固たる枠組みを確立することは現実的ではなく、そうした枠組み論を展開するよりも、より機能的なアプローチ、即ち、政治、安全保障、経済、社会など様々な側面において、地域諸国が具体的な形で協力していく、そしてこうした協力を積み重ねていくことによって、自然にコミュニティを形成していこうということです。
 このような協力は既に始まっています。では、日豪両国は、どのような分野で、どのような努力をしているのでしょうか。

(3) わが国とオーストラリアの努力
 ここで、いくつかの分野で進んでいる地域的な協力の例と、その中での日豪両国の貢献に触れたいと思います。オーストラリアの貢献と政策については、先程ダウナー外務大臣閣下が言われたとおりですが、わが国の貢献も補足しつつまとめてみたいと思います。

(イ) 政治・安全保障分野
 政治・安全保障面で最初に言及すべきは、テロ対策でありましょう。日豪両国ともテロ対策には熱心に取り組んできており、両国間では、ハイレベルのテロ協議も行われてきています。同時に、アジア諸国との協力も進んできており、わが国もインドネシアをはじめ多くの国に対し、テロ対策のキャパシティ・ビルディングのため、技術面、資金面の協力を行っています。オーストラリアも地域諸国とテロ対策協力に関する了解覚書を締結しておられます。
 また、東チモールにおける国連平和維持活動への貢献も重要です。オーストラリアは、派遣国中最大の規模の兵員を派遣していますが、我が国も施設部隊等として、690名を派遣し、オーストラリア部隊とは日常的な協力関係にあります。独立後の東チモールには依然多くの課題が存在しておりますが、日豪両国としても、引き続き東チモール人自身による国造りを支援していきます。

(ロ) 国境を越えた問題
 国境を越えた問題の中では、「人の密輸」について、本年2月、オーストラリアは、インドネシアと共催により、地域閣僚会議を開催しました。我が国は、会議に杉浦副大臣を派遣し、今後は、一部の分野において調整国として協力したいと考えています。
 このほかにも、テロ資金との関連で、マネーロンダリングにも関心が集まっており、オーストラリアはインドネシアと共にイニシアティブを取られると伺いました。わが国も協力したいと思います。

(ハ) 経済協力の深化
 ASEAN諸国間では、AFTA設立に向けた動きが進展していますが、このASEANに対して、中国や米国が自由貿易協定を結ぼうとしているように、自由貿易協定のネットワークを形成するうねりが盛り上がっています。わが国も、ASEAN諸国や韓国と包括的な経済連携協定を模索していますが、オーストラリアもシンガポールとのFTAにつき合意し、タイとの交渉も進めておられます。
 更に、オーストラリアは経済開発面でも、アジア開発銀行の創設以来のメンバー、そして主要なシェアホルダーとして、積極的に寄与しました。アジア経済・通貨危機においても、オーストラリアは、我が国と並び、タイ、インドネシア、韓国の3ヶ国全てに資金援助した唯一の国でした。

(ニ) まとめ
 このように地域的な取組へのオーストラリアの積極的参画は、この地域の繁栄と安定にとって、大きな利益となっています。日豪両国は、今後も種々の地域的な取組に積極的な貢献していくべきです。ここで、その際に両国が共有すべき基本的目標について述べたいと思います。

(4) 今後の両国の東アジア地域における基本的目標
 まず、第一に、民主主義、市場経済、人権等の価値観が尊重される形での平和と安全保障を達成していく必要があります。
 第二に、これを達成していくにあたっての最大の脅威の一つであるテロ行為を抑圧するために、域内各国が団結・協力することが重要です。また、大量破壊兵器の開発・拡散も同様の脅威であり、これを食い止めるための軍縮・不拡散等の努力も必要です。
 第三に、地域における経済連携の強化です。先進的なルールに基づき、かつ域外国に対する開放性も維持した形での地域経済連携の強化は、この地域の活性化にも、WTOプロセスの補完にも繋がるとものと信じます。
 そして、最後に、これらを目的とする地域共同イニシアティブを促進していくことです。
 私は、日豪両国がこうした基本的目標につき一致しており、しかもこれを実現する能力と意思を兼ね備えていると考えています。

(5) 基本的目標を達成するための提言
 最後に、両国間の具体的協力のための提言をしたいと思います。
 第一に、両国間の緊密な協議、協力、連携体制を整備することです。政治・安全保障面では、テロ対策を含めて、これまで述べてきたような様々な分野での情報交換、政策調整、共同イニシアティブの推進等があります。経済面では、先進的な経済制度に共通点をもつ国同士にふさわしい、レベルの高い経済連携を模索していく必要があります。これは地域的にもモデルになりうると思います。
 第二に、両国が各々参加している地域イニシアティブに関する情報の共有であり、これを基礎に、第三に、両国が共に参加する地域共同イニシアティブを増加させていくことです。そのために、両国が、それぞれ東アジア地域などでイニシアティブをとるにあたって、事前に相談し、互いに支援できる分野では支援するという取り進め方を推進することが効果的でしょう。例えば、オーストラリアは、「国際テロリズムに関する了解覚書」をマレイシア、インドネシア、タイと結び、フィリピンとも結ぼうとしています。日豪両国は、日豪テロ協議を実施して情報交換等で協力していますが、東南アジア諸国のキャパシティ・ビルディングに対する日豪の協力を検討することは可能ではないかと考えます。

(6) 結語
 私はまだ現職に就任して日が浅いのではありますが、ただいま申し上げたような方針で、日豪関係の強化と地域への貢献のために働いていきたいとの決意です。
 ご静聴ありがとうございました。



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